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本章
逃避行 野生動物 5/6
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「これが、魔法すごいな」
説教タイムの後釣りというか漁をして三人が充足できる程度の釣果を上げる頃に陽は翳りを見せだし焚火を起こす事とした、川の石で囲いを作り焚き付けを作ろうとナイフを取り出すと、テインが積み上げた薪の中から太い一本を選別し左手に構えると右手を薪の端に翳す、テインの視線は薪の一点に注がれ小さく何事か呟やき続ける、何事かと他の三人が見詰める中薪はその内側から炎を発し赤く燃え出した、キーツは思わず感嘆しエルステとフリンダもそれに続く、
「二人は初めて?キーツも知らないの?」
南の方には無いのかしらとテインは不思議そうに問い掛ける、その視線は薪への注視を外さずに右手はゆっくりと薪の中ほどへ移動した、炎はそれに追随するようにその範囲を拡げやがて持ち手に困る程広がると囲いの中へそっと置かれた、キーツはそれに細い薪を組むように重ねていく、炎はやがてそれらも巻き込み安定した。
「魔法、知ってる、けど、使えない」
フリンダは嬉々としてそう言った、エルステも同意する、キーツもまた事前情報として知識は入れていたが実際に目にするとなかなかに興味深い現象であった、その仕組みをゆっくり調査してあわよくば自分も使えるようになりたいと思うが今その余裕は無さそうである、そういえば地球の同僚でヨーロッパを担当している刑事の一人が魔法使いと呼ばれていたなと思い出す、直接接触が無くアメリカ担当刑事からのまた聞きでその手管を知ったが、実際に魔法と呼ばれる現象を目にするとその魔法使いの能力を改めて知りたくなった。
「やってみる?」
テインは薪の一本を取り上げつつ二人を見ると、二人はほぼ同時にやるといって薪を手に取った、キーツは内蔵を取り出した魚を並べつつ収穫物の入った鞄を覗いて途方に暮れる、
「ごめん、テインこの食材はどうすればいいのかな」
「ん、私やるわねナイフ貸して、鍋もあると嬉しい、あと塩、あ、水も」
すっかりテインの尻に敷かれているように感じる、あの説教タイムが痛かった、立場というか立ち位置が変わったようであった、テインは二人の母親代わりとなっており、キーツはその駄目な保護者といった風情である、駄目とはなんだと思うも子育ての経験が無くまして妻帯の経験も家族の関係性すら経験不足なキーツにとってはどうにもこうにも対処のしようがない事ばかりである。
キーツはジュウシに括り付けた中型の鍋を外しつつまぁいいかそれはそれでと思う事とした、塩の瓶をすっかり乱雑になった荷の中から探り出す、川から鍋に水を汲み二つ揃えてテインの前に置いた、
「それで、まずは炎を想像するの頭の中でそしてその思念がゆっくりと首に伝わって、それから肩にそして腕、そして手に」
テインは二人に諭すように言葉を掛ける、二人はテインの真似をして薪を構えて集中している、静かでいいなとキーツは思った、
「すると木の中に炎が生まれる感覚が左手から流れこんでくるのね、そしたら」
テインは続けるが二人の持つ薪に変化は無い、テインは言葉を続けながら鞄の中からキノコを取り出し一つ一つ確認しながら柄を落とし傘を分割する、それを鍋に放り込みながら、
「どう、対象の変化が実感できる」
と二人に問うた、二人は無理とあっさりと答え大きく息を吐く、呼吸を忘れる程集中していたようだった、
「うん、何度も練習すればその内できるかも」
あくまで出来るかもだけどと続けた、なにやら含みのある言葉であったがそれに気付いたのはキーツだけのようである、
「わかった、ガンバル」
エルステは自分に言い聞かせるように宣言した、そして集中を持続させる、フリンダはむぅとエルステを睨んだ後にさっと手にした薪を焚火にくべ、いいと言って拗ねて見せ、
「魚、焼く、嫌い」
興味は魚に移ったらしい、キーツの前に並ぶ魚を見て言い捨てた、
「そうだったか、生のもあるよ、エルステも生がいい?」
