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本編
53話 新学期 その16
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その夜、ソフィアはそっとミナとレインの寝室に足を運ぶ、ミナは当然寝台で熟睡しているようであったがレインは木窓を開けて内庭を見下ろしていた、
「下に行くか?」
レインはソフィアが口を開く前に腰を上げる、どうやらソフィアを待っていたようである、
「そうね」
ソフィアは短く答え、二人は階下へ下りた、以前のように本来であれば食卓になるであろうテーブルに着く、室内に灯りは無い漆黒の息の詰まりそうな闇である、それでも二人は当たり前のように向き合った、
「で・・・」
「すまんな、浮かれ過ぎていた」
ソフィアが口火を切ると同時にレインが謝罪する、頭を下げるような事は無かったが、静かで落ち着いた口調であった、
「・・・分かってくれればいいんだけど」
「そうだな、言い訳させて貰えれば、こちらに来てからずっと探していたものがポロっと目の前に出て来てな・・・思わず、その、はしゃいでしまった、恥ずかしい事だ、要らぬ迷惑もかけたしな、全面的に儂の間違いだ」
どうにも偉そうな口振りであるが真摯な言葉でもある、
「そっか、ならいいわ、私の事はいいんだけど、カトカさんは本当に大丈夫なんでしょうね」
ソフィアは必要以上に責める気は無かった、しかし確認するべき事はするべきだし、始末が必要な事もあるであろう、
「勿論だ、何も心配する必要は無い、それどころか、あれの違和感が分かったからな、治療もしておいた、明日目を覚ませばいつも以上に好調なはずだ、まったく、それと知らずに毒物を吸い込んでいたようだからな、だいぶ前にも危険性は伝えたはずなのだが、忘れたらしい・・・入れ替わっているからな仕方の無い事かもしれん」
「そっか、それは信じるしかないけど・・・毒ってあれ?水銀の事?」
「そうだな」
「私はあんまり知らないんだけど、そんなに問題なの?」
「大問題だよ、あれは何かにつけ便利な物質でな、水のような金属なんだが・・・うん、便利であるのはよくわかるし、儂から見ても不思議で興味深い物質でな、これを使って何か出来ないかと誰もが思うのは仕方が無いと感じるだのだが・・・実際に研究対象になっているようだし、実用化もされているのだろうな、メッキに使うらしいが一番やってはならぬ工法のようだ・・・うん、ほら、他の物質とよく交わるし、便利は便利なんだよ、でもな、それは動物の身体とも交わるという事だ、それで良い結果になれば薬ともなろうが、あれは悪しき影響が強すぎて、過ぎれば命に係わる、形式を違えば薬ともなるらしいが、その方法はまだ知らんだろう、故に今はまだ使うべきではないであろうな」
「そう・・・なんだ、カトカさんにも影響があったの?」
「少しばかりな、サビナやユーリはそれほどでも無かったが、カトカの中には幾らか蓄積していた、話しを聞く限り学園の実習で使うらしい、あまりにも平然と口にしていたからな、当たり前の事なのだろう、聞けば聞くほど呆れてしまってな、興奮していたのもあって・・・ま、そういう事だ」
「そう、ならいいわ・・・正直私では判断できないし、その言葉を信じる事にするわよ」
「そうか・・・ありがたい」
レインは暗闇の中腕を組んで軽く頷いた、ソフィアはその姿にどうやらレインも初心を思い出したようだと安心する、警戒するに越したことはないが、最近のレインは若干浮かれた様子であった事もまた事実である、一緒に暮らすようになった頃は冷静沈着どころか居るのか居ないのかも分からないほどに空気のような存在であった、それから半年以上経過して彼女なりに慣れが生まれ、恐らくこの環境をも楽しんでいるのであろう、それは良い事とも思うが、やはり存在が存在である以上、常に緊張感は必要であるとソフィアは思い直し、しかし楽しんで欲しいとも思う、折角同じ時間を共有しているのであるから、
「うん、あれね、お互い初心を思い出すべきね、それと約束事も・・・私は忘れちゃうからだけど、あんたはそういうの忘れないのかと思ってたわ」
