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本章
接触 5
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「よろしく、テイン、エルステ、フリンダ」
キーツはそれぞれの顔を見詰め微笑むと、
「あらためて宜しくね、お腹はいっぱい?食べ足りなかったら言ってね」
と腰を上げようとする、
「あ、いえ、充分です」
とテインは恐縮する、エルステとフリンダも充分な様子で首を左右に振っていた、
「なら良かった」
キーツは座り直しそれでと話を続ける、
「さっきも話した通り、君達の安全に暮らせる所まで行きたいと思うのだけど・・・、心当たりは有る?」
「はい、私の故郷であれば、離れて長いですが安全は安全と思います、噂ではケイネスとレオパルディの難民もそちらへ流れているようですし、同族に合流するのがこの二人の為にも良いかと思います」
「なるほど、戦争が始まって長いのだよね、難民も生まれるか」
「そうですね、考えられるのはそこしかないかと思います」
獣人二人も同意のようであった、
「ではそこを目指そうか、道は分かる?」
「はい、大凡は但し・・・」
とテインは言葉を詰まらせ暫し俯き、
「そこまでの距離がかなりあります、街道を使えば7日程度、街道以外だとそれ以上だと思いますが、これも馬車を使った場合ですね、徒歩ではどうでしょう、それに街道を行きますと村と街を通る事になります、その場合、私達は捕まるでしょうか・・・」
不安気に視線を落とす。
テインの杞憂は彼等の身分にあった、目の前の人物によってその身を開放される事が確実であるとはいえ視点を変えればそれは逃亡奴隷である、軍に限らず捕まれば再び奴隷となりさらに罰も与えられるだろう。
キーツはなるようになるだろうなぁと簡単に考えている、キーツがその気になればテインの故郷迄ひとっ飛びも可能ではある、しかし敢えてその手というか過ぎた技術は使わないに越した事は無いなと自らを戒めた。
「街道以外はどうだろう?」
キーツはジルフェが作成した現地図を思い出しながらテインの思考を誘導する、
「すいません、街道以外を通った事は無いです、危険ですので」
誘導は失敗のようである、危険であるとの言葉もそりゃそうかと納得した、ではとキーツは一計を案じ、
「川沿いか川を下るのはどう?」
その案にテインは眉根を寄せ考え込む、
「タンガ川を下さるのは難しいと思います、川沿いであればまぁ・・・迷う事は無いですが恐らく険しいですよ、そう聞いています」
タンガ川とはすぐ側の大河の事である、地図上では西に流れ大海に注ぎ込んでいた、
「優雅に川下りは無理かぁ」
優雅ですかとテインはその言葉尻を掴んで鼻白むも、
「タズ川であれば下りも上りも可能だと聞いた事があります、しかし、遠いですね」
タズ川とはタンガ川より北方を流れる大河である、しかしテインの言葉通りその川迄は距離があった、二人が知恵を絞っている間獣人二人はやけに静かにしていた、キーツがそちらを伺うと二人共に瞼を重くしている、彼等の時間経過と経緯を考えれば緊張の糸がやっと切れた状態なのであろう、空腹も満たし眠くなるのも必定であげく今は暁も見ない夜なのである。
「考えるのは少し休んでからにしようか」
そうキーツは提案しつつ獣人二人を指差す、テインは二人を伺いそうですねと同意した、何か掛けるものを持ってくるよとキーツはジュウシから薄汚れたマントを二枚持ってくるとテインに渡す、
「何から何までありがとうございます」
テインはそう言って初めて微笑んだ、その言動から大人びているなと感じるがその微笑みはとても愛らしく子供のようであった。
「先に寝て、火の番は俺が」
それは悪いですとテインは言う、
「今日だけ特別な、明日からは交代で」
とキーツは無理矢理にテインを休ませる、キーツにとっては見張り等ジュウシとジルフェに任せれば良い事なのだがそう言ってもテインは理解してはくれないだろう。
テインは獣人二人にマントを掛け自分もその身を包むと横になる、眠れないかもしれないが身体を温めて休む事は生きる上で重要な事である。
さてととキーツは今後の対応について思案する、ギャエルの反応は予想外であったが三人との関係性は理想的であると考える、及第点と言って良いだろう、このまま彼等を送りつつ現地の情報を取得しながらアヤコの探索と帰還方法を探る、やってる事が刑事というよりも諜報だなと思いつつ、テインの意を汲みながら彼女の故郷迄どう向かうかが問題か、それは朝を迎えてから改めてで良いだろう。
三人を伺うと微かな吐息が聞こえる、テインもまた疲労が溜っていたのであろう吐息はやがて三重奏となっていた。
キーツはそれぞれの顔を見詰め微笑むと、
「あらためて宜しくね、お腹はいっぱい?食べ足りなかったら言ってね」
と腰を上げようとする、
「あ、いえ、充分です」
とテインは恐縮する、エルステとフリンダも充分な様子で首を左右に振っていた、
「なら良かった」
キーツは座り直しそれでと話を続ける、
「さっきも話した通り、君達の安全に暮らせる所まで行きたいと思うのだけど・・・、心当たりは有る?」
「はい、私の故郷であれば、離れて長いですが安全は安全と思います、噂ではケイネスとレオパルディの難民もそちらへ流れているようですし、同族に合流するのがこの二人の為にも良いかと思います」
「なるほど、戦争が始まって長いのだよね、難民も生まれるか」
「そうですね、考えられるのはそこしかないかと思います」
獣人二人も同意のようであった、
「ではそこを目指そうか、道は分かる?」
「はい、大凡は但し・・・」
とテインは言葉を詰まらせ暫し俯き、
「そこまでの距離がかなりあります、街道を使えば7日程度、街道以外だとそれ以上だと思いますが、これも馬車を使った場合ですね、徒歩ではどうでしょう、それに街道を行きますと村と街を通る事になります、その場合、私達は捕まるでしょうか・・・」
不安気に視線を落とす。
テインの杞憂は彼等の身分にあった、目の前の人物によってその身を開放される事が確実であるとはいえ視点を変えればそれは逃亡奴隷である、軍に限らず捕まれば再び奴隷となりさらに罰も与えられるだろう。
キーツはなるようになるだろうなぁと簡単に考えている、キーツがその気になればテインの故郷迄ひとっ飛びも可能ではある、しかし敢えてその手というか過ぎた技術は使わないに越した事は無いなと自らを戒めた。
「街道以外はどうだろう?」
キーツはジルフェが作成した現地図を思い出しながらテインの思考を誘導する、
「すいません、街道以外を通った事は無いです、危険ですので」
誘導は失敗のようである、危険であるとの言葉もそりゃそうかと納得した、ではとキーツは一計を案じ、
「川沿いか川を下るのはどう?」
その案にテインは眉根を寄せ考え込む、
「タンガ川を下さるのは難しいと思います、川沿いであればまぁ・・・迷う事は無いですが恐らく険しいですよ、そう聞いています」
タンガ川とはすぐ側の大河の事である、地図上では西に流れ大海に注ぎ込んでいた、
「優雅に川下りは無理かぁ」
優雅ですかとテインはその言葉尻を掴んで鼻白むも、
「タズ川であれば下りも上りも可能だと聞いた事があります、しかし、遠いですね」
タズ川とはタンガ川より北方を流れる大河である、しかしテインの言葉通りその川迄は距離があった、二人が知恵を絞っている間獣人二人はやけに静かにしていた、キーツがそちらを伺うと二人共に瞼を重くしている、彼等の時間経過と経緯を考えれば緊張の糸がやっと切れた状態なのであろう、空腹も満たし眠くなるのも必定であげく今は暁も見ない夜なのである。
「考えるのは少し休んでからにしようか」
そうキーツは提案しつつ獣人二人を指差す、テインは二人を伺いそうですねと同意した、何か掛けるものを持ってくるよとキーツはジュウシから薄汚れたマントを二枚持ってくるとテインに渡す、
「何から何までありがとうございます」
テインはそう言って初めて微笑んだ、その言動から大人びているなと感じるがその微笑みはとても愛らしく子供のようであった。
「先に寝て、火の番は俺が」
それは悪いですとテインは言う、
「今日だけ特別な、明日からは交代で」
とキーツは無理矢理にテインを休ませる、キーツにとっては見張り等ジュウシとジルフェに任せれば良い事なのだがそう言ってもテインは理解してはくれないだろう。
テインは獣人二人にマントを掛け自分もその身を包むと横になる、眠れないかもしれないが身体を温めて休む事は生きる上で重要な事である。
さてととキーツは今後の対応について思案する、ギャエルの反応は予想外であったが三人との関係性は理想的であると考える、及第点と言って良いだろう、このまま彼等を送りつつ現地の情報を取得しながらアヤコの探索と帰還方法を探る、やってる事が刑事というよりも諜報だなと思いつつ、テインの意を汲みながら彼女の故郷迄どう向かうかが問題か、それは朝を迎えてから改めてで良いだろう。
三人を伺うと微かな吐息が聞こえる、テインもまた疲労が溜っていたのであろう吐息はやがて三重奏となっていた。
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