783 / 1,468
本編
66話 歴史は密議で作られる その10
しおりを挟む
タロウがバーレントとの打合せを切り上げて二階へ向かうと、階段前のホールで学園長とユーリ、カトカとサビナが何やら話し込んでおり、何故かレインもその輪に加わっていた、ホールには数脚の椅子が壁際に並べられており、それは伯爵の従者達の為に設えられたものであったが、五人はそんな事はお構いなしに一角を締めているようだ、
「皆さんお揃いで」
「おそろいできたのー」
「そうなのか?」
「そうなのー」
タロウに小脇に抱えられたままミナは嬉しそうにタロウを見上げる、
「おう、タロウ殿、丁度良い、主の意見も聞きたかった」
学園長が興奮した大声であった、タロウはこりゃまた何かあったのかなと首を傾げつつその集団に歩み寄る、
「これじゃ、どう思う?」
学園長は手慰んでいた五玉のアバカスをタロウに差し出した、
「・・・アバカスですか?」
「うむ、ケイスさんの発案でな、10玉のそれを5玉に変えてみたのだ、での、計算そのものは中央で行う形になる、少々不細工だがこう中央に仕切りを付けてな」
と学園長は流れるように改良点をタロウに説明し始め、ユーリとカトカとサビナはヤレヤレと一息吐いた、三人も研究所では熱心に意見を出していたのであるが、学園長の無尽蔵の活力にはまるでついていけず、エレインとソフィア達がそろそろ伺いましょうと研究所に上がってきたのを機に、この件は一旦これでと切り上げたのであった、しかし、学園長はそうはならなかったようで、こうして場所を移して話し込んでいた、しかし話し込むとの表現はやや的外れである、この場にあって三人は完全に聞き役で、学園長一人が気持ちよくくっちゃべっていたのである、
「ほう・・・これは、これは」
タロウはニヤリと微笑む、それは正に算盤であった、学園長の説明を聞く限りだと使い方としては縦向きの算盤になるであろう、その内横向きになるのかな等と思ってしまう、
「どうじゃ、使えると思うのじゃが」
学園長が鼻息を荒くしてタロウを見上げた、
「はい、素晴らしいですね、うん、実に素晴らしい」
「そう思うか」
「はい、実に理に適ってます、確かに10玉よりも9玉、さらにそれは5玉で代用できる、10進法と5進法を組み合わせた素晴らしい改良だと思います」
「10しん?5しんほう?」
タロウはニコニコと笑顔で答えるが、学園長はこれまた新しい単語が出て来たと目を丸くし、他の三人もであるが、レインまでもが不思議そうにタロウを見上げた、ミナはバタバタと楽しそうにウーウー言いながら両手を振り回してアバカスに手を伸ばす、届く事は無かったが、
「はい、10で次の位に移る計算方式・・・というよりも数の数え方と言った方が良いでしょうか」
「どういう事じゃ、それが普通であろう」
「はい、確かにそうなのですが・・・」
とタロウはウーンと少し悩んで、
「私が知る限りですが、2進数、3進数、10進数、16進数、あと、8進数かな、5進数もそうですが、まぁ、そんな感じで使い分けられているのですが、まぁ、定義次第で幾らでも増やせるような気がします、そこは数学者さんに頑張ってもらいましょう、私は門外漢なので詳しくは無いですよ」
「待て、どういう事じゃ?」
「簡単です、次の位に上がるのに必要な数・・・と定義すればいいのかな?だから、分かりやすい所だと3進数の場合は、1、2、はそのまま、3で次の位に上がるので、この場合3を表す数字が10になります、で、4が11になる」
ニコニコとやたらめんどくさい事を言い出すタロウを五人はポカンと見上げるしかなかった、
「えっと、3が10で、4が11?ですか?」
カトカが静かに問いかける、
「うん、そうだよ、じゃ、5はどうなると思う?」
「えっと・・・12?」
「正解、じゃ10は?」
「10・・・えっと、えっと」
カトカは慌てて指を折りはじめ、他の面々もうーんと悩み始める、すると、
「101じゃ」
レインが楽しそうに答えると、えっ、と大人達の視線がレインに集まる、
「せいかーい、流石レインだなー、頭いいー」
「あたまいいー」
タロウがニヤニヤと微笑み、ミナも良く分かっていないであろうが、タロウの真似をする、
「・・・確かに、101・・・ですね」
カトカがやっと計算が終わったようで、
「そうなの?」
とユーリが不安そうに確認する、
「はい、えっと、8が22で、9が100になるんです」
「それも正解」
タロウは楽しそうに微笑むと、
「そんな感じでね、10が次の位として、さっき言った数、2とか3とか16が10になるって感じだな・・・ややこしいよね」
自分で言っておいて合っているかなとタロウは首を傾げ、大丈夫そうだと顔を上げた、
「そうなるとあれか、2進数になると」
「はい1は1ですが、2が10になります、3が11、10はなんと1010です」
「なんと・・・それで計算なぞ出来るのか?」
「はい、出来ますね、数学・・・というよりも数字の表現と言った方が良いと思うのですが、面白いところですね、例えばですが、5という数字は物に例えれば5個なにがしかがあるだけです、ですよね、ですが、この5を表現するには5という数字でなくても可能なんですね、あー、なんていうか言語のようなものです、私という単語の意味は一つですが、それは他の言語では違う言葉でしょ・・・そんな感じですが、少し変な例かな?」
「いや・・・」
「うん、少し分る感じです」
ポカンとタロウを見上げる四人と、そういう事かとウンウン頷くレインである、
「まぁ、私としても10進数が一番分かりやすいですし、馴染んでいますから、それで構わないと思うんですけど」
タロウはアッハッハと笑い、
「ミナもー、たぶんそれー」
ミナがワタワタと手足を振り回す、
「おっ、ミナは理解したのか、偉いぞー」
「うふふー、でしょー」
絶対分ってないなとタロウは思う、逆に理解していたら恐ろしい事でもあった、
「・・・面白いな、それはあれか、何か実例となるものはないのか?」
学園長がアバカスの事をすっかりと忘れたようで、アバカスは彼の膝の上に寂しそうに置かれてしまった、
「あー・・・ありますね、えっと、あれです、ユーリは知ってると思うんだけど」
タロウはユーリに意地悪そうな視線を向け、エッ私?とユーリは身を仰け反らせる、
「うん、ゴブリンがそうなんですが、彼らは指が4本なんですよ、両手合わせて8本、なので、彼らは8進数で物を数えるみたいです」
「なんと・・・」
「へー・・・」
「あー、確かにそうね、4本だったわ・・・」
ユーリが壁を睨んで頬をかく、
「なんだけど、面白いのがさ、彼らは8以上の数字はいっぱいとか沢山っていう表現で切り上げちゃうんだよ」
「それは本当か?」
学園長が大声を上げ、他の3人もエッとタロウを見上げた、レインはそういう事もあるだろうなと頷いている、
「はい、なので厳密に言えばちょっと違うんですが、この場合は8とそれ以上しかないと言うべきなのかな?でもある種の8進数ではあるのでしょう、他には獣系の魔族ですね、こちらは指が3本、性格には5本なんですが、器用に使えるのが3本なので両手合わせて6かな、この場合は6進数になりますね、さすがにこちらはちゃんと次の位は活用してました、いっぱいとか沢山では無かったようです」
「そう・・・なのか・・・いや、待て、それはあれか例の大陸での話しだな」
学園長は興奮したままに大声を上げ、ユーリはそれはまずかろうと学園長を睨み、カトカとサビナは何だろうと訝しげな視線を学園長に向ける、しかしタロウは全く気にする様子は無く、
「そうですね、なので、かの大陸では実は16進数が標準です、10~15に当たる数字が単語で・・・単語?違うな、数字一文字で存在します、北ヘルデルに残ってた書類もそうなっている筈です」
と続けてしまう、
「なに?」
「そうなの?」
学園長とユーリがそれは聞いていないと目を丸くし、カトカとサビナはいよいよ何が何やらと混乱してしまう、
「なので、向こうでの買い物は結構大変でしてね・・・慣れないと値切り交渉も難しいですし、少しこう頭を使います、俺も生粋の10進数の民なので」
タロウはニコリと微笑む、
「いや・・・だろうな・・・16シンスウ・・・いや、考えたことも無かった・・・確かにそうじゃな、数字を表現する手段という訳か・・・」
「流石学園長理解が早い、これもまた文化・・・なのですが、数字の数え方に関しては私が思うに数を数えられる程に頭の良くなった種族の身体的な側面もあるようなんですよね、なので、私が知っている限りだと、ゴブリンの中には足を器用に使う種族もおりまして、彼らの足もまた4本指なのですよ、なのでそいつらは16進数が標準でした、しかし16迄は数えるようなのですが、それ以降はいっぱいで沢山なんです、面白いですよね、身体的に使える部分は使って、それ以上は知能による、文化によるのかな?彼らはそれでもちゃんと独自の生活を営んでますし、感性的な違いは勿論あるんですがしっかりと安定した暮らしを送っています」
タロウは少しばかり言葉を選んだ、王国ではゴブリンや魔族に対しての理解はまるで進んでいない、ここで変に魔族を褒め称えるような言葉は受け入れられないであろう、相手が柔軟な思考力を持つ学園長でも、付き合いの長いユーリだとしてもである、
「そうなのか、いや面白い、確かに面白い、他にはあるか?」
「あると言えばある・・・のではないかと思うのですが・・・私が知るのはその程度ですかね・・・うん」
タロウは顎先をかこうと右手を伸ばしかけ、ミナを抱えている事に気付いてアッと小さく声を上げるとソッとミナを下ろした、ミナは名残惜しそうにタロウを見上げるがすぐに学園長に駆け寄り、その膝にあるアバカスに手を伸ばす、学園長は笑顔を浮かべてそれを手渡すと、
「なにこれー、なにこれー」
ミナはその隣の椅子に腰を下ろしてジャラジャラと遊び始めた、
「あの、すいません、その話しを後程しっかりと伺いたいのですが・・・」
カトカが困惑しつつもタロウを見上げる、食事会ということもあり黒板も持ってきていない、まして、これほどに学術的な話題になるとも思っていない、アバカスの改良についてタロウの意見も欲しかったのはそうなのであるが、それ以上に興味深い事をタロウは井戸端の奥様のように気軽に口にしていた、
「ん?いいよ、別に難しい事じゃないからね、ちょっとあれだ、ややこしいっていうか、こんがらがるけどね」
「ありがとうございます」
「確かにややこしいな、しかし、常識を一旦こう、横に置くと理解できるぞ、うん、10という数字は面白いな」
「そう思われます?」
「おう、勿論じゃ、そうなると」
再び学園長の舌が回りだす、しかし、
「あら、こっちに溜まってたの?」
ソフィアがフラリと顔を出し、その後ろにはグルジアの姿もあった、
「あら、お疲れ、居たの?」
タロウが振り返り、
「ソフィー、これー、楽しー」
ミナがアバカスをジャラジャラ鳴らしながらソフィアに駆け寄った、
「こら、走らない」
「えー」
「えー、じゃないでしょ、もう、で、何してたの?」
「ソフィアさん、素晴らしい知見を得たぞ」
「知見?」
ソフィアとグルジアが首を傾げ、
「確かに・・・」
「うん、常識をひっくり返された感じ・・・」
「あんたら凄いわね、私全然理解できなかったわよ」
カトカとサビナが深刻そうに頷く横でユーリは困った顔である、
「ふふん、ユーリはもう少し勉強が必要じゃのう」
レインまでが勝ち誇った顔であった、
「まっ・・・なに、あんたは理解したの?」
「簡単ではないが、難しくはないのう」
さらにニヤリと微笑むレインに、
「むきゃー、負けてられるかー」
とユーリは叫び、しかし、
「・・・そう言えばアンタ・・・やっぱり違うわね」
とユーリはジッとレインを見つめ、レインはこれは調子に乗り過ぎたかと、
「ミナー、儂にも触らせるのじゃー」
急に子供っぽい声を上げてその場を逃げ出すのであった。
「皆さんお揃いで」
「おそろいできたのー」
「そうなのか?」
「そうなのー」
タロウに小脇に抱えられたままミナは嬉しそうにタロウを見上げる、
「おう、タロウ殿、丁度良い、主の意見も聞きたかった」