「ふん、忘れはしないが・・・いや、忘れるな、時々こう、すっぽりと抜けている事がある」
「もう、それが忘れるって事でしょ」
「だから忘れると認めているであろう」
「じゃ、忘れないで」
「そうしよう」
二人は暗闇の中で微笑みあったようである、そして、
「で、もう一つね、ミスリルってそんなに凄いの?」
「なんじゃ、興味があるのか?」
「そりゃだって、あんたが我を忘れる程の代物なんでしょ、知りたくもなるわよ」
「そうじゃのう・・・細かい話しをすればいくらでも出来るのだが・・・」
レインは意地の悪い笑みを浮かべながら小首を傾げ、
「うむ、見るのが早いじゃろ」
と懐から件の岩石を取り出した、
「持ち歩いてるの?」
「うむ、求めていた代物じゃからな、肌身離さずとはこの事じゃろ」
「そうだけど・・・」
ソフィアは苦笑いを浮かべる、ソフィアはレインは物に執着する性格では無いと思い込んでいた、事実、ソフィアから見たら高価な代物や貴重な代物にはまるで無関心であった、しかし、ちょっとした小物は集めている様子で、宝箱と呼んでいる木箱にそれらは納められているようである、その癖はミナも真似しているようで、恐らく二人の宝箱の中には折角作った猫の髪留めを始め、いつぞや自慢していた虫入りの琥珀、無色の魔法石の欠片等、他人から見ればガラクタと呼ばれる類の物ばかりが納まっているであろう、物を大事にするのは良い事だとソフィアは思って特に口出しはしていないし、子供独特の収集癖なのであろうと微笑ましく見てもいる、
「まぁ、見ておれ」
レインは岩石をテーブルに置いて、両手で包み込む、途端に岩石はレインの細く小さな指の間から緑色の光を周囲にばら撒き始めた、
「?魔力?」
「そうじゃ、慣れれば主でも簡単だぞ」
「私でも?」
「うむ、主やらタロウやらユーリであればな、クロノスには難しかろう、イフナースは修業不足だな」
「それはまた・・・厳つい名前ばかりだして」
自分も含まれているのであるが、ソフィアは眉根を寄せて不快な顔となる、レインの上げた名はどれも一般人とは程遠い理を得た名前であった、
「ふふん、ま、あれだな、リンドやアフラでも修業を積めば可能じゃろう」
「あら、じゃ、普通の人でも何とかなるのかしら?」
「何とかなるであろうな、ま、鍛冶屋に任せるのが早いぞ」
「えっ、鍛冶屋でもいいの?」
「そりゃそうじゃ、結局鉄だからな」
レインは笑みすると同時に光は収束し、室内は再び闇に支配された、
「まぁ、こうなるのじゃ」
レインが両手を除けるとそこには美しい短刀があった、闇の中である為金属独特のヌメリ輝く質感は感じられないが、ソフィアの目から見てもその造作は見事な一品で、刃は薄く切れ味は良さそうである、しかし、刀身のみで柄は付いていない、
「えっ、これ・・・へー」
ソフィアは理解しないまでも素直に感心して小さな歓声を上げる、あっという間の出来事である、普通の人間であれば卒倒するような技術なのであるが、歓声を上げる程度にしか驚かないソフィアはやはり尋常ではない感性なのであろう、
「細かい話しをするとな」
結局レインは得意そうに彼女がミスリルと呼ぶ鉱石の特性を話しだした、組成は鉄とクロム鉱、それとソフィア達が口にする無色の魔法石、それから幾つかの鉱物が混ざった合金なのだという、上の世界では開発されてからは大変に便利な素材として活用されており、鉄と言えばこれとなる程に重用されているのだとか、さらに類似する物質としてミスリル銀とミスリルプラチナがあり、こちらは宝飾品と魔導器に使用されているという、
「あー、ごめんね、レイン、それ私が聞いても良い事なの?」
ソフィアはまた暴走し始めたのかしらと怪訝そうに問う、
「構わんだろ、その内何処かの誰かが発見する事だ、明日かもしれん、千年先かもしれん、遅いか速いかの違いだろ、お主がよく似たような事を言っているだろう」
レインは何を今更と平然と言い放ち、
「何よりな」
