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本編
58話 胎動再び その9
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それからエレインは一度会長室に入り荷物を置くと、ミーンとティルを連れて寮の食堂へと向かった、
「ソフィアさん、います?」
「はいよー、なにー」
そっと食堂を覗くと、ソフィアは一人黒板に向かって腕組みをしており、内庭ではカンカンゴンゴンと工事の音と男達の大声が響いている、
「すいません、ティルさんとミーンを連れてきました」
エレインはおずおずと用向きを伝える、領主邸から屋敷を回って二人を連れて来たのであるが、ティルから昨日の顛末を聞き、これはソフィアさんとしてはあまり乗り気では無い事なのだろうと再認識した、その為若干及び腰になってしまう、なにせ何がどうあろうとエレインにとっては最も大事な恩人なのである、その不興を買う事は絶対に避けたい事であった、時すでに遅しとなればまた対応を考えねばならないとも覚悟は決めていたが、
「はいはい、早いわねー」
エレインの憂慮など考えもしていないのであろう、ソフィアはいつも通りに飄々とした様子で振り返り、
「そうですね、でも、日も短くなってますから、早めの方が宜しいかと・・・」
エレインは幾分か安堵しつつ食堂に入る、その背後では足の清拭を終えた二人がこちらは緊張した面持ちでエレインに続いた、
「そっか、そうよねー、まぁ、あれだ、うん、そうだねー」
とソフィアはエレインの言う事も尤もだなと納得する、実際の所冬場の夕食は時間的に早くなるもので、一般的には陽のあるうちに夕食を済ませ、暖炉の火が残っているうちに丸くなって寝てしまう、無論、そうなると朝が早い、まだ暗いうちからもぞもぞと動き出すことになり、朝の痺れるような寒さの中で水汲みをさせられる、ソフィアはそんな田舎での生活をなんとなく思い出し、こっちも似たようなものになるのであろうな等と考えつつ、
「じゃ、どうしようか、ティルさんは昨日会ったからな、ミーンさんだっけ?」
「はい、ミーン」
エレインはミーンに目配せして自分の隣りに立たせると、簡単に紹介し、ミーンもそれに合わせて如何にもメイド風に一礼してみせた、
「あら、そっか、あれか、向こうの御屋敷で見かけたかしら?」
「はい、何度かお迎えしたと思います」
ミーンは緊張して強張った顔のままに答える、
「そっかー、エレインさんのとこのメイドさんだったんだねー、イフナース様が連れて来た子かと思ってた・・・っていうか、そんな事気にしてなかったわ」
機嫌良く微笑むソフィアにミーンはほっとして軽い笑顔を見せる、道すがらティルの話しを聞いた為どうしても怖い人を想像してしまっていたのである、商会では良い噂しか聞いていなかった為、穏やかで優しく聡明な人という印象であったのだが、何せ、あのクロノス王太子に面と向かって文句を言ったらしいのだ、そのような人物はどのような経緯があったとしても稀有な存在であろう、何よりその胆力と肝っ玉が恐ろしいと感じる、
「そっか、ま、宜しくね、さ、入って」
ソフィアは三人を招き入れ、
「でね、ちょっと考えてたんだけどさー」
と再び黒板に向かう、エレインは何のかんのと言ってもこうしてしっかりと構想を練る辺りがソフィアさんらしいなと嬉しく思い、小躍りしそうなほどに足取りが軽くなる、やはりソフィアさんはこうでなくてはと自然と顔が綻び、
「なんでしょう」
普段通りの声音に戻る、
「うん、こっち来てから私が作った変な料理を書き出してみたのよ」
「変なって・・・自分で言わないで欲しいですわ」
「いいのよ、よく考えれば変だもん、よくもまぁこんな料理ばかり出したもんだわと思ってね」
「そんなー、どれもこれも美味しかったですよ」
「そうなのよねー、自分で言うのはなんだけど、そこそこ美味しいから困るのよ」
「もう、なんですそれ?」
「だって、美味しいものは美味しいんだもん」
「そうですけどー」
すっかりいつもの調子で掛け合う二人に、ティルとミーンは呆気にとられてポカンとしてしまう、
「でね、あっ、ほれ、座んなさい」
ソフィアは目線でテーブルを差し、エレインは二人に微笑みかけて黒板に正対するテーブルにいそいそと腰掛ける、
