2 / 26
土傀儡
しおりを挟む
神代町。
シンボルが「神代山」という大きな山という以外に何の特徴もない町。
以前は、凄腕の猟師さんなんかが多くて一時期話題にもなったが、それはそれで迷惑にもなった。
シンボルの「神代山」は「式守家」という人たちが管理していて今でも一般人は山の中にすら入れてもらえない
そして、そんな式守家に生まれたのが、私、優菜である。祖父の武信おじいちゃんと一緒に
山の警備活動をしている。父曰く、おじいちゃんは本当は男の子が欲しかったそうなんだけど、
私が初孫なのもあってか今は、何も言われていないそうだ。
山の警備のため、学校には通っているものの、おじいちゃんの歳が歳なので、時々学校を休んでいる。
そのせいで、私はクラスから少々…いや、だいぶ浮いた存在になっている。
別に、浮いているのが嫌とかそんなことは気にしたことはないけど、友達は作りたい・・・と思っている。
思っているのだが・・・
────────────
6/6(金)夕方6時──神代山。
私は、明日が休みなのもあり、一日中山の警備をするべく、学校を休んだ。学校を休むのは大体金曜日が多い。おじいちゃんもそれを承諾してくれている。もちろん毎週休んだら周りもよくは思ってくれないはずなので、学校自体はあんまり休まないようにしている。
山の警備はどんなことをしているのかというと・・・その前に、「神代山」がどうして「一般人がはいれない山になっているか」から説明しようと思う。
神代山は簡単に言えば「聖域」「禁足地」というものに分類されている。
その昔、神代 桃源という武将が、この地に生まれ、一時期は町一つを仕切る大名までになったとまで言われている。そして、桃源は「大きなものには神が宿る」と考え、出身である村の大きな山を神として崇め奉り、戦に行く前などは、必ずここにきて、手を合わせていたそうだ。そんな祈りが通じたのか、戦では大活躍をし大名までになった。
そして、死にゆく前に桃源が残した言葉が『あの山には神が宿っている。誰にもおかされてはならぬ。更生に語りつがれる山ぞ。必ず、未来永劫、守ってくれ。』と言われたのが、私たちのご先祖様らしい。
ところが、テレビでこの町が特集されたとき、いわゆる「バズりたい」人たちのせいで、ごみ問題が出てきた。そもそも、入ってはいけない場所だと言っているのになぜ来るのかが理解できなかった。
今でも一般人がはいろうとするので山の中腹付近にある見張り矢倉から注意喚起をしている。
そもそも、整備されてない山なので道などない。
夕日がだんだんと沈むにつれ街灯がつき始める。ビルの多いところになるにつれ、美しい夜景が現れていった
そんな中、山の中に黄色い光がぽつんと一つ。昼間もずっと監視していたはずなのにあれはきっとテントの明かりだろう。放送すれば、町中に響き渡り迷惑にもなるので、私は矢倉を降り、さらに山を下る。
黄色い明りがだんだんと近くなっていき、虫の鳴き声と同時にテントからも音が聞こえる。女の人の喘ぎ声?のようなものが聞こえてくる。生々しい。というか、キャンプに来てまでヤるとは・・・世の中いろんな人がいたものだ。私は恐る恐るテントの入り口をめくる。
生臭いむせ返るような臭い。熱気が頬を撫で、身体全体の力が一瞬だけ緩む。眼前の光景で緩んだ力は一気に元に戻り、すぐさま臨戦態勢に入る。
床に転がる男性。ヤることをヤろうとしていたのか、上半身が裸である。だが、様子がおかしい。人の肌というのは、ふつうふっくらとしているものだ。肌の色は違えど皆みずみずしいはずだが、倒れている男性はまるで魚の干物のような状態で、泡を吹きながら仰向けに倒れている。眼球からも水分が抜けているようで、植物の種のようにになっている。そして、男性は一人ではなく三人。同じような状態で全く息をしているようには見えなかった。
「・・・っ!」
こちらに気づいた女性は、ニコリと微笑み歩みを進めてくる。女である私はその引き寄せられるような表情、しぐさに恋心とは別の感情に襲われる。
「あら♡意外と堕ちるのが早そうね♡私ってば、女の子もイケちゃうのよね♡」
