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光が世界を飲み込む
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突然だが、剛 翼という少年について話しておこう。
誰のことか?
色欲と嫉妬の心臓を貫いた男。黒いフードで龍兎や皆無の邪魔をした男。その両方である。
なぜ、少年は大罪を使役しそして、世界を渡り魂を集めたのか。
少年には妹が一人いる。明るく、突拍子もない事を言い出す少し不思議な子だ。名前を剛 刃音と言う。今は病院のベッドで管がたくさんつながれた状態で生きているのか、死んでいるのか分からない状態でいる。刃音は現在治療不可能な難病に身体を蝕まれているのだ。体の筋肉という筋肉がなくなっていく病。最初は足に現れ、車いす生活に次に上半身に現れ、寝たきりに。そして徐々にその他の筋肉機能も落ちていき、遂には心臓も機械で動かす始末。意思疎通も取れない状態の妹は治療法が見つかるまで管を増やし続けるしか無かった。
翼少年はそんな妹の為に悪魔に魂を売ったのだ。
市内の歴史ある図書館。その奥には本物の魔導書や触れてはいけない禁書があると噂で聞いた少年は大人の目を盗みその禁書に触れてしまった。その禁書から現れたのは金色の瞳を持つ影。影は自分の事を♢JΣと語り、少年と契約を結んだのだ。最初は一人で集めていた魂は体力や技術の問題で一人では達成できないと悟った少年は七つの大罪を召喚し、そして、今に至る。
そして、今、やっと、
『やっと、魂が集まったよ。』
その声に安堵すると同時により一層気が引き締まる。あと一息。あともう少しだ。魂集めと時間稼ぎ。そのすべてをやってくれた大罪には感謝してもしきれない。そして、ここまで命を掛けてくれた大罪達に恥じぬよう俺は今ここで総てを終わらせる。
「よし、妹の元へ行こう。」
海の見える高台の病院。難病を専門に取り扱う、ほぼ研究施設に近い病院である。刃音以外にも難病で目を覚まさない人が数多くこの病院には入院している。俺は他の人に見つからないために色欲の能力で院内全ての人間、動物を眠らせ、嫉妬の能力でカメラを狂わせる。そして、妹の病室。特段、綺麗な海の見える病室に入る。濃紺の星空に月光が差す病室。心電図の音と点滴が静かに落ちる音が微かに聞こえる。影は俺の背後に回り、妹の様子を見る。
『心の準備良いかい?』
「やってくれ。」
影は天を開き、今まで集めてきた魂を病室の天井へ映し出す。金色に輝く御霊達はこちらを見下ろすように光っている。影はその魂を自らの身体へ集め始める。それの連動して、翼は詠唱を始める。
「金色に輝く108億の御霊達よ。契約を果たす為、我が主の一部となり、我が主の身体となり、血となり、肉となれ。権限せよ我が主♢JΣ!!!」
影へ集まった魂は詠唱を終えると共に勢いよく渦を巻き、影……♢JΣへと勢いよく吸い込まれていった。勢いも増す中、翼は妹をかばいながら、マモンへ言葉を投げかけ叫ぶ。
「マモン!!本当に大丈夫なんだろうな!!!おい!!!マモン!!」
魂はまるで竜巻のように勢いを強め、遂には病室を破壊し、病院を破壊し、病院のあった丘を破壊した。そして、光は勢いをそのまま翼の街を破壊した。
「感謝するよ。哀れな人間。」
妹を抱く翼はその目に神々しく輝く金色の悪魔を映した。金色の悪魔は含み笑いで、やがて天を仰ぎ大嗤いする。
「ハハハハハ!!!!」
「成功したのか?」
「あぁ、成功した。私は完全に復活できたよ。」
翼は完全復活したマモンへ妹を差し出す。
「約束だ……妹を、刃音を治してくれ。」
「フッ……」
