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本章
逃避行 漁村とオーガ 2
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「海沿いはより慎重に進む必要があると思います」
海に至って最初の夜にテインは深刻そうに話始めた、フリンダとエルステは海の魚に歓喜し貝と格闘しつつその身を胃に収めた後、焚火を真ん中にして丸くなって寝そべっている、麻袋に入った黒い毛玉が二つ、とても愛らしい光景ではあった、そんな彼等を見詰めながら静かにその言は発せられ、二人はその声にピクリと耳をそばだたせキーツは沈黙でもってその先を待つ、
「確か野人の集落が二つあったと記憶しています、南側にも幾つか・・・できればですが、私達の姿は見せない方が都合が良いのではないかと考えます」
慎重に言葉を選んでいるなとキーツは感じる、
「それを過ぎれば我々の里になりますが、ここで捕縛されては元も子も無いです」
テインはすっとキーツに視線を向ける、キーツの意見を待っているようであった、
「そうだね、せっかくここまで来たんだ、彼等に見つからないで行ければ最良であろうね」
「はい、しかし現状では難しいかと思いますが」
テインは言って焚火を見る、彼女の横顔を焚火の炎がテラテラと舐める様に照らし複雑な陰影を投射させる、少し痩せたかとその顔を見てキーツは思った、元来痩せ型である彼女の頬はやや落ち窪み疲れからかその眼光は鈍くなっているように感じる、恐らく疲労が溜っているのであろう、ジュウシに乗った移動である為他3人と比べればその労力は各段に少ないとはいえ慣れない馬に乗って道無き道を揺られ続けているのである、疲労しない方がおかしい。
幸いにも獣人二人にはそういった疲れは見えないように思える、単に彼等の表面的な変化が分かりにくいという事もあるが元気の良さだけは間違いないので健康面での不安は無いとして良いかと思う、オークの一件で彼等の溜め込まれた何かを発散させたのも結果的には良かったのかもなと考える。
しかしテインは日に日に言葉少なくなってもいて関係性の変化から来るものもあるであろうがここに来て健康面と精神面での不安も考慮しなければならないなと感じた。
無論ジルフェを使って健康を診断し寝ている間に薬剤で栄養補給が最も簡単ではあるが、それはそれで安易すぎるとも思う、それは最後の手段として留保しつつ場合によっては彼等の死も利用可能ではあるのだがと丸まって眠ったふりをしている二人を見た、それなりに情が沸いて来ている自分もいて、下衆な考えは捨て去ろう、高潔に生きねば背骨が腐れて落ちるなと自分に言い聞かせた。
「確かに、・・・どうしたものか」
薪を弄りつつキーツは考える、
「・・・何か案はありますか?」
テインは外套を纏い直しつつ問い掛ける、寒い夜ではないがテインの身に着けているのは麻袋である、結局移動を優先し彼等の衣服は改善されていない。
身を隠して先へ進む方法とテインの健康と衣服、今後旅を続ける上で重要な問題点であった、さらに環境の変化も憂慮すべきであろう、海へ出た辺りから森は少なくなり林が点在する荒野へと周辺の景色は変化している、身を隠す場所は無いし逃げるにしても相手が騎馬であれば易々と捕縛されてしまう。
しかしその荒野の景観は格別で地球の日本では見た事の無い地平線は海よりもキーツに感動を与えた、食事の際にその話をしたのだが誰にも同意を得られず随分険しい所に住んでいただの砂漠はどうだっただのと会話の方向性を変に変えたに過ぎなかった。
戦術面で考えればこの荒野の見晴らしの良さは外敵を発見する上で大変都合が良いと感じたがこれは相手にも同様なのである、ましてこの荒野において狩りをする連中からすればその環境に適した身の隠し方と狩猟方法というものもあるであろう、今までのように外敵と接触した際は逃げれば良いとはいかない可能性が多いにあった。
キーツはやっと口を開き、
「その集落に行ってみようか」
「・・・どういう事ですか?」
「うん、どう考えても色々足りないと思うんだよ、そこでその集落で何か・・・手に入らないかなと思って」
「何かですか」
「そう、何か、まぁその何か次第かな」
キーツはそう言ってテインに微笑んだ、
「先に寝て、疲れた顔してるよ、折角の美人さんが台無しだ」
テインはその言葉に軽く頷き外套にくるまって横になる、美人さんは否定しないんだな、それほど疲れているのかなとキーツは考えつつ薪をくべた。
海に至って最初の夜にテインは深刻そうに話始めた、フリンダとエルステは海の魚に歓喜し貝と格闘しつつその身を胃に収めた後、焚火を真ん中にして丸くなって寝そべっている、麻袋に入った黒い毛玉が二つ、とても愛らしい光景ではあった、そんな彼等を見詰めながら静かにその言は発せられ、二人はその声にピクリと耳をそばだたせキーツは沈黙でもってその先を待つ、
「確か野人の集落が二つあったと記憶しています、南側にも幾つか・・・できればですが、私達の姿は見せない方が都合が良いのではないかと考えます」
慎重に言葉を選んでいるなとキーツは感じる、
「それを過ぎれば我々の里になりますが、ここで捕縛されては元も子も無いです」
テインはすっとキーツに視線を向ける、キーツの意見を待っているようであった、
「そうだね、せっかくここまで来たんだ、彼等に見つからないで行ければ最良であろうね」
「はい、しかし現状では難しいかと思いますが」
テインは言って焚火を見る、彼女の横顔を焚火の炎がテラテラと舐める様に照らし複雑な陰影を投射させる、少し痩せたかとその顔を見てキーツは思った、元来痩せ型である彼女の頬はやや落ち窪み疲れからかその眼光は鈍くなっているように感じる、恐らく疲労が溜っているのであろう、ジュウシに乗った移動である為他3人と比べればその労力は各段に少ないとはいえ慣れない馬に乗って道無き道を揺られ続けているのである、疲労しない方がおかしい。
幸いにも獣人二人にはそういった疲れは見えないように思える、単に彼等の表面的な変化が分かりにくいという事もあるが元気の良さだけは間違いないので健康面での不安は無いとして良いかと思う、オークの一件で彼等の溜め込まれた何かを発散させたのも結果的には良かったのかもなと考える。
しかしテインは日に日に言葉少なくなってもいて関係性の変化から来るものもあるであろうがここに来て健康面と精神面での不安も考慮しなければならないなと感じた。
無論ジルフェを使って健康を診断し寝ている間に薬剤で栄養補給が最も簡単ではあるが、それはそれで安易すぎるとも思う、それは最後の手段として留保しつつ場合によっては彼等の死も利用可能ではあるのだがと丸まって眠ったふりをしている二人を見た、それなりに情が沸いて来ている自分もいて、下衆な考えは捨て去ろう、高潔に生きねば背骨が腐れて落ちるなと自分に言い聞かせた。
「確かに、・・・どうしたものか」
薪を弄りつつキーツは考える、
「・・・何か案はありますか?」
テインは外套を纏い直しつつ問い掛ける、寒い夜ではないがテインの身に着けているのは麻袋である、結局移動を優先し彼等の衣服は改善されていない。
身を隠して先へ進む方法とテインの健康と衣服、今後旅を続ける上で重要な問題点であった、さらに環境の変化も憂慮すべきであろう、海へ出た辺りから森は少なくなり林が点在する荒野へと周辺の景色は変化している、身を隠す場所は無いし逃げるにしても相手が騎馬であれば易々と捕縛されてしまう。
しかしその荒野の景観は格別で地球の日本では見た事の無い地平線は海よりもキーツに感動を与えた、食事の際にその話をしたのだが誰にも同意を得られず随分険しい所に住んでいただの砂漠はどうだっただのと会話の方向性を変に変えたに過ぎなかった。
戦術面で考えればこの荒野の見晴らしの良さは外敵を発見する上で大変都合が良いと感じたがこれは相手にも同様なのである、ましてこの荒野において狩りをする連中からすればその環境に適した身の隠し方と狩猟方法というものもあるであろう、今までのように外敵と接触した際は逃げれば良いとはいかない可能性が多いにあった。
キーツはやっと口を開き、
「その集落に行ってみようか」
「・・・どういう事ですか?」
「うん、どう考えても色々足りないと思うんだよ、そこでその集落で何か・・・手に入らないかなと思って」
「何かですか」
「そう、何か、まぁその何か次第かな」
キーツはそう言ってテインに微笑んだ、
「先に寝て、疲れた顔してるよ、折角の美人さんが台無しだ」
テインはその言葉に軽く頷き外套にくるまって横になる、美人さんは否定しないんだな、それほど疲れているのかなとキーツは考えつつ薪をくべた。
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