とミスリルの話しに戻る始末である、曰く、地上でも存在するとは言われていたが見つける事が出来ず、こちらに来てからずっと探していた事、ミスリル鉄と借りに呼ばないと他の合金と名が被るであろう事、銀とプラチナに関してはそもそも鉄のように量が無い為、自然界で精製される事はまずないであろう事、プラチナに関しては少なくとも王国内では出土すら難しい事、立て板に水のごとくレインの言葉は止まらず、相手が研究所の3人であれば歓喜するような内容である、しかし、相手はソフィアである、ソフィアはうーんと額を押さえ、
「分かった、うん」
とレインの言葉を遮り、
「何じゃ、良いのか?」
レインは不満そうに口をへの字に曲げた、
「私では理解できないわ、そうね、タロウさんが戻ったら相手させるから」
あまりの情報量に理解が追い付かない、何より得意とする分野でもない、魔法そのものの活用であればまだ理解は早いのであるが、鉱物やらその組成となれば専門外もいいところであった、ここは素直に逃げの一手とタロウの名を出し誤魔化そうとするが、
「むぅ、なんじゃ、勉強が足りんぞ」
レインは実に残念そうである、
「しょうがないでしょ、得意分野に掠りもしない大外れの山を越えた遥か彼方よ」
「そこまで言うか・・・あのな、よいか・・・努力を知らん天才は凡才にも劣るのじゃ、下手に回転が良いだけで小賢しく口うるさいだけの足引っ張りじゃ、今のお主がその典型じゃ」
「まっ、失礼ね・・・って失礼か?・・・いや、足は引っ張ってないでしょ」
「かもしれんが、お主の才は理解しておる、故にだ、グズグズしておると脳が腐るぞ」
「いいのよ、私は主婦なんだから、今は」
「それは逃避というものじゃ」
「失礼ね、大事な仕事よ」
「しかしな」
「しかしもかかしも無いの、いい、子供を育てるのは大切な仕事なの、おざなりには出来ないし、遊びでも無いの、勉強も大事なのは分かるけど、私は今、主婦業に専念してるの、あんたもその対象なんだからね」
「それは結構だ・・・しかし、のう」
レインはニヤニヤとミスリルの話題へ戻そうとテーブルのナイフへ手を伸ばすが、
「分かった、分かったから、タロウさんに言って、私はもう十分」
ソフィアはそこで負けを認めて腰を上げ、
「むぅ、ここからが本題なのじゃが・・・」
レインは寂しそうに自作のナイフに視線を落とした。
「下に行くか?」
レインはソフィアが口を開く前に腰を上げる、どうやらソフィアを待っていたようである、
「そうね」
ソフィアは短く答え、二人は階下へ下りた、以前のように本来であれば食卓になるであろうテーブルに着く、室内に灯りは無い漆黒の息の詰まりそうな闇である、それでも二人は当たり前のように向き合った、
「で・・・」
「すまんな、浮かれ過ぎていた」
ソフィアが口火を切ると同時にレインが謝罪する、頭を下げるような事は無かったが、静かで落ち着いた口調であった、
「・・・分かってくれればいいんだけど」
「そうだな、言い訳させて貰えれば、こちらに来てからずっと探していたものがポロっと目の前に出て来てな・・・思わず、その、はしゃいでしまった、恥ずかしい事だ、要らぬ迷惑もかけたしな、全面的に儂の間違いだ」
どうにも偉そうな口振りであるが真摯な言葉でもある、
「そっか、ならいいわ、私の事はいいんだけど、カトカさんは本当に大丈夫なんでしょうね」
ソフィアは必要以上に責める気は無かった、しかし確認するべき事はするべきだし、始末が必要な事もあるであろう、
「勿論だ、何も心配する必要は無い、それどころか、あれの違和感が分かったからな、治療もしておいた、明日目を覚ませばいつも以上に好調なはずだ、まったく、それと知らずに毒物を吸い込んでいたようだからな、だいぶ前にも危険性は伝えたはずなのだが、忘れたらしい・・・入れ替わっているからな仕方の無い事かもしれん」
「そっか、それは信じるしかないけど・・・毒ってあれ?水銀の事?」
「そうだな」
「私はあんまり知らないんだけど、そんなに問題なの?」
「大問題だよ、あれは何かにつけ便利な物質でな、水のような金属なんだが・・・うん、便利であるのはよくわかるし、儂から見ても不思議で興味深い物質でな、これを使って何か出来ないかと誰もが思うのは仕方が無いと感じるだのだが・・・実際に研究対象になっているようだし、実用化もされているのだろうな、メッキに使うらしいが一番やってはならぬ工法のようだ・・・うん、ほら、他の物質とよく交わるし、便利は便利なんだよ、でもな、それは動物の身体とも交わるという事だ、それで良い結果になれば薬ともなろうが、あれは悪しき影響が強すぎて、過ぎれば命に係わる、形式を違えば薬ともなるらしいが、その方法はまだ知らんだろう、故に今はまだ使うべきではないであろうな」
「そう・・・なんだ、カトカさんにも影響があったの?」
「少しばかりな、サビナやユーリはそれほどでも無かったが、カトカの中には幾らか蓄積していた、話しを聞く限り学園の実習で使うらしい、あまりにも平然と口にしていたからな、当たり前の事なのだろう、聞けば聞くほど呆れてしまってな、興奮していたのもあって・・・ま、そういう事だ」
「そう、ならいいわ・・・正直私では判断できないし、その言葉を信じる事にするわよ」
「そうか・・・ありがたい」
レインは暗闇の中腕を組んで軽く頷いた、ソフィアはその姿にどうやらレインも初心を思い出したようだと安心する、警戒するに越したことはないが、最近のレインは若干浮かれた様子であった事もまた事実である、一緒に暮らすようになった頃は冷静沈着どころか居るのか居ないのかも分からないほどに空気のような存在であった、それから半年以上経過して彼女なりに慣れが生まれ、恐らくこの環境をも楽しんでいるのであろう、それは良い事とも思うが、やはり存在が存在である以上、常に緊張感は必要であるとソフィアは思い直し、しかし楽しんで欲しいとも思う、折角同じ時間を共有しているのであるから、
「うん、あれね、お互い初心を思い出すべきね、それと約束事も・・・私は忘れちゃうからだけど、あんたはそういうの忘れないのかと思ってたわ」
「ふん、忘れはしないが・・・いや、忘れるな、時々こう、すっぽりと抜けている事がある」
「もう、それが忘れるって事でしょ」
「だから忘れると認めているであろう」
「じゃ、忘れないで」
「そうしよう」
二人は暗闇の中で微笑みあったようである、そして、
「で、もう一つね、ミスリルってそんなに凄いの?」
「なんじゃ、興味があるのか?」
「そりゃだって、あんたが我を忘れる程の代物なんでしょ、知りたくもなるわよ」
「そうじゃのう・・・細かい話しをすればいくらでも出来るのだが・・・」
レインは意地の悪い笑みを浮かべながら小首を傾げ、
「うむ、見るのが早いじゃろ」
と懐から件の岩石を取り出した、
「持ち歩いてるの?」
「うむ、求めていた代物じゃからな、肌身離さずとはこの事じゃろ」
「そうだけど・・・」
ソフィアは苦笑いを浮かべる、ソフィアはレインは物に執着する性格では無いと思い込んでいた、事実、ソフィアから見たら高価な代物や貴重な代物にはまるで無関心であった、しかし、ちょっとした小物は集めている様子で、宝箱と呼んでいる木箱にそれらは納められているようである、その癖はミナも真似しているようで、恐らく二人の宝箱の中には折角作った猫の髪留めを始め、いつぞや自慢していた虫入りの琥珀、無色の魔法石の欠片等、他人から見ればガラクタと呼ばれる類の物ばかりが納まっているであろう、物を大事にするのは良い事だとソフィアは思って特に口出しはしていないし、子供独特の収集癖なのであろうと微笑ましく見てもいる、
「まぁ、見ておれ」
レインは岩石をテーブルに置いて、両手で包み込む、途端に岩石はレインの細く小さな指の間から緑色の光を周囲にばら撒き始めた、
「?魔力?」
「そうじゃ、慣れれば主でも簡単だぞ」
「私でも?」
「うむ、主やらタロウやらユーリであればな、クロノスには難しかろう、イフナースは修業不足だな」
「それはまた・・・厳つい名前ばかりだして」
自分も含まれているのであるが、ソフィアは眉根を寄せて不快な顔となる、レインの上げた名はどれも一般人とは程遠い理を得た名前であった、
「ふふん、ま、あれだな、リンドやアフラでも修業を積めば可能じゃろう」
「あら、じゃ、普通の人でも何とかなるのかしら?」
「何とかなるであろうな、ま、鍛冶屋に任せるのが早いぞ」
「えっ、鍛冶屋でもいいの?」
「そりゃそうじゃ、結局鉄だからな」
レインは笑みすると同時に光は収束し、室内は再び闇に支配された、
「まぁ、こうなるのじゃ」
レインが両手を除けるとそこには美しい短刀があった、闇の中である為金属独特のヌメリ輝く質感は感じられないが、ソフィアの目から見てもその造作は見事な一品で、刃は薄く切れ味は良さそうである、しかし、刀身のみで柄は付いていない、
「えっ、これ・・・へー」
ソフィアは理解しないまでも素直に感心して小さな歓声を上げる、あっという間の出来事である、普通の人間であれば卒倒するような技術なのであるが、歓声を上げる程度にしか驚かないソフィアはやはり尋常ではない感性なのであろう、
「細かい話しをするとな」
結局レインは得意そうに彼女がミスリルと呼ぶ鉱石の特性を話しだした、組成は鉄とクロム鉱、それとソフィア達が口にする無色の魔法石、それから幾つかの鉱物が混ざった合金なのだという、上の世界では開発されてからは大変に便利な素材として活用されており、鉄と言えばこれとなる程に重用されているのだとか、さらに類似する物質としてミスリル銀とミスリルプラチナがあり、こちらは宝飾品と魔導器に使用されているという、
「あー、ごめんね、レイン、それ私が聞いても良い事なの?」
ソフィアはまた暴走し始めたのかしらと怪訝そうに問う、
「構わんだろ、その内何処かの誰かが発見する事だ、明日かもしれん、千年先かもしれん、遅いか速いかの違いだろ、お主がよく似たような事を言っているだろう」
レインは何を今更と平然と言い放ち、
「何よりな」
とミスリルの話しに戻る始末である、曰く、地上でも存在するとは言われていたが見つける事が出来ず、こちらに来てからずっと探していた事、ミスリル鉄と借りに呼ばないと他の合金と名が被るであろう事、銀とプラチナに関してはそもそも鉄のように量が無い為、自然界で精製される事はまずないであろう事、プラチナに関しては少なくとも王国内では出土すら難しい事、立て板に水のごとくレインの言葉は止まらず、相手が研究所の3人であれば歓喜するような内容である、しかし、相手はソフィアである、ソフィアはうーんと額を押さえ、
「分かった、うん」
とレインの言葉を遮り、
「何じゃ、良いのか?」
レインは不満そうに口をへの字に曲げた、
「私では理解できないわ、そうね、タロウさんが戻ったら相手させるから」
あまりの情報量に理解が追い付かない、何より得意とする分野でもない、魔法そのものの活用であればまだ理解は早いのであるが、鉱物やらその組成となれば専門外もいいところであった、ここは素直に逃げの一手とタロウの名を出し誤魔化そうとするが、
「むぅ、なんじゃ、勉強が足りんぞ」
レインは実に残念そうである、
「しょうがないでしょ、得意分野に掠りもしない大外れの山を越えた遥か彼方よ」
「そこまで言うか・・・あのな、よいか・・・努力を知らん天才は凡才にも劣るのじゃ、下手に回転が良いだけで小賢しく口うるさいだけの足引っ張りじゃ、今のお主がその典型じゃ」
「まっ、失礼ね・・・って失礼か?・・・いや、足は引っ張ってないでしょ」
「かもしれんが、お主の才は理解しておる、故にだ、グズグズしておると脳が腐るぞ」
「いいのよ、私は主婦なんだから、今は」
「それは逃避というものじゃ」
「失礼ね、大事な仕事よ」
「しかしな」
「しかしもかかしも無いの、いい、子供を育てるのは大切な仕事なの、おざなりには出来ないし、遊びでも無いの、勉強も大事なのは分かるけど、私は今、主婦業に専念してるの、あんたもその対象なんだからね」
「それは結構だ・・・しかし、のう」
レインはニヤニヤとミスリルの話題へ戻そうとテーブルのナイフへ手を伸ばすが、
「分かった、分かったから、タロウさんに言って、私はもう十分」
ソフィアはそこで負けを認めて腰を上げ、
「むぅ、ここからが本題なのじゃが・・・」
レインは寂しそうに自作のナイフに視線を落とした。
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