「何がおかしい。」
「それが妹か?その灰も同然の死骸が。」
「は?」
翼はマモンが何を言っているのかと思い、抱いている妹だったものへ目を向ける。
その瞬間、マモンは吐息よりも弱い息で翼に抱かれている妹だった者へ吹きかける。
翼の腕にいる黒い塊は腕が音もなく崩れ落ち、そして、マモンの言った通り、灰となって翼の眼前に舞い散った。
「は?」
疑問、悲しみ、怒り、憎しみ、疲労……今、翼はどの感情を出せばいいのか頭の中でそのすべてがぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。妹の灰を手に救い上げ、懸命に拾い集める。次第に呼吸が荒くなり、妹だった灰を集めるが、灰は、妹は決して元には戻らなかった。そして、翼はマモンをにらみつける。
「話しが違う!!!!」
一生懸命に出た翼の一声にマモンは首を傾げる。
「何の事だ?ん~?そうか。妹はアレに耐えられなかったようだな。ハハハッ!まぁ、人生こんなもんだろう。」
翼はマモンにつかみかかる。だが、主従契約のせいでマモンへ拳はふることができなかった。
「治せ!直せ!なおせよ!妹も、この丘も、病院も!全部なおせよ!!!!」
崩れ落ちる翼をよそにマモンは再び首を傾げる。
「と言われてもなぁ、契約内容は『妹の病気を完治させる』だからなぁ。妹は死んでしまったからなぁ、契約は達成できないなぁ。達成できないものは仕方ないからなぁ……」
翼はその言葉にただ地面を殴ることしかできなくなった。その様子にマモンは憐れみと嘲笑を送る。
「まぁ、そう喚くな。私が神にでも成ったら治してやる。」
「信じられるか!!!そんな適当な言葉!!!」
翼は懐から本を一冊取り出し、土の剣を向ける。
「お前はこれがいないと存在維持が出来ないんだろ?いいのか?こいつバラバラにすんぞ?」
マモンは指をかざし、自らの手で本をバラバラにする。翼は目を見開き勝機かとマモンへ視線を移動させる。だが、マモンは苦しむどころか口角が今までよりも上がる。
「完全体の私にそんなものは必要ない。」
契約の要である魔導書が破壊された今、翼はマモンへ拳を振るうことができる。だが、マモンにもメリットはある。契約者を殺してしまっては契約が破断したことになり、存在が消えてしまう。だが、完全体となったマモンにそんなものは関係ない。魔導書が消えようが、妹が死のうが、どうしようが、何をしようが、マモンには一切合切関係なくなった。
「それで?これで君は終わりかい?」
翼は色欲の能力を使い、土から剣を生成した。
「土の印:刀剣!!」
剣を振るってきた翼にマモンは嗤いながらその攻撃を避ける。
「哀れだなぁ!妹のために大罪に大罪を重ねて!挙句の果てにはただの咎人となってしまった!!哀れ哀れ哀れ!」
「うるせぇ!だまれぇ!お前にわかるもんかよ!俺がどれだけ押しつぶされそうになっていたか!どれだけ痛かったか!わかるもんか!!」
振るう剣は全て弱々しくマモンは避けることもしなくなった。次第に剣はボロボロになり、剣と言うには醜い刀身となった。なおも攻撃を続ける翼にマモンは少しイラつき、腹部を貫通するほどの拳を繰り出す。桜が散るが如くその辺に翼の血と内臓が散らばる。翼は力無く剣を振るうが、血を大量に失ったため突然その場に膝から崩れ落ちる。
「どうした?終わりか?」
顔を覗き込むように翼の様子を確認するが、息はしているようだが意識が完全に絶たれているようだった。マモンはその様子につまらなさそうに鼻で嗤い、その場から発とうと羽を広げる。上を見上げ羽を羽ばたかせると足に何かがつかみかかった。伸びた手から先を見ると翼は意識はないはずだがその手を離すまいとマモンの足を強く握る。