エルステに話し掛けるも返事は無く深く集中しているようだ、昨晩の様子を思い出すと獣人は調理に火を扱わないのかもしれないなとキーツは考える、火そのものは扱うし慣れてはいるようであるが食物を加工する文化を持たないのかもしれない、キーツは火に掛けていない魚を大振りの葉に載せエルステに手渡す、
「違う、こう」
受け取った魚に串を打つが独特の形状であった、開いた腹側を大きく開き火に掛ける、内蔵側を主に炙りたいらしい、
「内側から焼きたいの?」
「違う、内蔵、周り、虫入る、あと、皮」
なるほどとキーツは答えた、エルステは寄生中の多い内蔵とその周りの肉及び皮の周辺を炙りたいらしい、肉そのものは生に近い方が彼等の好みなのだろう、それなりに合理的な理由にキーツは納得した。
「俺、焼く、食える」
エルステは魔法の練習に飽きたらしく薪を焚火に突っ込んでキーツを見る、
「焼いたのでいいよってこと?」
キーツが問うと大きく頷いた、君は良い子だなぁとキーツがしみじみ言うと、
「でも、冷やす、熱い、駄目」
とこれまた注文が多かった、味にケチをつけられるよりましかと苦笑いを浮かべてキーツは了解の旨を伝える、
「御免なさい、これ洗っていただけるかしら」
今度はテインである、処理された食材の入った鍋を手にしている、はいはいとキーツは受け取り川に降りた、
「具材が浸るぐらいに水も欲しいです」
暗く静かな川面に蹲るキーツの背に追加の注文が入った、左手をヒラヒラと彼等に振って了解の意思表示とする。
「こんな感じ?」
鍋の中をテインに確認してもらい了解を得ると火に掛ける、それぞれの食材が仕上がるまでもう暫くかかりそうであった、
「テイン、足を確認しておこう」
キーツがテインを窺うと、自分で何とかとテインは包帯をゆっくりと外し変色し足裏に貼り付いた薬草を剥がすと包帯の端で患部を拭った、
「だいぶ良いようです、出血は無いですし傷も塞がってますね」
薬草の効果は絶大のようである、縫合が必要かなとも思った傷であったが半日も経たずに癒合するとは、テインの新陳代謝が激しいのか薬草の効果なのか調査が必要かもなと考える、
「フリンダのお陰だね、ありがとう、フリンダ」
フリンダは顔をクシャクシャにして任せろテインと胸を張る、
「もう、包帯は必要無いですね、清潔にして乾燥させれば充分かと思います」
テインはそう言って包帯を纏め直すがそれをキーツは遮って、
「包帯は煮沸消毒しておこう、綺麗な布で患部を綺麗にしたい所だけれど何かあったかな」
と乱雑に纏めた包帯を受け取りジュウシの荷物を漁る、使用に耐えられそうな布切れを見付けそれをポットのお湯で洗浄するとテインに渡した、
「川で流す?拭くだけでいい?」
拭くだけで取り合えずとテインは受け取った布で足裏を清拭した。
「となると、やっぱり、サンダルか何かあったほうがいいなぁ」
と荷物を漁ろうと腰を上げるも大した物はなかったんだと座り直した、
「そうですね、動物の革とかがあれば何とか加工できると思いますが、革そのものも材として利用できるまでに手間が掛かりますし」
「罠、作る、鳥、栗鼠、食べる、革、使える」
唐突な提案である、フリンダの声は明るく宵闇に溶け込んだ、
「罠?作れるの?すごいな」
「勿論、フリンダ、任せる、ナイフ、貸して」
今にも飛び出しそうなフリンダを見てテインが制止する、
「待って、食事を終えてから、ね」
と諭すように語り掛けるとフリンダの熱は一旦収まったようで了解の旨を小さく呟く、
「魚はイイ感じだよ、半分冷ましておこう」
キーツはエルステの前に焼き上げた魚を並べつつ鍋の様子を見る、
「どのくらい火を通すの?」
とテインに問うと、
「温めるくらいで良いのです、殆ど生で食せますから」
と一緒に鍋を覗き込み、もう少しですかねと中身を一度かき回した、
「そう言えば、カバって結構居るの?ここら辺」
とキーツが話題を振った、テインは眉根が寄りエルステとフリンダの耳は心なしか萎れている、敏感な内容だったかな、そりゃそうか怒られたばかりだしと思う、
「えぇ、居ますよでも専ら森の奥の方で暮らしてると思われます」
「俺の故郷だと直接見た事は無いけど水辺に多かったかな、森の中は聞いた事が無くてね」
「そうですか、結構違うものなんですね」
「ふと思ったんだが、カバって美味しいんだろうか」
キーツの言葉はさらに敏感な内容であったらしい、テインはいよいよ不快な顔をし、エルステとフリンダは顔を見合わせる、
「カバ、駄目、強い、熊、一緒」
エルステがおずおずとキーツを諭す、
「熊、大人、五人、カバ、大人、十人」
それだけの労力が必要という事だろうか、
「カバ、怖い、口、大きい」
フリンダがエルステに続く、彼等にとってカバは忌避対象らしい、
「なんでもかんでも食べれば良いというものではないと思います」
テインは違う方向から非難する、
「野人だけですよ穀物から野菜から魚から獣やら、あなた方は節操が無い、動いているものは何でも食せると思っている、動かないものでも取り合えず口に入れる、その上味がいいだの悪いだのどうかしていますよ、大体ですねあれ程街中に食物が溢れているくせにさらに食を求めるなど言語道断です、あの食材を全てちゃんと消費した上で求めるならまだしも、底がないんじゃないかと気分が悪くなります、あなた方は、そのうち私達や同族も食べる気なんですか、まったく」
テインの言葉にどこぞも変わらんのだなと思いながら、
「悪かった、御免、いや・・・」
とキーツは口籠り、
「子供のカバがいてさ、いや、美味しそうだと思ったわけではないよ、ただ、カバも子供は可愛いなと思ってね」
「ホント、見たい」
「うん、俺も」
と子供二人は興味を持ってくれた様子であった、森の中ではその姿までは視認できなかったのだろう、それもそうで彼等は命の危険に晒されていたのである、カバの子供等二の次三の次であるのは当然である、対してテインはどうだかと鼻息を荒くした、
「だから、母親カバかな、攻撃的だったんだと思うよ」
なるほどと三人はそれぞれに納得した様子で、何とか切り抜けたかなとキーツは安堵する、しかしテインの険は取れていない様子であった、
「ま、ほら食べちゃおう、フリンダの分ももう良さそう?」
フリンダの前には彼女にとって丁度良く焼けた魚が数匹並びさらに数匹が焙られていた、
説教タイムの後釣りというか漁をして三人が充足できる程度の釣果を上げる頃に陽は翳りを見せだし焚火を起こす事とした、川の石で囲いを作り焚き付けを作ろうとナイフを取り出すと、テインが積み上げた薪の中から太い一本を選別し左手に構えると右手を薪の端に翳す、テインの視線は薪の一点に注がれ小さく何事か呟やき続ける、何事かと他の三人が見詰める中薪はその内側から炎を発し赤く燃え出した、キーツは思わず感嘆しエルステとフリンダもそれに続く、
「二人は初めて?キーツも知らないの?」
南の方には無いのかしらとテインは不思議そうに問い掛ける、その視線は薪への注視を外さずに右手はゆっくりと薪の中ほどへ移動した、炎はそれに追随するようにその範囲を拡げやがて持ち手に困る程広がると囲いの中へそっと置かれた、キーツはそれに細い薪を組むように重ねていく、炎はやがてそれらも巻き込み安定した。
「魔法、知ってる、けど、使えない」
フリンダは嬉々としてそう言った、エルステも同意する、キーツもまた事前情報として知識は入れていたが実際に目にするとなかなかに興味深い現象であった、その仕組みをゆっくり調査してあわよくば自分も使えるようになりたいと思うが今その余裕は無さそうである、そういえば地球の同僚でヨーロッパを担当している刑事の一人が魔法使いと呼ばれていたなと思い出す、直接接触が無くアメリカ担当刑事からのまた聞きでその手管を知ったが、実際に魔法と呼ばれる現象を目にするとその魔法使いの能力を改めて知りたくなった。
「やってみる?」
テインは薪の一本を取り上げつつ二人を見ると、二人はほぼ同時にやるといって薪を手に取った、キーツは内蔵を取り出した魚を並べつつ収穫物の入った鞄を覗いて途方に暮れる、
「ごめん、テインこの食材はどうすればいいのかな」
「ん、私やるわねナイフ貸して、鍋もあると嬉しい、あと塩、あ、水も」
すっかりテインの尻に敷かれているように感じる、あの説教タイムが痛かった、立場というか立ち位置が変わったようであった、テインは二人の母親代わりとなっており、キーツはその駄目な保護者といった風情である、駄目とはなんだと思うも子育ての経験が無くまして妻帯の経験も家族の関係性すら経験不足なキーツにとってはどうにもこうにも対処のしようがない事ばかりである。
キーツはジュウシに括り付けた中型の鍋を外しつつまぁいいかそれはそれでと思う事とした、塩の瓶をすっかり乱雑になった荷の中から探り出す、川から鍋に水を汲み二つ揃えてテインの前に置いた、
「それで、まずは炎を想像するの頭の中でそしてその思念がゆっくりと首に伝わって、それから肩にそして腕、そして手に」
テインは二人に諭すように言葉を掛ける、二人はテインの真似をして薪を構えて集中している、静かでいいなとキーツは思った、
「すると木の中に炎が生まれる感覚が左手から流れこんでくるのね、そしたら」
テインは続けるが二人の持つ薪に変化は無い、テインは言葉を続けながら鞄の中からキノコを取り出し一つ一つ確認しながら柄を落とし傘を分割する、それを鍋に放り込みながら、
「どう、対象の変化が実感できる」
と二人に問うた、二人は無理とあっさりと答え大きく息を吐く、呼吸を忘れる程集中していたようだった、
「うん、何度も練習すればその内できるかも」
あくまで出来るかもだけどと続けた、なにやら含みのある言葉であったがそれに気付いたのはキーツだけのようである、
「わかった、ガンバル」
エルステは自分に言い聞かせるように宣言した、そして集中を持続させる、フリンダはむぅとエルステを睨んだ後にさっと手にした薪を焚火にくべ、いいと言って拗ねて見せ、
「魚、焼く、嫌い」
興味は魚に移ったらしい、キーツの前に並ぶ魚を見て言い捨てた、
「そうだったか、生のもあるよ、エルステも生がいい?」
エルステに話し掛けるも返事は無く深く集中しているようだ、昨晩の様子を思い出すと獣人は調理に火を扱わないのかもしれないなとキーツは考える、火そのものは扱うし慣れてはいるようであるが食物を加工する文化を持たないのかもしれない、キーツは火に掛けていない魚を大振りの葉に載せエルステに手渡す、
「違う、こう」
受け取った魚に串を打つが独特の形状であった、開いた腹側を大きく開き火に掛ける、内蔵側を主に炙りたいらしい、
「内側から焼きたいの?」
「違う、内蔵、周り、虫入る、あと、皮」
なるほどとキーツは答えた、エルステは寄生中の多い内蔵とその周りの肉及び皮の周辺を炙りたいらしい、肉そのものは生に近い方が彼等の好みなのだろう、それなりに合理的な理由にキーツは納得した。
「俺、焼く、食える」
エルステは魔法の練習に飽きたらしく薪を焚火に突っ込んでキーツを見る、
「焼いたのでいいよってこと?」
キーツが問うと大きく頷いた、君は良い子だなぁとキーツがしみじみ言うと、
「でも、冷やす、熱い、駄目」
とこれまた注文が多かった、味にケチをつけられるよりましかと苦笑いを浮かべてキーツは了解の旨を伝える、
「御免なさい、これ洗っていただけるかしら」
今度はテインである、処理された食材の入った鍋を手にしている、はいはいとキーツは受け取り川に降りた、
「具材が浸るぐらいに水も欲しいです」
暗く静かな川面に蹲るキーツの背に追加の注文が入った、左手をヒラヒラと彼等に振って了解の意思表示とする。
「こんな感じ?」
鍋の中をテインに確認してもらい了解を得ると火に掛ける、それぞれの食材が仕上がるまでもう暫くかかりそうであった、
「テイン、足を確認しておこう」
キーツがテインを窺うと、自分で何とかとテインは包帯をゆっくりと外し変色し足裏に貼り付いた薬草を剥がすと包帯の端で患部を拭った、
「だいぶ良いようです、出血は無いですし傷も塞がってますね」
薬草の効果は絶大のようである、縫合が必要かなとも思った傷であったが半日も経たずに癒合するとは、テインの新陳代謝が激しいのか薬草の効果なのか調査が必要かもなと考える、
「フリンダのお陰だね、ありがとう、フリンダ」
フリンダは顔をクシャクシャにして任せろテインと胸を張る、
