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土傀儡 2
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前回のあらすじ
神代山をシンボルにする町、神代町。
凄腕猟師さんたちが集まっていると有名になったりもしたが、今は以前のような活気はなくなっていた。
その町で代々、神代山を守ってきた式守家の少女がいた。
学校で馴染めずにいる式守 優菜は明日が休みなのもあり、金曜日に学校を休んで山のパトロールに向かった
その夜、黄色い光がぽつんと敷地内で光っているのに気づく。恐る恐るテントを覗くと干からびた三人の男性の真ん中に異様な色気を放つ女性が一人。
その色気に当てられ襲われた優菜は男性たちと同じ干物にされるかと覚悟したその時、神の使いを自称する青年 布田龍兎と出会う。
そして、その少年を小屋まで連れて行く途中である。
────────────
「神の使い?」
その聞きなれない言葉をオウム返しで聞き返す。
私と同い年か年上の少年か青年は得意そうにうなずく。
片目が隠れるような髪型で白く綺麗な髪の毛。そして、緋色の瞳、少し凹凸のある顔は最初はどこかの国とのハーフかなと思ったが、生粋の日本人らしい。
正直、とても怪しい。髪の色とかしゃべり方とか、何より、「神の使い」を自称するところとか。
ただ、その話は一旦置いておいて……
「私たちってどこかで会いましたっけ?」
こんな目立つ容姿に言動。簡単に忘れたりはしないはずだが………
この人はなぜ私の名前を知っているのだろうか?
「いや?どこでもあってないし、何なら、これが初対面。」
何か問題でも?とでも言いたそうな顔で爽やかに言い切る。
「それなら、なおさらおかしいですよね?なんで私の名前知ってるんですか?」
まさか不審者か。と思ったその時、またしても意味の分からないこと言い出す。
「そりゃ、キビナの孫だからな。下調べは完璧よ。」
「誰ですかその人。」
ホントに誰だその人。
私のその言葉に龍兎さんは慌た様子で早口になる。
「いや、お前のおじいさんだよ。そっか!現代っ子には正式な名称で言わないとダメか。祖父だよ祖父。」
首を傾げ、眉をひそめているであろう私の顔を見た龍兎さんも同じように眉をひそめる。
「おじ…祖父に当たる人の名前、キビナさんだよね?」
キビナ、キビナ……どこかで、誰かから聞いたような……?
印象に残っているおじいちゃんの昔話を思い出してみる。
むかしむかし……どんな的にでも正確に弾を当てる凄腕猟師のキビナさんがいましたとさ…………
あ。
そして、唐突に思い出す。
「それ、ひぃひぃおじいちゃんだと思います。」
おじいちゃんから聞いていたひぃひぃおじいちゃんの話。
どんな的も、百発百中の腕前で打ち抜いた伝説を持つひぃひぃおじいちゃんのキビナさん。
なんで、ひぃひぃおじいちゃんを呼び捨てにできるの?
「ひぃひぃおじいちゃんってことは、玄孫ってことか……今、何時代?」
「何時代って、平成28年ですけど……」
「うっひゃぁなんか年号がかわってら~時間って思ったよりも早いね~」
この人本当に神の使いなのかな?
先ほどのことも思い出す。現実離れしたその動きと不思議な力。
私は今、自分の見ている人、記憶を否定したくてたまらないでいた。
どうか、これは夢であってほしいとも思っている。
「れ、歴史や、あなたの言葉ではまだ信じることはできません。神の使いである証拠はあるんですか?」
「え~これだけ言って証拠?ん~証拠ね~」
山で利用している式守の小屋へつくや否や、龍兎さんは射撃訓練場の真ん中に走っていった。
見渡して「懐かしい」や、「ここはこうで、俺はやめとけって言ったんだけどな~」などと大声で勝手に思い出を語り始める。
この感覚を否定したくて仕方のない私は短く深呼吸すると龍兎さんを追うように射撃訓練場へ向かう。
そして、私の到着と同時に龍兎さんは訓練場の真ん中で仁王立ちする。
何をするつもりだろう。
「見てて~!!」
大きく手を振り、龍兎さんは手を虚空に構える。
ふと、思い出す。
昨日投擲して拾った”西洋風の剣”がない。
「創造:ブロードソード」
言葉と共に現れたのは、昨日女性の顔面に投擲した剣だった。
「一体、どこから?」
「虚空から。」
きっぱりとドヤ顔で言うと、こちらの反応を待っている。
私が固まっていると、龍兎さんはまだ信じられないかというような顔で剣を空中へと放り出す。
すると、剣は桜の花弁のようにひらひらと宙へ舞って行き、虚空へと消えていった。
消え去った花弁を目で追い終わると龍兎さんと目があった。
「他には何かやってほしい?」
何食わぬ顔でそんなことを言うもんだから、他にも何か頼もうかと考えたが、どうにもこの非現実的な現実を受け入れている私がいた。というか、すでに受けていていたのかもしれない。
「えっ…と。十分だと思います。」
というか、受け入れるしかない。
ここまで冷静でいられるのも昨夜のテントの一件があってそこである程度の驚きは体験したのでおそらくもう、これ以上のことが起ころうが冷静に対処できるだろう。
私と龍兎さんは小屋へ入り、先ほどのこと、なぜ龍兎さんがここに来たのか説明を受けた。
七つの大罪、その魔族が次元を超えて何やら、悪だくみをしていること。
その途中、逃げた魔族を追ってこの神代町へ来た事。たまたま襲われている私を見つけたこと。
「そうなんですね……」
「冷静なのな。一応、今、世界の危機よ?」
「なぜですか?」
「魔族たちは魂を集めて何か大がかりなことを企てているらしい。それ自体はもちろん危ないんでけど、その過程もまぁまぁ危ないわけよ。」
「と、言いますと?」
「簡単な話。別世界の概念が移動すると世界のルールや均衡が変わったり、崩れたりしちゃうんよ。ルールが変わったら、また、別のルールが増える。それを繰り返すと世界は狂いながら、滅んでいくわけ。」
本当にゆっくりで知らないうちだがな、と龍兎さんは言葉を付け足しながら、ぬるくなったお茶で唇を湿らせる程度に飲む。
「それなら、早く探しに行かないといけないんじゃ………」
「そうだな。てか、もういるみたいだし。」
首をかしげる私をよそに龍兎さんはよいしょとゆっくり腰を持ち上げ、小屋を出る。
私も装備を整えて慌てて後を追う。
外に出ると、山の下の方に怪しげな霧がかかっているのを見つける。
龍兎さんはそのまま歩いて行き、霧の中を進んでいった。
私ははぐれないように小走りで龍兎さんの背中を追いかける。
数分歩き、やっと追いついたと思ったが龍兎さんは突然足を止める。
勢いあまって私は龍兎さんの背中へ鼻をぶつけた。
「いったぁ…もう、急に止まらないでください。」
そして、殺気立つ龍兎さんの背中で私は周囲の異様な気配に思わず、龍兎さんの背中を守るように背中合わせの体勢になった。
「来るぞ。」
その言葉よりもコンマ一秒先に影が私たちに襲い掛かってきた。
龍兎さんが私の首根っこを引っ張り、間一髪でその攻撃はよける事ができた。
私のいた位置にはもくもくと土煙が上がっている。土煙が晴れ、影の正体があらわとなる。
大きな黒い手に生えそろった凹凸の鋭い爪。無機質な顔面には赤く光る瞳。その無機質な感じのせいか殺気が強く伝わってくる。半分が溶けた人狼ともとれる姿。まろび出た土を集めて溶けた半顔へ塗りたくり形を再生させると、犬歯をむき出しに怒りの表情を浮かべ、私たちを睨む付ける。
「こいつらは?」
「あいつの作った土人形。名前を土傀儡。攻撃力、瞬発力、など基本的な身体能力はあいつと全く同じだから、気ぃ付けろ。」
震え気味の体に気合を入れ、私は銃を構える。
そして、向かってきた土傀儡に躊躇なく引き金を弾く。
弾丸は土傀儡の眉間へ命中し、土傀儡の顔面は半壊する。
だが、傀儡は半壊したのにも関わらす、こちらへ攻撃を仕掛けてくる。
何度も頭を打ち抜くが、傀儡は弱る様子がない。私は逃げるように龍兎さんの方へ走る。
