968 / 1,062
本編
72話 メダカと学校 その9
しおりを挟む
それからブラスは商会の事務所に向かった、テーブル販売の打合せと雨漏りの点検の為である、エレインが戻っていなければ話しにならないであろうが、それでもカチャーなりマフダなりに話しておくとの事で、タロウは気を付けてと見送り、今日はそのままミナとレインと共に双六の改良である、ニャンコ探しノシと名付けられたそれの改良で、ミナとレインはあーしたいこーしたいと騒がしく、ハイハイとタロウはその意のままに動いた、そうしてあっという間に1日も終わる、若干遅いかなと感じる頃合いに生徒達はバタバタと帰寮し、そして夕食時を過ぎた、
「確かに変わってるー」
「うん、なんか複雑になった?」
「確かにねー」
とミナとレイン、カトカとゾーイが入浴中である為、生徒達が双六を囲んで騒いでいる、ミナが食事中もあーしたこーしたと騒がしく、それはソフィアに叱られる程であった、
「どうかな?遊べそう?」
タロウが白湯を片手にニヤリと微笑む、
「そりゃもう、でも随分手が込んでる感じですね」
「まぁね、ミナとレインがうるさくてさ」
「言ってましたねー」
「ほれ、実際に遊んでみ」
「はい」
とサレバとコミン、ケイスとレスタが早速と手を伸ばす、ニコリーネも楽しそうにその輪に加わっていた、こういう時に中心となって騒がしいジャネットは厨房で食器洗いの当番で、ルルもその当番らしい、
「で、まぁ・・・木簡見ながら遊んでみてよ、説明書きも分かりやすく作ったつもりだから」
とタロウが五もっと場を荒らしたいとか悪戯心が芽吹いてしまい、それはそのまま反映されていたりする、あまりに複雑にし過ぎると難しいだろうし、あまりに意地悪過ぎても喧嘩の元である、塩梅が難しいものだなと思い知っていたりした、その隣では、
「すいません、そういう事でして、面接だけでもどうかなって・・・お願いなんですけどね・・・」
と珍しい事にサビナがエレインとテラと話し込んでいる、
「そんな、こちらとしても嬉しい限りですよ、男手がまったくなかったので、大歓迎です」
不安そうに背を丸めるサビナにエレインは目を大きくして微笑み、
「そうですね、会長の言う通りですよ」
とテラも顔を綻ばせていた、
「ありがとうございます、すいません、突然のその・・・お願いで・・・」
しかしサビナは背を丸めたまま困り顔であった、サビナが二人に相談したのは、人材の紹介であった、曰く、サビナの知り合いである男性が転職先を探しているらしく、サビナが商会で新しい店舗を構える事を口にしたら、是非そこで働きたいとなったらしい、つい先日タロウにも同様の事を相談したのであるが、タロウは腰を落ち着けて働ける人であれば嬉しいかもねと好印象で、しかし採用を決めるのはエレインとテラである、サビナはエレインの精神状態が落ち着いた頃合いを見計らって切り出していた、とてもではないが昨日や一昨日のエレインでは話しにもならなかったであろう、
「大丈夫です、そうなると・・・どうしましょうか、早速面接ですかね?」
「はい、幸いな事に明日は時間がありますから、午前も午後も空いてます」
「エッ・・・なんでまた?」
サビナが何かあったのかと身を仰け反らせる、
「貴族様の予約が中止になってしまったのですよ、皆様忙しくなったみたいで・・・致し方ない事ではありますね・・・」
「・・・あー・・・そういう事ですか・・・」
「そうなんです、だから、明日の午後とかどうでしょうか?その方も忙しいでしょうけど」
「忙しいなんてそんな事ないですよ、分かりました、明日の午後・・・では、そうですね、鐘の音の頃で宜しいでしょうか」
「はい、私は構いません、会長もそれでいいですか?」