完全に力が緩み、腕をだらりと下へ降ろしてしまう。吸い込まれそうな目をずっと見つめながら、次第に近づく顔に唇を尖らせる。相手の手は胸と股ぐらに入ってくる。心地のいい感覚に包まれ飲み込まれそうになったその時・・・
「俺とも遊んでよ。」
私の真後ろ、そこから男の声が聞こえた。それと同時に不思議な感覚から覚め、我に返る。後ろを振り向く瞬間、何か長い塊が私の頬を綺麗に通り過ぎた。その横を通り過ぎる感覚、風圧と共に、肉と骨のつぶれる音が聞こえた。再び女性の方を振り向くと、女性の顔面に映画やアニメなんかで見る西洋風の刀剣が刺さっているのが見えた。返り血と共にテントの中は赤く染まる。いまだ止まるのを知らない鮮血は私の頬へと跳ねる。
「・・・えっ?」
人間驚いたらホントにそんなリアクションしかできないんだなと分かった。しりもちをつきその場にへたり込んでいると、刀剣を投げたであろうメカクレの白髪の20代前半もしくはもう少し若い青年が歩いてきた。
「大丈夫か?」
こちらにしゃがみこんできて顔を見る。
「あ、あれ・・・」
「あれは、今気にしなくてもいい。死にたくても死ねねぇから、それよりも怪我はねぇか?」
「は、はい大丈夫です。」
それならよかった。と青年はテントの中へ入っていき剣と抜き取る。さっきよりも、グロイことになるのかと思っていたら、鮮血はだんだんと茶色になっていき次第にテントのなかは泥臭くなっていくのがわかった。
「また、外れか・・・」
青年は、死体?を確認してそんなことを言う。そして、干からびた男性三人を綺麗に寝かせて再びこちらへと向かって歩く。手を伸ばしてもらい立ったはいいものの、何を聞いていいかわからず、ただボウと立っている自分がいた。
「ん?もしかして、枯れ専?好きに使っていいと思うけど病気とかやばそうじゃね?」
「枯れ専ってそういう意味じゃないと思いますけど!」
「お、よかった。意識はあったみたいだな。」
「あなた、一体なにものなんですか?」
「いい質問だ。式守 優菜さん。俺はね、神様の使い、修正班。布田 龍兎だ。よろしくな。」
これの挨拶を皮切りに私の長いようで短い一日が始まった。
色欲の章 土傀儡
シンボルが「神代山」という大きな山という以外に何の特徴もない町。
以前は、凄腕の猟師さんなんかが多くて一時期話題にもなったが、それはそれで迷惑にもなった。
シンボルの「神代山」は「式守家」という人たちが管理していて今でも一般人は山の中にすら入れてもらえない
そして、そんな式守家に生まれたのが、私、優菜である。祖父の武信おじいちゃんと一緒に
山の警備活動をしている。父曰く、おじいちゃんは本当は男の子が欲しかったそうなんだけど、
私が初孫なのもあってか今は、何も言われていないそうだ。
山の警備のため、学校には通っているものの、おじいちゃんの歳が歳なので、時々学校を休んでいる。
そのせいで、私はクラスから少々…いや、だいぶ浮いた存在になっている。
別に、浮いているのが嫌とかそんなことは気にしたことはないけど、友達は作りたい・・・と思っている。
思っているのだが・・・
────────────
6/6(金)夕方6時──神代山。
私は、明日が休みなのもあり、一日中山の警備をするべく、学校を休んだ。学校を休むのは大体金曜日が多い。おじいちゃんもそれを承諾してくれている。もちろん毎週休んだら周りもよくは思ってくれないはずなので、学校自体はあんまり休まないようにしている。
山の警備はどんなことをしているのかというと・・・その前に、「神代山」がどうして「一般人がはいれない山になっているか」から説明しようと思う。
神代山は簡単に言えば「聖域」「禁足地」というものに分類されている。
その昔、神代 桃源という武将が、この地に生まれ、一時期は町一つを仕切る大名までになったとまで言われている。そして、桃源は「大きなものには神が宿る」と考え、出身である村の大きな山を神として崇め奉り、戦に行く前などは、必ずここにきて、手を合わせていたそうだ。そんな祈りが通じたのか、戦では大活躍をし大名までになった。
そして、死にゆく前に桃源が残した言葉が『あの山には神が宿っている。誰にもおかされてはならぬ。更生に語りつがれる山ぞ。必ず、未来永劫、守ってくれ。』と言われたのが、私たちのご先祖様らしい。
