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本章
逃避行 野生動物 6/6
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「では、頂きましょう、どうする、それぞれでいい?」
「何をですか?」
テインは問う、
「君達には食事の前の祈りとか祝詞とかそういうの無いの」
とキーツは純朴に問い掛ける、三人はそれぞれの顔を見て同時にキーツに視線が向いた、
「良いのですか?野人は嫌うでしょう、我々のそのそういった風習は」
「散々文句言っておいてそれはないよ、俺はそういうの好きよ君達の風習も知りたいし」
テインは不思議そうにキーツの顔を見詰め、
「分かりました、いえ、ありがとうございます」
「そう言って貰えると嬉しい、ではそれぞれに見せ合おうか、俺の場合は簡単でね」
率先して見せる事とする。
地球で覚えたあれでいいかと魚に向けて手を合わせる、いただきますと一言告げた、三人は興味深げにそれを見守り、口々にどういう意味かとその仕草はと質問を浴びせる、
「いただきますはそのままだね、テインの憤りは分かるけど少なくとも俺は命をいただく事に感謝致しますと思って食事に向かってる、それとその命でもって自分が生かされている事を再確認する意味合いもあるのかな。手を合わせるのはなんだろう、敬意といって分かるかな?敬うって気持ち、これも感謝に類する思いなんだけどねそれを表現しているらしいよ」
静かに聞き入った三人はそれぞれに思う所があるらしく無言となった、
「私の知っている野人の作法とは大きく違いますね」
テインはやはり不思議そうにそう言った、
「うん、そうだろうね」
キーツが同意すると、南の方の風習ですかとテインはキーツの言葉を奪う、口元のみで笑いを作り次はテインねとキーツが言うと、テインはやや神妙な顔付で目を瞑り、
「始まりの森とハイエルフの法に従いて得られし供物と同化する事をお許し下さるよう、離れし大樹に乞い願うものなり」
右手の指先を額に当て文言を呟いた、一瞬その手が輝きすっとテインは目を開ける、以上ですとテインは告げてほっと息を吐いた、
「テイン、手、光った、魔法?」
魔法に強い興味を持ったエルステが問い掛ける、
「光ってた?、ならいいよって意味、光らなかったら駄目よって意味」
テインはにこやかに言う、
「でもね、光らなくても食事はしていいの、そういうものなの」
とテインは続ける、彼女らの文化の根幹には魔法が密接に関わっているらしい、さらにその文化を知りたいものだとキーツは思う、
「次、私、簡単なの」
とフリンダは志願して立ち上がると、空に両手を翳して彼女の言葉で何事か呟いた、彼女の言語を初めて耳にするがなるほどキーツには発音出来ないであろうというジルフェの見解に納得するしかない、
「以上」
フリンダは座る、
「どういう意味なの?」
キーツが問うと、
「神様、ありがとう、言った」
なるほどと納得すると、
「本来もっと長いのです、確か正式なお祈りは家族で食卓を踊りながら一周するとか聞いた事があります」
とテインが補足する、
「テイン、物知り」
フリンダは嬉しそうに頷いた、
「最後、俺」
エルステは冷めた焼き魚を掴むと皆にそうするよう促す、テインは慌てて木皿に煮物を載せて構える、
「皆で、一緒に、叫ぶ」
と注釈をつけ、ワォーンと大きく叫び手にした魚を大きく掲げる、三人は釣られてワォーンと叫びそれぞれに手にしたものを捧げ、
「以上、あと、食べる」
エルステは元気良く魚に喰い付き、皆もそれに倣って喰い付いた、頬張りながら三人は笑いを堪えきれずに吹き出しそうになる、ゴモゴモとフリンダは何かを話すが聞き取れずテインは口にしたきのこが熱かったのか大変難儀している、キーツも同様に勢いに負けて齧り付いたはいいものの魚の熱さに咽てしまった、その三人を不思議そうにエルステは見ていたが、やがて四人は笑いに包まれ月夜の下の夕食は和やかに慎ましく過ぎていった。
「何をですか?」
テインは問う、
「君達には食事の前の祈りとか祝詞とかそういうの無いの」
とキーツは純朴に問い掛ける、三人はそれぞれの顔を見て同時にキーツに視線が向いた、
「良いのですか?野人は嫌うでしょう、我々のそのそういった風習は」
「散々文句言っておいてそれはないよ、俺はそういうの好きよ君達の風習も知りたいし」
テインは不思議そうにキーツの顔を見詰め、
「分かりました、いえ、ありがとうございます」
「そう言って貰えると嬉しい、ではそれぞれに見せ合おうか、俺の場合は簡単でね」
率先して見せる事とする。
地球で覚えたあれでいいかと魚に向けて手を合わせる、いただきますと一言告げた、三人は興味深げにそれを見守り、口々にどういう意味かとその仕草はと質問を浴びせる、
「いただきますはそのままだね、テインの憤りは分かるけど少なくとも俺は命をいただく事に感謝致しますと思って食事に向かってる、それとその命でもって自分が生かされている事を再確認する意味合いもあるのかな。手を合わせるのはなんだろう、敬意といって分かるかな?敬うって気持ち、これも感謝に類する思いなんだけどねそれを表現しているらしいよ」
静かに聞き入った三人はそれぞれに思う所があるらしく無言となった、
「私の知っている野人の作法とは大きく違いますね」
テインはやはり不思議そうにそう言った、
「うん、そうだろうね」
キーツが同意すると、南の方の風習ですかとテインはキーツの言葉を奪う、口元のみで笑いを作り次はテインねとキーツが言うと、テインはやや神妙な顔付で目を瞑り、
「始まりの森とハイエルフの法に従いて得られし供物と同化する事をお許し下さるよう、離れし大樹に乞い願うものなり」
右手の指先を額に当て文言を呟いた、一瞬その手が輝きすっとテインは目を開ける、以上ですとテインは告げてほっと息を吐いた、
「テイン、手、光った、魔法?」
魔法に強い興味を持ったエルステが問い掛ける、
「光ってた?、ならいいよって意味、光らなかったら駄目よって意味」
テインはにこやかに言う、
「でもね、光らなくても食事はしていいの、そういうものなの」
とテインは続ける、彼女らの文化の根幹には魔法が密接に関わっているらしい、さらにその文化を知りたいものだとキーツは思う、
「次、私、簡単なの」
とフリンダは志願して立ち上がると、空に両手を翳して彼女の言葉で何事か呟いた、彼女の言語を初めて耳にするがなるほどキーツには発音出来ないであろうというジルフェの見解に納得するしかない、
「以上」
フリンダは座る、
「どういう意味なの?」
キーツが問うと、
「神様、ありがとう、言った」
なるほどと納得すると、
「本来もっと長いのです、確か正式なお祈りは家族で食卓を踊りながら一周するとか聞いた事があります」
とテインが補足する、
「テイン、物知り」
フリンダは嬉しそうに頷いた、
「最後、俺」
エルステは冷めた焼き魚を掴むと皆にそうするよう促す、テインは慌てて木皿に煮物を載せて構える、
「皆で、一緒に、叫ぶ」
と注釈をつけ、ワォーンと大きく叫び手にした魚を大きく掲げる、三人は釣られてワォーンと叫びそれぞれに手にしたものを捧げ、
「以上、あと、食べる」
エルステは元気良く魚に喰い付き、皆もそれに倣って喰い付いた、頬張りながら三人は笑いを堪えきれずに吹き出しそうになる、ゴモゴモとフリンダは何かを話すが聞き取れずテインは口にしたきのこが熱かったのか大変難儀している、キーツも同様に勢いに負けて齧り付いたはいいものの魚の熱さに咽てしまった、その三人を不思議そうにエルステは見ていたが、やがて四人は笑いに包まれ月夜の下の夕食は和やかに慎ましく過ぎていった。
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