「フ、フフフ……そうでなくてはな。」
マモンは翼の首を掴み、空へと飛び立つ。丘の抉れた茶色から次第に海の青色へと変わる。
潮の匂いが強くなり、やがてマモンは海の上空へたどり着いた。
「それで、無意識の中お前はどこまで私を弱らせる事ができる?」
鮮血は重力に逆らわず、足を伝いそのまま海へと血が滴り落ちる。そして、翼は痛みと潮風の匂いで意識を取り戻し、マモンの手を握る。
「知らねぇよ……俺はお前を殺すだけだ。」
「そうか、死ね。」
マモンは翼の首を離すと翼は落下する。翼は握っていた手で抵抗をしていたが、血と汗で滑りマモンの手首を放してしまった。遠のくマモンに向かって手を伸ばし掴もうと足掻くが、その手は絶対に届かない。そのまま白波と音を立てて翼は海へと激突した。その様子にマモンは手ごたえを感じないままその場からさらに硬度を挙げようと羽を広げた。
「行かせねぇよ。」
陽光に重なり、一閃がマモンへと迫る。マモンは嫉妬の能力で自らの影へ入り込みその一閃を躱す。海へと落ちたかと確認すると、人影はマモンへ斬りかかる。頭部の一部を切断されたマモン、だが痛がるそぶりも見せずその頭部を持ち傷口へぴったりとくっつける。回復したマモンは再び迫ってくる人影を掴み、その正体を確認する。だが、顔を見る前に人影は能力を使い、マモンと自身を空から分離する。
「君は……」
共に地面へ落ちると砂煙からボロボロの龍兎が出てくる。上半身の衣はほぼなくなり上裸状態となっており、いつも隠している片目は傷跡と共に顔全体が見える。傷跡というよりもほぼ潰された左目は開くことはなく、左頬の筋肉は常に痙攣しているようにも見える。
「神の犬じゃないか。あの爆発に耐えられたのか。」
「あぁ……ちょいと死にかけたがな。」
焼けた皮膚を分離する能力で火傷を分離する。火傷や服の破れは分離できたが、古傷なのかからだや左目の傷は分離できていない。龍兎は左目を隠すように髪を降ろす。その隙にマモンは龍兎の目の前まで移動する。龍兎はその攻撃を待っていたかのようにマモンの頭を掴む。
「破壊」
龍兎の七つある内の能力。破壊文字通りありとあらゆるものを破壊する。制約で対象物を目視で認識できなければ、能力を行使できないようになっているが、能力の格。威力自体はそのままである。
マモンの頭部はそのまま破壊され、血しぶきが上がるがマモンはそんなのお構いなしに嫉妬の能力を使い龍兎を自身の影へと埋め込み固定する。そして、頭部を再生しながら、色欲の能力で土の剣を作る。それだけでは飽きたらず、傲慢の能力で土の剣に光を灯し、暴食の能力でさらに空間を削る能力を付与、憤怒の獄炎に雷、最後にその触れれば即死の物体を怠惰の能力を使用し、自分の速度を二倍、周りの速度を0.5倍して龍兎を真っ二つに切断しようと振り下ろすが、剣が龍兎の頭部へ触れようとしたその時今までかけた能力は全て無効化される。龍兎の頭には土の塊がぶつかり霧散。
「抹消無効」
マモンが声の方向へ目を向けるとそこには登場した時の龍兎と同じようにボロボロの皆無がいた。剣が霧散したのを確認すると皆無は自分に能力を使い傷を抹消する。
「もう一匹も耐えていたか。」
「制約違反ギリギリまで能力を使ったからな。おかげで体力は限界をとうの昔に超えた。」
マモンは皆無へ意識を取られていることに気付き、龍兎へと目を向けたが龍兎は一歩も動いていない。再び皆無へと視線を映すが時すでに遅し、皆無はマモンの間合いへ入りそのまま膝蹴りを顔面へと叩き込む。そのままマモンは意識が揺らぐ状態となり、それを隙と踏んだ龍兎は後ろから剣を創造し背中の羽を切り落とす。視界が未だ回復しないマモンへ皆無はそのまま足を絡めとり、関節技をかける。完全に動きが止められたマモンへ最後に龍兎はそのまま銃を創造し引き金を数回引く。乾いた音と共にマモンは一度動きを止めた。二人はマモンの生死を確認しようと体勢を崩しマモンへ近づくが、マモンは嫉妬の能力である固有結界を最大発動し二人の動きを止める。そして、量産した土の剣で先程の即死物体を即罪に作り二人へと放つ。先程と違い能力の発動が遅れたため能力の無効化が間に合わず二人はその劇物に身体を切り裂かれた。
「全く、とんだ茶番だ……この物語を締めくくるとするか……」
再び羽を広げ、マモンはこの世界を終わらせようと陽光に重なり、光の玉を作り出す。
原料は翼が今まで集めた魂だ。108億の魂の内、マモンの復活に必要なのはわずか1億。この世界を終わらせるためのエネルギーは残り107億。確実にこの世界の惑星、宇宙、銀河系を白紙に戻すことができるエネルギー量だ。この世界…物語が終わるとどうなるか…明白なことは残ったマモンは空白へ飛ばされ、名もなき者へ神の座をかけて挑戦ができる。挑戦に成功すると神になることができるのだが………
これは正攻法ではない
ゲームで言う裏技やチートに近いものでつまるところ、”インチキ”である。
「終わらせてやろう。そして、待っていろ!!神に挑戦してやる!!」
光の玉は次第に大きくなり、衛星からはその光景が神々しくそして、恐ろしく見えていた。
「理想郷への足がかり!!!」
光の大玉はゆっくりと地球へと落ちる。
光が世界を飲み込む。
完……?
Continue……?
▶Yes
No
Yes
▶No
【No】
Really?
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
次回 序章最終話 ────主人公が確定しました
続く。
誰のことか?
色欲と嫉妬の心臓を貫いた男。黒いフードで龍兎や皆無の邪魔をした男。その両方である。
なぜ、少年は大罪を使役しそして、世界を渡り魂を集めたのか。
少年には妹が一人いる。明るく、突拍子もない事を言い出す少し不思議な子だ。名前を剛 刃音と言う。今は病院のベッドで管がたくさんつながれた状態で生きているのか、死んでいるのか分からない状態でいる。刃音は現在治療不可能な難病に身体を蝕まれているのだ。体の筋肉という筋肉がなくなっていく病。最初は足に現れ、車いす生活に次に上半身に現れ、寝たきりに。そして徐々にその他の筋肉機能も落ちていき、遂には心臓も機械で動かす始末。意思疎通も取れない状態の妹は治療法が見つかるまで管を増やし続けるしか無かった。
翼少年はそんな妹の為に悪魔に魂を売ったのだ。
市内の歴史ある図書館。その奥には本物の魔導書や触れてはいけない禁書があると噂で聞いた少年は大人の目を盗みその禁書に触れてしまった。その禁書から現れたのは金色の瞳を持つ影。影は自分の事を♢JΣと語り、少年と契約を結んだのだ。最初は一人で集めていた魂は体力や技術の問題で一人では達成できないと悟った少年は七つの大罪を召喚し、そして、今に至る。
そして、今、やっと、
『やっと、魂が集まったよ。』
その声に安堵すると同時により一層気が引き締まる。あと一息。あともう少しだ。魂集めと時間稼ぎ。そのすべてをやってくれた大罪には感謝してもしきれない。そして、ここまで命を掛けてくれた大罪達に恥じぬよう俺は今ここで総てを終わらせる。
「よし、妹の元へ行こう。」
海の見える高台の病院。難病を専門に取り扱う、ほぼ研究施設に近い病院である。刃音以外にも難病で目を覚まさない人が数多くこの病院には入院している。俺は他の人に見つからないために色欲の能力で院内全ての人間、動物を眠らせ、嫉妬の能力でカメラを狂わせる。そして、妹の病室。特段、綺麗な海の見える病室に入る。濃紺の星空に月光が差す病室。心電図の音と点滴が静かに落ちる音が微かに聞こえる。影は俺の背後に回り、妹の様子を見る。
『心の準備良いかい?』
「やってくれ。」
影は天を開き、今まで集めてきた魂を病室の天井へ映し出す。金色に輝く御霊達はこちらを見下ろすように光っている。影はその魂を自らの身体へ集め始める。それの連動して、翼は詠唱を始める。
「金色に輝く108億の御霊達よ。契約を果たす為、我が主の一部となり、我が主の身体となり、血となり、肉となれ。権限せよ我が主♢JΣ!!!」
影へ集まった魂は詠唱を終えると共に勢いよく渦を巻き、影……♢JΣへと勢いよく吸い込まれていった。勢いも増す中、翼は妹をかばいながら、マモンへ言葉を投げかけ叫ぶ。
「マモン!!本当に大丈夫なんだろうな!!!おい!!!マモン!!」
魂はまるで竜巻のように勢いを強め、遂には病室を破壊し、病院を破壊し、病院のあった丘を破壊した。そして、光は勢いをそのまま翼の街を破壊した。
「感謝するよ。哀れな人間。」
妹を抱く翼はその目に神々しく輝く金色の悪魔を映した。金色の悪魔は含み笑いで、やがて天を仰ぎ大嗤いする。
「ハハハハハ!!!!」
「成功したのか?」
「あぁ、成功した。私は完全に復活できたよ。」
翼は完全復活したマモンへ妹を差し出す。
「約束だ……妹を、刃音を治してくれ。」
「フッ……」
「何がおかしい。」
「それが妹か?その灰も同然の死骸が。」
「は?」
翼はマモンが何を言っているのかと思い、抱いている妹だったものへ目を向ける。
その瞬間、マモンは吐息よりも弱い息で翼に抱かれている妹だった者へ吹きかける。
翼の腕にいる黒い塊は腕が音もなく崩れ落ち、そして、マモンの言った通り、灰となって翼の眼前に舞い散った。
「は?」
疑問、悲しみ、怒り、憎しみ、疲労……今、翼はどの感情を出せばいいのか頭の中でそのすべてがぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。妹の灰を手に救い上げ、懸命に拾い集める。次第に呼吸が荒くなり、妹だった灰を集めるが、灰は、妹は決して元には戻らなかった。そして、翼はマモンをにらみつける。
「話しが違う!!!!」
一生懸命に出た翼の一声にマモンは首を傾げる。
「何の事だ?ん~?そうか。妹はアレに耐えられなかったようだな。ハハハッ!まぁ、人生こんなもんだろう。」
翼はマモンにつかみかかる。だが、主従契約のせいでマモンへ拳はふることができなかった。
「治せ!直せ!なおせよ!妹も、この丘も、病院も!全部なおせよ!!!!」
崩れ落ちる翼をよそにマモンは再び首を傾げる。
「と言われてもなぁ、契約内容は『妹の病気を完治させる』だからなぁ。妹は死んでしまったからなぁ、契約は達成できないなぁ。達成できないものは仕方ないからなぁ……」
翼はその言葉にただ地面を殴ることしかできなくなった。その様子にマモンは憐れみと嘲笑を送る。
「まぁ、そう喚くな。私が神にでも成ったら治してやる。」
「信じられるか!!!そんな適当な言葉!!!」
翼は懐から本を一冊取り出し、土の剣を向ける。
「お前はこれがいないと存在維持が出来ないんだろ?いいのか?こいつバラバラにすんぞ?」
マモンは指をかざし、自らの手で本をバラバラにする。翼は目を見開き勝機かとマモンへ視線を移動させる。だが、マモンは苦しむどころか口角が今までよりも上がる。
「完全体の私にそんなものは必要ない。」
契約の要である魔導書が破壊された今、翼はマモンへ拳を振るうことができる。だが、マモンにもメリットはある。契約者を殺してしまっては契約が破断したことになり、存在が消えてしまう。だが、完全体となったマモンにそんなものは関係ない。魔導書が消えようが、妹が死のうが、どうしようが、何をしようが、マモンには一切合切関係なくなった。
「それで?これで君は終わりかい?」
翼は色欲の能力を使い、土から剣を生成した。
「土の印:刀剣!!」
剣を振るってきた翼にマモンは嗤いながらその攻撃を避ける。
「哀れだなぁ!妹のために大罪に大罪を重ねて!挙句の果てにはただの咎人となってしまった!!哀れ哀れ哀れ!」
「うるせぇ!だまれぇ!お前にわかるもんかよ!俺がどれだけ押しつぶされそうになっていたか!どれだけ痛かったか!わかるもんか!!」
振るう剣は全て弱々しくマモンは避けることもしなくなった。次第に剣はボロボロになり、剣と言うには醜い刀身となった。なおも攻撃を続ける翼にマモンは少しイラつき、腹部を貫通するほどの拳を繰り出す。桜が散るが如くその辺に翼の血と内臓が散らばる。翼は力無く剣を振るうが、血を大量に失ったため突然その場に膝から崩れ落ちる。
「どうした?終わりか?」
顔を覗き込むように翼の様子を確認するが、息はしているようだが意識が完全に絶たれているようだった。マモンはその様子につまらなさそうに鼻で嗤い、その場から発とうと羽を広げる。上を見上げ羽を羽ばたかせると足に何かがつかみかかった。伸びた手から先を見ると翼は意識はないはずだがその手を離すまいとマモンの足を強く握る。
「フ、フフフ……そうでなくてはな。」
マモンは翼の首を掴み、空へと飛び立つ。丘の抉れた茶色から次第に海の青色へと変わる。
潮の匂いが強くなり、やがてマモンは海の上空へたどり着いた。
「それで、無意識の中お前はどこまで私を弱らせる事ができる?」
鮮血は重力に逆らわず、足を伝いそのまま海へと血が滴り落ちる。そして、翼は痛みと潮風の匂いで意識を取り戻し、マモンの手を握る。
「知らねぇよ……俺はお前を殺すだけだ。」
「そうか、死ね。」
マモンは翼の首を離すと翼は落下する。翼は握っていた手で抵抗をしていたが、血と汗で滑りマモンの手首を放してしまった。遠のくマモンに向かって手を伸ばし掴もうと足掻くが、その手は絶対に届かない。そのまま白波と音を立てて翼は海へと激突した。その様子にマモンは手ごたえを感じないままその場からさらに硬度を挙げようと羽を広げた。
「行かせねぇよ。」
陽光に重なり、一閃がマモンへと迫る。マモンは嫉妬の能力で自らの影へ入り込みその一閃を躱す。海へと落ちたかと確認すると、人影はマモンへ斬りかかる。頭部の一部を切断されたマモン、だが痛がるそぶりも見せずその頭部を持ち傷口へぴったりとくっつける。回復したマモンは再び迫ってくる人影を掴み、その正体を確認する。だが、顔を見る前に人影は能力を使い、マモンと自身を空から分離する。
「君は……」
共に地面へ落ちると砂煙からボロボロの龍兎が出てくる。上半身の衣はほぼなくなり上裸状態となっており、いつも隠している片目は傷跡と共に顔全体が見える。傷跡というよりもほぼ潰された左目は開くことはなく、左頬の筋肉は常に痙攣しているようにも見える。
「神の犬じゃないか。あの爆発に耐えられたのか。」
「あぁ……ちょいと死にかけたがな。」
焼けた皮膚を分離する能力で火傷を分離する。火傷や服の破れは分離できたが、古傷なのかからだや左目の傷は分離できていない。龍兎は左目を隠すように髪を降ろす。その隙にマモンは龍兎の目の前まで移動する。龍兎はその攻撃を待っていたかのようにマモンの頭を掴む。
「破壊」
龍兎の七つある内の能力。破壊文字通りありとあらゆるものを破壊する。制約で対象物を目視で認識できなければ、能力を行使できないようになっているが、能力の格。威力自体はそのままである。
マモンの頭部はそのまま破壊され、血しぶきが上がるがマモンはそんなのお構いなしに嫉妬の能力を使い龍兎を自身の影へと埋め込み固定する。そして、頭部を再生しながら、色欲の能力で土の剣を作る。それだけでは飽きたらず、傲慢の能力で土の剣に光を灯し、暴食の能力でさらに空間を削る能力を付与、憤怒の獄炎に雷、最後にその触れれば即死の物体を怠惰の能力を使用し、自分の速度を二倍、周りの速度を0.5倍して龍兎を真っ二つに切断しようと振り下ろすが、剣が龍兎の頭部へ触れようとしたその時今までかけた能力は全て無効化される。龍兎の頭には土の塊がぶつかり霧散。
「抹消無効」
マモンが声の方向へ目を向けるとそこには登場した時の龍兎と同じようにボロボロの皆無がいた。剣が霧散したのを確認すると皆無は自分に能力を使い傷を抹消する。
「もう一匹も耐えていたか。」
「制約違反ギリギリまで能力を使ったからな。おかげで体力は限界をとうの昔に超えた。」
マモンは皆無へ意識を取られていることに気付き、龍兎へと目を向けたが龍兎は一歩も動いていない。再び皆無へと視線を映すが時すでに遅し、皆無はマモンの間合いへ入りそのまま膝蹴りを顔面へと叩き込む。そのままマモンは意識が揺らぐ状態となり、それを隙と踏んだ龍兎は後ろから剣を創造し背中の羽を切り落とす。視界が未だ回復しないマモンへ皆無はそのまま足を絡めとり、関節技をかける。完全に動きが止められたマモンへ最後に龍兎はそのまま銃を創造し引き金を数回引く。乾いた音と共にマモンは一度動きを止めた。二人はマモンの生死を確認しようと体勢を崩しマモンへ近づくが、マモンは嫉妬の能力である固有結界を最大発動し二人の動きを止める。そして、量産した土の剣で先程の即死物体を即罪に作り二人へと放つ。先程と違い能力の発動が遅れたため能力の無効化が間に合わず二人はその劇物に身体を切り裂かれた。
「全く、とんだ茶番だ……この物語を締めくくるとするか……」
再び羽を広げ、マモンはこの世界を終わらせようと陽光に重なり、光の玉を作り出す。
原料は翼が今まで集めた魂だ。108億の魂の内、マモンの復活に必要なのはわずか1億。この世界を終わらせるためのエネルギーは残り107億。確実にこの世界の惑星、宇宙、銀河系を白紙に戻すことができるエネルギー量だ。この世界…物語が終わるとどうなるか…明白なことは残ったマモンは空白へ飛ばされ、名もなき者へ神の座をかけて挑戦ができる。挑戦に成功すると神になることができるのだが………
これは正攻法ではない
ゲームで言う裏技やチートに近いものでつまるところ、”インチキ”である。
「終わらせてやろう。そして、待っていろ!!神に挑戦してやる!!」
光の玉は次第に大きくなり、衛星からはその光景が神々しくそして、恐ろしく見えていた。
「理想郷への足がかり!!!」
光の大玉はゆっくりと地球へと落ちる。
光が世界を飲み込む。
完……?
Continue……?
▶Yes
No
Yes
▶No
【No】
Really?
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
◀◀◀ Rewind…… ◀◀◀
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次回 序章最終話 ────主人公が確定しました
続く。
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