龍兎さんはすぐに気づき、半壊した傀儡を一刀両断して動けない状態にした。
片足、片腕では立ち上がれず、傀儡は倒れた場所でじたばたしている。
「銃で狙うなら、足にしとけ。上半身とか頭打ち抜いても結果同じだ。」
アドバイスを聞き、私は照準を足へ固定する。
銃の取り扱いに手慣れていないと今からする業できない。
式守家に生まれたからには、男女分け隔てなく、ひいきなく、銃の取り扱いを教え込まれる。
そのおかげで私には他の式守の人が真似できない業を身につけた。
実際、これの正式な名称は分からない。ただ、当時中学二年生の中二病真っ只中の私はこの業にこう命名した。実はひそかに気に入っていたりする。
「自在照準固定狙撃」
襲い来る土のバケモノの足を間髪入れず、さらに全て同じように一寸の狂いもなく順番に打ち抜いていく。
痛覚、感覚、意識、そんなものはないのか土傀儡は打ち抜かれた足を気にも留めず、這いつくばりながら、私のところへ向かってくる。一定の動き、行動はまさに”傀儡”なので、私は恐怖心が薄れていき、射撃訓練の的を打ち抜くように引き金を弾いてゆき、次々に戦闘不能にしていく。
「さっすが~」
「それほどでも。」
そして、数の暴力に対し、龍兎さんは目にも止まらぬ速さで次々に傀儡を細切れにする。
気が付くと辺りは暗くなり、視界状況が悪くなっていた。時計を確認したが、まだ昼前だった。
視界の悪い状況に優しい光が視界を少しだけ安定させてくれる。光を追うと木々の隙間からこぼれるのは大きな満月の光だった。その満月に少し見とれ、油断していると龍兎さんは私の肩を軽く叩き意識を先頭へと引き戻した。
「だまされるな。これはあいつの作った固有結界の一種だ。時間は………」
「昼前ですよね?さっき確認しました。」
「正解。んじゃ、戦闘に戻るぞ」
私と龍兎さんは次々に土傀儡を切って打ち抜き、切っては打ち抜きを繰り返し、ようやく、森一面の土傀儡たちをどうにか全部の制圧に成功した。そして、開けた場所にいるのに気づき、影が私たちへ重なる。影の正体を見るため私たちは満月を見上げる。そこには満月を背景に例の女性?魔族?とやらが余裕の笑みを浮かべていた。笑みを浮かべてはいるが、昨夜あった時とは殺気の強さが格段に違う。
「これは……やっと、本物だな。見つけたぜ?七つの大罪 色欲の魔族。クスィ=アロンナ。」
クスィ=アロンナと呼ばれる魔族はさらに口角を上げ、頬を高揚させる。
「あらぁ♡やっと来てくれたぁ♡もう準備はできてるから……来て?♡」
その真っ赤な瞳に私たちは一層気を引き締め、それぞれ武器を構えた。
色欲の章 土傀儡2
神代山をシンボルにする町、神代町。
凄腕猟師さんたちが集まっていると有名になったりもしたが、今は以前のような活気はなくなっていた。
その町で代々、神代山を守ってきた式守家の少女がいた。
学校で馴染めずにいる式守 優菜は明日が休みなのもあり、金曜日に学校を休んで山のパトロールに向かった
その夜、黄色い光がぽつんと敷地内で光っているのに気づく。恐る恐るテントを覗くと干からびた三人の男性の真ん中に異様な色気を放つ女性が一人。
その色気に当てられ襲われた優菜は男性たちと同じ干物にされるかと覚悟したその時、神の使いを自称する青年 布田龍兎と出会う。
そして、その少年を小屋まで連れて行く途中である。
────────────
「神の使い?」
その聞きなれない言葉をオウム返しで聞き返す。
私と同い年か年上の少年か青年は得意そうにうなずく。
片目が隠れるような髪型で白く綺麗な髪の毛。そして、緋色の瞳、少し凹凸のある顔は最初はどこかの国とのハーフかなと思ったが、生粋の日本人らしい。
正直、とても怪しい。髪の色とかしゃべり方とか、何より、「神の使い」を自称するところとか。
ただ、その話は一旦置いておいて……
「私たちってどこかで会いましたっけ?」
こんな目立つ容姿に言動。簡単に忘れたりはしないはずだが………
この人はなぜ私の名前を知っているのだろうか?
「いや?どこでもあってないし、何なら、これが初対面。」
何か問題でも?とでも言いたそうな顔で爽やかに言い切る。
「それなら、なおさらおかしいですよね?なんで私の名前知ってるんですか?」
まさか不審者か。と思ったその時、またしても意味の分からないこと言い出す。
「そりゃ、キビナの孫だからな。下調べは完璧よ。」
「誰ですかその人。」
ホントに誰だその人。
私のその言葉に龍兎さんは慌た様子で早口になる。
「いや、お前のおじいさんだよ。そっか!現代っ子には正式な名称で言わないとダメか。祖父だよ祖父。」
首を傾げ、眉をひそめているであろう私の顔を見た龍兎さんも同じように眉をひそめる。
「おじ…祖父に当たる人の名前、キビナさんだよね?」
キビナ、キビナ……どこかで、誰かから聞いたような……?
