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本編
55話 5本の光柱 その9
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ソフィアは一同に背を向け、二言三言モゴモゴと呟くと床に置いた土鍋に両手を翳した、すると翳した両手から緑色に発光する魔力が靄のように土鍋に降り積もる、重量の無い筈の魔力が微かに土鍋を揺り動かしたかのように見え、ソフィアは両手を動かして降り積もる魔力の形を形成していく、そしてこんなもんかなと呟いて両手を握り魔力を寸断すると土鍋を持って立ち上がった、ゆっくりと捧げるように土鍋を待ちあげ、さらに一言二言呟くと、土鍋は一瞬青く光る、それを確認してそのままゆっくりと降ろしていく、すると土鍋の軌跡に沿って緑色に輝く光柱が屹立した、
「おおっ」
「うむ、素早いのう」
「見事ですな」
「こうなるのか・・・なるほど・・・」
感嘆の声が思わず漏れ出す、ソフィアはそれらの声を全く無視して、土鍋を床にそっと置くと、背丈程に輝く光柱に対して別の魔法を唱えた、途端光柱は黄金色に輝き始めまばゆいばかりに講堂を照らし出す、その眩しさにソフィアはさすがに顔を顰めて薄目になるとさらに別の魔法を唱えた、すると光柱がするすると伸長し、天井手前の結界にぶち当たる、巨大な光柱となったそれは結界付近で薄い赤色へと姿を変えて拡散していた、
「すごい、予想通り」
「うん、やっぱり実物で見ると違いますね」
ゾーイとカトカは片手で目元に影を作って光柱を見上げた、机上で作られた設計だけではやはりいくら想像しても難がある、実際に目にする光柱は美しさは勿論であるがその威容には奇妙な威厳すら感じられた、その上以前の光柱のような圧倒的な威圧感は感じられない、内在する膨大な魔力量が無い為であり、本能で感じ、恐怖の対象であった圧力が皆無となって、より純粋な光の美しさだけが眼前に聳え立っている、
「まずはこれが基本形ですねー」
ソフィアがのんびりと振り返る、しかしその顔を見ているのはユーリだけで皆光柱を見上げていた、あらっとソフィアは折角気を利かせたのになと不満顔となってまぁ仕方ないかと向き直ると、別の魔法を呟き胸元程度の高さに手を翳しゆっくりと両手を回転させた、すると七色に輝く波が発生する、ソフィアの手に引かれるように大きく広く天に向かって花びらのように形成されてゆき、やや離れた場所に立つ学園長達を飲み込みそうなほどに大きくなるとその成長を止め、ゆるゆると光のベールを揺らし始めた、
「これが応用」
ソフィアは誰にともなく呟く、どうせ聞いていないだろうからと独り言のつもりである、そして、
「最後に」
とこれも独り言として呟くと、基部にある土鍋に蹲り炎の灯りの魔法を唱えた、途端、黄色の光柱は橙色に変わりおぉっという驚きの声が講堂に低く響いた、
「うん、計算通りねー」
ソフィアは上手くいったかなと腰を上げて振り返る、
「どんなもん?」
「いいんじゃない、うん、予想通りねー」
「そう?」
「私は十分だと思うけどなー」
「なら大丈夫かしら・・・」
「そうねー」
ソフィアはユーリと簡単に確認しあう、なんとも力の抜けた緊張感の無い会話であったが、他の面々は光柱を見上げて言葉も無く、カトカやゾーイもここまでとはと驚きの表情を隠せない、
「ソフィー、なにやったのー、なにこれー」
そこへ何処にいたのかミナとレインが駆けて来た、
「ふふん、なんだと思うー」
「えー、えっとえっと、なに?」
「なんだろねー」
「なんだろう、でも、綺麗だねー、カッコイイー」
ピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねるミナと、
「まったく、つまらんものを」
レインは渋い顔で光柱を見上げている、
「まぁね、こういうのもありじゃないかなー、駄目?」
ソフィアがレインを見下ろしてニヤリと微笑む、
「駄目ではないがのう、好きにするがいいわ」