ところが、テレビでこの町が特集されたとき、いわゆる「バズりたい」人たちのせいで、ごみ問題が出てきた。そもそも、入ってはいけない場所だと言っているのになぜ来るのかが理解できなかった。
今でも一般人がはいろうとするので山の中腹付近にある見張り矢倉から注意喚起をしている。
そもそも、整備されてない山なので道などない。
夕日がだんだんと沈むにつれ街灯がつき始める。ビルの多いところになるにつれ、美しい夜景が現れていった
そんな中、山の中に黄色い光がぽつんと一つ。昼間もずっと監視していたはずなのにあれはきっとテントの明かりだろう。放送すれば、町中に響き渡り迷惑にもなるので、私は矢倉を降り、さらに山を下る。
黄色い明りがだんだんと近くなっていき、虫の鳴き声と同時にテントからも音が聞こえる。女の人の喘ぎ声?のようなものが聞こえてくる。生々しい。というか、キャンプに来てまでヤるとは・・・世の中いろんな人がいたものだ。私は恐る恐るテントの入り口をめくる。
生臭いむせ返るような臭い。熱気が頬を撫で、身体全体の力が一瞬だけ緩む。眼前の光景で緩んだ力は一気に元に戻り、すぐさま臨戦態勢に入る。
床に転がる男性。ヤることをヤろうとしていたのか、上半身が裸である。だが、様子がおかしい。人の肌というのは、ふつうふっくらとしているものだ。肌の色は違えど皆みずみずしいはずだが、倒れている男性はまるで魚の干物のような状態で、泡を吹きながら仰向けに倒れている。眼球からも水分が抜けているようで、植物の種のようにになっている。そして、男性は一人ではなく三人。同じような状態で全く息をしているようには見えなかった。
「・・・っ!」
こちらに気づいた女性は、ニコリと微笑み歩みを進めてくる。女である私はその引き寄せられるような表情、しぐさに恋心とは別の感情に襲われる。
「あら♡意外と堕ちるのが早そうね♡私ってば、女の子もイケちゃうのよね♡」
完全に力が緩み、腕をだらりと下へ降ろしてしまう。吸い込まれそうな目をずっと見つめながら、次第に近づく顔に唇を尖らせる。相手の手は胸と股ぐらに入ってくる。心地のいい感覚に包まれ飲み込まれそうになったその時・・・
「俺とも遊んでよ。」
私の真後ろ、そこから男の声が聞こえた。それと同時に不思議な感覚から覚め、我に返る。後ろを振り向く瞬間、何か長い塊が私の頬を綺麗に通り過ぎた。その横を通り過ぎる感覚、風圧と共に、肉と骨のつぶれる音が聞こえた。再び女性の方を振り向くと、女性の顔面に映画やアニメなんかで見る西洋風の刀剣が刺さっているのが見えた。返り血と共にテントの中は赤く染まる。いまだ止まるのを知らない鮮血は私の頬へと跳ねる。
「・・・えっ?」
人間驚いたらホントにそんなリアクションしかできないんだなと分かった。しりもちをつきその場にへたり込んでいると、刀剣を投げたであろうメカクレの白髪の20代前半もしくはもう少し若い青年が歩いてきた。
「大丈夫か?」
こちらにしゃがみこんできて顔を見る。
「あ、あれ・・・」
「あれは、今気にしなくてもいい。死にたくても死ねねぇから、それよりも怪我はねぇか?」
「は、はい大丈夫です。」
それならよかった。と青年はテントの中へ入っていき剣と抜き取る。さっきよりも、グロイことになるのかと思っていたら、鮮血はだんだんと茶色になっていき次第にテントのなかは泥臭くなっていくのがわかった。
「また、外れか・・・」
青年は、死体?を確認してそんなことを言う。そして、干からびた男性三人を綺麗に寝かせて再びこちらへと向かって歩く。手を伸ばしてもらい立ったはいいものの、何を聞いていいかわからず、ただボウと立っている自分がいた。
「ん?もしかして、枯れ専?好きに使っていいと思うけど病気とかやばそうじゃね?」
「枯れ専ってそういう意味じゃないと思いますけど!」
「お、よかった。意識はあったみたいだな。」
「あなた、一体なにものなんですか?」
「いい質問だ。式守 優菜さん。俺はね、神様の使い、修正班。布田 龍兎だ。よろしくな。」
これの挨拶を皮切りに私の長いようで短い一日が始まった。
色欲の章 土傀儡
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる