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本編
61話 計略と唄う妖鳥 その19
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「凄いねー、可愛い・・・」
「ずっと見ていられますね・・・」
「えへへー、ミナがお世話係なのー」
「そっかー、大事にしなきゃねー」
「うふふー、大事にするー」
「これって、わざわざ捕まえてきたの?」
「タロウさんが捕まえてきたらしいよ」
「そりゃまた・・・」
帰寮した学生達が自室に戻らずに水槽に群がっており、ミナは得意そうにその輪の中心でニコニコとしている、レインは輪に入りそびれたのもあるが、珍しくもテーブルに座って書を広げていた、単に暖炉前の定位置を学生達に取られた為もある、そこへ、
「エレインさん、あれです」
グルジアがエレインと共に玄関から入ってくる、
「あれ?」
グルジアが興奮して指差すが生徒達の背に隠れそのあれとやらがエレインには見えなかった、
「あっ、エレインさん、どうぞ」
ルルが気を利かしてサッと空間を作り、そこへエレインが吸い込まれるように分け入ると、
「まっ・・・なんですの?」
「ねー、なんですの?って感じですよねー」
「ミナとレインとタロウが作ったのよー、可愛いでしょー」
「確かに・・・」
エレインは絶句するしかなかった、さらに、
「お邪魔しまーす」
何やらまた面白いのが出来たらしいとブノワトとコッキーが入ってくる、
「わっ、どうしたんですか、ねーさん達まで」
「んー、仕事の報告とついでに愚痴りに来たのよー」
ブノワトは笑い、
「私は愚痴りに来たんですー」
コッキーも笑顔である、愚痴りに来た割には随分と上機嫌だなとルルは首を傾げるが、二人はエレインの隣に割り込むと、
「わっ、こうなったんだー」
とコッキーは快哉を上げた、
「なに?知ってたの?」
「知ってるもなにも、昨日、リノルトさんと工場に来たんですよ、タロウさんとミナちゃん、レインちゃんも、ねー」
「ねー」
とミナとコッキーが微笑み合う、
「へー、あっ、義姉さんも言ってたね、また忙しくなったって笑ってたけど」
「はい、で、これ昔、親父が作ってみたやつで売れなかったんですよねー、値段も高いし、何に使えば良いか分かんないし・・・」
これとはガラス容器の事であろう、コッキーはペタペタとガラス容器を優しく叩く、
「そういう事だったのですか・・・昨日からなんだこれはと不思議に思ってました・・・」
エレインが水槽から目を離さずに呟く、昨日タロウが持ち込んだ巨大なガラス容器は食堂の端にドンと置かれて存在感を示していたのである、生徒達は勿論大人達もそれの存在は気にしていたのであるが、それ以上に飴玉やら学園祭の打合せやらが忙しくガラス容器にまで口を出す者がいなかったのであった、
「そうなんですよー、でも、タロウさんがこれを見てやたらと興奮してまして、親父もそこまで気に入ったなら持って行けって」
「へー、でも凄いね、可愛い・・・」
「でしょー」
「うん、お魚をジックリ見たこと無かったな・・・初めてかも・・・」
「そうですよねー、お魚ってこんな風に泳ぐんだー」
「ヒレが忙しいね、パタパタしてるー、チョコチョコしてて可愛いー」
「いいなー、これいいねー」
「はい、とても魅力的ですわ・・・コッキーさん、この容器は他にもあるんですの?」
「ありますよー、あと・・・何個かな?倉庫に転がってますね、そのうち潰して材料にしようって兄貴と話してました」
「それは駄目ですわ、これは・・・これは素晴らしいです」
エレインは一目でその魅力に取りつかれたようである、ジックリと見つめ、言葉は少なく、しかしその脳みそはキチキチと音を立てて動いている、
「そうだねー、あれ、これは何?」
「どれ?」
「黒いカタツムリ?」
「えっと、えっと、レインー、これ何だっけー」
ミナが叫ぶと、
「タニシじゃろ」
レインが大声で答えた、
「そう、それ、タニシー」
「へー、でも・・・これは、それほど可愛くないかな?」
「えっとね、えっとね、タロウが必要だって言ってたー」
「そうなの?」
「うん、いなくてもいいけど、いたほうがいいんだってー」
「何だそりゃ?」
「でも、これはこれで可愛くないですか?」
「そう?そうかなー」
「なんかうねうねしてて、お魚と違ってじっくり見れます」
「だからって可愛くはないでしょ」
「えー、可愛いですよー」
どうやら、コミンはタニシの方が好きらしい、
「ミナも好きー、タニシー、あと、これ、この黒いのがシジミなんだってー」
「シジミ?あっ、貝ですか、石かと思った」
「あっ、ホントだ、ちょっと動いてる、口開いてるね、へー、開くんだー、すげー」
「へー、面白い」
ワイワイキャーキャーと嬌声が響く中、
「あら、珍しい」
ソフィアがフラリと厨房から顔を出した、
「あっ、お邪魔してます」
ブノワトとコッキーが振り向く、
「お疲れ様、どう?忙しいんじゃないの?」
ソフィアがニコニコと手を拭きながら入って来る、今日は商会が休みという事もあり、ミーンは休みでティルは壺二つ分の飴を手にして王城へ報告に戻っている、
「そうですねー、頑張ってます」
「はい、うちもー、そうだ聞いてくださいよー」
とブノワトとコッキーはサッとその場を離れてソフィアを捕まえた、
「ありゃ、どうしたの?」
「どうしたのもなにも無いですよー」
コッキーは憤然と鼻息が荒い、ソフィアはまったくと微笑みつつ、茶でも入れるわねと一旦厨房へ戻り、すぐに茶道具を持って戻って来た、
「すいません、お手を煩わせて」
ブノワトとコッキーはテーブルを囲むと、早速と夫と兄弟の愚痴である、丁度その愚痴の元たる飲み会が始まったであろう時間であった、商会の奥様方の旦那と職人達、それにクロノスやタロウを加えて、イフナースの社会勉強を名目とした遊女遊びである、先程も商会の事務所で奥様方を相手にしてブーブーと盛り上がったのであるが、給料の支払いが始まり、話題は立ち消えとなって、グルジアがエレインを呼びに来た事も重なり、二人の鬱憤は微妙に晴れないままであったのだ、
「あー、そういうもんでしょ、男ってのは」
ソフィアは目を細めて茶を含む、生徒達もテーブルを囲んでお茶を始めた、飴玉の詰まった壺を真ん中に置いて飴玉を舐めつつ茶を楽しみ水槽を眺めている、その光景だけであれば何とも優雅な一時であった、
「そうですけどー」
「だって、今朝から気合入れてるんですよ、うちの馬鹿どもわー」
「そりゃせめてちゃんとした恰好でないとね、クロノスに誘われたんならそうなるでしょ」
先程クロノスも寮に顔を出し、タロウとブラスと共に飲み会の場へと向かっていた、ミナは水槽に夢中であった為これ幸いとタロウは上手い事抜け出しており、ソフィアは飲みすぎるなとだけ忠告している、
「だからってー」
「ねー、朝から機嫌が良いんですもん、ムカつきますよー」
「もう・・・大丈夫ですわよ、今日はだってフィロメナさんの所でしょ」
エレインも優雅に水槽を眺めていたが、こちらはこちらで面白そうだと口を挟む、
「?知ってるんですか?」
コッキーが目を丸くする、
「知ってるもなにも・・・一緒にはしゃいでたじゃないですか」
「はしゃぐ?」
「えっ?」
とブノワトとコッキーは同時に首を傾げた、
「ほら、ガラス鏡のお店のお披露目会の時に」
エレインがニヤリと微笑み、飴の壺に手を伸ばす、
「・・・あー、もしかして、あのお姉さま方ですか・・・」
「えっ、マフダさんのお姉さんですよね・・・」
「そうよ、マフダさんのお姉さん、で、一番綺麗・・・って言ったらダメかな?一番上のお姉さんがフィロメナさんって人でね、気持ちの良い人よ、マフダさんは一番だらしないって怒ってるけど」
「あら、エレインさんの知り合いのお店に行ったの?あいつら」
これはソフィアも初耳であったらしい、
「はい、そう聞いてます、なので、ね、この街でも最高級の遊女屋さんですよ、そう聞いたら・・・だって、そりゃ楽しみでしょう」
エレインは余裕の笑みである、エレイン自身は直接的な近親者が呼ばれた訳ではないのでまるで他人事であったりもする、
「むー・・・でも、あのお姉さま方って・・・良い感じの人ばっかりだったけど・・・」
「それは確かに、えー、でもなー、うちの連中があの人達に相手にされるのかなー」
「それは思うね、だって、何かこう、貴族様とはいかないまでも、上品な感じだったよね」
「うん、派手なんだけど、落ち着いた感じだったと思う」
「そりゃだって、お客様ならちゃんと相手するもんでしょ」
「でもさー、何か、平民とは違ったよー、頭良さそうだったしー、言葉使いも何か違ってたー」
「そりゃ、そういう雰囲気も大事らしいですわよ、高級なお店なんだから、フィロメナさんも化粧なんかしたくないんだけどしなきゃ駄目なのよーって愚痴ってたわね・・・」
「あっ、確かに、化粧してたね」
「うん、役者さんかなって思っちゃった」
「でしょう、で、その化粧もね、本来はお店に出るときだけでもいいらしんだけど、街中歩いてて目立つのも仕事の内なんだとか、だから、朝から化粧してるんだって言ってたかな、大したもんですわよね」
エレインはどうやらフィロメナというマフダの姉を気に入っているらしい、ブノワトとコッキーはエレインがそこまで褒めるとはと若干驚いており、ソフィアもへーと興味を引かれている、
「でね、フィロメナさんが言ってたけど、あれよ、実はああいうお店は男も女も楽しめるようにしているつもりなんだって、だから、女のお客様も来てほしいんだけど、難しいって笑ってたなー」
「えっ?」
「そうなんですか?」
「そうらしいわよ、時々貴族様がね、奥さんとかお妾さんとか連れて来ることもあるんだって、逆にその時のが楽しいって言ってたなー」
「へーへー、知らなかったー」
「ねー」
「うん、だから、そうね、その内商会で貸し切れるくらいに商売頑張らないとね」
ニヤリと微笑むエレインである、しかしエレインはその遊女屋の貸し切りに掛かる料金など知る由も無いし、酒を嗜む趣味も持ち合わせていない、フィロメナ達と遊ぶだけであれば、現時点でも可能は可能と言えるであろう、
「そっちに繋げます?」
「気持ちは分かるけどなー」
「ふふっ、そうだ、あのガラス容器ってまだあるんですわよね」
エレインがあっさりと話題を変えた、ソフィアも茶を飲み干すとこんなもんかなと腰を上げ、
「あっ、誰か夕飯手伝ってもらえる?ミーンさんとティルさんは休みだから、今日は普通の夕飯だからねー」
と生徒達に声を掛けて厨房へ入った、そういう事ならとルルとレスタが腰を上げるが、
「今日は私たちの番です」
サレバが勢い良く席を立ち、コミンもそれに続く、
「それはだって、片付けの順番でしょ」
ルルがムッとして言い返すと、
「それでも当番は当番ですー」
サレバも負けずに言い返した、
「それはそれ、これはこれですー」
「でも、当番だもん」
急に喧嘩腰になる二人に、
「はいはい、別に何人でもいいんじゃない?ほら、ソフィアさんを待たせちゃ駄目よ」
とグルジアが仲裁し、結局四人が厨房に向かった、そういう事ならとグルジアも厨房へ顔を出したが、ソフィアに多すぎるわよと苦笑いされグルジアは厨房から追い出されてしまったのであった。
「ずっと見ていられますね・・・」
「えへへー、ミナがお世話係なのー」
「そっかー、大事にしなきゃねー」
「うふふー、大事にするー」
「これって、わざわざ捕まえてきたの?」
「タロウさんが捕まえてきたらしいよ」
「そりゃまた・・・」
帰寮した学生達が自室に戻らずに水槽に群がっており、ミナは得意そうにその輪の中心でニコニコとしている、レインは輪に入りそびれたのもあるが、珍しくもテーブルに座って書を広げていた、単に暖炉前の定位置を学生達に取られた為もある、そこへ、
「エレインさん、あれです」
グルジアがエレインと共に玄関から入ってくる、
「あれ?」
グルジアが興奮して指差すが生徒達の背に隠れそのあれとやらがエレインには見えなかった、
「あっ、エレインさん、どうぞ」
ルルが気を利かしてサッと空間を作り、そこへエレインが吸い込まれるように分け入ると、
「まっ・・・なんですの?」
「ねー、なんですの?って感じですよねー」
「ミナとレインとタロウが作ったのよー、可愛いでしょー」
「確かに・・・」
エレインは絶句するしかなかった、さらに、
「お邪魔しまーす」
何やらまた面白いのが出来たらしいとブノワトとコッキーが入ってくる、
「わっ、どうしたんですか、ねーさん達まで」
「んー、仕事の報告とついでに愚痴りに来たのよー」
ブノワトは笑い、
「私は愚痴りに来たんですー」
コッキーも笑顔である、愚痴りに来た割には随分と上機嫌だなとルルは首を傾げるが、二人はエレインの隣に割り込むと、
「わっ、こうなったんだー」
とコッキーは快哉を上げた、
「なに?知ってたの?」
「知ってるもなにも、昨日、リノルトさんと工場に来たんですよ、タロウさんとミナちゃん、レインちゃんも、ねー」
「ねー」
とミナとコッキーが微笑み合う、
「へー、あっ、義姉さんも言ってたね、また忙しくなったって笑ってたけど」
「はい、で、これ昔、親父が作ってみたやつで売れなかったんですよねー、値段も高いし、何に使えば良いか分かんないし・・・」
これとはガラス容器の事であろう、コッキーはペタペタとガラス容器を優しく叩く、
「そういう事だったのですか・・・昨日からなんだこれはと不思議に思ってました・・・」
エレインが水槽から目を離さずに呟く、昨日タロウが持ち込んだ巨大なガラス容器は食堂の端にドンと置かれて存在感を示していたのである、生徒達は勿論大人達もそれの存在は気にしていたのであるが、それ以上に飴玉やら学園祭の打合せやらが忙しくガラス容器にまで口を出す者がいなかったのであった、
「そうなんですよー、でも、タロウさんがこれを見てやたらと興奮してまして、親父もそこまで気に入ったなら持って行けって」
「へー、でも凄いね、可愛い・・・」
「でしょー」
「うん、お魚をジックリ見たこと無かったな・・・初めてかも・・・」
「そうですよねー、お魚ってこんな風に泳ぐんだー」
「ヒレが忙しいね、パタパタしてるー、チョコチョコしてて可愛いー」
「いいなー、これいいねー」
「はい、とても魅力的ですわ・・・コッキーさん、この容器は他にもあるんですの?」
「ありますよー、あと・・・何個かな?倉庫に転がってますね、そのうち潰して材料にしようって兄貴と話してました」
「それは駄目ですわ、これは・・・これは素晴らしいです」
エレインは一目でその魅力に取りつかれたようである、ジックリと見つめ、言葉は少なく、しかしその脳みそはキチキチと音を立てて動いている、
「そうだねー、あれ、これは何?」
「どれ?」
「黒いカタツムリ?」
「えっと、えっと、レインー、これ何だっけー」
ミナが叫ぶと、
「タニシじゃろ」
レインが大声で答えた、
「そう、それ、タニシー」
「へー、でも・・・これは、それほど可愛くないかな?」
「えっとね、えっとね、タロウが必要だって言ってたー」
「そうなの?」
「うん、いなくてもいいけど、いたほうがいいんだってー」
「何だそりゃ?」
「でも、これはこれで可愛くないですか?」
「そう?そうかなー」
「なんかうねうねしてて、お魚と違ってじっくり見れます」
「だからって可愛くはないでしょ」
「えー、可愛いですよー」
どうやら、コミンはタニシの方が好きらしい、
「ミナも好きー、タニシー、あと、これ、この黒いのがシジミなんだってー」
「シジミ?あっ、貝ですか、石かと思った」
「あっ、ホントだ、ちょっと動いてる、口開いてるね、へー、開くんだー、すげー」
「へー、面白い」
ワイワイキャーキャーと嬌声が響く中、
「あら、珍しい」
ソフィアがフラリと厨房から顔を出した、
「あっ、お邪魔してます」
ブノワトとコッキーが振り向く、
「お疲れ様、どう?忙しいんじゃないの?」
ソフィアがニコニコと手を拭きながら入って来る、今日は商会が休みという事もあり、ミーンは休みでティルは壺二つ分の飴を手にして王城へ報告に戻っている、
「そうですねー、頑張ってます」
「はい、うちもー、そうだ聞いてくださいよー」
とブノワトとコッキーはサッとその場を離れてソフィアを捕まえた、
「ありゃ、どうしたの?」
「どうしたのもなにも無いですよー」
コッキーは憤然と鼻息が荒い、ソフィアはまったくと微笑みつつ、茶でも入れるわねと一旦厨房へ戻り、すぐに茶道具を持って戻って来た、
「すいません、お手を煩わせて」
ブノワトとコッキーはテーブルを囲むと、早速と夫と兄弟の愚痴である、丁度その愚痴の元たる飲み会が始まったであろう時間であった、商会の奥様方の旦那と職人達、それにクロノスやタロウを加えて、イフナースの社会勉強を名目とした遊女遊びである、先程も商会の事務所で奥様方を相手にしてブーブーと盛り上がったのであるが、給料の支払いが始まり、話題は立ち消えとなって、グルジアがエレインを呼びに来た事も重なり、二人の鬱憤は微妙に晴れないままであったのだ、
「あー、そういうもんでしょ、男ってのは」
ソフィアは目を細めて茶を含む、生徒達もテーブルを囲んでお茶を始めた、飴玉の詰まった壺を真ん中に置いて飴玉を舐めつつ茶を楽しみ水槽を眺めている、その光景だけであれば何とも優雅な一時であった、
「そうですけどー」
「だって、今朝から気合入れてるんですよ、うちの馬鹿どもわー」
「そりゃせめてちゃんとした恰好でないとね、クロノスに誘われたんならそうなるでしょ」
先程クロノスも寮に顔を出し、タロウとブラスと共に飲み会の場へと向かっていた、ミナは水槽に夢中であった為これ幸いとタロウは上手い事抜け出しており、ソフィアは飲みすぎるなとだけ忠告している、
「だからってー」
「ねー、朝から機嫌が良いんですもん、ムカつきますよー」
「もう・・・大丈夫ですわよ、今日はだってフィロメナさんの所でしょ」
エレインも優雅に水槽を眺めていたが、こちらはこちらで面白そうだと口を挟む、
「?知ってるんですか?」
コッキーが目を丸くする、
「知ってるもなにも・・・一緒にはしゃいでたじゃないですか」
「はしゃぐ?」
「えっ?」
とブノワトとコッキーは同時に首を傾げた、
「ほら、ガラス鏡のお店のお披露目会の時に」
エレインがニヤリと微笑み、飴の壺に手を伸ばす、
「・・・あー、もしかして、あのお姉さま方ですか・・・」
「えっ、マフダさんのお姉さんですよね・・・」
「そうよ、マフダさんのお姉さん、で、一番綺麗・・・って言ったらダメかな?一番上のお姉さんがフィロメナさんって人でね、気持ちの良い人よ、マフダさんは一番だらしないって怒ってるけど」
「あら、エレインさんの知り合いのお店に行ったの?あいつら」
これはソフィアも初耳であったらしい、
「はい、そう聞いてます、なので、ね、この街でも最高級の遊女屋さんですよ、そう聞いたら・・・だって、そりゃ楽しみでしょう」
エレインは余裕の笑みである、エレイン自身は直接的な近親者が呼ばれた訳ではないのでまるで他人事であったりもする、
「むー・・・でも、あのお姉さま方って・・・良い感じの人ばっかりだったけど・・・」
「それは確かに、えー、でもなー、うちの連中があの人達に相手にされるのかなー」
「それは思うね、だって、何かこう、貴族様とはいかないまでも、上品な感じだったよね」
「うん、派手なんだけど、落ち着いた感じだったと思う」
「そりゃだって、お客様ならちゃんと相手するもんでしょ」
「でもさー、何か、平民とは違ったよー、頭良さそうだったしー、言葉使いも何か違ってたー」
「そりゃ、そういう雰囲気も大事らしいですわよ、高級なお店なんだから、フィロメナさんも化粧なんかしたくないんだけどしなきゃ駄目なのよーって愚痴ってたわね・・・」
「あっ、確かに、化粧してたね」
「うん、役者さんかなって思っちゃった」
「でしょう、で、その化粧もね、本来はお店に出るときだけでもいいらしんだけど、街中歩いてて目立つのも仕事の内なんだとか、だから、朝から化粧してるんだって言ってたかな、大したもんですわよね」
エレインはどうやらフィロメナというマフダの姉を気に入っているらしい、ブノワトとコッキーはエレインがそこまで褒めるとはと若干驚いており、ソフィアもへーと興味を引かれている、
「でね、フィロメナさんが言ってたけど、あれよ、実はああいうお店は男も女も楽しめるようにしているつもりなんだって、だから、女のお客様も来てほしいんだけど、難しいって笑ってたなー」
「えっ?」
「そうなんですか?」
「そうらしいわよ、時々貴族様がね、奥さんとかお妾さんとか連れて来ることもあるんだって、逆にその時のが楽しいって言ってたなー」
「へーへー、知らなかったー」
「ねー」
「うん、だから、そうね、その内商会で貸し切れるくらいに商売頑張らないとね」
ニヤリと微笑むエレインである、しかしエレインはその遊女屋の貸し切りに掛かる料金など知る由も無いし、酒を嗜む趣味も持ち合わせていない、フィロメナ達と遊ぶだけであれば、現時点でも可能は可能と言えるであろう、
「そっちに繋げます?」
「気持ちは分かるけどなー」
「ふふっ、そうだ、あのガラス容器ってまだあるんですわよね」
エレインがあっさりと話題を変えた、ソフィアも茶を飲み干すとこんなもんかなと腰を上げ、
「あっ、誰か夕飯手伝ってもらえる?ミーンさんとティルさんは休みだから、今日は普通の夕飯だからねー」
と生徒達に声を掛けて厨房へ入った、そういう事ならとルルとレスタが腰を上げるが、
「今日は私たちの番です」
サレバが勢い良く席を立ち、コミンもそれに続く、
「それはだって、片付けの順番でしょ」
ルルがムッとして言い返すと、
「それでも当番は当番ですー」
サレバも負けずに言い返した、
「それはそれ、これはこれですー」
「でも、当番だもん」
急に喧嘩腰になる二人に、
「はいはい、別に何人でもいいんじゃない?ほら、ソフィアさんを待たせちゃ駄目よ」
とグルジアが仲裁し、結局四人が厨房に向かった、そういう事ならとグルジアも厨房へ顔を出したが、ソフィアに多すぎるわよと苦笑いされグルジアは厨房から追い出されてしまったのであった。
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