学園長が興奮した大声であった、タロウはこりゃまた何かあったのかなと首を傾げつつその集団に歩み寄る、
「これじゃ、どう思う?」
学園長は手慰んでいた五玉のアバカスをタロウに差し出した、
「・・・アバカスですか?」
「うむ、ケイスさんの発案でな、10玉のそれを5玉に変えてみたのだ、での、計算そのものは中央で行う形になる、少々不細工だがこう中央に仕切りを付けてな」
と学園長は流れるように改良点をタロウに説明し始め、ユーリとカトカとサビナはヤレヤレと一息吐いた、三人も研究所では熱心に意見を出していたのであるが、学園長の無尽蔵の活力にはまるでついていけず、エレインとソフィア達がそろそろ伺いましょうと研究所に上がってきたのを機に、この件は一旦これでと切り上げたのであった、しかし、学園長はそうはならなかったようで、こうして場所を移して話し込んでいた、しかし話し込むとの表現はやや的外れである、この場にあって三人は完全に聞き役で、学園長一人が気持ちよくくっちゃべっていたのである、
「ほう・・・これは、これは」
タロウはニヤリと微笑む、それは正に算盤であった、学園長の説明を聞く限りだと使い方としては縦向きの算盤になるであろう、その内横向きになるのかな等と思ってしまう、
「どうじゃ、使えると思うのじゃが」
学園長が鼻息を荒くしてタロウを見上げた、
「はい、素晴らしいですね、うん、実に素晴らしい」
「そう思うか」
「はい、実に理に適ってます、確かに10玉よりも9玉、さらにそれは5玉で代用できる、10進法と5進法を組み合わせた素晴らしい改良だと思います」
「10しん?5しんほう?」
タロウはニコニコと笑顔で答えるが、学園長はこれまた新しい単語が出て来たと目を丸くし、他の三人もであるが、レインまでもが不思議そうにタロウを見上げた、ミナはバタバタと楽しそうにウーウー言いながら両手を振り回してアバカスに手を伸ばす、届く事は無かったが、
「はい、10で次の位に移る計算方式・・・というよりも数の数え方と言った方が良いでしょうか」
「どういう事じゃ、それが普通であろう」
「はい、確かにそうなのですが・・・」
とタロウはウーンと少し悩んで、
「私が知る限りですが、2進数、3進数、10進数、16進数、あと、8進数かな、5進数もそうですが、まぁ、そんな感じで使い分けられているのですが、まぁ、定義次第で幾らでも増やせるような気がします、そこは数学者さんに頑張ってもらいましょう、私は門外漢なので詳しくは無いですよ」
「待て、どういう事じゃ?」
「簡単です、次の位に上がるのに必要な数・・・と定義すればいいのかな?だから、分かりやすい所だと3進数の場合は、1、2、はそのまま、3で次の位に上がるので、この場合3を表す数字が10になります、で、4が11になる」
ニコニコとやたらめんどくさい事を言い出すタロウを五人はポカンと見上げるしかなかった、
「えっと、3が10で、4が11?ですか?」
カトカが静かに問いかける、
「うん、そうだよ、じゃ、5はどうなると思う?」
「えっと・・・12?」
「正解、じゃ10は?」
「10・・・えっと、えっと」
カトカは慌てて指を折りはじめ、他の面々もうーんと悩み始める、すると、
「101じゃ」
レインが楽しそうに答えると、えっ、と大人達の視線がレインに集まる、
「せいかーい、流石レインだなー、頭いいー」
「あたまいいー」
タロウがニヤニヤと微笑み、ミナも良く分かっていないであろうが、タロウの真似をする、
「・・・確かに、101・・・ですね」
カトカがやっと計算が終わったようで、
「そうなの?」
とユーリが不安そうに確認する、
「はい、えっと、8が22で、9が100になるんです」
「それも正解」
タロウは楽しそうに微笑むと、
「そんな感じでね、10が次の位として、さっき言った数、2とか3とか16が10になるって感じだな・・・ややこしいよね」
自分で言っておいて合っているかなとタロウは首を傾げ、大丈夫そうだと顔を上げた、
「そうなるとあれか、2進数になると」
「はい1は1ですが、2が10になります、3が11、10はなんと1010です」
「なんと・・・それで計算なぞ出来るのか?」
「はい、出来ますね、数学・・・というよりも数字の表現と言った方が良いと思うのですが、面白いところですね、例えばですが、5という数字は物に例えれば5個なにがしかがあるだけです、ですよね、ですが、この5を表現するには5という数字でなくても可能なんですね、あー、なんていうか言語のようなものです、私という単語の意味は一つですが、それは他の言語では違う言葉でしょ・・・そんな感じですが、少し変な例かな?」
「いや・・・」
「うん、少し分る感じです」
ポカンとタロウを見上げる四人と、そういう事かとウンウン頷くレインである、
「まぁ、私としても10進数が一番分かりやすいですし、馴染んでいますから、それで構わないと思うんですけど」
タロウはアッハッハと笑い、
「ミナもー、たぶんそれー」
ミナがワタワタと手足を振り回す、
「おっ、ミナは理解したのか、偉いぞー」
「うふふー、でしょー」
絶対分ってないなとタロウは思う、逆に理解していたら恐ろしい事でもあった、
「・・・面白いな、それはあれか、何か実例となるものはないのか?」
学園長がアバカスの事をすっかりと忘れたようで、アバカスは彼の膝の上に寂しそうに置かれてしまった、
「あー・・・ありますね、えっと、あれです、ユーリは知ってると思うんだけど」
タロウはユーリに意地悪そうな視線を向け、エッ私?とユーリは身を仰け反らせる、
「うん、ゴブリンがそうなんですが、彼らは指が4本なんですよ、両手合わせて8本、なので、彼らは8進数で物を数えるみたいです」
「なんと・・・」
「へー・・・」
「あー、確かにそうね、4本だったわ・・・」
ユーリが壁を睨んで頬をかく、
「なんだけど、面白いのがさ、彼らは8以上の数字はいっぱいとか沢山っていう表現で切り上げちゃうんだよ」
「それは本当か?」
学園長が大声を上げ、他の3人もエッとタロウを見上げた、レインはそういう事もあるだろうなと頷いている、
「はい、なので厳密に言えばちょっと違うんですが、この場合は8とそれ以上しかないと言うべきなのかな?でもある種の8進数ではあるのでしょう、他には獣系の魔族ですね、こちらは指が3本、性格には5本なんですが、器用に使えるのが3本なので両手合わせて6かな、この場合は6進数になりますね、さすがにこちらはちゃんと次の位は活用してました、いっぱいとか沢山では無かったようです」
「そう・・・なのか・・・いや、待て、それはあれか例の大陸での話しだな」
学園長は興奮したままに大声を上げ、ユーリはそれはまずかろうと学園長を睨み、カトカとサビナは何だろうと訝しげな視線を学園長に向ける、しかしタロウは全く気にする様子は無く、
「そうですね、なので、かの大陸では実は16進数が標準です、10~15に当たる数字が単語で・・・単語?違うな、数字一文字で存在します、北ヘルデルに残ってた書類もそうなっている筈です」
と続けてしまう、
「なに?」
「そうなの?」
学園長とユーリがそれは聞いていないと目を丸くし、カトカとサビナはいよいよ何が何やらと混乱してしまう、
「なので、向こうでの買い物は結構大変でしてね・・・慣れないと値切り交渉も難しいですし、少しこう頭を使います、俺も生粋の10進数の民なので」
タロウはニコリと微笑む、
「いや・・・だろうな・・・16シンスウ・・・いや、考えたことも無かった・・・確かにそうじゃな、数字を表現する手段という訳か・・・」
「流石学園長理解が早い、これもまた文化・・・なのですが、数字の数え方に関しては私が思うに数を数えられる程に頭の良くなった種族の身体的な側面もあるようなんですよね、なので、私が知っている限りだと、ゴブリンの中には足を器用に使う種族もおりまして、彼らの足もまた4本指なのですよ、なのでそいつらは16進数が標準でした、しかし16迄は数えるようなのですが、それ以降はいっぱいで沢山なんです、面白いですよね、身体的に使える部分は使って、それ以上は知能による、文化によるのかな?彼らはそれでもちゃんと独自の生活を営んでますし、感性的な違いは勿論あるんですがしっかりと安定した暮らしを送っています」
タロウは少しばかり言葉を選んだ、王国ではゴブリンや魔族に対しての理解はまるで進んでいない、ここで変に魔族を褒め称えるような言葉は受け入れられないであろう、相手が柔軟な思考力を持つ学園長でも、付き合いの長いユーリだとしてもである、
「そうなのか、いや面白い、確かに面白い、他にはあるか?」
「あると言えばある・・・のではないかと思うのですが・・・私が知るのはその程度ですかね・・・うん」
タロウは顎先をかこうと右手を伸ばしかけ、ミナを抱えている事に気付いてアッと小さく声を上げるとソッとミナを下ろした、ミナは名残惜しそうにタロウを見上げるがすぐに学園長に駆け寄り、その膝にあるアバカスに手を伸ばす、学園長は笑顔を浮かべてそれを手渡すと、
「なにこれー、なにこれー」
ミナはその隣の椅子に腰を下ろしてジャラジャラと遊び始めた、
「あの、すいません、その話しを後程しっかりと伺いたいのですが・・・」
カトカが困惑しつつもタロウを見上げる、食事会ということもあり黒板も持ってきていない、まして、これほどに学術的な話題になるとも思っていない、アバカスの改良についてタロウの意見も欲しかったのはそうなのであるが、それ以上に興味深い事をタロウは井戸端の奥様のように気軽に口にしていた、
「ん?いいよ、別に難しい事じゃないからね、ちょっとあれだ、ややこしいっていうか、こんがらがるけどね」
「ありがとうございます」
「確かにややこしいな、しかし、常識を一旦こう、横に置くと理解できるぞ、うん、10という数字は面白いな」
「そう思われます?」
「おう、勿論じゃ、そうなると」
再び学園長の舌が回りだす、しかし、
「あら、こっちに溜まってたの?」
ソフィアがフラリと顔を出し、その後ろにはグルジアの姿もあった、
「あら、お疲れ、居たの?」
タロウが振り返り、
「ソフィー、これー、楽しー」
ミナがアバカスをジャラジャラ鳴らしながらソフィアに駆け寄った、
「こら、走らない」
「えー」
「えー、じゃないでしょ、もう、で、何してたの?」
「ソフィアさん、素晴らしい知見を得たぞ」
「知見?」
ソフィアとグルジアが首を傾げ、
「確かに・・・」
「うん、常識をひっくり返された感じ・・・」
「あんたら凄いわね、私全然理解できなかったわよ」
カトカとサビナが深刻そうに頷く横でユーリは困った顔である、
「ふふん、ユーリはもう少し勉強が必要じゃのう」
レインまでが勝ち誇った顔であった、
「まっ・・・なに、あんたは理解したの?」
「簡単ではないが、難しくはないのう」
さらにニヤリと微笑むレインに、
「むきゃー、負けてられるかー」
とユーリは叫び、しかし、
「・・・そう言えばアンタ・・・やっぱり違うわね」
とユーリはジッとレインを見つめ、レインはこれは調子に乗り過ぎたかと、
「ミナー、儂にも触らせるのじゃー」
急に子供っぽい声を上げてその場を逃げ出すのであった。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー
藤 野乃
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生!
憧れのエルフに転生したら、まさかの特級呪物。
しかも、お約束のご都合主義はどこ行っちゃったの!?
理不尽な手続き、面倒な契約、身分証がなければ部屋も借りられない。
猫獣人は「ニャー」と鳴かないし、神様も居ない。
召喚獣?喋りません。
龍?人化しません。
想像してた異世界とはだいぶ違う。
腑に落ちない気持ちMAXで、流されるままクラフトしたり、もふもふしたり、たまに事件に巻き込まれたり。
見た目は完璧エルフ美女、でも中身はツッコミ止まらない。
ご都合主義が通じない異世界で、《普通》に揉まれる日々がはじまる──!
※カクヨム、なろうにも掲載中
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる