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本章
逃避行 猫娘のサガ 4/6
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「フギャァ」
フリンダの悲鳴が響いた、足元に居たと思ったキーツに抱えられた挙句樹上にいたはずが地上に降りていたのである、悲鳴の一つや二つは当然であった、
「フリンダ、逃げるぞ」
キーツは混乱するフリンダを抱えたまま河岸に向けて走りだした、背後では興奮したオーク達の雄叫びが迫って来る、
「ジルフェ相対距離」
「相対距離40、現在の速度で相対距離変わらず」
彼我の速度は大きく変わらないらしい、フリンダは暴れ続けキーツの腕に噛み付いた、
「フリンダ、今は待て」
「フギャヤ」
「わかったから、噛むのは止めて」
暴れるフリンダを宥めながら走り続ける、キーツの上下動に合わせてフリンダの叫声は愉快ともとれる悲鳴となって森に響いた、
「もう少し」
木々の切れ間に岩場と川の照り返しが映る、
「ジルフェ、ジュウシは何処に居る」
「二時方向距離50」
「よし、こちらへ合流させろ」
キーツは指示を出しつつ森を抜けた、右側にジュウシにしがみ付くテインとその後ろを追い掛けるエルステを確認する、
「フリンダ、向うに合流するぞ」
岩場に出た時点でフリンダは大人しくなっていたが、叫声は威嚇音となってキーツに向けられている、その様を怖いというよりも可愛らしいなとキーツは思うがそんな余裕がまだ自分にあるのかと自問し良い事だと確信する、
「テイン、フリンダを頼む」
ジルフェに走り寄りフリンダをテインに押し付けた、
「勝手にジルフェが走りだして、何があったのですか」
テインは混乱しながらもフリンダを抱き止め、遅れたエルステもなんとか追い付く、
「オークが三体、こちらに来る、逃げろ」
「オーク?本当ですか、しかし、何処へ」
テインの腕の中でもフリンダはジタバタと足掻いているがキーツにしたように噛み付くような事はなさそうであった、
「ジュウシに任せろ、こいつは賢い、エルステ荷の上に乗れ」
「重すぎませんか」
フリンダを両手で抱えつつテインは叫ぶ、
「大丈夫、こいつは強い」
エルステをジュウシの荷の上に担ぎ上げジュウシの尻を思い切り叩いた、馬のような嘶きを発しジュウシは走りだす、
「ジルフェ、安全域まで退避、三人を守れ」
「了解しました、川に沿って東進します、現場より一定距離にて待機」
「それでいい」
さて次はとキーツは森へ視線を移す、オークの姿は木々の間に確認できるほど近付いていた、
「ジルフェ、良い機会だ武装を試す、ゼットガード標準装備着装用意」
「了解、ゼットガード標準装備転送準備・・・完了しました」
「着装」
キーツは大きく叫んだ、キーツの四方に円形の次元口が青色の輝きを伴って開口すると同時に僅かであるがキーツの身体が宙に浮いた、瞬く間も無く次元口はそれぞれが引き寄せ合うようにキーツを中心として接触する、その瞬間音もなくキーツの全身に戦闘スーツ「ズィーガード」が装着された。
銀河連合警察において標準的な戦闘用スーツがこの「ズィーガード」またはゼットガードと呼称されるスーツである、スーツと呼称されるが簡易的なパワードスーツであり使用者の身体能力の補強及び防護を主目的としている。その為装甲として特殊合金を採用しておりスーツそのものは軽くて固い、主に耐光学兵器を重視した表面処理が全体に施され衝撃吸収能力も高く警察組織に於いて運用される装備としては必要十分と考えられている。
キーツはこれを地球用というよりも自分用にカスタマイズして使用していた、それは多分に彼の趣味が反映した外観をしており、通常であれば黒一色の外観が白を基調とした配色に塗り替えられ要所要所に銀と黄のラインが入れられている、やや派手とも言える外観であったがキーツはこれをヒロイックと呼び同僚は子供趣味と笑っていた。
武装は最小限となっており彼の得意とする電磁警棒二本とハンドガン一丁のみ、キーツの言う標準装備がこれにあたる、過剰な武装は使いきれない上に邪魔というのがキーツの意見であった。
アヤコ用のズィーガードも配備されている、しかししっかりと埃を被ってしまっていた、無論整備はされているがカスタマイズはされておらず緊急時に数度使用した程度である、それは被害者救出の際に被害者に対し使用されたもので、その運用は銀河連合規約に抵触する行為であったが現場判断として処理された。
「着装完了」
キーツは白色の戦闘スーツに身を包み視界を覆うバイザーモニターに流れる文字を確認する、
「各部異常無し、戦闘に移行する、記録は一任」
左腰部に装着された大型電子警棒を右手に構えるとオークへ対峙する、右側の最も近い個体を対象と定め距離を詰めた、対峙して改めてその巨体に圧倒される、
「でかいな、こんな生物の対処方は教本にはなかったかな」
オークはやはり巨体であった、ゴブリンのリーダー格はキーツよりも頭一つ分大きい程度であったがオークはキーツの身長の1.5倍をゆうに超え横幅は3倍はあるだろうか、巨大な棍棒を左手に構え衣服は着用していない、その為裸の全体像を嫌でも見せられるが所謂排泄器官らしきものは確認できなかった、
「レベル3、麻痺、範囲5」
キーツは一息に距離を詰めオークの両足に緑色の光刃を叩き込む、オークは雄叫びを上げ棍棒を振り上げるが両足に走る衝撃に耐えられずガクリと両膝を着いた、
「効果有効」
キーツが2撃目を小さな頭部目掛けて振り回そうとした瞬間オークの棍棒がキーツの右側面を殴打した、キーツは防御姿勢をとる間も無いままその一撃を受ける、
「グハッ」
肺から空気が締め出される、瞬時にキーツは後退しオークとの距離を取った、跪いたオークはキーツを睨んだままゆっくりと立ち上がる、遅れた2体のオークがその側に立った、
「修正、効果有効であるが持続せず」
キーツは3体のオークと対峙する事となった、オークはそれぞれに得物を構えキーツを包囲するように動き出す、
「レベル10、麻痺、範囲10」
キーツは警棒を操作し光刃の威力を上げる、バイザーモニターの兵装管理パラメーターが連動し数値が変わった。
ドッと一際重い振動音が大地を揺らし左側のオークが一挙に距離を詰め振り被った棍棒の一撃を振う、キーツは一歩踏み出し今度はしっかりと防御姿勢でその一撃を受け止めた。
ゴーンと重量物を打ち付けた鈍い音が響くもキーツは防御姿勢を維持し一撃を見舞ったオークはその手応えの異常さに挙動を止める、
「ゼットガードの耐衝撃有効、但し防御姿勢を取り各関節部への過負荷保護を優先すること」
キーツは素早く警棒を構え直し眼前のオークの正中線を狙い股下から真っすぐ頭部へ光刃を走らせた、オークは何が起きたのかもわからずゆっくりと腰から砕け大の字に天を仰いだ、
「効果有効、継戦する」
残ったオークは倒れ伏した仲間には目もくれずキーツをじっくりと窺っている、
「それでは、こちらから」
キーツは瞬時に倒れたオークに駆け上がりまだ手合わせしていない個体に狙いを定め距離を詰めた、オークはそれに合わせ一足飛びに後退し森の木々を背にすると巨大な棍棒を縦横に振り回しキーツを牽制する、キーツは足を止め棍棒を躱しさらに近付こうとした瞬間背後に影が指すのを感じ左手に飛び退った。
ゴゴンとこれまた鈍い音を立てキーツの立っていた地点に薄い砂埃が舞う、もう一体のオークの一撃が大地を振動させていた。
「やるぅ、回復が速いのか効果が薄いのか」
キーツは嬉しそうに分析しつつ再び距離を取った、オークの表情に変化は無い元来表情の無い生物であるのかそれとも感情が薄いのか、それでも当初よりはこちらを警戒している様子ではあり、よく観察すると小さな頭部の巨大な口の端から大量の涎が吹き出し始めていた、それは捕食行動に対する反応かそれとも興奮しているだけなのか興味深い反応であった。
フリンダの悲鳴が響いた、足元に居たと思ったキーツに抱えられた挙句樹上にいたはずが地上に降りていたのである、悲鳴の一つや二つは当然であった、
「フリンダ、逃げるぞ」
キーツは混乱するフリンダを抱えたまま河岸に向けて走りだした、背後では興奮したオーク達の雄叫びが迫って来る、
「ジルフェ相対距離」
「相対距離40、現在の速度で相対距離変わらず」
彼我の速度は大きく変わらないらしい、フリンダは暴れ続けキーツの腕に噛み付いた、
「フリンダ、今は待て」
「フギャヤ」
「わかったから、噛むのは止めて」
暴れるフリンダを宥めながら走り続ける、キーツの上下動に合わせてフリンダの叫声は愉快ともとれる悲鳴となって森に響いた、
「もう少し」
木々の切れ間に岩場と川の照り返しが映る、
「ジルフェ、ジュウシは何処に居る」
「二時方向距離50」
「よし、こちらへ合流させろ」
キーツは指示を出しつつ森を抜けた、右側にジュウシにしがみ付くテインとその後ろを追い掛けるエルステを確認する、
「フリンダ、向うに合流するぞ」
岩場に出た時点でフリンダは大人しくなっていたが、叫声は威嚇音となってキーツに向けられている、その様を怖いというよりも可愛らしいなとキーツは思うがそんな余裕がまだ自分にあるのかと自問し良い事だと確信する、
「テイン、フリンダを頼む」
ジルフェに走り寄りフリンダをテインに押し付けた、
「勝手にジルフェが走りだして、何があったのですか」
テインは混乱しながらもフリンダを抱き止め、遅れたエルステもなんとか追い付く、
「オークが三体、こちらに来る、逃げろ」
「オーク?本当ですか、しかし、何処へ」
テインの腕の中でもフリンダはジタバタと足掻いているがキーツにしたように噛み付くような事はなさそうであった、
「ジュウシに任せろ、こいつは賢い、エルステ荷の上に乗れ」
「重すぎませんか」
フリンダを両手で抱えつつテインは叫ぶ、
「大丈夫、こいつは強い」
エルステをジュウシの荷の上に担ぎ上げジュウシの尻を思い切り叩いた、馬のような嘶きを発しジュウシは走りだす、
「ジルフェ、安全域まで退避、三人を守れ」
「了解しました、川に沿って東進します、現場より一定距離にて待機」
「それでいい」
さて次はとキーツは森へ視線を移す、オークの姿は木々の間に確認できるほど近付いていた、
「ジルフェ、良い機会だ武装を試す、ゼットガード標準装備着装用意」
「了解、ゼットガード標準装備転送準備・・・完了しました」
「着装」
キーツは大きく叫んだ、キーツの四方に円形の次元口が青色の輝きを伴って開口すると同時に僅かであるがキーツの身体が宙に浮いた、瞬く間も無く次元口はそれぞれが引き寄せ合うようにキーツを中心として接触する、その瞬間音もなくキーツの全身に戦闘スーツ「ズィーガード」が装着された。
銀河連合警察において標準的な戦闘用スーツがこの「ズィーガード」またはゼットガードと呼称されるスーツである、スーツと呼称されるが簡易的なパワードスーツであり使用者の身体能力の補強及び防護を主目的としている。その為装甲として特殊合金を採用しておりスーツそのものは軽くて固い、主に耐光学兵器を重視した表面処理が全体に施され衝撃吸収能力も高く警察組織に於いて運用される装備としては必要十分と考えられている。
キーツはこれを地球用というよりも自分用にカスタマイズして使用していた、それは多分に彼の趣味が反映した外観をしており、通常であれば黒一色の外観が白を基調とした配色に塗り替えられ要所要所に銀と黄のラインが入れられている、やや派手とも言える外観であったがキーツはこれをヒロイックと呼び同僚は子供趣味と笑っていた。
武装は最小限となっており彼の得意とする電磁警棒二本とハンドガン一丁のみ、キーツの言う標準装備がこれにあたる、過剰な武装は使いきれない上に邪魔というのがキーツの意見であった。
アヤコ用のズィーガードも配備されている、しかししっかりと埃を被ってしまっていた、無論整備はされているがカスタマイズはされておらず緊急時に数度使用した程度である、それは被害者救出の際に被害者に対し使用されたもので、その運用は銀河連合規約に抵触する行為であったが現場判断として処理された。
「着装完了」
キーツは白色の戦闘スーツに身を包み視界を覆うバイザーモニターに流れる文字を確認する、
「各部異常無し、戦闘に移行する、記録は一任」
左腰部に装着された大型電子警棒を右手に構えるとオークへ対峙する、右側の最も近い個体を対象と定め距離を詰めた、対峙して改めてその巨体に圧倒される、
「でかいな、こんな生物の対処方は教本にはなかったかな」
オークはやはり巨体であった、ゴブリンのリーダー格はキーツよりも頭一つ分大きい程度であったがオークはキーツの身長の1.5倍をゆうに超え横幅は3倍はあるだろうか、巨大な棍棒を左手に構え衣服は着用していない、その為裸の全体像を嫌でも見せられるが所謂排泄器官らしきものは確認できなかった、
「レベル3、麻痺、範囲5」
キーツは一息に距離を詰めオークの両足に緑色の光刃を叩き込む、オークは雄叫びを上げ棍棒を振り上げるが両足に走る衝撃に耐えられずガクリと両膝を着いた、
「効果有効」
キーツが2撃目を小さな頭部目掛けて振り回そうとした瞬間オークの棍棒がキーツの右側面を殴打した、キーツは防御姿勢をとる間も無いままその一撃を受ける、
「グハッ」
肺から空気が締め出される、瞬時にキーツは後退しオークとの距離を取った、跪いたオークはキーツを睨んだままゆっくりと立ち上がる、遅れた2体のオークがその側に立った、
「修正、効果有効であるが持続せず」
キーツは3体のオークと対峙する事となった、オークはそれぞれに得物を構えキーツを包囲するように動き出す、
「レベル10、麻痺、範囲10」
キーツは警棒を操作し光刃の威力を上げる、バイザーモニターの兵装管理パラメーターが連動し数値が変わった。
ドッと一際重い振動音が大地を揺らし左側のオークが一挙に距離を詰め振り被った棍棒の一撃を振う、キーツは一歩踏み出し今度はしっかりと防御姿勢でその一撃を受け止めた。
ゴーンと重量物を打ち付けた鈍い音が響くもキーツは防御姿勢を維持し一撃を見舞ったオークはその手応えの異常さに挙動を止める、
「ゼットガードの耐衝撃有効、但し防御姿勢を取り各関節部への過負荷保護を優先すること」
キーツは素早く警棒を構え直し眼前のオークの正中線を狙い股下から真っすぐ頭部へ光刃を走らせた、オークは何が起きたのかもわからずゆっくりと腰から砕け大の字に天を仰いだ、
「効果有効、継戦する」
残ったオークは倒れ伏した仲間には目もくれずキーツをじっくりと窺っている、
「それでは、こちらから」
キーツは瞬時に倒れたオークに駆け上がりまだ手合わせしていない個体に狙いを定め距離を詰めた、オークはそれに合わせ一足飛びに後退し森の木々を背にすると巨大な棍棒を縦横に振り回しキーツを牽制する、キーツは足を止め棍棒を躱しさらに近付こうとした瞬間背後に影が指すのを感じ左手に飛び退った。
ゴゴンとこれまた鈍い音を立てキーツの立っていた地点に薄い砂埃が舞う、もう一体のオークの一撃が大地を振動させていた。
「やるぅ、回復が速いのか効果が薄いのか」
キーツは嬉しそうに分析しつつ再び距離を取った、オークの表情に変化は無い元来表情の無い生物であるのかそれとも感情が薄いのか、それでも当初よりはこちらを警戒している様子ではあり、よく観察すると小さな頭部の巨大な口の端から大量の涎が吹き出し始めていた、それは捕食行動に対する反応かそれとも興奮しているだけなのか興味深い反応であった。
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