セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
上 下
639 / 1,140
本編

59話 お披露目会 その11

しおりを挟む
翌朝、事務所では店舗の準備に忙しかった、昨日はお披露目会の為に店舗は休みとしたのであるが、一昨日の状況と、昨日も掲示板を見に来る者達の状況や臨時休業の木簡を掲げた店舗を覗いて残念そうにして帰る客達の姿を、マフダやリーニーは確認しており、どうやら広告掲示板の効果は暫く続くものとエレインとテラは判断した、ついては暫くの期間、新人研修も含めて従業員を増やし、さらに、マフダにも店舗の補佐に回るようにと指示を出しており、午後にはジャネット達にも店舗の方を担当するように登園前に言い含めていた、

「忙しくなるのは正午を過ぎるくらいからのようですから、屋台も先に出しておけば少しは楽でしょう・・・他にはどうかしら?」

エレインはマフダとドリカ、リーニーに不足は無いかと確認する、

「はい、店の方は大丈夫かと思いますが・・・」

ドリカはうーんと唸りつつ、

「やはり警備の人・・・というか、男手が欲しいですね、先日はイース様の御助力があったので混乱する事は無かったのですが・・・」

「あっ、それもありますよね・・・」

ドリカの言葉にマフダもリーニーも若干不安そうに顔を曇らせる、

「そうですわね・・・今までであれば近所の家族連れや学生が多かったからそれほど困る事もなかったのですが、初めてのお客様が多いと・・・うん・・・」

エレインも理解を示して首を傾げた、開店当初もクロノスが機転を利かせてくれて実兄であるトーラーが警備員代わりに立ってくれたのであるが、その後、常客の質の良さにあぐらをかいてしまい男性従業員はおろか警備担当も雇用していない、これはガラス鏡店でもテラと共に課題としていた事であった、

「・・・もし・・・なんですが・・・」

とドリカは恐る恐る、

「うちの旦那とか同僚ですね、昨日、挨拶した者もいると思いますが、そちらを日雇いの形であれば連れて来る事は可能かと思いますが・・・」

悩みながら提案する、エレインも実は少しばかり考えていた事である、しかし、リューク商会や軍との関係もある為複雑になりそうだと考え、放置していた案ではあった、

「そうよね・・・それが一番確実は確実なのよね・・・出来るかしら?」

「はい、旦那もそうなんですが、3勤1休なんですね、あちらも勤務表での出勤なので、その休みの日であればこちらに来る事も出来ると思います・・・が・・・それも人によりますね、折角のお休みですし、家業を手伝っている方もいるでしょうし、やはりそれぞれですから」

「そうね・・・それにそうなるとリューク商会との契約が必要になりますし、領主様に御理解頂く必要も出てきます、なので・・・」

うん、とエレインは顔を顰める、

「そうですよねー、そうなると定番としては冒険者ギルドでしょうか、半分引退した高齢の冒険者とかが警備員をやっているはずです」

「そういうのもあるのですか・・・」

「はい、貴族様の門衛とかはそうですね、それと、衛兵を引退した方とか・・・でも、今日依頼して今日来てもらうのは難しいかなと思います・・・知り合いもいないですね、なので直接依頼も難しいかな・・・」

「それは残念ね・・・でも、早急に対応が必要ね、取り敢えずこれからギルドに行きますから相談してみますね、今日に関してはイース様に御助力頂こうと考えておりました、忙しい時間帯には対応できるようにしてみます、難しかったら申し訳ないのですが対応お願いします」

「はい、何とかしてみましょう」

ドリカは難しい顔で頷く、その隣りではマフダもどうしたものかと悩んでいた、警備の仕事や護衛の仕事はグルア商会でも受けている仕事であった、しかし、それは専ら裏の仕事とされていた、グルア商会の表の顔は飲食業であり、遊女屋は公的には認められにくい業種とされている為、一般的に及びギルドでの登録業種は飲み屋扱いなのである異常な高額なと修飾語が必要であるが、そしてその店を守る為に一般的にはならず者とされる集団を抱えている、グルア商会の中核となる集団なのであるが、その集団が先であったのか遊女屋が先にあってグルア商会が成立しているのかはマフダは知らないし、知りたいとも思わない、それが経年の内にモニケンダムの裏社会を牛耳る2大巨頭とまで言われる程になったのであるからリズモンドの手腕はかなりのものなのであろう、マフダとしては昨日の様子を見る限り警備の仕事をエレインへ売り込む事も可能かと思うのであるが、その場合派遣される男達は正にならず者かやくざ者である、リズモンド自身は洒落ものとして派手な装いを好む為暴力的には見えない人物なのであるが、その部下達はやはりどうしても一目でそれと分かる連中なのであった、店舗の警備として街路に立つにはあまりにも場違いと思うし、なによりお客様が本気で怖がる可能性がある、マフダとしては物心ついた頃から馴染んだ面相なのであるが、一般的には忌避されてしまう事を社会に出てから学んでいる、つまり、グルア商会へ警備を依頼するのは止したほうがいいなとマフダは自答するに至った、

「宜しくお願いします、私はカチャーさんとギルドに行って、そのままガラス鏡店へ向かいます、何かあればカチャーさんを寄越しますし、こちらでも不測の事態があればすぐに連絡するようにして下さい」

エレインの明確な指示にドリカ達はハイッと元気よく答え、早速と店舗の準備に向かう、今日の当番は既に厨房で仕込み作業を始めており、通常の5割増しで仕込む事にしていた、一昨日の状況を考えるに倍あっても良いかもしれないとの意見もあったが、取り敢えずと抑え気味の仕込み量となっている、

「あらっ、こっちもまだ反響があるのね・・・」

エレインとカチャーが商工ギルドに着くと、掲示板には朝も早いというのに設置した時と同じような人だかりが出来ていた、興味深いのは綺麗に男女に別れている事であろうか、下着の掲示板の前には買い出しに出て来たばかりの御婦人達の姿が多く、その足元には子供の姿もある、広告掲示板の方は勤め人らしき男性の姿が多い、そちらは手にした黒板になにやら書き付けている者もいる、二人はそれを横目に開け放たれた扉を潜って商工ギルドに入った、するとこちらも中々に盛況のようである、エレインが知る限り商工ギルドがこれほど忙しそうにしている事は稀であった、恐らく月に一度の税金その他の支払い日でもこれほどに混雑している事は無い、

「わっ、これは待ちますかね・・・」

カチャーも受付に並ぶ人波を見て思わず呟く、

「そうね、それも仕方ないかしら、時間がかかるようであれば、お願いしますね」

「はい、了解です」

エレインは昨日依頼された掲示板設置後の売上報告に来たのであった、それは木簡一枚を渡せば済む程度の事なのであるが、ここはやはり昨日の礼も含めてエレイン自ら顔を出すべきであろうとのテラの意見もあり、こうしてカチャーを伴って足を運んだ次第である、二人は取り敢えずと受付の列に並ぶ、すると職員の一人がエレインの姿に気付いたようで、受付で対応していたミースとその場を代わり、ミースは、

「おはようございます」

と満面の笑みで二人の元に飛んできた、

「おはようございます、忙しそうですね」

ニコリと微笑むエレインに、

「そうなんですよ、殆ど広告掲示板の問い合わせですね」

「えっ、そうなんですか?」

「はい、昨日も忙しかったんですが、今日もですね、これは早めに競売なりなんなりやらないとってなってました」

明るく笑うミースにエレインはハァーと呆れたような驚いたような気の抜けた声を発してしまい、

「あっ、ごめんなさい、ビックリして」

と慌てて取り繕うと、

「すいません、ギルド長はお手隙ですか?先日の売上の報告をと思いまして」

エレインが用向きを伝えると、ミースは二人に列から外れて待つようにと言い含めすぐに事務所に走る、エレインがこれは聞いた以上に大変な事になっているのかもと眺め回していると、ミースが戻ってきて奥の部屋に招かれた、

「おはようございます、エレイン会長」

その部屋はギルド長の執務室であるらしい、中央の大きな机からギルド長が立ち上がりどうぞどうぞと応接テーブルへと二人は誘われた、

「朝早くからすいません、お忙しいところ」

エレインは取り敢えず挨拶を返しつつ、昨日の礼も言い添える、ギルド長はこちらこそとガラス鏡店を褒めつつ、ドーナッツの礼も忘れない、そして、

「こちらが売上報告になります、こちらが当日の分、下に記してあるのが平均的な売上ですね」

早速本題に入った、

「なるほど・・・大雑把に見て2倍といった所ですか・・・」

ギルド長は木簡を手にして数字だけの評価を口にする、

「はい、なのですが、当時の状況を説明しますと」

とエレインは髪留めに関しては売り切れになってしまった事、まるで予想していなかった為に食品の方の仕込みが足りなかった事、その上、来店頂いた客の内、その半数はお帰り頂いた事等を申し添える、

「なるほど・・・そうなるのですね」

「はい、今日に関しても通常の仕込みよりも多めに作ってはありますが、この状況が今日も続くかどうかは大変に難しいと思っております、なので・・・難しいですね」

「確かに、大量に用意しておいて売れ残っては本末転倒ですからな、特に飲食関係だと・・・うん、分かります、これが他の品であれば腐る事も無いでしょうが、食品はその点・・・」

ギルド長がうんうんと頷いている所にミースが茶を持って入室し、配膳を終えるとそのままギルド長の隣りに座を占めた、ギルド長は簡単にミースに説明すると、

「いや、ありがとうございます・・・そうですね、これは経過観察が必要かと思いますな、広告の掲示がどのように売上に影響するのか大変に興味深い・・・うん、では、こちらお預かりしまして、下着の方と合わせて今日中に領主様へ報告致します」

「それは嬉しいですね、明日、ガラス鏡店の方へお越しになる予定でしたから」

「はい、伺っておりました、良い・・・どころか想定以上の報告が出来るかと思います、お喜び頂けるでしょう」

ギルド長とエレインは安堵の笑みを浮かべ、ミースも嬉しそうに微笑んでいる、そして、エレインは警護の件等を相談し、ギルド長はガラス協会の段取りを、ミースは協会発足後に鏡を何処に置くのか等と突発的であった会談は和やかに進んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...