セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・

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逃避行 漁村とオーガ 11

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熱気が収まったオーガの死体に近付くと、林の中、街道の端に隠れていた若者達もキーツの元へ集まってきた、三人に怪我は無く土埃に塗れた顔は上気しており笑顔である、

「おっさん、すげえな、いや、俺達がすげぇのか、まさかオーガを倒すなんてな」
「おお、どうなるかと思ったが俺達生きてるぜ」
「オーガはやっぱ怖ぇえな、なんだよ最後のはよ」
そういって死体に蹴りを入れる、しかしその一撃にもオーガの遺体はビクリともせずその場に鎮座したままであった、キーツはその行為に眉根を寄せる、

「こいつどうするよ、オーガを倒した証っての?何かないかな」
「こいつを村に持ってって広場に飾るってのは?」
「どうやって持っていくんだよ」
彼等は彼等らしくこの勝利を喜んでいるが、どうしようもなく敬意が感じられなかった、キーツは若者達の背を見ながら鼻息を荒くし、

「なめんなガキ共」
と一喝した、突然の怒声に若者達は振り返りキーツの顔に浮かぶ怒気を察して押し黙る、

「お前ら、一体何をしに此処まで来た?」
キーツは一人一人を舐める様に睨み詰問する、

「何をしにと言われても・・・」
女将の息子が口籠る、

「魂胆は分かっている、金を持った商人一人何とでもなると思ったか」

「いや、そういうわけでは」
「なぁ、俺達はただあいつらに誘われて」
「あぁそうだ、別に俺達はなにも」
それぞれに言い訳めいた文言を並べながら顔を見合わせる、彼等の言うあいつらとはキーツが始めに排斥した二人の事であるらしい、三人はあの二人に責任を被せるつもりのようであった。

「寝ぼけるな、貴様らがやろうとした事は強盗だ、そしてそれを実行した場合どうなったと思う?」
キーツはそれぞれの顔を睨み付ける、

「俺は確実にお前らを殺していた、こいつのように」
顎でオーガの死体を差す、

「そこまでにしといてくれるか」
キーツの背後から疲れ切った声が掛る、見ると自警団の生き残りが剣を杖替わりに立っていた、

「目的や仮定はどうあれオーガを倒したんだ、大したもんだよあんた達は」
彼は埃に塗れた顔を歪めるように笑みを浮かべた、

「手負いでした、貴方方の功績の方が大きい」
キーツは彼に向き直り素直な評かを伝える、

「そうかな、俺達よりもケイネスの奴等だな、一人は生きているか?やはり大した戦士だよ、彼等は」
そう言いながらオーガの死体に近付く、そしてそっとその肉体に触れ目を閉じた、何事か文言を唱えスッと立ち上がると若者に向き直る、

「敵への敬意を失ったら、死んだ戦友は浮かばれない、せめて敬意を知れ、わかるかガキンチョ」
そう言って三人を睨む、三人は言葉を無くし俯いていた、

「さて、事後処理は任せて良いかな」
キーツは自警団に問うた、

「助力に感謝する、できれば村で歓待したい所なのだが」

「そんな暇は無いよ、早い所要塞に向かわないとな、それとケイネス族の生き残りは俺が引き取る」

自警団は怪訝そうな顔をする、

「俺は奴隷商人だ、そう言えば理解されるか?」
キーツは嫌らしい笑みを浮かべて見せる、自警団は眉根を寄せ溜息を吐いた、

「理解できたが、これだから商人は」

「そういう事だ、ただ働きはしない主義でね」
キーツはそう言って、ケイネスの遺体も貰うぞと付け加える、

「好きにしろ、こちらはこちらで対応するよ、若いのお前村に走って荷馬車を手配してくれ、それから自警団長も呼んで来い、それと・・・」
自警団員は三人に次々と指示を飛ばしていった、キーツはそれを横に見ながら林の中のケイネス族の元へ戻る、獣人は意識を失っている様子であったが死んではいない、ジュウシを呼ぶと力任せに担ぎあげ、二つの遺体も無理矢理にジュウシに乗せると自警団に退去の挨拶をして来た道を戻る事とした、

「ジルフェ、オーガの調査は出来ているか?」
ふと、指示を出していなかったなと思い出し確認する、

「はい、マスター規定通りの調査を終えております、体液サンプルと細胞サンプルも取得致しました、報告書を確認致しますか?」

「ありがとう、報告書は後でいい」
キーツはそこでやっと苦笑いを浮かべた。
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