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EMG10:怖いけど、怖いままは嫌だ
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「また、お会いしましたね。」
男性に声をかけられ、視線を向ける。そこには昨日助けた男性がいた。肩で息をしてはいるものの昨日よりも顔色は良い方だ。
「どうも、昨日はあの後大丈夫でしたか?」
「えぇ、おかげで今日は筋肉痛をしてるんです。」
「それなのに、そんな爽やかな顔を……」
「はい、これでいいんです。筋肉痛している間に筋肉をいじめていればもっと筋肉が着きますから。」
それはどうも正しいとは言えなかったが、愛想笑いでどうにか誤魔化す。僕がジムへ入ったら男性もジムへ続いて入ってくる。このまま各々やるよりは一緒にやった方が色々と聞けるしいいな。
「一緒にします?」
「いいですね。一緒にやりましょう。」
そこから、まずランニングをして腹筋、懸垂、ベンチプレスと僕と男性は一緒にトレーニングをした。一通り汗を流して水分補給をする。
「そうだ、お名前。聞いてませんでしたよね?」
「ん?そういえばそうでしたね。俺は六代 伊吹って言います。」
その名前にピンと来た。この人はやっぱり元MDCAだ。氷室隊長が嬉々と話す姿を思い出す。
「あなたが、六代さんでしたか……」
「俺のことを知ってるんです?」
「僕、MDCAの一・三隊の吉田って言います。氷室隊長から時々話を聞いてます。」
瞬間、六代さんは喜んだ様に見えたがすぐにその表情を抑えるように顔をこわばらせる。
「氷室が隊長か…真面目だから大丈夫だと思うが、そうか一・三隊か……」
「何か?」
「いや、奇人変人が集まっている隊だから少し昔を思い出してしまって……はは……」
確か、この人も隊長だったよな……
「ぜひ、話を聞かせてください。」
「いいよ。でもそこまで面白くは語れないから期待しないでくれ……」
そして、六代さんは話を始めた。一・三隊の昔の姿を。今とあまり変わらない様子に僕はその光景を想像する。
「……とまぁ、こんな感じだね。いやぁ、思い出しただけで……思い出した……だけで…」
六代さんは目に涙を溜めてそれをすぐに拭った。
「いやぁ、年取るのは嫌だな。涙もろくなるんだもん。」
「いえ、六代さんは十分に頑張ったと思います。」
そこからも他愛のない会話をしてふと僕は質問してみることにした。
「六代さんはどうしてMDCAに?」
「ん?そうだな…最初は給与がいいから入隊したけど、自然と皆の笑顔の為に平和の為にって思うようになったな。」
やはり、この人は氷室隊長の隊長だった人だ。氷室隊長と全く同じことを言っている。僕は自分の過去の話をして質問をした。
「僕は自分がいつか死ぬんじゃないかって怖いんです。筋トレをしてない時間は身体がだんだんと弱くなっている気さえします。六代さん…恐怖に打ち勝つ方法を教えてください。」
六代さんは視線を一点に集中して考えをまとめているようだ。そして長考の末に口を開いた。
「俺は恐怖ってのは一生克服できないんじゃないかって思ってる。俺だって怖いものはあるが、それを克服できる、しようなんて思ってない……」
そうか……強い人でも恐怖にだけは勝てないんだ。そう思った矢先六代さんは言葉を続ける。
「ただ、いつでも恐怖と向き合っている。仲間を失うのが怖い……死ぬのが怖い……そうやって俺は俺を奮起させる。「なにくそこの野郎」って自分を震え立たせて恐怖の震えを武者震いに変えている。だから、怖いものは怖いでいいと俺は思う。」
言っている意味はあまりわからなかった。でも、「怖いものは怖いでいい」という言葉に僕は励まされたような気がした。
「あ、そろそろ時間だ……それでは六代さん。僕はこれで……」
「あ?あぁそうか挨拶の時間か……俺もそろそろ帰ろうかな。」
そして、僕と六代さんはジムの前で別れた。急いで隊舎へ向かっていると通信が入った。急いで耳に通信機をつけると氷室隊長からの緊急の連絡だった。
『こちら氷室だ。吉田くんか?』
「はい。どうしましたか?」
『朝からすまない。近くで怪人が発生した。我々が向かうまで時間稼ぎをお願いしたい。』
「もちろんです。任せてください。」
『すまないな頼む。きちんと戦闘服に着替えるんだぞ?』
僕は通信を切り懐から武器を取り出してハンマーを持ちながら指定されたブロックへ走った。到着と同時に僕はその光景に驚愕した。触手の怪人が約100名の老若男女を無差別に捕縛し、何か主張をしているのだ。
「人が死ぬぞぉぉ?!さっさと新聞記者のコンドウってやつを連れてこい!!コンドウ!!お前のせいで人が死ぬぞ!?いいのかぁ!?」
苦しんでいる人々は足をバタバタとさせていたり、触手を振りほどこうとしていたりと皆必死に逃げようとしている。こんなに人がいては僕も手出しはできない。ギリギリと歯を鳴らして考えていると口元に何かが伝った。拭ってみるとそれは自分の口から出た血だった。
「こんな時に……」
僕は血を拭き怪人へ突っ込む。怪人は僕に気づかずそのまま体勢を崩し人々を次々に落としていった。
「お前!なにもんだ!!」
「僕はMDCA一・三隊だ。連絡があって君を止めに来た。」
怪人は触手を行動しやすいように自分に巻きつけて殴り掛かってきた。そんな怪人へハンマーを振り下ろすが、怪人は触手で防御しているのか全然効いている様子はない。
「弱い。こんな塊ごときで俺の体に傷一つでもつけられると思ってるのか?」
ハンマーが跳ね返されて距離が離される。
どうしよう。僕の力が通用しない。いや、そもそも、僕の力が弱くなったのか?
ギリギリと歯を鳴らすと先ほどよりも血が出てくる。
「いつもより多い……まさか、僕はここで今日死ぬのか?」
「何か知らんが死にかけの人間に倒されるほど俺は弱くねぇぜ?」
今日、死ぬのか?
いつもより、調子が良かったはずなのに……
怖い、死ぬのが怖い。
嫌だ、死にたくない。
震える足を見て六代さんの言葉を思い出す。
『怖いものは怖いでいい。それと向き合って恐怖の震えを武者震いに変えろ。』
思い切り奥歯を鳴らし、僕は歯を食いしばる。なおも流れる血は口元を赤く染める。
「どうした?来ないのかぁ?」
「僕は、死ぬのが怖い。弱いのが怖い。怪人も怪獣も怖い。」
「何言ってんだ?」
「でも、僕がMDCAである限りこの場で僕以外の血は流させない。」
ハンマーを握る手にも力が入り血がにじむ。怪人は僕が向かってこないのをいいことにヘラヘラ笑って殴り掛かってきた。
「なにくそ……」
僕はその拳をハンマーで受け止める。
「は?」
「なにくそ……この野郎ー!!」
怪人のショック吸収性の触手は僕のハンマーの力に許容をオーバーして空へ舞いながら散り散りになっていった。紫色の液体が僕の真上に降り注ぐ。
「あぁ、これで……」
最後の言葉も言えずに僕は倒れた。
そして、何時間も経った。
あぁ、死んでもこうやって心地いい感触に包まれるんだ。
なら、死ぬのも悪くないな…
いきなりその感触から転げ落ちる。
開かないと思っていた目が開き、目の前に杉山くんが見えた。
「す、杉山くん?」
「そうだけど?なに?二日も寝ておいて……」
「な、なんで……僕は確かに死んだはずじゃ……」
「お前寝ぼけてんね。死んでないし実態もある。ここは隊舎の一・三隊待機室ベッド!他には?」
「いや、何も……」
そして、杉山君は呆れた様子で部屋を出ようとしていたが、途中で止まり振り返る。
「な、なに?」
「お前さ。最近なんかストレスたまるようなことあった?」
「いや、別に……」
「いや、俺が何かしたでもいいから。なんなないわけ?」
「心当たりないな……どうしたの?」
「いや、」実はな……
聞かされたのは僕の口の中の話だった。怪人を倒した後、倒れた僕を運んできた別の隊の人が医官に頼んで口の中を診てもらったそうなのだが、内側、特に頬肉がボロボロで驚いたそうだ。ただ医官曰く、『これ、多分歯ぎしりの延長でこうなってるからストレスのせいだと思うけど…隊長は認識してるのかな?』だと。
そうか、口の中の違和感は頬肉が歯ぎしりで裂けて……でもなんで歯ぎしりなんて……
あ、そうか。
思い出した。
口内炎がずっと違和感で違和感で眠れなかったんだった。僕は杉山くんに申し訳なくなり怒られる覚悟で口を開く。
「口内炎…かも……」
「は?口内炎?それで、眠れんくてストレスで歯ぎしりして頬肉が裂けたってか?それをお前は寿命と勘違いしたと?」
恥ずかしいな。そうだよ。
「悪い……かい?」
「筋肉バカが頭から筋肉抜くぞ!」
杉山くんに肩をパシッと叩かれさらに恥ずかしくなる。杉山くんはとりあえず医官と隊長を呼んでくるから大人しくしてろと言われて僕は小さくなりながら医官と隊長を待った。
EMG10:怖いけど、怖いままは嫌だ
EMG11:常識ゼロ
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「それなのに、そんな爽やかな顔を……」
「はい、これでいいんです。筋肉痛している間に筋肉をいじめていればもっと筋肉が着きますから。」
それはどうも正しいとは言えなかったが、愛想笑いでどうにか誤魔化す。僕がジムへ入ったら男性もジムへ続いて入ってくる。このまま各々やるよりは一緒にやった方が色々と聞けるしいいな。
「一緒にします?」
「いいですね。一緒にやりましょう。」
そこから、まずランニングをして腹筋、懸垂、ベンチプレスと僕と男性は一緒にトレーニングをした。一通り汗を流して水分補給をする。
「そうだ、お名前。聞いてませんでしたよね?」
「ん?そういえばそうでしたね。俺は六代 伊吹って言います。」
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「あなたが、六代さんでしたか……」
「俺のことを知ってるんです?」
「僕、MDCAの一・三隊の吉田って言います。氷室隊長から時々話を聞いてます。」
瞬間、六代さんは喜んだ様に見えたがすぐにその表情を抑えるように顔をこわばらせる。
「氷室が隊長か…真面目だから大丈夫だと思うが、そうか一・三隊か……」
「何か?」
「いや、奇人変人が集まっている隊だから少し昔を思い出してしまって……はは……」
確か、この人も隊長だったよな……
「ぜひ、話を聞かせてください。」
「いいよ。でもそこまで面白くは語れないから期待しないでくれ……」
そして、六代さんは話を始めた。一・三隊の昔の姿を。今とあまり変わらない様子に僕はその光景を想像する。
「……とまぁ、こんな感じだね。いやぁ、思い出しただけで……思い出した……だけで…」
六代さんは目に涙を溜めてそれをすぐに拭った。
「いやぁ、年取るのは嫌だな。涙もろくなるんだもん。」
「いえ、六代さんは十分に頑張ったと思います。」
そこからも他愛のない会話をしてふと僕は質問してみることにした。
「六代さんはどうしてMDCAに?」
「ん?そうだな…最初は給与がいいから入隊したけど、自然と皆の笑顔の為に平和の為にって思うようになったな。」
やはり、この人は氷室隊長の隊長だった人だ。氷室隊長と全く同じことを言っている。僕は自分の過去の話をして質問をした。
「僕は自分がいつか死ぬんじゃないかって怖いんです。筋トレをしてない時間は身体がだんだんと弱くなっている気さえします。六代さん…恐怖に打ち勝つ方法を教えてください。」
六代さんは視線を一点に集中して考えをまとめているようだ。そして長考の末に口を開いた。
「俺は恐怖ってのは一生克服できないんじゃないかって思ってる。俺だって怖いものはあるが、それを克服できる、しようなんて思ってない……」
そうか……強い人でも恐怖にだけは勝てないんだ。そう思った矢先六代さんは言葉を続ける。
「ただ、いつでも恐怖と向き合っている。仲間を失うのが怖い……死ぬのが怖い……そうやって俺は俺を奮起させる。「なにくそこの野郎」って自分を震え立たせて恐怖の震えを武者震いに変えている。だから、怖いものは怖いでいいと俺は思う。」
言っている意味はあまりわからなかった。でも、「怖いものは怖いでいい」という言葉に僕は励まされたような気がした。
「あ、そろそろ時間だ……それでは六代さん。僕はこれで……」
「あ?あぁそうか挨拶の時間か……俺もそろそろ帰ろうかな。」
そして、僕と六代さんはジムの前で別れた。急いで隊舎へ向かっていると通信が入った。急いで耳に通信機をつけると氷室隊長からの緊急の連絡だった。
『こちら氷室だ。吉田くんか?』
「はい。どうしましたか?」
『朝からすまない。近くで怪人が発生した。我々が向かうまで時間稼ぎをお願いしたい。』
「もちろんです。任せてください。」
『すまないな頼む。きちんと戦闘服に着替えるんだぞ?』
僕は通信を切り懐から武器を取り出してハンマーを持ちながら指定されたブロックへ走った。到着と同時に僕はその光景に驚愕した。触手の怪人が約100名の老若男女を無差別に捕縛し、何か主張をしているのだ。
「人が死ぬぞぉぉ?!さっさと新聞記者のコンドウってやつを連れてこい!!コンドウ!!お前のせいで人が死ぬぞ!?いいのかぁ!?」
苦しんでいる人々は足をバタバタとさせていたり、触手を振りほどこうとしていたりと皆必死に逃げようとしている。こんなに人がいては僕も手出しはできない。ギリギリと歯を鳴らして考えていると口元に何かが伝った。拭ってみるとそれは自分の口から出た血だった。
「こんな時に……」
僕は血を拭き怪人へ突っ込む。怪人は僕に気づかずそのまま体勢を崩し人々を次々に落としていった。
「お前!なにもんだ!!」
「僕はMDCA一・三隊だ。連絡があって君を止めに来た。」
怪人は触手を行動しやすいように自分に巻きつけて殴り掛かってきた。そんな怪人へハンマーを振り下ろすが、怪人は触手で防御しているのか全然効いている様子はない。
「弱い。こんな塊ごときで俺の体に傷一つでもつけられると思ってるのか?」
ハンマーが跳ね返されて距離が離される。
どうしよう。僕の力が通用しない。いや、そもそも、僕の力が弱くなったのか?
ギリギリと歯を鳴らすと先ほどよりも血が出てくる。
「いつもより多い……まさか、僕はここで今日死ぬのか?」
「何か知らんが死にかけの人間に倒されるほど俺は弱くねぇぜ?」
今日、死ぬのか?
いつもより、調子が良かったはずなのに……
怖い、死ぬのが怖い。
嫌だ、死にたくない。
震える足を見て六代さんの言葉を思い出す。
『怖いものは怖いでいい。それと向き合って恐怖の震えを武者震いに変えろ。』
思い切り奥歯を鳴らし、僕は歯を食いしばる。なおも流れる血は口元を赤く染める。
「どうした?来ないのかぁ?」
「僕は、死ぬのが怖い。弱いのが怖い。怪人も怪獣も怖い。」
「何言ってんだ?」
「でも、僕がMDCAである限りこの場で僕以外の血は流させない。」
ハンマーを握る手にも力が入り血がにじむ。怪人は僕が向かってこないのをいいことにヘラヘラ笑って殴り掛かってきた。
「なにくそ……」
僕はその拳をハンマーで受け止める。
「は?」
「なにくそ……この野郎ー!!」
怪人のショック吸収性の触手は僕のハンマーの力に許容をオーバーして空へ舞いながら散り散りになっていった。紫色の液体が僕の真上に降り注ぐ。
「あぁ、これで……」
最後の言葉も言えずに僕は倒れた。
そして、何時間も経った。
あぁ、死んでもこうやって心地いい感触に包まれるんだ。
なら、死ぬのも悪くないな…
いきなりその感触から転げ落ちる。
開かないと思っていた目が開き、目の前に杉山くんが見えた。
「す、杉山くん?」
「そうだけど?なに?二日も寝ておいて……」
「な、なんで……僕は確かに死んだはずじゃ……」
「お前寝ぼけてんね。死んでないし実態もある。ここは隊舎の一・三隊待機室ベッド!他には?」
「いや、何も……」
そして、杉山君は呆れた様子で部屋を出ようとしていたが、途中で止まり振り返る。
「な、なに?」
「お前さ。最近なんかストレスたまるようなことあった?」
「いや、別に……」
「いや、俺が何かしたでもいいから。なんなないわけ?」
「心当たりないな……どうしたの?」
「いや、」実はな……
聞かされたのは僕の口の中の話だった。怪人を倒した後、倒れた僕を運んできた別の隊の人が医官に頼んで口の中を診てもらったそうなのだが、内側、特に頬肉がボロボロで驚いたそうだ。ただ医官曰く、『これ、多分歯ぎしりの延長でこうなってるからストレスのせいだと思うけど…隊長は認識してるのかな?』だと。
そうか、口の中の違和感は頬肉が歯ぎしりで裂けて……でもなんで歯ぎしりなんて……
あ、そうか。
思い出した。
口内炎がずっと違和感で違和感で眠れなかったんだった。僕は杉山くんに申し訳なくなり怒られる覚悟で口を開く。
「口内炎…かも……」
「は?口内炎?それで、眠れんくてストレスで歯ぎしりして頬肉が裂けたってか?それをお前は寿命と勘違いしたと?」
恥ずかしいな。そうだよ。
「悪い……かい?」
「筋肉バカが頭から筋肉抜くぞ!」
杉山くんに肩をパシッと叩かれさらに恥ずかしくなる。杉山くんはとりあえず医官と隊長を呼んでくるから大人しくしてろと言われて僕は小さくなりながら医官と隊長を待った。
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