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嫉妬 1
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夕立が上がり、雨の匂いが辺りに漂う。日も沈み始め、夏のはじめだが気温がグンと下がる。思いのほか下がった気温に町を守る巫女は身体を起こし、頭痛を認識する。何か記憶が剥がれ落tちた感覚にゆっくりと腰を持ち上げて、フラフラと立ち上がる。昨日の記憶が一部消えている。夜の見回りで何かムキになって札を数枚使った記憶があるのだが、それすらもなぜ使ったのかが思い出せない。あと、魔族を一匹目の前で消した記憶もある。ただ、この記憶にも違和感があって、自身がその魔族を消したと言う感覚はない。廊下を見渡しながら、誰かいないかと声をかける。すると居間から三毒の一匹チ―が顔を出す。
「どうしたの?お昼寝は終いかえ?」
「えぇ、よく眠れたわ。他のやつは?」
「ん~、トンとジンはまだ外から戻ってない。ハクラはしらん。」
「ねぇ、チ―、私昨日どんなだった?」
チ―は、そのおかしな質問に首をかしげて少し考えこむ。そして、何か思い出した等に手を叩き、巫女の質問に答える。
「昨日はわっちとトン、ジンが勝手に夕飯食べて怒られて、一重はハクラとお話してた」
「・・・そう。」
朧げに思い出してきた。ただ、そこにも違和感がある。誰か一人忘れているような気がするのだ。三毒の魔族、チ―、ジン、トンそして、ハクラの四匹以外に”人間”がそこにいたのだ。確実に。絶対に。だが、その”人間”の顔と声とその他情報が抜け落ちているのだ。
抜け落ちている記憶を必死に探ろうとすると、じわじわと頭痛がしてくる。
「う・・・っ!」
「大丈夫かえ?もう少し横になっていたほうがいいんじゃないかえ?」
”誰か”が何かを隠している。
この頭痛の中、一重は考えた。ただ、その”誰か”が分からない。
目の前のチ―は本気で心配そうな顔をしている。三毒が”記憶を消す”や”記憶の改ざん”といった高度な術は扱えない。昨夜のお茶の味を思いだしながら、ハクラに後頭部を指でこつんと突かれた事を思い出す。
「あいつ・・・っ!」
一層、激しくなる頭痛を振りほどくように一重は適当な札を何枚か鷲掴みにし、下駄を履き玄関を乱暴に開け、全速力でハクラを探す。チ―はその様子を心配そうに見つめるが、何も言わず、ただそこに立っているだけだった。
「一重。ごめんね。」
ハクラはおろか、三毒も、記憶にない無田も一重の記憶がないことは分かっている。
────────────
町中を探し回るも、ハクラの反応はない。夜の紺色も深くなり、見回りもしながらハクラの反応がいつもとは違う方向からしてきた。札を宙に浮かせその位置を明確にすると、神社の裏の方角を差す札を頼りに一重は移動の札を使い、神社へと瞬間移動する。神社へと帰ってくるとハクラと三毒がご飯の準備をしていた。その姿を見た一重は真っ先にハクラへと近づきつかみかかる勢いで顔を近づける。
「どうした、どうした一重よ?」
「あんた、何か私の記憶いじったでしょ?」
ハクラは首を傾げて何も分からないという風に一重を見つめる。
「何の話してんの?」
「とぼけるな!!」
今までに聞いたことのない怒号に食事準備をしていた神社の魔族たちは静まり返り、二人へと視線を集める。
ハクラは掴まれた胸ぐらから一重の顔に視線を移す。焦っている様子の一重にハクラは落ち着くように諭し、外へと一緒に出ようと緊迫した雰囲気で歩き始めた。
「ハクラ、一重。ご飯食べないの?」
トンは心配そうな声音で二人を呼び止める。
「話をつけたら行くよ。」
「えぇ、ちょっと話すだけよ。」
林へと移動した二人はいち早く真実を知りたい一重が口を開く。
「何か隠してるわよね?」
ハクラはその質問に黙ったまま、林の方へ顔を向けるように一重に背を見せた。
「答えなさい!!私に何か隠し事してるでしょ!?」
「言えない。」
空を見上げtたハクラはそういうと拳を握っていた。その答えを聞くと一重はハクラを差す札をハクラに見せる。だが、ハクラを差しているはずの札はハクラとはずれた方角を出している。
「あんた、こんな狡いこともできたのね。」
「意識は私だ。というか、ニセモノに反応するように細工したからね。」
目の前のハクラは本物で、札が差すのはニセモノのハクラの方角だと気付くと一重はその札をしまい、偽ハクラの方角へと歩みを進めようとする。それをハクラが許すはずもなく、すぐに止められた。
「ダメだ。」
「何を隠しているか言ったら、あんたのいう通りにおとなしくしてあげる。」
「嘘だな。この話を聞くとお前さんは絶対にあいつの方へいく。」
「誰か他にいるのね。”人間”が。」
その答えにハクラは目を見開き、一重に近づく。
「思い出してきているのか?」
「さっぱり分からないわ。でも”私以外の誰か”が、戦っているのは分かったわ。」
一重は自分の記憶に確信を持ち、すぐに札の方角へと向かおうとする。
「どうしても、行くのか?」
「誰かはわからない。でも誰かが私の代わりに戦ってるなら私はそれを手伝う義務がある。だって、ここは私の愛した町だから。」
ハクラはそんな一重をそれでも止めようと立ちはだかる。
「どきなさいよ。」
「ムリだね。お前さんが行っても足手まといになるだけだ。」
「それでも、一人よりは二人でやった方がいいわよね?どれだけ、私があいつよりも劣っていようと、私はあいつに借りがある。」
一重は激しくなる頭痛にうずくまるが、札の方角へとそれでも向かおうと足を動かす。
「我は、そんなお前さんが好きだよ。」
ハクラは一重のその姿にしびれを切らしたのか、後頭部を突く。
すると、一重の欠けていた記憶がよみがえり、辻褄がぴたりと合っていった。
「そう……だったわね。」
「一重?」
「あいつは一発ぶん殴らないといけないわね………ほら、あんたも行くのよ。」
ハクラの首根っこを捕まえると一重は空を飛ぶ札を足につけ、札の示す、帝京とは真逆の方向へと飛んでいった。その姿を見届けたのは神社の魔族たちだった。
「あ~あ、行っちゃった。」
「そんな心配は不要でありんすよ。」
「でも俺ら、また怒られんじゃん。」
「「あ…………」」
怒られることガ確定した三毒は肩を落としながらも一重が無事に帰ってくることを祈った。
「どうしたの?お昼寝は終いかえ?」
「えぇ、よく眠れたわ。他のやつは?」
「ん~、トンとジンはまだ外から戻ってない。ハクラはしらん。」
「ねぇ、チ―、私昨日どんなだった?」
チ―は、そのおかしな質問に首をかしげて少し考えこむ。そして、何か思い出した等に手を叩き、巫女の質問に答える。
「昨日はわっちとトン、ジンが勝手に夕飯食べて怒られて、一重はハクラとお話してた」
「・・・そう。」
朧げに思い出してきた。ただ、そこにも違和感がある。誰か一人忘れているような気がするのだ。三毒の魔族、チ―、ジン、トンそして、ハクラの四匹以外に”人間”がそこにいたのだ。確実に。絶対に。だが、その”人間”の顔と声とその他情報が抜け落ちているのだ。
抜け落ちている記憶を必死に探ろうとすると、じわじわと頭痛がしてくる。
「う・・・っ!」
「大丈夫かえ?もう少し横になっていたほうがいいんじゃないかえ?」
”誰か”が何かを隠している。
この頭痛の中、一重は考えた。ただ、その”誰か”が分からない。
目の前のチ―は本気で心配そうな顔をしている。三毒が”記憶を消す”や”記憶の改ざん”といった高度な術は扱えない。昨夜のお茶の味を思いだしながら、ハクラに後頭部を指でこつんと突かれた事を思い出す。
「あいつ・・・っ!」
一層、激しくなる頭痛を振りほどくように一重は適当な札を何枚か鷲掴みにし、下駄を履き玄関を乱暴に開け、全速力でハクラを探す。チ―はその様子を心配そうに見つめるが、何も言わず、ただそこに立っているだけだった。
「一重。ごめんね。」