「もう、包帯は必要無いですね、清潔にして乾燥させれば充分かと思います」
テインはそう言って包帯を纏め直すがそれをキーツは遮って、
「包帯は煮沸消毒しておこう、綺麗な布で患部を綺麗にしたい所だけれど何かあったかな」
と乱雑に纏めた包帯を受け取りジュウシの荷物を漁る、使用に耐えられそうな布切れを見付けそれをポットのお湯で洗浄するとテインに渡した、
「川で流す?拭くだけでいい?」
拭くだけで取り合えずとテインは受け取った布で足裏を清拭した。
「となると、やっぱり、サンダルか何かあったほうがいいなぁ」
と荷物を漁ろうと腰を上げるも大した物はなかったんだと座り直した、
「そうですね、動物の革とかがあれば何とか加工できると思いますが、革そのものも材として利用できるまでに手間が掛かりますし」
「罠、作る、鳥、栗鼠、食べる、革、使える」
唐突な提案である、フリンダの声は明るく宵闇に溶け込んだ、
「罠?作れるの?すごいな」
「勿論、フリンダ、任せる、ナイフ、貸して」
今にも飛び出しそうなフリンダを見てテインが制止する、
「待って、食事を終えてから、ね」
と諭すように語り掛けるとフリンダの熱は一旦収まったようで了解の旨を小さく呟く、
「魚はイイ感じだよ、半分冷ましておこう」
キーツはエルステの前に焼き上げた魚を並べつつ鍋の様子を見る、
「どのくらい火を通すの?」
とテインに問うと、
「温めるくらいで良いのです、殆ど生で食せますから」
と一緒に鍋を覗き込み、もう少しですかねと中身を一度かき回した、
「そう言えば、カバって結構居るの?ここら辺」
とキーツが話題を振った、テインは眉根が寄りエルステとフリンダの耳は心なしか萎れている、敏感な内容だったかな、そりゃそうか怒られたばかりだしと思う、
「えぇ、居ますよでも専ら森の奥の方で暮らしてると思われます」
「俺の故郷だと直接見た事は無いけど水辺に多かったかな、森の中は聞いた事が無くてね」
「そうですか、結構違うものなんですね」
「ふと思ったんだが、カバって美味しいんだろうか」
キーツの言葉はさらに敏感な内容であったらしい、テインはいよいよ不快な顔をし、エルステとフリンダは顔を見合わせる、
「カバ、駄目、強い、熊、一緒」
エルステがおずおずとキーツを諭す、
「熊、大人、五人、カバ、大人、十人」
それだけの労力が必要という事だろうか、
「カバ、怖い、口、大きい」
フリンダがエルステに続く、彼等にとってカバは忌避対象らしい、
「なんでもかんでも食べれば良いというものではないと思います」
テインは違う方向から非難する、
「野人だけですよ穀物から野菜から魚から獣やら、あなた方は節操が無い、動いているものは何でも食せると思っている、動かないものでも取り合えず口に入れる、その上味がいいだの悪いだのどうかしていますよ、大体ですねあれ程街中に食物が溢れているくせにさらに食を求めるなど言語道断です、あの食材を全てちゃんと消費した上で求めるならまだしも、底がないんじゃないかと気分が悪くなります、あなた方は、そのうち私達や同族も食べる気なんですか、まったく」
テインの言葉にどこぞも変わらんのだなと思いながら、
「悪かった、御免、いや・・・」
とキーツは口籠り、
「子供のカバがいてさ、いや、美味しそうだと思ったわけではないよ、ただ、カバも子供は可愛いなと思ってね」
「ホント、見たい」
「うん、俺も」
と子供二人は興味を持ってくれた様子であった、森の中ではその姿までは視認できなかったのだろう、それもそうで彼等は命の危険に晒されていたのである、カバの子供等二の次三の次であるのは当然である、対してテインはどうだかと鼻息を荒くした、
「だから、母親カバかな、攻撃的だったんだと思うよ」
なるほどと三人はそれぞれに納得した様子で、何とか切り抜けたかなとキーツは安堵する、しかしテインの険は取れていない様子であった、
「ま、ほら食べちゃおう、フリンダの分ももう良さそう?」
フリンダの前には彼女にとって丁度良く焼けた魚が数匹並びさらに数匹が焙られていた、
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