フンスと鼻息の荒いレインであった、
「あっ、いかんいかん、見惚れていては意味が無い」
ミナの嬌声に学園長がやっと我に返り、
「ソフィアさん、素晴らしいのう、大したもんじゃ」
満面の笑みを浮かべ、
「うむ、しかし、これが学生でも出来るのか?確かに魔力はそれほど必要とはしないと思うが・・・いや、待て待て」
ロキュスが慌ててカトカが足元に下ろした黒板を掴み上げる、
「しかし・・・これを神殿連中に教えるのですか・・・それは何とも贅沢というか・・・うーむ・・・」
どうやら事務長も神殿に対しては良い印象が無いらしい、あからさまに嫌そうな顔となる、実際の魔法を見て簡単に譲渡するには惜しいと感じたのであろうか、
「あー、そうですねー、ま、でもこのくらいであれば、どっかの誰かがそのうち作っただろう程度のものですから」
ソフィアはいつかどこかで聞いたような言ったような事を口にした、それだけソフィアにとってはどうでも良い事であった、
「そう言われましてもな・・・」
「うむ、実際目にすると些か安請け合いしすぎたかと思うのう」
「ですよね・・・これはしっかりとした対価が発生してもおかしくないですよ・・・」
「そこはほれ、迷惑料と学園の宣伝・・・引いては王国の権威として・・・いや、それではあまりにもあれかな?」
「はい、神殿の事です、この技術を我が物と他の街でも見せびらかしかねませんぞ」
「・・・そうじゃのう、それでも良いとするか・・・いや、これは・・・うむ、一旦クロノス様と相談するかな・・・儂らでは判断できんな」
「はい、それと領主とも相談が必要になりますね」
今眼前にある光柱は以前のそれと違ってユーリが無駄の極致であり、娯楽であると言い切るほどに美しく煌びやかであった、その見た目に技術の全てが注力されており、副次的に美しくなった以前の光柱とはまるで別物である、学園長達が色めき立つのも無理は無い、権力者であろうが無かろうがこれほどの品を見せられればぞんざいに扱って良い物では無いと思うであろう、さらに少々魔法を齧った程度でも構築が可能となればおいそれとその技術を喧伝する訳にもいかない、考えれば考えるほど厄介な代物であった、
「そんな面倒な事を・・・」
ユーリが眉を顰める、
「いや、ユーリ先生、場合によっては政治的な判断が必要となりますぞ、陛下・・・うん、ロキュスどう考える」
学園長が黒板と光柱を見比べているロキュスを睨んだ、
「どうもこうも無いわ、説明の通りだわ、うん、技術的には難しくないな、段階を踏んで考えれば構築は可能だ、うん、確かにこれなら儂でも出来るかもしれん、しかしこれほどとはな・・・予想以上だ・・・」
「そんな話しではない、ええい、お前は政治屋だろうが、政治屋の頭を使え」
「なんだと、儂は研究者じゃ」
「嘘をつけ、いや、まずは冷静になれ、王国の御意見番じゃろうが」
「むぅ、それもそうか・・・うむ、うん、うん」
ロキュスは黒板を弟子の一人に押し付けると瞑目して大きく呼吸を繰り返し、
「うむ・・・で、どうする、どうしたい?」
感情を排した冷たい瞳で学園長を睨み返す、
「まずは、王国の意見じゃな、これをそのまま神殿に伝える事を我らが判断して良いものかな?」
「そうじゃのう・・・」
どうやら話しが大幅に逸れてきているようであった、ソフィアはヤレヤレと一息吐いて、
「はいはい、まずは実験の方進めますねー」
と大声を上げた、えっとソフィアに視線が集まる、
「これで終わりではないですよー、えっと、ユーリ、蝋燭は?」
「持ってきたわよー」
ソフィアは見事なまでに緊張感というものがない、ユーリはカトカに目配せし、カトカは慌てて革袋から蝋燭を数本取り出しソフィアに手渡した、
「ありがと、じゃ、次は」
ソフィアは土鍋に向かうと蝋燭に火を着けて土鍋の中に設置する、途端、光柱はユラユラと不可思議に波打つ赤い輝きへと姿を変えた、さらに七色の花びらにも変化が起きる、緑の光が強くなりその範囲も大きくなっているようで、さらに本体のユラユラとした動きに呼応するように柔らかく姿を変化させ始めた、
「わー、キレー、ミナ、こっちのが好きー」
「へー、上手くいくもんだわ」
ミナは再びキャッキャッと楽しそうにはしゃぎ、ユーリは計算通りとはいえこうなるかと感心している、
「良い感じね、じゃ、次は・・・」
ソフィアはそこから光の精霊魔法、火の精霊魔法、光の魔法、灯りの魔法等々彼女が知っている照明として使用する事の出来る魔法を試していった、その都度に光柱は輝きを変え表面の質感も変わり、七色の花びらも変化していく、一つとして同じものはない、皆その様に見惚れるしかなく、ソフィアとユーリは皆を置いてきぼりにして二人の世界に埋没しあーだこーだと楽しそうで、ミナは疲れも見せずに歓声を上げてピョンピョンと騒がしい、そして、
「うん、こんなもんね」
「そうねー、一通りはやったのかな、ま、5種類以上作れればそれでいいからね、個性は出せたでしょ」
「ミナ、蝋燭のが好きー、あれ見たいー」
「はいはい、蝋燭は楽でいいわねー」
学園長達を完全に無視して楽しむ親子であった、そして暫くの間蝋燭を元にした光柱を見上げ、
「じゃ取り敢えずこんなもんかな?」
ソフィアが十分だろうとユーリに確認する、
「そうね、時間経過とあんた以外の実践は後回しにできるから、先に・・・」
とユーリは革袋から土鍋の蓋を取り出した、
「はいはい」
ソフィアはそれを受け取ると、一度光柱を見上げて周囲を確認してから、蝋燭を外して土鍋に蓋をした、するとアッと思う間も無く光柱は掻き消えた、残ったのはピクリとも動かない蓋がされた土鍋と、火の着いた蝋燭を片手に蹲るソフィア、それからこんなに暗かったかと思える程に暗く静謐な講堂の冷えた大気、それに包まれ呆気にとられる面々となる、
「えー、もっと見たーい」
ミナがブーブーと叫び、どうやら傍観者達は皆同じ意見のようで、しかしそれを言ってはミナと同じになるなと口を閉じて厳しい顔となる、
「良い感じね、やっぱり土鍋が一番だわ」
ユーリはあっはっはと笑い、ソフィアもそうねーと蝋燭をフッと消しながら腰を上げる、
「さて、じゃ、実験は取り敢えずこんなもんで良いと思うけど」
「後は運用ね、練習すればまぁ簡単でしょ」
「そうね、さてここからは」
とユーリは振り返る、
「大人の仕事だわね」
と呟いて一同の元に歩み寄り、
「では、運用と扱いに関しての話しに入りますか」
ニコリと微笑んだ。
「おおっ」
「うむ、素早いのう」
「見事ですな」
「こうなるのか・・・なるほど・・・」
感嘆の声が思わず漏れ出す、ソフィアはそれらの声を全く無視して、土鍋を床にそっと置くと、背丈程に輝く光柱に対して別の魔法を唱えた、途端光柱は黄金色に輝き始めまばゆいばかりに講堂を照らし出す、その眩しさにソフィアはさすがに顔を顰めて薄目になるとさらに別の魔法を唱えた、すると光柱がするすると伸長し、天井手前の結界にぶち当たる、巨大な光柱となったそれは結界付近で薄い赤色へと姿を変えて拡散していた、
「すごい、予想通り」
「うん、やっぱり実物で見ると違いますね」
ゾーイとカトカは片手で目元に影を作って光柱を見上げた、机上で作られた設計だけではやはりいくら想像しても難がある、実際に目にする光柱は美しさは勿論であるがその威容には奇妙な威厳すら感じられた、その上以前の光柱のような圧倒的な威圧感は感じられない、内在する膨大な魔力量が無い為であり、本能で感じ、恐怖の対象であった圧力が皆無となって、より純粋な光の美しさだけが眼前に聳え立っている、
「まずはこれが基本形ですねー」
ソフィアがのんびりと振り返る、しかしその顔を見ているのはユーリだけで皆光柱を見上げていた、あらっとソフィアは折角気を利かせたのになと不満顔となってまぁ仕方ないかと向き直ると、別の魔法を呟き胸元程度の高さに手を翳しゆっくりと両手を回転させた、すると七色に輝く波が発生する、ソフィアの手に引かれるように大きく広く天に向かって花びらのように形成されてゆき、やや離れた場所に立つ学園長達を飲み込みそうなほどに大きくなるとその成長を止め、ゆるゆると光のベールを揺らし始めた、
「これが応用」
ソフィアは誰にともなく呟く、どうせ聞いていないだろうからと独り言のつもりである、そして、
「最後に」
とこれも独り言として呟くと、基部にある土鍋に蹲り炎の灯りの魔法を唱えた、途端、黄色の光柱は橙色に変わりおぉっという驚きの声が講堂に低く響いた、
「うん、計算通りねー」
ソフィアは上手くいったかなと腰を上げて振り返る、
「どんなもん?」
「いいんじゃない、うん、予想通りねー」
「そう?」
「私は十分だと思うけどなー」
「なら大丈夫かしら・・・」
「そうねー」
ソフィアはユーリと簡単に確認しあう、なんとも力の抜けた緊張感の無い会話であったが、他の面々は光柱を見上げて言葉も無く、カトカやゾーイもここまでとはと驚きの表情を隠せない、
「ソフィー、なにやったのー、なにこれー」
そこへ何処にいたのかミナとレインが駆けて来た、
「ふふん、なんだと思うー」
「えー、えっとえっと、なに?」
「なんだろねー」
「なんだろう、でも、綺麗だねー、カッコイイー」
ピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねるミナと、
「まったく、つまらんものを」
レインは渋い顔で光柱を見上げている、
「まぁね、こういうのもありじゃないかなー、駄目?」
ソフィアがレインを見下ろしてニヤリと微笑む、
「駄目ではないがのう、好きにするがいいわ」
フンスと鼻息の荒いレインであった、
「あっ、いかんいかん、見惚れていては意味が無い」
ミナの嬌声に学園長がやっと我に返り、
「ソフィアさん、素晴らしいのう、大したもんじゃ」
満面の笑みを浮かべ、
「うむ、しかし、これが学生でも出来るのか?確かに魔力はそれほど必要とはしないと思うが・・・いや、待て待て」
ロキュスが慌ててカトカが足元に下ろした黒板を掴み上げる、
「しかし・・・これを神殿連中に教えるのですか・・・それは何とも贅沢というか・・・うーむ・・・」
どうやら事務長も神殿に対しては良い印象が無いらしい、あからさまに嫌そうな顔となる、実際の魔法を見て簡単に譲渡するには惜しいと感じたのであろうか、
「あー、そうですねー、ま、でもこのくらいであれば、どっかの誰かがそのうち作っただろう程度のものですから」
ソフィアはいつかどこかで聞いたような言ったような事を口にした、それだけソフィアにとってはどうでも良い事であった、
「そう言われましてもな・・・」
「うむ、実際目にすると些か安請け合いしすぎたかと思うのう」
「ですよね・・・これはしっかりとした対価が発生してもおかしくないですよ・・・」
「そこはほれ、迷惑料と学園の宣伝・・・引いては王国の権威として・・・いや、それではあまりにもあれかな?」
「はい、神殿の事です、この技術を我が物と他の街でも見せびらかしかねませんぞ」
「・・・そうじゃのう、それでも良いとするか・・・いや、これは・・・うむ、一旦クロノス様と相談するかな・・・儂らでは判断できんな」
「はい、それと領主とも相談が必要になりますね」
今眼前にある光柱は以前のそれと違ってユーリが無駄の極致であり、娯楽であると言い切るほどに美しく煌びやかであった、その見た目に技術の全てが注力されており、副次的に美しくなった以前の光柱とはまるで別物である、学園長達が色めき立つのも無理は無い、権力者であろうが無かろうがこれほどの品を見せられればぞんざいに扱って良い物では無いと思うであろう、さらに少々魔法を齧った程度でも構築が可能となればおいそれとその技術を喧伝する訳にもいかない、考えれば考えるほど厄介な代物であった、
「そんな面倒な事を・・・」
ユーリが眉を顰める、
「いや、ユーリ先生、場合によっては政治的な判断が必要となりますぞ、陛下・・・うん、ロキュスどう考える」
学園長が黒板と光柱を見比べているロキュスを睨んだ、