「はい、ではそれで」
とあっさりと話しはまとまったようである、その男性というのは誰でもない、サビナの彼氏であったりする、その直接的な表現をサビナは避けたのであるが、テラはそういう事かしらと敏感に察し、エレインはサビナさんも顔が広いんだなとノホホンとしたものであった、
「ありがとうございます、絶対に連れてきます」
サビナがムフンと嬉しそうに微笑む、
「良かったわねー」
とサビナの後ろで踏ん反り返って白湯を傾けるユーリがニヤついた、
「はい、ありがとうございます」
そちらにも笑顔を向けるサビナであった、本当に嬉しそうである、タロウも感付きニヤリと微笑む、相談された時はどうしたものかと思ったが、恐らくサビナは感触を確かめたかったのであろう、タロウが知る限りの店舗の状況を伝え、人手が足りないという事にはならないと思うが、専門的な職人がいれば店としても安定するし、俺は安心だと伝えている、
「フフッ、楽しみです、あっ、そうだ、ついでなんですけど、服飾関係なんですが」
とテラは丁度良いと話題を変えた、サビナとゆっくり話し込む機会は何気に稀である、毎日のように顔を合わせているがここ数日はバタバタと騒がしく、こうしてちゃんとした相談事等できる雰囲気では無かった、今でも食堂内はまったりとしつつ姦しいが深刻な相談事ではない、このまま続けても構わないであろうとテラはそう判断している、
「はいはい」
とサビナが勢いよく振り返る、そして、エレインとテラから新しい服飾に関しての販売であるとか、生産に関しての幾つかの相談がされた、タロウが伝えたチャイナドレスをフィロメナら遊女達は大変に気に入ったようで、マフダ経由で大量に買い付けたいとの依頼が来ているらしい、
「それは良かったですね」
「はい、なので、今日から本格的に従業員を動かしているのですが、サビナさんにも報告しておかないとと思いまして」
「私は別に・・・それこそタロウさんですよ」
とサビナが視線をタロウに投げ、タロウはン?俺?と振り返る、
「そうですよ、あれはだって、タロウさんのあれこれじゃないですか、あっ、そうだ、新しい服の案、いつにします?」
とサビナがそれもあったと背筋を伸ばす、
「新しい服ですか?」
「それもありましたね」
とエレインとテラがタロウを見上げ、その傍で静かに様子を伺っていたオリビアとグルジアも敏感に反応した、
「あるよー、いつにするー」
とタロウは呑気に微笑む、何事かとサレバ達も手を止めた、
「またそんな簡単に・・・」
「いや、俺は別に暇・・・じゃないけど、勝手は許されてるからさ、どちらかっていうとほら、エレインさんとかサビナさんの方が忙しいでしょ、それとお姫様?」
「あっ、そっちもありましたね」
「そういう事、まぁ、お姫様も暇してるだろうからね、今はほら、重くて動きにくいだけだろうし」
「それは仕方ないでしょ」
とユーリがジロリとタロウを睨む、
「そうだよー、でも、少しは動かないと、出産の時に体力が足りなくて苦労する事もあるらしいぞ」
「・・・そうなの?」
「そう聞いた、経験した事ないからわからん」
「いくらあんたでもそりゃそうでしょ」
さらに呆れたように目を細めるユーリにタロウはアッハッハと笑いつつ、
「で、どうする?」
と三人に微笑みかける、
「すいません、そのまた、新しい服ですか?」
「確か、以前もなんかそんな感じの事を仰ってましたけど・・・」
「おっしゃってたよー、だけどね、次に教えるのはあくまで技術的な事になるかな、まったく新しい服の作り方?になると思うよ」
「まったく新しい?」
「なんですかそれー」
レスタが不思議そうに首を傾げ、サレバが大声を上げて立ち上がる、
「んー、色々あるの」
ニヤリと意地悪そうに微笑むタロウに、生徒達はまた始まったーと騒ぎ始めた、
「フフッ、だから・・・どうしようか、だって、あれだろ、エレインさんもテラさんも忙しくなるんじゃない?」
「あっ、はい、明後日から・・・予定通りであればですが」
「そうですね、そっか、丸っと空いてるのって明日だけですかね」
エレインとテラが顔を見合わせる、今日の今日決まった事なのであるが、王妃達がその友人達をガラス鏡店に連れて来る事がほぼほぼ決定している、さらにはエレインがユスティーナと会談し、その場にこの地の代表としてユスティーナとマルヘリートが同席する事もほぼほぼ確定した、何とも急な事であったが、ユスティーナはなるほどと理解を示し、ここは王族との仲を取り持ち、王都と西側の貴族達との縁を作る為にも必要であると判断したらしく、さらには避難民対策で顔見知りになった貴族達も多い、さらなる友好が必要であると同席したマルヘリートも納得している、しかしカラミッドとクンラートの裁可を仰ぐ必要があるとのことで一旦保留となっている、しかし状況を考えれば覆される事は無いであろうとユスティーナとマルヘリートは新たな使命に燃えていたりする、
「だろうねー、王妃様達も強引な上に調子いいからな・・・」
「それは不遜です」
エレインがムッと睨みつける、
「そうだね、改めるよ、えっと、友誼に厚く・・・なんだろ?」
「使えない言葉を使おうとするんじゃないわよ」
ユーリがピシャリとタロウを𠮟りつけ、まったくだとタロウは微笑む、
「なもんで、どうする?明日は無理だろうし、明後日は・・・あっ、エルマさんが来るんだよねこっちにも・・・何気に忙しいのか・・・」
「そうなりますね」
とエレインとテラが同時に首を傾げ、それもそうだとサビナも額をかいた、
「まぁ、腐るもんでも無し、じっくりいこうよ」
とタロウはアッハッハと笑いあげた、どこまでも気楽なその様子に、ユーリはおいおいと眉を顰める、
「・・・そうなると・・・」
「はい、ちゃんと予定を組まないとですね」
「アフラさんと相談してから・・・かな?」
「ですね」
とエレインとテラは頷き合い、それがいいかもなとサビナも頷くが、
「えー、先に教えて下さいよー」
とサレバが再び騒ぎ出し、
「そうですよー、知りたいですー、どんなのですかー」
とコミンも同調する始末で、
「こら、騒ぐな」
とグルジアに一喝され渋々と黙る二人である、しかし、ケイスもレスタも不満そうで、グルジア自身も興味を隠せないのか不服そうではあった、ニコリーネはニコニコとその様子を眺めている、一人穏やかなのはいつもの事であった、
「楽しみは先にとっておくものさ、第一お姫様って怖いんだぞー、、のけ者にしたらそれこそだ」
とタロウがお道化て笑った瞬間、
「アッ!!」
とタロウが大声を上げた、なんだとビクリと身体を震わせる一同である、
「忘れてた・・・まいったな、番頭さんに話ししないと・・・あー、どうしようかな・・・」
と焦り始めるタロウである、何のことやらと女性達の視線が突き刺さる、
「・・・今度は何よ」
ヤレヤレとユーリが問い質すと、
「いやな・・・ほら、タオルの生産をさ、ヘルデルでやらせろってお姫様に言われてたんだよ、ハイハイって受けたのはいいんだけど・・・番頭さんに話し忘れてた」
エヘッと笑うタロウを可愛くないわねとユーリは一蹴し、駄目かと問い返すタロウである、
「駄目よ、ホントあんたはパトリシア様には弱いわね」
「そりゃだって、王族には弱いぞ、俺は」
「偉そうに言うんじゃないわよ」
「他にどう言えばいいんだよ」
「もう少しすまなそうに言いなさい」
「無理」
「あのねー」
とユーリがギロリとタロウを睨みつけた瞬間、
「それ、グルジアさんでなんとかできますね」
とテラがポツリと呟く、エッと一同の視線がテラに向かった、
「・・・そうね、どうかしらグルジアさん」
エレインがグルジアに問いかけ、
「えっと・・・すいません、詳細を把握してないもので・・・その・・・」
と不安そうに首を傾げるグルジアであった。
「確かに変わってるー」
「うん、なんか複雑になった?」
「確かにねー」
とミナとレイン、カトカとゾーイが入浴中である為、生徒達が双六を囲んで騒いでいる、ミナが食事中もあーしたこーしたと騒がしく、それはソフィアに叱られる程であった、
「どうかな?遊べそう?」
タロウが白湯を片手にニヤリと微笑む、
「そりゃもう、でも随分手が込んでる感じですね」
「まぁね、ミナとレインがうるさくてさ」
「言ってましたねー」
「ほれ、実際に遊んでみ」
「はい」
とサレバとコミン、ケイスとレスタが早速と手を伸ばす、ニコリーネも楽しそうにその輪に加わっていた、こういう時に中心となって騒がしいジャネットは厨房で食器洗いの当番で、ルルもその当番らしい、
「で、まぁ・・・木簡見ながら遊んでみてよ、説明書きも分かりやすく作ったつもりだから」
とタロウが五もっと場を荒らしたいとか悪戯心が芽吹いてしまい、それはそのまま反映されていたりする、あまりに複雑にし過ぎると難しいだろうし、あまりに意地悪過ぎても喧嘩の元である、塩梅が難しいものだなと思い知っていたりした、その隣では、
「すいません、そういう事でして、面接だけでもどうかなって・・・お願いなんですけどね・・・」
と珍しい事にサビナがエレインとテラと話し込んでいる、
「そんな、こちらとしても嬉しい限りですよ、男手がまったくなかったので、大歓迎です」
不安そうに背を丸めるサビナにエレインは目を大きくして微笑み、
「そうですね、会長の言う通りですよ」
とテラも顔を綻ばせていた、
「ありがとうございます、すいません、突然のその・・・お願いで・・・」
しかしサビナは背を丸めたまま困り顔であった、サビナが二人に相談したのは、人材の紹介であった、曰く、サビナの知り合いである男性が転職先を探しているらしく、サビナが商会で新しい店舗を構える事を口にしたら、是非そこで働きたいとなったらしい、つい先日タロウにも同様の事を相談したのであるが、タロウは腰を落ち着けて働ける人であれば嬉しいかもねと好印象で、しかし採用を決めるのはエレインとテラである、サビナはエレインの精神状態が落ち着いた頃合いを見計らって切り出していた、とてもではないが昨日や一昨日のエレインでは話しにもならなかったであろう、
「大丈夫です、そうなると・・・どうしましょうか、早速面接ですかね?」
「はい、幸いな事に明日は時間がありますから、午前も午後も空いてます」
「エッ・・・なんでまた?」
サビナが何かあったのかと身を仰け反らせる、
「貴族様の予約が中止になってしまったのですよ、皆様忙しくなったみたいで・・・致し方ない事ではありますね・・・」
「・・・あー・・・そういう事ですか・・・」
「そうなんです、だから、明日の午後とかどうでしょうか?その方も忙しいでしょうけど」
「忙しいなんてそんな事ないですよ、分かりました、明日の午後・・・では、そうですね、鐘の音の頃で宜しいでしょうか」
「はい、私は構いません、会長もそれでいいですか?」
「はい、ではそれで」
とあっさりと話しはまとまったようである、その男性というのは誰でもない、サビナの彼氏であったりする、その直接的な表現をサビナは避けたのであるが、テラはそういう事かしらと敏感に察し、エレインはサビナさんも顔が広いんだなとノホホンとしたものであった、
「ありがとうございます、絶対に連れてきます」
サビナがムフンと嬉しそうに微笑む、
「良かったわねー」
とサビナの後ろで踏ん反り返って白湯を傾けるユーリがニヤついた、
「はい、ありがとうございます」
そちらにも笑顔を向けるサビナであった、本当に嬉しそうである、タロウも感付きニヤリと微笑む、相談された時はどうしたものかと思ったが、恐らくサビナは感触を確かめたかったのであろう、タロウが知る限りの店舗の状況を伝え、人手が足りないという事にはならないと思うが、専門的な職人がいれば店としても安定するし、俺は安心だと伝えている、
「フフッ、楽しみです、あっ、そうだ、ついでなんですけど、服飾関係なんですが」
とテラは丁度良いと話題を変えた、サビナとゆっくり話し込む機会は何気に稀である、毎日のように顔を合わせているがここ数日はバタバタと騒がしく、こうしてちゃんとした相談事等できる雰囲気では無かった、今でも食堂内はまったりとしつつ姦しいが深刻な相談事ではない、このまま続けても構わないであろうとテラはそう判断している、
「はいはい」
とサビナが勢いよく振り返る、そして、エレインとテラから新しい服飾に関しての販売であるとか、生産に関しての幾つかの相談がされた、タロウが伝えたチャイナドレスをフィロメナら遊女達は大変に気に入ったようで、マフダ経由で大量に買い付けたいとの依頼が来ているらしい、
「それは良かったですね」
「はい、なので、今日から本格的に従業員を動かしているのですが、サビナさんにも報告しておかないとと思いまして」
「私は別に・・・それこそタロウさんですよ」
とサビナが視線をタロウに投げ、タロウはン?俺?と振り返る、
「そうですよ、あれはだって、タロウさんのあれこれじゃないですか、あっ、そうだ、新しい服の案、いつにします?」
とサビナがそれもあったと背筋を伸ばす、
「新しい服ですか?」
「それもありましたね」
とエレインとテラがタロウを見上げ、その傍で静かに様子を伺っていたオリビアとグルジアも敏感に反応した、
「あるよー、いつにするー」
とタロウは呑気に微笑む、何事かとサレバ達も手を止めた、
「またそんな簡単に・・・」
「いや、俺は別に暇・・・じゃないけど、勝手は許されてるからさ、どちらかっていうとほら、エレインさんとかサビナさんの方が忙しいでしょ、それとお姫様?」
「あっ、そっちもありましたね」
「そういう事、まぁ、お姫様も暇してるだろうからね、今はほら、重くて動きにくいだけだろうし」
「それは仕方ないでしょ」
とユーリがジロリとタロウを睨む、
「そうだよー、でも、少しは動かないと、出産の時に体力が足りなくて苦労する事もあるらしいぞ」
「・・・そうなの?」
「そう聞いた、経験した事ないからわからん」
「いくらあんたでもそりゃそうでしょ」
さらに呆れたように目を細めるユーリにタロウはアッハッハと笑いつつ、
「で、どうする?」
と三人に微笑みかける、
「すいません、そのまた、新しい服ですか?」
「確か、以前もなんかそんな感じの事を仰ってましたけど・・・」
「おっしゃってたよー、だけどね、次に教えるのはあくまで技術的な事になるかな、まったく新しい服の作り方?になると思うよ」
「まったく新しい?」
「なんですかそれー」
レスタが不思議そうに首を傾げ、サレバが大声を上げて立ち上がる、
「んー、色々あるの」
ニヤリと意地悪そうに微笑むタロウに、生徒達はまた始まったーと騒ぎ始めた、
「フフッ、だから・・・どうしようか、だって、あれだろ、エレインさんもテラさんも忙しくなるんじゃない?」
「あっ、はい、明後日から・・・予定通りであればですが」
「そうですね、そっか、丸っと空いてるのって明日だけですかね」
エレインとテラが顔を見合わせる、今日の今日決まった事なのであるが、王妃達がその友人達をガラス鏡店に連れて来る事がほぼほぼ決定している、さらにはエレインがユスティーナと会談し、その場にこの地の代表としてユスティーナとマルヘリートが同席する事もほぼほぼ確定した、何とも急な事であったが、ユスティーナはなるほどと理解を示し、ここは王族との仲を取り持ち、王都と西側の貴族達との縁を作る為にも必要であると判断したらしく、さらには避難民対策で顔見知りになった貴族達も多い、さらなる友好が必要であると同席したマルヘリートも納得している、しかしカラミッドとクンラートの裁可を仰ぐ必要があるとのことで一旦保留となっている、しかし状況を考えれば覆される事は無いであろうとユスティーナとマルヘリートは新たな使命に燃えていたりする、
「だろうねー、王妃様達も強引な上に調子いいからな・・・」
「それは不遜です」
エレインがムッと睨みつける、
「そうだね、改めるよ、えっと、友誼に厚く・・・なんだろ?」
「使えない言葉を使おうとするんじゃないわよ」
ユーリがピシャリとタロウを𠮟りつけ、まったくだとタロウは微笑む、
「なもんで、どうする?明日は無理だろうし、明後日は・・・あっ、エルマさんが来るんだよねこっちにも・・・何気に忙しいのか・・・」
「そうなりますね」
とエレインとテラが同時に首を傾げ、それもそうだとサビナも額をかいた、
「まぁ、腐るもんでも無し、じっくりいこうよ」
とタロウはアッハッハと笑いあげた、どこまでも気楽なその様子に、ユーリはおいおいと眉を顰める、
「・・・そうなると・・・」
「はい、ちゃんと予定を組まないとですね」
「アフラさんと相談してから・・・かな?」
「ですね」
とエレインとテラは頷き合い、それがいいかもなとサビナも頷くが、
「えー、先に教えて下さいよー」
とサレバが再び騒ぎ出し、
「そうですよー、知りたいですー、どんなのですかー」
とコミンも同調する始末で、
「こら、騒ぐな」
とグルジアに一喝され渋々と黙る二人である、しかし、ケイスもレスタも不満そうで、グルジア自身も興味を隠せないのか不服そうではあった、ニコリーネはニコニコとその様子を眺めている、一人穏やかなのはいつもの事であった、
「楽しみは先にとっておくものさ、第一お姫様って怖いんだぞー、、のけ者にしたらそれこそだ」
とタロウがお道化て笑った瞬間、
「アッ!!」
とタロウが大声を上げた、なんだとビクリと身体を震わせる一同である、
「忘れてた・・・まいったな、番頭さんに話ししないと・・・あー、どうしようかな・・・」
と焦り始めるタロウである、何のことやらと女性達の視線が突き刺さる、
「・・・今度は何よ」
ヤレヤレとユーリが問い質すと、
「いやな・・・ほら、タオルの生産をさ、ヘルデルでやらせろってお姫様に言われてたんだよ、ハイハイって受けたのはいいんだけど・・・番頭さんに話し忘れてた」
エヘッと笑うタロウを可愛くないわねとユーリは一蹴し、駄目かと問い返すタロウである、
「駄目よ、ホントあんたはパトリシア様には弱いわね」
「そりゃだって、王族には弱いぞ、俺は」
「偉そうに言うんじゃないわよ」
「他にどう言えばいいんだよ」
「もう少しすまなそうに言いなさい」
「無理」
「あのねー」
とユーリがギロリとタロウを睨みつけた瞬間、
「それ、グルジアさんでなんとかできますね」
とテラがポツリと呟く、エッと一同の視線がテラに向かった、
「・・・そうね、どうかしらグルジアさん」
エレインがグルジアに問いかけ、
「えっと・・・すいません、詳細を把握してないもので・・・その・・・」
と不安そうに首を傾げるグルジアであった。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる