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本章
逃避行 猫娘のサガ 1/6
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四人の逃避行は四日目を迎えていた、だいぶ旅慣れたのか一行はそれなりに距離を稼げるようになり、どうやらテインの怒りが余程効いたらしくエルステとフリンダは森の奥に入り込む事も無くなった、分担された各自の作業や食料調達そのものを愉しむ余裕も見え始めた。
驚くべきはフリンダの罠である、初日の夜に仕掛けた彼女の罠は野鳥が二羽と栗鼠に似た齧歯類を三匹捕らえ一行の快哉を浴びた、小さな胸を大きく張る彼女に対しキーツもテインも必要以上に褒め過ぎてしまったようで、暫く彼女は横暴なお嬢様そのものであったがその様を可愛がることはあれ非難する者は居なかった、罠は毎夜フリンダ一人で仕掛けに行くのが恒例となり、キーツが同行を申し出るが罠の秘密を見せたくないの一点張りで彼女の単独行動は続けられた、それとなくジルフェの監視は付けていたが特段危険はないようである。
問題が起こったのは朝であった、深夜に番を変わったキーツが朝日を受けて三人を起こし簡単な朝食を用意していると、フリンダは一人森へ入りやがて野鳥を三羽手にして戻ってきた、中々の成果に御満悦で早速エルステと手分けして羽根を毟り始める、テインは川で顔と手足を洗っておりキーツは沸いた水を杯に移して温めた昨晩の残りをそれぞれに分けていた、さてと声を掛けようとした瞬間、獣の叫声が森と川面を引き裂いた、さらに別の獣の咆哮が続き二つの叫び声が絡み合う、地の底から響き大気を震わすその獣声にキーツとテインは命の危険すら感じ騒動の元を確認するよりも先に身を守る事を本能的に優先してしまう、キーツは一旦身を隠そうと周囲を確認し、ジルフェからの警告が無かった事を不審に思いつつ、エルステとフリンダを確保しようと腰を上げ、二人に声を掛けようと視線を移した瞬間に理解した、この騒動の元が二人であった事を。
フリンダがエルステに馬乗りになり激しく殴打している、先の叫声はフリンダが飛び掛かった声で、エルステはそれを非難し抵抗する為の雄叫びを上げたのだ、テインもその騒動に気付きキーツの元へ掛けよる、
「止めよう」
キーツは素早く走り寄りフリンダを抱き押さえ、テインはエルステとフリンダの間に体を入れエルステの盾になる、
「どうしたの、何があったの」
テインは金切り声で問い掛けるも二人は昂った感情を抑え付けずに叫び暴れた、周囲には野鳥の羽毛が散乱し、みすぼらしい姿でその主が転がっている、
「待て、落ち着け、や、痛いから」
フリンダを押さえるキーツが悲鳴を発する、フリンダは小さく鋭い爪を剥き出しにし手の届く範囲を無尽に掻きむしる、それでも拘束から逃れられないと理解した彼女はキーツの腕に思い切り噛み付いた、
「おわっ、噛んじゃだめ」
溜らずキーツが拘束を緩めるとフリンダはスルッとその腕を抜け森を背にして三人に対峙する、両腕を地に着け飛び掛かる姿勢を維持したまま大きく裂けた口から威嚇音を発し続けた、
「取り付く島もないな」
キーツが噛まれた腕を摩りながら誰にともなくそう言うと、
「フリンダ、止めなさい、落ち着いて」
テインの金切り声が再び響いた、フリンダはビクリとその肩を震わせるが威嚇姿勢を崩さずにゆっくりと後退りする、
「エルステ何があったの?」
やや落ち着いたエルステにテインは問う、
「無い、なにも」
エルステは所々に血を滲ませた顔で言葉少なにそう答えた、彼等の表情は判別が困難であるが怒りの顔でない事は理解できた、
「フリンダ、落ち着いて、大丈夫だからこちらに来なさい」
テインは諭すように話し掛ける、フリンダの耳が二三度動いたテインの言葉は届いている様子である、
「そうだぞ、フリンダ、話したい事があったら聞くから、な、取り合えずそのフーッッてのは止めなさい」
テインの真似をして静かに諭すように語り掛ける、しかしフリンダの視線はテインとエルステに向けられキーツはその意識の外にあるらしい、であればキーツが彼女を再び捕縛し拘束する事は容易であるがそれが事の収拾に寄与できるかは疑わしい、ここは彼女の怒りと興奮を収める事が肝要であるとキーツは判断する、しかしフリンダの行動は速かった、威嚇音が止んだと思った瞬間森の中へ走り込む、キーツは慌ててその背を追うも森の中に隠れ走る彼女の背はあっさりと視界から消えた、音も無い、蠢く草も低木も無い、森の入り口で追うのを止めたキーツはジルフェに彼女の監視を指示し動けないまま固まるテインとエルステの元へ戻った。
驚くべきはフリンダの罠である、初日の夜に仕掛けた彼女の罠は野鳥が二羽と栗鼠に似た齧歯類を三匹捕らえ一行の快哉を浴びた、小さな胸を大きく張る彼女に対しキーツもテインも必要以上に褒め過ぎてしまったようで、暫く彼女は横暴なお嬢様そのものであったがその様を可愛がることはあれ非難する者は居なかった、罠は毎夜フリンダ一人で仕掛けに行くのが恒例となり、キーツが同行を申し出るが罠の秘密を見せたくないの一点張りで彼女の単独行動は続けられた、それとなくジルフェの監視は付けていたが特段危険はないようである。
問題が起こったのは朝であった、深夜に番を変わったキーツが朝日を受けて三人を起こし簡単な朝食を用意していると、フリンダは一人森へ入りやがて野鳥を三羽手にして戻ってきた、中々の成果に御満悦で早速エルステと手分けして羽根を毟り始める、テインは川で顔と手足を洗っておりキーツは沸いた水を杯に移して温めた昨晩の残りをそれぞれに分けていた、さてと声を掛けようとした瞬間、獣の叫声が森と川面を引き裂いた、さらに別の獣の咆哮が続き二つの叫び声が絡み合う、地の底から響き大気を震わすその獣声にキーツとテインは命の危険すら感じ騒動の元を確認するよりも先に身を守る事を本能的に優先してしまう、キーツは一旦身を隠そうと周囲を確認し、ジルフェからの警告が無かった事を不審に思いつつ、エルステとフリンダを確保しようと腰を上げ、二人に声を掛けようと視線を移した瞬間に理解した、この騒動の元が二人であった事を。
フリンダがエルステに馬乗りになり激しく殴打している、先の叫声はフリンダが飛び掛かった声で、エルステはそれを非難し抵抗する為の雄叫びを上げたのだ、テインもその騒動に気付きキーツの元へ掛けよる、
「止めよう」
キーツは素早く走り寄りフリンダを抱き押さえ、テインはエルステとフリンダの間に体を入れエルステの盾になる、
「どうしたの、何があったの」
テインは金切り声で問い掛けるも二人は昂った感情を抑え付けずに叫び暴れた、周囲には野鳥の羽毛が散乱し、みすぼらしい姿でその主が転がっている、
「待て、落ち着け、や、痛いから」
フリンダを押さえるキーツが悲鳴を発する、フリンダは小さく鋭い爪を剥き出しにし手の届く範囲を無尽に掻きむしる、それでも拘束から逃れられないと理解した彼女はキーツの腕に思い切り噛み付いた、
「おわっ、噛んじゃだめ」
溜らずキーツが拘束を緩めるとフリンダはスルッとその腕を抜け森を背にして三人に対峙する、両腕を地に着け飛び掛かる姿勢を維持したまま大きく裂けた口から威嚇音を発し続けた、
「取り付く島もないな」
キーツが噛まれた腕を摩りながら誰にともなくそう言うと、
「フリンダ、止めなさい、落ち着いて」
テインの金切り声が再び響いた、フリンダはビクリとその肩を震わせるが威嚇姿勢を崩さずにゆっくりと後退りする、
「エルステ何があったの?」
やや落ち着いたエルステにテインは問う、
「無い、なにも」
エルステは所々に血を滲ませた顔で言葉少なにそう答えた、彼等の表情は判別が困難であるが怒りの顔でない事は理解できた、
「フリンダ、落ち着いて、大丈夫だからこちらに来なさい」
テインは諭すように話し掛ける、フリンダの耳が二三度動いたテインの言葉は届いている様子である、
「そうだぞ、フリンダ、話したい事があったら聞くから、な、取り合えずそのフーッッてのは止めなさい」
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