印象に残っているおじいちゃんの昔話を思い出してみる。
むかしむかし……どんな的にでも正確に弾を当てる凄腕猟師のキビナさんがいましたとさ…………
あ。
そして、唐突に思い出す。
「それ、ひぃひぃおじいちゃんだと思います。」
おじいちゃんから聞いていたひぃひぃおじいちゃんの話。
どんな的も、百発百中の腕前で打ち抜いた伝説を持つひぃひぃおじいちゃんのキビナさん。
なんで、ひぃひぃおじいちゃんを呼び捨てにできるの?
「ひぃひぃおじいちゃんってことは、玄孫ってことか……今、何時代?」
「何時代って、平成28年ですけど……」
「うっひゃぁなんか年号がかわってら~時間って思ったよりも早いね~」
この人本当に神の使いなのかな?
先ほどのことも思い出す。現実離れしたその動きと不思議な力。
私は今、自分の見ている人、記憶を否定したくてたまらないでいた。
どうか、これは夢であってほしいとも思っている。
「れ、歴史や、あなたの言葉ではまだ信じることはできません。神の使いである証拠はあるんですか?」
「え~これだけ言って証拠?ん~証拠ね~」
山で利用している式守の小屋へつくや否や、龍兎さんは射撃訓練場の真ん中に走っていった。
見渡して「懐かしい」や、「ここはこうで、俺はやめとけって言ったんだけどな~」などと大声で勝手に思い出を語り始める。
この感覚を否定したくて仕方のない私は短く深呼吸すると龍兎さんを追うように射撃訓練場へ向かう。
そして、私の到着と同時に龍兎さんは訓練場の真ん中で仁王立ちする。
何をするつもりだろう。
「見てて~!!」
大きく手を振り、龍兎さんは手を虚空に構える。
ふと、思い出す。
昨日投擲して拾った”西洋風の剣”がない。
「創造:ブロードソード」
言葉と共に現れたのは、昨日女性の顔面に投擲した剣だった。
「一体、どこから?」
「虚空から。」
きっぱりとドヤ顔で言うと、こちらの反応を待っている。
私が固まっていると、龍兎さんはまだ信じられないかというような顔で剣を空中へと放り出す。
すると、剣は桜の花弁のようにひらひらと宙へ舞って行き、虚空へと消えていった。
消え去った花弁を目で追い終わると龍兎さんと目があった。
「他には何かやってほしい?」
何食わぬ顔でそんなことを言うもんだから、他にも何か頼もうかと考えたが、どうにもこの非現実的な現実を受け入れている私がいた。というか、すでに受けていていたのかもしれない。
「えっ…と。十分だと思います。」
というか、受け入れるしかない。
ここまで冷静でいられるのも昨夜のテントの一件があってそこである程度の驚きは体験したのでおそらくもう、これ以上のことが起ころうが冷静に対処できるだろう。
私と龍兎さんは小屋へ入り、先ほどのこと、なぜ龍兎さんがここに来たのか説明を受けた。
七つの大罪、その魔族が次元を超えて何やら、悪だくみをしていること。
その途中、逃げた魔族を追ってこの神代町へ来た事。たまたま襲われている私を見つけたこと。
「そうなんですね……」
「冷静なのな。一応、今、世界の危機よ?」
「なぜですか?」
「魔族たちは魂を集めて何か大がかりなことを企てているらしい。それ自体はもちろん危ないんでけど、その過程もまぁまぁ危ないわけよ。」
「と、言いますと?」
「簡単な話。別世界の概念が移動すると世界のルールや均衡が変わったり、崩れたりしちゃうんよ。ルールが変わったら、また、別のルールが増える。それを繰り返すと世界は狂いながら、滅んでいくわけ。」
本当にゆっくりで知らないうちだがな、と龍兎さんは言葉を付け足しながら、ぬるくなったお茶で唇を湿らせる程度に飲む。
「それなら、早く探しに行かないといけないんじゃ………」
「そうだな。てか、もういるみたいだし。」
首をかしげる私をよそに龍兎さんはよいしょとゆっくり腰を持ち上げ、小屋を出る。
私も装備を整えて慌てて後を追う。
外に出ると、山の下の方に怪しげな霧がかかっているのを見つける。
龍兎さんはそのまま歩いて行き、霧の中を進んでいった。
私ははぐれないように小走りで龍兎さんの背中を追いかける。
数分歩き、やっと追いついたと思ったが龍兎さんは突然足を止める。
勢いあまって私は龍兎さんの背中へ鼻をぶつけた。
「いったぁ…もう、急に止まらないでください。」
そして、殺気立つ龍兎さんの背中で私は周囲の異様な気配に思わず、龍兎さんの背中を守るように背中合わせの体勢になった。
「来るぞ。」
その言葉よりもコンマ一秒先に影が私たちに襲い掛かってきた。
龍兎さんが私の首根っこを引っ張り、間一髪でその攻撃はよける事ができた。
私のいた位置にはもくもくと土煙が上がっている。土煙が晴れ、影の正体があらわとなる。
大きな黒い手に生えそろった凹凸の鋭い爪。無機質な顔面には赤く光る瞳。その無機質な感じのせいか殺気が強く伝わってくる。半分が溶けた人狼ともとれる姿。まろび出た土を集めて溶けた半顔へ塗りたくり形を再生させると、犬歯をむき出しに怒りの表情を浮かべ、私たちを睨む付ける。
「こいつらは?」
「あいつの作った土人形。名前を土傀儡。攻撃力、瞬発力、など基本的な身体能力はあいつと全く同じだから、気ぃ付けろ。」
震え気味の体に気合を入れ、私は銃を構える。
そして、向かってきた土傀儡に躊躇なく引き金を弾く。
弾丸は土傀儡の眉間へ命中し、土傀儡の顔面は半壊する。
だが、傀儡は半壊したのにも関わらす、こちらへ攻撃を仕掛けてくる。
何度も頭を打ち抜くが、傀儡は弱る様子がない。私は逃げるように龍兎さんの方へ走る。
龍兎さんはすぐに気づき、半壊した傀儡を一刀両断して動けない状態にした。
片足、片腕では立ち上がれず、傀儡は倒れた場所でじたばたしている。
「銃で狙うなら、足にしとけ。上半身とか頭打ち抜いても結果同じだ。」
アドバイスを聞き、私は照準を足へ固定する。
銃の取り扱いに手慣れていないと今からする業できない。
式守家に生まれたからには、男女分け隔てなく、ひいきなく、銃の取り扱いを教え込まれる。
そのおかげで私には他の式守の人が真似できない業を身につけた。
実際、これの正式な名称は分からない。ただ、当時中学二年生の中二病真っ只中の私はこの業にこう命名した。実はひそかに気に入っていたりする。
「自在照準固定狙撃」
襲い来る土のバケモノの足を間髪入れず、さらに全て同じように一寸の狂いもなく順番に打ち抜いていく。
痛覚、感覚、意識、そんなものはないのか土傀儡は打ち抜かれた足を気にも留めず、這いつくばりながら、私のところへ向かってくる。一定の動き、行動はまさに”傀儡”なので、私は恐怖心が薄れていき、射撃訓練の的を打ち抜くように引き金を弾いてゆき、次々に戦闘不能にしていく。
「さっすが~」
「それほどでも。」
そして、数の暴力に対し、龍兎さんは目にも止まらぬ速さで次々に傀儡を細切れにする。
気が付くと辺りは暗くなり、視界状況が悪くなっていた。時計を確認したが、まだ昼前だった。
視界の悪い状況に優しい光が視界を少しだけ安定させてくれる。光を追うと木々の隙間からこぼれるのは大きな満月の光だった。その満月に少し見とれ、油断していると龍兎さんは私の肩を軽く叩き意識を先頭へと引き戻した。
「だまされるな。これはあいつの作った固有結界の一種だ。時間は………」
「昼前ですよね?さっき確認しました。」
「正解。んじゃ、戦闘に戻るぞ」
私と龍兎さんは次々に土傀儡を切って打ち抜き、切っては打ち抜きを繰り返し、ようやく、森一面の土傀儡たちをどうにか全部の制圧に成功した。そして、開けた場所にいるのに気づき、影が私たちへ重なる。影の正体を見るため私たちは満月を見上げる。そこには満月を背景に例の女性?魔族?とやらが余裕の笑みを浮かべていた。笑みを浮かべてはいるが、昨夜あった時とは殺気の強さが格段に違う。
「これは……やっと、本物だな。見つけたぜ?七つの大罪 色欲の魔族。クスィ=アロンナ。」
クスィ=アロンナと呼ばれる魔族はさらに口角を上げ、頬を高揚させる。
「あらぁ♡やっと来てくれたぁ♡もう準備はできてるから……来て?♡」
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