セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
上 下
1,028 / 1,159
本編

72話 初雪 その37

しおりを挟む
「いやー、丁度良かったよー」

タロウがウキウキと階段を下り、その後ろに消沈した様子のブラスと苦笑いを浮かべたバーレントが続いた、三階での打合せを終えるとタロウはブラスに依頼したいものがあったんだよとニヤリと微笑んだ、エッと言葉を無くすブラスである、さらにバーレントじゃなくてリノルトと一緒に来れば話しが早かったなどと大変に失礼な物言いで、しかしバーレントは逆にホッと安堵し、ブラスはこれだから顔を出したくなかったんだと口には出さずともジロリとバーレントを睨んでしまった、そして三人が食堂に入ると、

「あー、タロウー、これー、これ何ー」

ミナが木簡を片手にタロウに抱き着き、他の子供達はヘラルダの指導の下、熱心にマリンバに向かっている、

「おう、なんだ?」

「これー、オユウギー、あと、カメー」

「ん?おゆうぎ?」

「うん、メダカのこれー、オユウギってなにー」

タロウはミナを見下ろして首を傾げ、瞬時にアーもしかしてーと理解した、ブラスとバーレントもほぼ同時にオユウギとは?と首を傾げている、

「なんだ、わかんない字は無かったんじゃないのか?」

「うー、読めなくなかったー」

「そりゃ・・・そうだろな」

「うん、でも、歌ってみたら変だったー」

「そっかー、変かー」

「うん、だからオユウギってなにー」

ミナの切実で真剣な瞳に、タロウはまぁそうかもしれないなと頬を指先でかく、どうやら誤魔化し翻訳に漏れがあったらしい、そして確かにお遊戯なる単語は王国には無い、踊りかもしくは戯れとかに変更するべきであったかと瞬時に思い立つもそれは見事な後の祭りというもので、

「あー・・・ヘラルダさんね」

とタロウはミナの頭に手を置き、

「子供の為の踊りってある?」

大変に曖昧な質問を口にする、ヘラルダはん?と首を傾げ、ブラスとバーレントも踊り?と首を傾げる、

「・・・子供の為の・・・踊り、ですか?」

「うん、子供が躍る踊り、歌に合わせて・・・」

「・・・聞いた事無いです・・・ね・・・」

サスキアの手を取ってマリンバを叩いていたヘラルダはゆっくりとその手が止まり、サスキアはウーと寂しそうにヘラルダを見上げる、

「そっか・・・そうだよなー、だって、童謡も無かったんだし・・・それに合わせた踊りなんて無いよなー」

うーんとタロウは首を捻る、

「タロー」

ミナは寂しそうにタロウを見上げ、ノールとノーラの手も止まってしまった、唐突に食堂は静かになり、妙に沈鬱な雰囲気となってしまう、

「あー・・・教える事は出来るんだが・・・」

その沈黙に耐え切れなくなったタロウがさてどうしたものかとミナを見下ろす、

「教えてー、なにー」

「えっとな・・・ちょっとした踊りなんだよ・・・」

「踊りー」

「うん、なんていうか・・・歌いながら踊る・・・であってるのかな?ねこふんじゃったって歌いながら踊るんだよ・・・いわば・・・ねこふんじゃったの踊り?」

すると、みるみるとミナの顔が明るくなり、

「教えてー、踊りたいー、歌いたいー、ねこふんじゃったの踊りー、楽しそー」

ピョンと大きく飛び跳ねた、エッと驚くのはヘラルダである、踊りそのものは勿論王国にもあり、それは祭りや地方毎に違うであろうが、そこここで楽しまれている文化ではある、特にルートの調べで輪になって踊る事が多く、夜の店では少ないが、春の祭りでは楽師はその輪の中心にあって、大変に楽しまれている、故に、まず驚いたのが、その踊りの曲に歌詞がある事で、そして歌詞と共に踊るという概念であった、いや、この場合は逆なのかもしれない、先に曲と歌があり、そこに踊りがくっついたのであろうか、思考を様々に巡らせるも、想像することは難しく混乱するばかりであった、

「まぁ・・・楽しいと思うぞ、猫の真似とかするし・・・っていうか殆どそれだな・・・うん・・・」

タロウが右目を閉じて頷くと、

「ニャンコの真似ー!!」

「ゴロニャーゴ?」

「ゴロニャーゴ!!」

ミナが叫びノールとノーラが条件反射とばかりに声を上げた、

「ゴロニャーゴー」

ミナが答える、一体どこの国の言葉だよと微笑んでしまうタロウとヘラルダ、訳が分からないと困惑するブラスとバーレントである、

「ゴロニャー」

「ゴニャー」

「ニャーゴ」

「ニャー」

ミナは猫語を駆使してタロウの脚にしがみ付き、ノールとノーラもニャーニャー言いながらタロウの腕を掴む、サスキアもそっとヘラルダの元から離れてタロウの裾に手を伸ばした、アラッとヘラルダが微笑んでしまう、人見知りのサスキアが男性の服を掴むなど初めての事かもしれなかった、どうやらサスキアはすっかりタロウに慣れて気を許したらしい、

「君らね、何言ってるかわからん」

しかし、タロウはどうしたもんだかと顔を顰める、

「ニャー」

「ギシャー」

「ゴロニャー」

「ニャー」

三人同時に競うように猫の真似事であった、どうやら非難しているらしい、サスキアもウーとヌーとかと呻いているようで、

「あー・・・ちゃんと話さない子には教えないぞ」

ムッとタロウに睨まれやっと静かになる子供達、しかしそれもほんの一瞬で、

「・・・教えてー、ニャンコの真似上手かったでしょー」

「上手だったー?」

「ノール得意なのー、サスキアもうなるのが上手いのー」

「ねー」

再びギャーギャーと姦しくなる、

「はいはい、じゃ、教えるけど・・・どうしようかな、ヘラルダ先生、どんなもん?」

とここは担当者がいる以上そちらに確認するのが正道であろう、さらに断られればそれでいいとの一縷の望みもあった、

「・・・えっと・・・踊りですか?ねこふんじゃったの?」

「うん、そういうのがあるんだよ、ほら、ミナが分かんないって言ってたお遊戯ね、それが子供の踊りの事でね、そういう総称なんだけど・・・」

「なら、そう仰ればよかったんですよ、変にほら、ねこふんじゃったの踊りとか言うから・・・」

ヘラルダが流石にこれは擁護できないなと目を細めて苦笑いである、子供達の熱い視線がタロウとヘラルダの間を行き来し、タロウはだよなーとどうしたもんだかと子供達を見下ろす、

「・・・まぁ・・・簡単なやつな・・・」

ミナの爛々と輝く瞳と、ノールとノーラの期待に満ちた満面の笑み、サスキアの縋るような視線にタロウは根負けしたのか優しく微笑む、

「やったー、どうやるのー?どうするのー」

ミナがピョンピョン飛び跳ね、

「ニャンコの踊りー」

「ふんじゃったの踊りー」

ノールとノーラもはしゃぎだす、サスキアは無言でタロウの脚に抱き着いた、どうやら感謝を表しているらしい、もしくは歓喜であろうか、

「こら暴れるな、じゃ・・・うん、先にお仕事していいか?それが終わってからな」

「うん」

と素直な笑顔を浮かべる四人である、

「ん、じゃ、ごめん、先生、これ一台借りるね」

とマリンバに手を伸ばすタロウ、そのまま振り向き、

「まずはこれなんだがさ」

と大変に渋い顔をブラスに向けた、

「あっ、はい」

とブラスがいいのかなと不思議そうに歩み寄る、そうしてタロウはマリンバの構造を取り合えずと説明し、その音色を聞かせた、これにはブラスもバーレントもホヘーと感心するしかない、

「木なんですね」

「木だねー」

「木なんだよ」

当たり前の事を確認しあう三人である、

「肝としてはこの木の長さ、それと裏側のこの微妙な凹み?」

「あっ、ホントだ抉ってある・・・」

「うん、これでね音が異なるんだ」

「はえー・・・こりゃ凄いっすね」

「単純なのに良い音ですねー、しっかり楽器になってる・・・これは面白いな・・・」

大人二人が感心するのを子供達も嬉しそうに見上げ、ヘラルダもまたなるほどそういう理屈なのかと理解を深める、

「だから・・・取り合えず作ってよ」

しかしタロウが気楽に言い放った一言に、ブラスは血の気の引く音を耳にした、どうにもタロウといるとこういう事がままある、すっかり慣れたようで、慣れない、このマリンバなる楽器が木製であると説明する間にもどうせそう言われるだろうなとは思っており、その心づもりがあったとしてもやはりドキリとするもので、

「・・・取り合えず・・・って・・・」

「うん、明日持って来いとは言わないし、楽器だからね、調音が難しいだろうけど、取り合えずさ・・・」

「・・・取り合えず・・・ですかー」

バーレントはこれはもう他人事だなとニヤニヤとブラスを見つめ、ブラスは青い顔でタロウとマリンバを見比べている、

「まぁ・・・難しいのはこの材だな、この木材は重くて密度が濃い材でね、あっ、こっちには自生してないからね、悪しからず」

「ちょ・・・ちょっと待って下さいよ、それだと作れないじゃないですかー」

「ほら、それはほれ、似たような材でやってみてよ、音色が変わるのは当然理解してるから」

「・・・それでいいんですか?・・・まぁ、確かにある材で試す事は出来ると思いますし・・・それしか出来ないですけど・・・」

「それでいいんだよ、全く同じ音色は求めてないよ、あくまで似たような代物って事でね」

「それなら・・・なんとか・・・ですけど・・・そのオンカイですか?正直俺には分らないですよ」

「うん、それも大丈夫、あくまでほら、似たような物を作れれば、後は俺と先生がいれば調音は出来るかなって感じ?」

先生とは私の事でいいのかなとヘラルダが不安そうに首を傾げた、

「・・・なら・・・あくまであれです、似たようなものって事で作ってみますけど・・・」

タロウのお願いごとにはとても否とは言えないブラスであった、特にそれが木製品となれば職人としての矜持もある、断るのは簡単なのだがタロウとの縁は握っておかないとあっさりと離れるだろうと思われ、またブラス自身も楽しんでいたりもする、さらに言えば商売上でも大変に重要な顧客で、本人は否定するであろうがその実力で名を成した権力者でもあるのだ、

「ありがと、それでいいよ、でだ、ついでになんだけど、この楽器にね、脚が欲しくてさ、テーブルみたいな」

「あっ、それは簡単です」

「だよね、高さはテーブルよりも若干高いくらい・・・あれだな、賭け事用のテーブルの高さがいいね、作業台か、それの方が疲れないだろうね、で、四本脚でね、この下に銅管を置きたいんだよね」

「銅管?」

ブラスとバーレントが何の意味があるんだろうと首を傾げ、ヘラルダも不思議そうに聞き入っている、

「うん、音を響かせるのにね、大事なんだな、このままだとそれほど遠くに音が届かなくてね、まぁ・・・それもあくまで試してみたいって興味だけなんだけどさ」

ハーと気の抜けた溜息で答えるしかないブラスである、

「ん、取り合えずね、急がないけど、ちゃんと対価は約束するから、やってみて、第一上手くいったら売れるぞ、これ」

ニヤリとタロウが微笑み、どう?とヘラルダにも同意を求める、ヘラルダは大きく何度も頷いてしまった、確かにこれは売れると思われる、その音色も良いが大変に分りやすく扱いやすい、実際に子供達が遊び程度に叩いてもそれなりの曲に聞こえるほどで、他の楽器、ルートや笛ではまず音を鳴らす事からして難しい、つまりこのマリンバは入門には最適な楽器なのであった、

「そう・・・です・・・か・・・ね?」

ブラスはしかし今一つ理解できずにさらに大きく首を傾げた、いくら考えても売れる実感が湧かない、それも致し方ない、なにしろブラスの本業とはあまりにも懸け離れた業種の事である、ブラス自身楽器なぞ触れたことも無ければ弾こうとも思った事が無い、精々祭りか飲み屋で見かける程度で正直まるで興味が無かった、

「大丈夫、なんとなれば、ほら、貴族の皆様をだまくらかして売りつけるし」

「また・・・そんな事言ってー」

「駄目か?」

「その内本気で怒られますよ・・・」

ブラスとバーレントが渋い顔でタロウを見つめる、

「まぁ・・・なんとかなるよ、という事で頼んだ、気長に待つから宜しく、でね」

とタロウはテーブルに転がっていた丸い何かを手にすると、

「これもね、カスタネットっていう楽器なんだけどー」

ニヤーと厭らしい笑みがブラスに向かい、あー・・・これは来るのを渋った訳だわとバーレントは申し訳なさそうにジンワリと汗ばんでいるように見えるブラスの後ろ頭を見つめてしまうのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

爆誕!異世界の歌姫~チートもヒロイン補正もないので、仕方がないから歌います~

ロゼーナ
ファンタジー
気づいたら異世界の森の中に転移していたアラサー会社員チヨリ。何かチートがあるかと期待したものの、装備はパジャマ、お金なし、自動翻訳機能なしでいきなり詰む。冷静かつ図太い性格(本人談)を存分に生かし、開き直って今日も楽しく歌をうたう。 *ほのぼの異世界生活、後にちょっと冒険。チートあり。血生臭い争いは起こりませんが、ケガや出血の描写は多少出てきます。ちびっ子や恋愛要素もあり。 *9/27追記:全編完結いたしました。応援ありがとうございました!

英雄はのんびりと暮らしてみたい!!誤って幼児化した英雄は辺境貴族生活を謳歌する!

月冴桃桜
ファンタジー
史上最強の英雄は心底疲れていた。それでも心優しき英雄は人の頼みを断れない。例え、悪意ある者たちの身勝手な頼みだったとしても……。 さすがの英雄も決意する。……休みたいと……。 でも、自分が『最強』であり続ける限りは休めないと思い、《すべての力》を魔法石に移して、ある工夫で他人でも使えるようにしようと魔方陣を構築。大魔法を実行。 しかし、何故か幼児化してしまう。しかも、力はそのままに……。 焦るものの、ふとこのままでいいと思い、隠蔽魔法ですべてを隠蔽、証拠捏造。おそらく『自分の弟子』以外には見破れないと思う。 従魔と一緒に旅立つ準備中に屋敷を訪ねて来たとある辺境貴族。事情知った彼の辺境の領地で彼の子供として暮らすことに。 そこで幼児なのにチート級にやらかしていきーー!?

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...