「まずね、大きく分けていくと、油料理よね、これは料理としては昔からあるけど自宅ではまずやらないわよね」
と黒板を差す、そこにはカラアゲ、カツ、テンプラ、スアゲと料理名が並び大きく丸囲いされていた、
「そうですね、大概は食事処とか・・・でも、うちは貧乏貴族でしたから、油料理を知ったのはこっちに来てからですね、ティルさんはどう?」
エレインはこれは料理談義が始まったとウキウキしながら答え、ティルは昨日とのあまりの落差に困惑しながらも、
「はい、えっと、王宮でもそれほど頻繁には調理されていないです、その、油の値段もそうですが、どうしても料理自体が小さいものになってしまうので、手間がかかる割には見た目は豪華ではない、確かそんな言い訳を耳にした記憶があります・・・それとやはり火事の危険も大きいので、ソフィアさんに教えてもらったメイド達も竈で油料理は止しましょうという事になってました」
「あー、やっぱり?」
「はい」
「そうよねー、私もね、タロウ・・・あ、私の旦那ね、旦那がコンロを作って、油を大量に使った時は思わず怒鳴っちゃったもん、何をするかーって、だって、油は高いし、扱いは難しいしで、うん、でもコンロであれば比較的に安全・・・っぽいのよね、うん、これはコンロ様様だわ」
「そうだったんですか?」
エレインが遠慮なく微笑み、ティルとミーンもつられて微笑む、
「そうなのよ、でも、旦那曰くね、野草にしろ肉にしろ魚にしろ何を揚げても上手いんだよって言っててね、で、こっちでは鳥肉と獣肉か、それと野菜か、揚げてみたけど美味しいかったでしょ、でも、魚は慣れなくてねー、手に入らないって事もあるんだけど、乾物ならあるんだけど、旦那も乾物は揚げ物に合わないかもなって言ってたから・・・うん、魚はそのうち挑戦したいわねー、いつだったかサケを貰ったけど団子にするのが精いっぱいだったからね、美味しかったけど」
「確かに美味しかったです、でも魚自体が貴重ですから、慣れるといっても難しいですよね」
「そうなのよねー、まっいいか、でね」
とソフィアは黒板に向き直り、そこでやっとティルとミーンはハッとその使命を思い出し、荷物から黒板を引っ張り出した、エレインはその様をニコヤカに眺め、
「小麦を使った料理も大事なのよ、まずはシロメンでしょ、で、先日のラビオリだかギョウザだか、パイの類はどこにでもあるし、薄パンもあれよね、地方によっては何処にでもあるわよね、そういえば普通のパンは作ってないわね、竈がめんどくなっちゃって、駄目ねー、コンロが便利すぎるのだわ」
「そうですね、でも、こう見るとシロメンとラビオリは出色と思います、美味しいですし食べやすいですし」
「そうよねー、メン関係は4本フォークのお陰って事もあるんだけど、あれをスプーンで食べるのは無理よね、手掴みになっちゃう・・・あっ、そうだ、これも旦那に教わったんだけどさ、クロメンはまだ作ってないわよね」
「そうですね、聞いた事ないような・・・ちらっと聞いたかな?」
「これは蕎麦なのよ」
「えっ、蕎麦ですか?」
「うん、蕎麦をねシロメンみたいに練って細く切るんだけど、あれは今一つ好みじゃないのよね、旦那は好きらしいんだけど・・・私も何度か食べたけど、うん、こんなもんかなーって、だからどうしても練りものとかソバガキは良く作るんだけどね、あれは普通よね」
「普通って、まぁ、それはだって蕎麦はそういうふうに食べるものですし、普通であることは問題ではないと思いますが、クロメンですか・・・食べてみたいですね」
「そうよねー、じゃ、これ挑戦してみる?」
「いいですね、やりましょう」
「そんな事言ってエレインさんはやらせる方でしょ」
「そんな寂しい事言わないで下さいよー」
「ふふん、まぁいいわ、でだ、他にはこれか、卵を使った料理ね、これは多いわねー」
「ですよね、そっか、そうだ、ソフィアさんの料理って何が違うって卵料理ですよ」
「そう思う?」
「そうですよ、それこそ朝食から夕食もそうですし、カスタードも卵料理ですからね、スポンジケーキもだし、あっ、マヨソースもですよね、それとミルクもですね、あれの使い方が別世界なのですよ」
「そうよねー、いや、改めて考えてみるとね、うん、エレインさんの言う通りかもね、旦那がやたらめったら卵を料理に使うもんだから、それを参考にしてるんだけど、こっちに来ても卵が手に入り易いからね都合良かったわ」
「そうですね、何気に特産です」
「特産か・・・なるほど確かに・・・うん、何がいいって楽なのよ、焼いてもいいし、茹でてもいいし」
「あれです、揚げ物の玉子とじは絶品ですよ」
「それもあるわね、あれは隠し味が大事なんだけど」
「そうなんですか?」
「ふふん、そうなのよねー、あっ、で、そうなると、ミルクもか・・・そうよね・・・うん」
ソフィアは黒板に書き足すと、
「そっか、料理の事ばかりで甘い物まで考えてなかったな、そうなると、ミルクと黒糖と蜂蜜か」
「一番大事ですよ」
「そうよねー、大事よねー」
「そうですよ、どれだけ助けられたと思ってるんですか」
「それはエレインさん達が頑張ったからでしょ、私は知らないわー」
「またそんな事言ってー」
エレインの可愛らしい困り顔にソフィアはアッハッハと笑いつつ、
「ま、これは取り敢えず置いておいて、ミルク繋がりでチーズか、チーズはこっちではあんまりよね」
「そうですね、ミルクは当たり前にありますけど、チーズは・・・ミーンさんどんなもんなの?」
エレインは唐突にミーンに問いかけ、忙しく板書していたミーンは驚いてエッと大声を上げてしまう、
「フフッ、ほら、こっちでチーズって簡単に手に入る?」
再度聞き直すエレインに、
「はっ、はい、えっと」
ミーンは少し考え、
「うーん、市場では時々見る程度ですね・・・その貴重品・・・とまではいかなくても、あれです、ミルクとしてそのまま飲む事が多いので、チーズはあまり作ってないかもですね、それと、子供の頃から飲んでました、お茶よりも子供はこっちだぞって」
「へー、それはいいかもね、お茶よりもミルクの方が栄養ありそうだし、手間もかからないか・・・そっか、そういう事もあるのか・・・そうよね、ミルクは結構売ってるもんね」
「はい、店でも大量に活用してます」
「そうよねー、前のチーズもクロノスから貰ったやつだったしなー」
とソフィアは首を傾げる、
「あの・・・」
とティルがおずおずと手を上げる、
「なに?」
「えっと、チーズであれば王宮で余ってます」
「余ってる?」
ソフィアが目を丸くした、
「はい、あの、保存が利くので冬場に向けて貯め込むんですけど、今一つ活用しきれなくて、で・・・」
「余ってる?」
「はい」
ティルが自信無さげに頷くと、ソフィアは、
「そっかー、それであれば・・・」
とニヤリと口角を上げるのであった。
「ソフィアさん、います?」
「はいよー、なにー」
そっと食堂を覗くと、ソフィアは一人黒板に向かって腕組みをしており、内庭ではカンカンゴンゴンと工事の音と男達の大声が響いている、
「すいません、ティルさんとミーンを連れてきました」
エレインはおずおずと用向きを伝える、領主邸から屋敷を回って二人を連れて来たのであるが、ティルから昨日の顛末を聞き、これはソフィアさんとしてはあまり乗り気では無い事なのだろうと再認識した、その為若干及び腰になってしまう、なにせ何がどうあろうとエレインにとっては最も大事な恩人なのである、その不興を買う事は絶対に避けたい事であった、時すでに遅しとなればまた対応を考えねばならないとも覚悟は決めていたが、
「はいはい、早いわねー」
エレインの憂慮など考えもしていないのであろう、ソフィアはいつも通りに飄々とした様子で振り返り、
「そうですね、でも、日も短くなってますから、早めの方が宜しいかと・・・」
エレインは幾分か安堵しつつ食堂に入る、その背後では足の清拭を終えた二人がこちらは緊張した面持ちでエレインに続いた、
「そっか、そうよねー、まぁ、あれだ、うん、そうだねー」
とソフィアはエレインの言う事も尤もだなと納得する、実際の所冬場の夕食は時間的に早くなるもので、一般的には陽のあるうちに夕食を済ませ、暖炉の火が残っているうちに丸くなって寝てしまう、無論、そうなると朝が早い、まだ暗いうちからもぞもぞと動き出すことになり、朝の痺れるような寒さの中で水汲みをさせられる、ソフィアはそんな田舎での生活をなんとなく思い出し、こっちも似たようなものになるのであろうな等と考えつつ、
「じゃ、どうしようか、ティルさんは昨日会ったからな、ミーンさんだっけ?」
「はい、ミーン」
エレインはミーンに目配せして自分の隣りに立たせると、簡単に紹介し、ミーンもそれに合わせて如何にもメイド風に一礼してみせた、
「あら、そっか、あれか、向こうの御屋敷で見かけたかしら?」
「はい、何度かお迎えしたと思います」
ミーンは緊張して強張った顔のままに答える、
「そっかー、エレインさんのとこのメイドさんだったんだねー、イフナース様が連れて来た子かと思ってた・・・っていうか、そんな事気にしてなかったわ」
機嫌良く微笑むソフィアにミーンはほっとして軽い笑顔を見せる、道すがらティルの話しを聞いた為どうしても怖い人を想像してしまっていたのである、商会では良い噂しか聞いていなかった為、穏やかで優しく聡明な人という印象であったのだが、何せ、あのクロノス王太子に面と向かって文句を言ったらしいのだ、そのような人物はどのような経緯があったとしても稀有な存在であろう、何よりその胆力と肝っ玉が恐ろしいと感じる、
「そっか、ま、宜しくね、さ、入って」
ソフィアは三人を招き入れ、
「でね、ちょっと考えてたんだけどさー」
と再び黒板に向かう、エレインは何のかんのと言ってもこうしてしっかりと構想を練る辺りがソフィアさんらしいなと嬉しく思い、小躍りしそうなほどに足取りが軽くなる、やはりソフィアさんはこうでなくてはと自然と顔が綻び、
「なんでしょう」
普段通りの声音に戻る、
「うん、こっち来てから私が作った変な料理を書き出してみたのよ」
「変なって・・・自分で言わないで欲しいですわ」
「いいのよ、よく考えれば変だもん、よくもまぁこんな料理ばかり出したもんだわと思ってね」
「そんなー、どれもこれも美味しかったですよ」
「そうなのよねー、自分で言うのはなんだけど、そこそこ美味しいから困るのよ」
「もう、なんですそれ?」
「だって、美味しいものは美味しいんだもん」
「そうですけどー」
すっかりいつもの調子で掛け合う二人に、ティルとミーンは呆気にとられてポカンとしてしまう、
「でね、あっ、ほれ、座んなさい」
ソフィアは目線でテーブルを差し、エレインは二人に微笑みかけて黒板に正対するテーブルにいそいそと腰掛ける、
「まずね、大きく分けていくと、油料理よね、これは料理としては昔からあるけど自宅ではまずやらないわよね」
と黒板を差す、そこにはカラアゲ、カツ、テンプラ、スアゲと料理名が並び大きく丸囲いされていた、
「そうですね、大概は食事処とか・・・でも、うちは貧乏貴族でしたから、油料理を知ったのはこっちに来てからですね、ティルさんはどう?」
エレインはこれは料理談義が始まったとウキウキしながら答え、ティルは昨日とのあまりの落差に困惑しながらも、
「はい、えっと、王宮でもそれほど頻繁には調理されていないです、その、油の値段もそうですが、どうしても料理自体が小さいものになってしまうので、手間がかかる割には見た目は豪華ではない、確かそんな言い訳を耳にした記憶があります・・・それとやはり火事の危険も大きいので、ソフィアさんに教えてもらったメイド達も竈で油料理は止しましょうという事になってました」
「あー、やっぱり?」
「はい」
「そうよねー、私もね、タロウ・・・あ、私の旦那ね、旦那がコンロを作って、油を大量に使った時は思わず怒鳴っちゃったもん、何をするかーって、だって、油は高いし、扱いは難しいしで、うん、でもコンロであれば比較的に安全・・・っぽいのよね、うん、これはコンロ様様だわ」
「そうだったんですか?」
エレインが遠慮なく微笑み、ティルとミーンもつられて微笑む、
「そうなのよ、でも、旦那曰くね、野草にしろ肉にしろ魚にしろ何を揚げても上手いんだよって言っててね、で、こっちでは鳥肉と獣肉か、それと野菜か、揚げてみたけど美味しいかったでしょ、でも、魚は慣れなくてねー、手に入らないって事もあるんだけど、乾物ならあるんだけど、旦那も乾物は揚げ物に合わないかもなって言ってたから・・・うん、魚はそのうち挑戦したいわねー、いつだったかサケを貰ったけど団子にするのが精いっぱいだったからね、美味しかったけど」
「確かに美味しかったです、でも魚自体が貴重ですから、慣れるといっても難しいですよね」
「そうなのよねー、まっいいか、でね」
とソフィアは黒板に向き直り、そこでやっとティルとミーンはハッとその使命を思い出し、荷物から黒板を引っ張り出した、エレインはその様をニコヤカに眺め、
「小麦を使った料理も大事なのよ、まずはシロメンでしょ、で、先日のラビオリだかギョウザだか、パイの類はどこにでもあるし、薄パンもあれよね、地方によっては何処にでもあるわよね、そういえば普通のパンは作ってないわね、竈がめんどくなっちゃって、駄目ねー、コンロが便利すぎるのだわ」
「そうですね、でも、こう見るとシロメンとラビオリは出色と思います、美味しいですし食べやすいですし」
「そうよねー、メン関係は4本フォークのお陰って事もあるんだけど、あれをスプーンで食べるのは無理よね、手掴みになっちゃう・・・あっ、そうだ、これも旦那に教わったんだけどさ、クロメンはまだ作ってないわよね」
「そうですね、聞いた事ないような・・・ちらっと聞いたかな?」
「これは蕎麦なのよ」
「えっ、蕎麦ですか?」
「うん、蕎麦をねシロメンみたいに練って細く切るんだけど、あれは今一つ好みじゃないのよね、旦那は好きらしいんだけど・・・私も何度か食べたけど、うん、こんなもんかなーって、だからどうしても練りものとかソバガキは良く作るんだけどね、あれは普通よね」
「普通って、まぁ、それはだって蕎麦はそういうふうに食べるものですし、普通であることは問題ではないと思いますが、クロメンですか・・・食べてみたいですね」
「そうよねー、じゃ、これ挑戦してみる?」
「いいですね、やりましょう」
「そんな事言ってエレインさんはやらせる方でしょ」
「そんな寂しい事言わないで下さいよー」
「ふふん、まぁいいわ、でだ、他にはこれか、卵を使った料理ね、これは多いわねー」
「ですよね、そっか、そうだ、ソフィアさんの料理って何が違うって卵料理ですよ」
「そう思う?」
「そうですよ、それこそ朝食から夕食もそうですし、カスタードも卵料理ですからね、スポンジケーキもだし、あっ、マヨソースもですよね、それとミルクもですね、あれの使い方が別世界なのですよ」
「そうよねー、いや、改めて考えてみるとね、うん、エレインさんの言う通りかもね、旦那がやたらめったら卵を料理に使うもんだから、それを参考にしてるんだけど、こっちに来ても卵が手に入り易いからね都合良かったわ」
「そうですね、何気に特産です」
「特産か・・・なるほど確かに・・・うん、何がいいって楽なのよ、焼いてもいいし、茹でてもいいし」
「あれです、揚げ物の玉子とじは絶品ですよ」
「それもあるわね、あれは隠し味が大事なんだけど」
「そうなんですか?」
「ふふん、そうなのよねー、あっ、で、そうなると、ミルクもか・・・そうよね・・・うん」
ソフィアは黒板に書き足すと、
「そっか、料理の事ばかりで甘い物まで考えてなかったな、そうなると、ミルクと黒糖と蜂蜜か」
「一番大事ですよ」
「そうよねー、大事よねー」
「そうですよ、どれだけ助けられたと思ってるんですか」
「それはエレインさん達が頑張ったからでしょ、私は知らないわー」
「またそんな事言ってー」
エレインの可愛らしい困り顔にソフィアはアッハッハと笑いつつ、
「ま、これは取り敢えず置いておいて、ミルク繋がりでチーズか、チーズはこっちではあんまりよね」
「そうですね、ミルクは当たり前にありますけど、チーズは・・・ミーンさんどんなもんなの?」
エレインは唐突にミーンに問いかけ、忙しく板書していたミーンは驚いてエッと大声を上げてしまう、
「フフッ、ほら、こっちでチーズって簡単に手に入る?」
再度聞き直すエレインに、
「はっ、はい、えっと」
ミーンは少し考え、
「うーん、市場では時々見る程度ですね・・・その貴重品・・・とまではいかなくても、あれです、ミルクとしてそのまま飲む事が多いので、チーズはあまり作ってないかもですね、それと、子供の頃から飲んでました、お茶よりも子供はこっちだぞって」
「へー、それはいいかもね、お茶よりもミルクの方が栄養ありそうだし、手間もかからないか・・・そっか、そういう事もあるのか・・・そうよね、ミルクは結構売ってるもんね」
「はい、店でも大量に活用してます」
「そうよねー、前のチーズもクロノスから貰ったやつだったしなー」
とソフィアは首を傾げる、
「あの・・・」
とティルがおずおずと手を上げる、
「なに?」
「えっと、チーズであれば王宮で余ってます」
「余ってる?」
ソフィアが目を丸くした、
「はい、あの、保存が利くので冬場に向けて貯め込むんですけど、今一つ活用しきれなくて、で・・・」
「余ってる?」
「はい」
ティルが自信無さげに頷くと、ソフィアは、
「そっかー、それであれば・・・」
とニヤリと口角を上げるのであった。
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