ハクラはおろか、三毒も、記憶にない無田も一重の記憶がないことは分かっている。
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町中を探し回るも、ハクラの反応はない。夜の紺色も深くなり、見回りもしながらハクラの反応がいつもとは違う方向からしてきた。札を宙に浮かせその位置を明確にすると、神社の裏の方角を差す札を頼りに一重は移動の札を使い、神社へと瞬間移動する。神社へと帰ってくるとハクラと三毒がご飯の準備をしていた。その姿を見た一重は真っ先にハクラへと近づきつかみかかる勢いで顔を近づける。
「どうした、どうした一重よ?」
「あんた、何か私の記憶いじったでしょ?」
ハクラは首を傾げて何も分からないという風に一重を見つめる。
「何の話してんの?」
「とぼけるな!!」
今までに聞いたことのない怒号に食事準備をしていた神社の魔族たちは静まり返り、二人へと視線を集める。
ハクラは掴まれた胸ぐらから一重の顔に視線を移す。焦っている様子の一重にハクラは落ち着くように諭し、外へと一緒に出ようと緊迫した雰囲気で歩き始めた。
「ハクラ、一重。ご飯食べないの?」
トンは心配そうな声音で二人を呼び止める。
「話をつけたら行くよ。」
「えぇ、ちょっと話すだけよ。」
林へと移動した二人はいち早く真実を知りたい一重が口を開く。
「何か隠してるわよね?」
ハクラはその質問に黙ったまま、林の方へ顔を向けるように一重に背を見せた。
「答えなさい!!私に何か隠し事してるでしょ!?」
「言えない。」
空を見上げtたハクラはそういうと拳を握っていた。その答えを聞くと一重はハクラを差す札をハクラに見せる。だが、ハクラを差しているはずの札はハクラとはずれた方角を出している。
「あんた、こんな狡いこともできたのね。」
「意識は私だ。というか、ニセモノに反応するように細工したからね。」
目の前のハクラは本物で、札が差すのはニセモノのハクラの方角だと気付くと一重はその札をしまい、偽ハクラの方角へと歩みを進めようとする。それをハクラが許すはずもなく、すぐに止められた。
「ダメだ。」
「何を隠しているか言ったら、あんたのいう通りにおとなしくしてあげる。」
「嘘だな。この話を聞くとお前さんは絶対にあいつの方へいく。」
「誰か他にいるのね。”人間”が。」
その答えにハクラは目を見開き、一重に近づく。
「思い出してきているのか?」
「さっぱり分からないわ。でも”私以外の誰か”が、戦っているのは分かったわ。」
一重は自分の記憶に確信を持ち、すぐに札の方角へと向かおうとする。
「どうしても、行くのか?」
「誰かはわからない。でも誰かが私の代わりに戦ってるなら私はそれを手伝う義務がある。だって、ここは私の愛した町だから。」
ハクラはそんな一重をそれでも止めようと立ちはだかる。
「どきなさいよ。」
「ムリだね。お前さんが行っても足手まといになるだけだ。」
「それでも、一人よりは二人でやった方がいいわよね?どれだけ、私があいつよりも劣っていようと、私はあいつに借りがある。」
一重は激しくなる頭痛にうずくまるが、札の方角へとそれでも向かおうと足を動かす。
「我は、そんなお前さんが好きだよ。」
ハクラは一重のその姿にしびれを切らしたのか、後頭部を突く。
すると、一重の欠けていた記憶がよみがえり、辻褄がぴたりと合っていった。
「そう……だったわね。」
「一重?」
「あいつは一発ぶん殴らないといけないわね………ほら、あんたも行くのよ。」
ハクラの首根っこを捕まえると一重は空を飛ぶ札を足につけ、札の示す、帝京とは真逆の方向へと飛んでいった。その姿を見届けたのは神社の魔族たちだった。
「あ~あ、行っちゃった。」
「そんな心配は不要でありんすよ。」
「でも俺ら、また怒られんじゃん。」
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