「どうもこうも無いわ、説明の通りだわ、うん、技術的には難しくないな、段階を踏んで考えれば構築は可能だ、うん、確かにこれなら儂でも出来るかもしれん、しかしこれほどとはな・・・予想以上だ・・・」
「そんな話しではない、ええい、お前は政治屋だろうが、政治屋の頭を使え」
「なんだと、儂は研究者じゃ」
「嘘をつけ、いや、まずは冷静になれ、王国の御意見番じゃろうが」
「むぅ、それもそうか・・・うむ、うん、うん」
ロキュスは黒板を弟子の一人に押し付けると瞑目して大きく呼吸を繰り返し、
「うむ・・・で、どうする、どうしたい?」
感情を排した冷たい瞳で学園長を睨み返す、
「まずは、王国の意見じゃな、これをそのまま神殿に伝える事を我らが判断して良いものかな?」
「そうじゃのう・・・」
どうやら話しが大幅に逸れてきているようであった、ソフィアはヤレヤレと一息吐いて、
「はいはい、まずは実験の方進めますねー」
と大声を上げた、えっとソフィアに視線が集まる、
「これで終わりではないですよー、えっと、ユーリ、蝋燭は?」
「持ってきたわよー」
ソフィアは見事なまでに緊張感というものがない、ユーリはカトカに目配せし、カトカは慌てて革袋から蝋燭を数本取り出しソフィアに手渡した、
「ありがと、じゃ、次は」
ソフィアは土鍋に向かうと蝋燭に火を着けて土鍋の中に設置する、途端、光柱はユラユラと不可思議に波打つ赤い輝きへと姿を変えた、さらに七色の花びらにも変化が起きる、緑の光が強くなりその範囲も大きくなっているようで、さらに本体のユラユラとした動きに呼応するように柔らかく姿を変化させ始めた、
「わー、キレー、ミナ、こっちのが好きー」
「へー、上手くいくもんだわ」
ミナは再びキャッキャッと楽しそうにはしゃぎ、ユーリは計算通りとはいえこうなるかと感心している、
「良い感じね、じゃ、次は・・・」
ソフィアはそこから光の精霊魔法、火の精霊魔法、光の魔法、灯りの魔法等々彼女が知っている照明として使用する事の出来る魔法を試していった、その都度に光柱は輝きを変え表面の質感も変わり、七色の花びらも変化していく、一つとして同じものはない、皆その様に見惚れるしかなく、ソフィアとユーリは皆を置いてきぼりにして二人の世界に埋没しあーだこーだと楽しそうで、ミナは疲れも見せずに歓声を上げてピョンピョンと騒がしい、そして、
「うん、こんなもんね」
「そうねー、一通りはやったのかな、ま、5種類以上作れればそれでいいからね、個性は出せたでしょ」
「ミナ、蝋燭のが好きー、あれ見たいー」
「はいはい、蝋燭は楽でいいわねー」
学園長達を完全に無視して楽しむ親子であった、そして暫くの間蝋燭を元にした光柱を見上げ、
「じゃ取り敢えずこんなもんかな?」
ソフィアが十分だろうとユーリに確認する、
「そうね、時間経過とあんた以外の実践は後回しにできるから、先に・・・」
とユーリは革袋から土鍋の蓋を取り出した、
「はいはい」
ソフィアはそれを受け取ると、一度光柱を見上げて周囲を確認してから、蝋燭を外して土鍋に蓋をした、するとアッと思う間も無く光柱は掻き消えた、残ったのはピクリとも動かない蓋がされた土鍋と、火の着いた蝋燭を片手に蹲るソフィア、それからこんなに暗かったかと思える程に暗く静謐な講堂の冷えた大気、それに包まれ呆気にとられる面々となる、
「えー、もっと見たーい」
ミナがブーブーと叫び、どうやら傍観者達は皆同じ意見のようで、しかしそれを言ってはミナと同じになるなと口を閉じて厳しい顔となる、
「良い感じね、やっぱり土鍋が一番だわ」
ユーリはあっはっはと笑い、ソフィアもそうねーと蝋燭をフッと消しながら腰を上げる、
「さて、じゃ、実験は取り敢えずこんなもんで良いと思うけど」
「後は運用ね、練習すればまぁ簡単でしょ」
「そうね、さてここからは」
とユーリは振り返る、
「大人の仕事だわね」
と呟いて一同の元に歩み寄り、
「では、運用と扱いに関しての話しに入りますか」
ニコリと微笑んだ。
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