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本編
57話 異名土鍋祭り その3
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「ねーさん、おはよーっす、って、あー先生ー、余所行きだー」
ジャネットが二人に気付いて大声を上げ、釣られて皆の視線がユーリに集まる、すると、
「わっ、ほんとだ」
「めずらしーですねー」
「ほんまものの魔法使いだー」
「すげー、カッコイイー」
キャッキャッと遠慮無く囃し立てられた、
「うるさいわー、これも仕事じゃー」
ユーリは思わずいつもの調子で叫び、あまりの剣幕にマフダはポカンとしてしまうが、他の連中は慣れたもので、
「えー、でも似合ってますよー」
「うんうん、あれだ、寒くなってきましたし丁度いいじゃないですかー」
「そうだよねー、あっ、杖があると転びにくいですしねー」
「先生、足腰も弱ってるの?」
「私、そこまで言ってないよー」
「まだ若いのにー」
「あー、それ本気じゃないでしょー」
「わかる?」
言いたい放題である、ユーリはムーと唸りどうしてやろうかとヒクヒクと口の端を上げるが、
「あっ、マフダ、それこっちー」
「ねーさん、腰掛けは?」
「あー、御免、旦那だわって、あの野郎しゃべくってんな」
「じゃ、来たらでいいですよー、こっちの屋台お任せしていいですか?」
「はいはい、あー、こっちにも一人欲しいかな?」
「私やりますよー、状況見ながら対応って事でー」
「いつもの通りねー、了解」
どうやらあっという間に屋台の準備に戻ったらしい、アラッと肩透かし感の残るユーリである、からかうだけからかってほったらかしとはまた高度なイジメだわと一人毒づく、
「あっ、先生、試作品摘まみます?」
ジャネットが鍋の前でニヤリと微笑んだ、その前には既に数個のドーナッツが並んでおり、出来立てであろうそれから微風に乗って甘い香りと油の香りが漂っている、
「試作品なの?」
「えへへ、ほら、お金を取らない時はそういう名目です」
「あー、じゃ、どうしようかな、これって結構日持ちするよねー」
「そうですねー、といっても今日中に食べた方が美味しいと思いますけどねー、ほら、油だし、冷めたら胃にもたれそう・・・っていうか、試作品名目なんだから今食べて下さいよ」
「それもそっか、ま、いいわ、儀式終わったらまた来るわよ、朝食食べたばかりだしね、エレインさん達も来るんでしょ」
「そう聞いてます、ミナちゃんが張り切ってましたから」
「そうよねー、朝からうるさいったらなかったわ」
「そうですねー」
簡単な雑談を交わしながらもジャネットの手は次々とドーナッツを揚げている、大分慣れたのであろうかその手際は大したものであった、
「あっ、コンロはどんなもん?使えてる?」
「勿論ですよ、ありがとうございます、最高ですこれ」
「そうね、頑張ったのはカトカだからね、顔出したら一つや二つは奢んなさいよ」
「そうですねー、サビナさんとゾーイさんも来るって言ってましたから、試作品用意しておかないとですねー」
「ん、あれ、あの冷たいのはもう無いの?」
「はい、今日のは上に書いてあるのだけですね、冷たいのはもう季節じゃないです、あっ、でもソーダ水は氷入ってます、冷たくないと美味しくないんですよねー」
とジャネットは堂々と掲げられた黒板を指す、3つある屋台のそれぞれに販売している商品と価格が記載された黒板が乗っており、それによると新商品としてドーナッツ、それから定番のソーダ水とベールパンの表記があった、ユーリはへー分かりやすいわねーと改めてその工夫に感心しつつ、あっと声を上げてブノワトが準備している屋台に向かうと、
「洗濯バサミあるの?」
「ありますよー、えっと、50組くらいかな?用意してます」
「むっ、そんなに?」
「はい、だってこれ売れますよ、家でも使ってますし工場でも大活躍ですよ」
「そうだよね・・・ほら、先日買ったやつもさ、カトカとサビナが好きに使い始めちゃってさ、私の分が無いのよね」
「ありゃ、買っていきます?」
「そうしたいけど・・・無くなったら困るわよね・・・」
「そりゃ困りますけどー、今日はあれです、お一人様一組までの予定です、使った事無い人ばかりだと思うので、追加が欲しかったら店舗の方に誘導する感じですかねー、でも次の出荷がいつになるかな?頑張って作ってますけど何気に手間かかるので・・・」
「むっ、じゃ、仕方ないかな・・・追加で三組発注できる?とりあえず」
「えっ、ここでですか?」
「そうよ、納品はいつでもいいわ、但し早めにね、それで許してあげる」
「許すって・・・もう、先生らしいなー」
「だって、便利なのよ」
「知ってますー」
そこへやっとブラスが荷台を引いて合流し、ブノワトの雷が盛大に落ちた、ブラスはそれでもはいはいと笑いつつ腰掛けを設置し、ブノワトは店から持って来た追加の商品を箱ごと屋台の裏に運び込むと、
「ジャネットー・・・は忙しいか、マフダさん納品確認お願い、これ伝票ねー」
とマフダを呼びつけて検品しながら棚に並べ始める、ユーリはそれを眺めつつあらっと一声上げて、
「良く見たらこれも面白いわね」
その視線は商品では無く屋台に向けられていた、
「そうなんです、雑貨用の屋台ですね、屋台って普通は飲食用なので、雑貨用に工夫してみました、使いやすいですよー」
「なるほど・・・あら、爪やすり?・・・むっ、ずいぶん小さいわね」
「えへへ、新作です、コッキーがガラスで爪やすりを作ってきてー、負けるかーって作ってみました、可愛いでしょ」
「ガラスの爪やすり?」
「はい、聞いてないです?」
「聞いてないわね」
「あー、じゃ、エレインさんが隠しているのかな?ガラス店舗用の新商品が欲しいって言ってましたから」
「むっ、あいつめー・・・実に正しいわね」
「そうですねー」
「うん、じゃ、これ3つばかり取り置いておいて、後で買いに来るわ」
「えっ、ありがとうございます、じゃどれにします?大きく分けると5種類ありますね」
「・・・商売上手ね・・・めんどくさいから5種類一個ずつで」
「ありがとうございます」
早速の売り上げにブノワトが大声を上げ、続いてジャネット達も、
「ありがとうございます」
と笑いながら唱和する、
「うわ、恥ずかしいから止めてよ」
とユーリが一同を睨むとその視界の端に馬車が数台通るのが見えた、
「あっ、主役が来ちゃったか、じゃ、私はあっちだわ、あんたら火事には気を付けるのよー」
最後に教師らしい事を口にしてユーリはそそくさとギルドの天幕に向かう、天幕ではギルド長が中心になりリシャルトへ状況を説明をしている様子で、さらに馬車からゆっくりとカラミッドが降りてくるのも見える、ユーリが速足で天幕に入ると、
「これで揃いましたな」
学園長がニコリと笑顔になった、こちらの準備は万端であるとの表明であろう、
「すいません、学生達の屋台がありましたので」
ユーリは一応と言い訳を口にするが、その場に居なかった事を咎める者は無い、学園長達は舞台の確認をするユーリを目にしており、無論その行動には全幅の信頼を寄せている、さらにリシャルトの信任もそれなりに獲得しているようで、それはエレインやソフィアの活躍が大であり、ユーリはその一派と目されている為であった、故に少々勝手をやっても許される状況にあるという事である、気分屋のユーリとしては大変に有難い、
「六花商会さんですね、お嬢様が楽しみにしておりました、何でも新商品があるとか」
リシャルトが笑顔を浮かべる、ユーリは随分と柔らかくなったなと感じつつ、愛想笑いを浮かべ、
「そうですね、私も詳細は知らないのですが、調理は始まっているようでした」
と当たり障りの無い言葉を返すしかない、
「そうですね、では、どうしましょうか、予行練習は必要ですかな?」
「あっ、どうでしょう、昨日の段取り通りであれば問題無く、お嬢様が問題無いのであればこちらは特に・・・」
「そうですか、分かりました」
リシャルトは恭しく一礼して踵を返すと、カラミッドの下へ報告に向かう、カラミッドは静かに頷くと大股で天幕に入り、一同は静かに頭を下げて迎えた、
「朝から忙しいな」
カラミッドの機嫌の良い声が響き、
「お越し頂き恐悦でございます」
ギルド長が返礼する、
「うむ、皆畏まるな、そうだギルド長、あー、エレイン会長はおらんのか?」
といきなりその口からは珍しい名前が出てきた、
「エレイン会長ですか、はい、今日はまだ・・・えっと・・・」
とギルド長は周囲を見渡すが、エレインが何がしかの仕事をする予定は無い、故に顔を出していないとしても当然ではある、
「僭越ながら」
ユーリは小さく手を上げると、皆の視線がユーリに集まった、
「なんだ・・・ん、なんだ、ユーリ先生か、誰かと思ったぞ」
カラミッドがアッハッハと笑い声を上げた、三角帽子に隠れてユーリの顔が見えなかったらしい、
「これは失礼を、正装をと思いまして」
「うむ、確かにな、魔法使いであればそれが正しいな、で、なんだ?」
「はい、エレインさんはそろそろ来るかと思います、レアンお嬢様の晴れ姿を見物に来ると申しておりました」
「そうか、それは嬉しい、では、どうするかな、ギルド長、エレイン会長が来たら少しばかり打合せをしたい、うん、それと・・・」
とカラミッドは舞台に視線を移し、
「あれは安全なのであろうな?」
「勿論です、実際に動作させる事も可能ですが、試しますか」
ギルド長が担当者に目配せし、担当者がワタワタと動き始めた瞬間、
「よいよい、ま、楽しみに待とうか、さて、まだ時間もある、屋台を見物したいな、リシャルト、二人を呼べ、ユーリ先生」
「はい」
名指しされたユーリは条件反射で背筋を伸ばす、
「二人を頼むぞ、どうもここは男ばかりでむさ苦しい、側仕えも来ているからな、使って良いぞ」
ニヤリと微笑むカラミッドに、そう言われれば確かにそうだとユーリは天幕内を見渡し、ギルド長は何とも困った顔で苦笑いを浮かべる、天幕内はそれなりに広いのであるが女性はユーリしかいなかった、カラミッドの言葉の通り、確かに何ともむさ苦しい、
「ヘルベン、こういう所に配慮が欲しいな」
ガッハッハと笑いつつカラミッドは従者を連れて天幕を出る、リシャルトは別の馬車に走り、
「いや、これは確かに足りませんでしたな」
ギルド長は冷や汗を掻きつつ額に手を当てるしかなかった。
ジャネットが二人に気付いて大声を上げ、釣られて皆の視線がユーリに集まる、すると、
「わっ、ほんとだ」
「めずらしーですねー」
「ほんまものの魔法使いだー」
「すげー、カッコイイー」
キャッキャッと遠慮無く囃し立てられた、
「うるさいわー、これも仕事じゃー」
ユーリは思わずいつもの調子で叫び、あまりの剣幕にマフダはポカンとしてしまうが、他の連中は慣れたもので、
「えー、でも似合ってますよー」
「うんうん、あれだ、寒くなってきましたし丁度いいじゃないですかー」
「そうだよねー、あっ、杖があると転びにくいですしねー」
「先生、足腰も弱ってるの?」
「私、そこまで言ってないよー」
「まだ若いのにー」
「あー、それ本気じゃないでしょー」
「わかる?」
言いたい放題である、ユーリはムーと唸りどうしてやろうかとヒクヒクと口の端を上げるが、
「あっ、マフダ、それこっちー」
「ねーさん、腰掛けは?」
「あー、御免、旦那だわって、あの野郎しゃべくってんな」
「じゃ、来たらでいいですよー、こっちの屋台お任せしていいですか?」
「はいはい、あー、こっちにも一人欲しいかな?」
「私やりますよー、状況見ながら対応って事でー」
「いつもの通りねー、了解」
どうやらあっという間に屋台の準備に戻ったらしい、アラッと肩透かし感の残るユーリである、からかうだけからかってほったらかしとはまた高度なイジメだわと一人毒づく、
「あっ、先生、試作品摘まみます?」
ジャネットが鍋の前でニヤリと微笑んだ、その前には既に数個のドーナッツが並んでおり、出来立てであろうそれから微風に乗って甘い香りと油の香りが漂っている、
「試作品なの?」
「えへへ、ほら、お金を取らない時はそういう名目です」
「あー、じゃ、どうしようかな、これって結構日持ちするよねー」
「そうですねー、といっても今日中に食べた方が美味しいと思いますけどねー、ほら、油だし、冷めたら胃にもたれそう・・・っていうか、試作品名目なんだから今食べて下さいよ」
「それもそっか、ま、いいわ、儀式終わったらまた来るわよ、朝食食べたばかりだしね、エレインさん達も来るんでしょ」
「そう聞いてます、ミナちゃんが張り切ってましたから」
「そうよねー、朝からうるさいったらなかったわ」
「そうですねー」
簡単な雑談を交わしながらもジャネットの手は次々とドーナッツを揚げている、大分慣れたのであろうかその手際は大したものであった、
「あっ、コンロはどんなもん?使えてる?」
「勿論ですよ、ありがとうございます、最高ですこれ」
「そうね、頑張ったのはカトカだからね、顔出したら一つや二つは奢んなさいよ」
「そうですねー、サビナさんとゾーイさんも来るって言ってましたから、試作品用意しておかないとですねー」
「ん、あれ、あの冷たいのはもう無いの?」
「はい、今日のは上に書いてあるのだけですね、冷たいのはもう季節じゃないです、あっ、でもソーダ水は氷入ってます、冷たくないと美味しくないんですよねー」
とジャネットは堂々と掲げられた黒板を指す、3つある屋台のそれぞれに販売している商品と価格が記載された黒板が乗っており、それによると新商品としてドーナッツ、それから定番のソーダ水とベールパンの表記があった、ユーリはへー分かりやすいわねーと改めてその工夫に感心しつつ、あっと声を上げてブノワトが準備している屋台に向かうと、
「洗濯バサミあるの?」
「ありますよー、えっと、50組くらいかな?用意してます」
「むっ、そんなに?」
「はい、だってこれ売れますよ、家でも使ってますし工場でも大活躍ですよ」
「そうだよね・・・ほら、先日買ったやつもさ、カトカとサビナが好きに使い始めちゃってさ、私の分が無いのよね」
「ありゃ、買っていきます?」
「そうしたいけど・・・無くなったら困るわよね・・・」
「そりゃ困りますけどー、今日はあれです、お一人様一組までの予定です、使った事無い人ばかりだと思うので、追加が欲しかったら店舗の方に誘導する感じですかねー、でも次の出荷がいつになるかな?頑張って作ってますけど何気に手間かかるので・・・」
「むっ、じゃ、仕方ないかな・・・追加で三組発注できる?とりあえず」
「えっ、ここでですか?」
「そうよ、納品はいつでもいいわ、但し早めにね、それで許してあげる」
「許すって・・・もう、先生らしいなー」
「だって、便利なのよ」
「知ってますー」
そこへやっとブラスが荷台を引いて合流し、ブノワトの雷が盛大に落ちた、ブラスはそれでもはいはいと笑いつつ腰掛けを設置し、ブノワトは店から持って来た追加の商品を箱ごと屋台の裏に運び込むと、
「ジャネットー・・・は忙しいか、マフダさん納品確認お願い、これ伝票ねー」
とマフダを呼びつけて検品しながら棚に並べ始める、ユーリはそれを眺めつつあらっと一声上げて、
「良く見たらこれも面白いわね」
その視線は商品では無く屋台に向けられていた、
「そうなんです、雑貨用の屋台ですね、屋台って普通は飲食用なので、雑貨用に工夫してみました、使いやすいですよー」
「なるほど・・・あら、爪やすり?・・・むっ、ずいぶん小さいわね」
「えへへ、新作です、コッキーがガラスで爪やすりを作ってきてー、負けるかーって作ってみました、可愛いでしょ」
「ガラスの爪やすり?」
「はい、聞いてないです?」
「聞いてないわね」
「あー、じゃ、エレインさんが隠しているのかな?ガラス店舗用の新商品が欲しいって言ってましたから」
「むっ、あいつめー・・・実に正しいわね」
「そうですねー」
「うん、じゃ、これ3つばかり取り置いておいて、後で買いに来るわ」
「えっ、ありがとうございます、じゃどれにします?大きく分けると5種類ありますね」
「・・・商売上手ね・・・めんどくさいから5種類一個ずつで」
「ありがとうございます」
早速の売り上げにブノワトが大声を上げ、続いてジャネット達も、
「ありがとうございます」
と笑いながら唱和する、
「うわ、恥ずかしいから止めてよ」
とユーリが一同を睨むとその視界の端に馬車が数台通るのが見えた、
「あっ、主役が来ちゃったか、じゃ、私はあっちだわ、あんたら火事には気を付けるのよー」
最後に教師らしい事を口にしてユーリはそそくさとギルドの天幕に向かう、天幕ではギルド長が中心になりリシャルトへ状況を説明をしている様子で、さらに馬車からゆっくりとカラミッドが降りてくるのも見える、ユーリが速足で天幕に入ると、
「これで揃いましたな」
学園長がニコリと笑顔になった、こちらの準備は万端であるとの表明であろう、
「すいません、学生達の屋台がありましたので」
ユーリは一応と言い訳を口にするが、その場に居なかった事を咎める者は無い、学園長達は舞台の確認をするユーリを目にしており、無論その行動には全幅の信頼を寄せている、さらにリシャルトの信任もそれなりに獲得しているようで、それはエレインやソフィアの活躍が大であり、ユーリはその一派と目されている為であった、故に少々勝手をやっても許される状況にあるという事である、気分屋のユーリとしては大変に有難い、
「六花商会さんですね、お嬢様が楽しみにしておりました、何でも新商品があるとか」
リシャルトが笑顔を浮かべる、ユーリは随分と柔らかくなったなと感じつつ、愛想笑いを浮かべ、
「そうですね、私も詳細は知らないのですが、調理は始まっているようでした」
と当たり障りの無い言葉を返すしかない、
「そうですね、では、どうしましょうか、予行練習は必要ですかな?」
「あっ、どうでしょう、昨日の段取り通りであれば問題無く、お嬢様が問題無いのであればこちらは特に・・・」
「そうですか、分かりました」
リシャルトは恭しく一礼して踵を返すと、カラミッドの下へ報告に向かう、カラミッドは静かに頷くと大股で天幕に入り、一同は静かに頭を下げて迎えた、
「朝から忙しいな」
カラミッドの機嫌の良い声が響き、
「お越し頂き恐悦でございます」
ギルド長が返礼する、
「うむ、皆畏まるな、そうだギルド長、あー、エレイン会長はおらんのか?」
といきなりその口からは珍しい名前が出てきた、
「エレイン会長ですか、はい、今日はまだ・・・えっと・・・」
とギルド長は周囲を見渡すが、エレインが何がしかの仕事をする予定は無い、故に顔を出していないとしても当然ではある、
「僭越ながら」
ユーリは小さく手を上げると、皆の視線がユーリに集まった、
「なんだ・・・ん、なんだ、ユーリ先生か、誰かと思ったぞ」
カラミッドがアッハッハと笑い声を上げた、三角帽子に隠れてユーリの顔が見えなかったらしい、
「これは失礼を、正装をと思いまして」
「うむ、確かにな、魔法使いであればそれが正しいな、で、なんだ?」
「はい、エレインさんはそろそろ来るかと思います、レアンお嬢様の晴れ姿を見物に来ると申しておりました」
「そうか、それは嬉しい、では、どうするかな、ギルド長、エレイン会長が来たら少しばかり打合せをしたい、うん、それと・・・」
とカラミッドは舞台に視線を移し、
「あれは安全なのであろうな?」
「勿論です、実際に動作させる事も可能ですが、試しますか」
ギルド長が担当者に目配せし、担当者がワタワタと動き始めた瞬間、
「よいよい、ま、楽しみに待とうか、さて、まだ時間もある、屋台を見物したいな、リシャルト、二人を呼べ、ユーリ先生」
「はい」
名指しされたユーリは条件反射で背筋を伸ばす、
「二人を頼むぞ、どうもここは男ばかりでむさ苦しい、側仕えも来ているからな、使って良いぞ」
ニヤリと微笑むカラミッドに、そう言われれば確かにそうだとユーリは天幕内を見渡し、ギルド長は何とも困った顔で苦笑いを浮かべる、天幕内はそれなりに広いのであるが女性はユーリしかいなかった、カラミッドの言葉の通り、確かに何ともむさ苦しい、
「ヘルベン、こういう所に配慮が欲しいな」
ガッハッハと笑いつつカラミッドは従者を連れて天幕を出る、リシャルトは別の馬車に走り、
「いや、これは確かに足りませんでしたな」
ギルド長は冷や汗を掻きつつ額に手を当てるしかなかった。
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