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本編
52話 小さな出会いはアケビと共に その8
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それから暫くすると食堂には力の抜けた新入生がグダグダとした顔を並べ、
「気持ちいい・・・」
「そうだねー」
「頭が軽くなりました・・・」
「そだねー」
「良い香り・・・幸せ・・・」
「だねー」
初めて洗髪した者達はその快感と心地良い疲労感にすっかりと骨抜きになっている、
「ほう、なるほど・・・これは面白いですね・・・」
「そうね、こういう見方があるとは、新鮮ですわね」
別のテーブルではエレインが持ち込んだマフダがまとめている下着の資料をユスティーナとレアンが熱心に読み込んでいた、
「そうなのです、学園長もこれは続けるべきとの事でして、一級の歴史的資料になるであろうとの事でした」
サビナが解説を加える、サビナはエレインに乞われ手伝いを切り上げて二人の相手となっていた、
「まぁ、それは素晴らしい・・・」
「王都や他の都市ではこういった資料は無いのですか?」
「すいません、私の知っている範囲では無さそうです、書として編纂されるものはどうしても高尚とされる分野に集中しますので、このように市井の一風景を切り取った資料は少ないものと思います」
「なるほど・・・資料的な価値は良く分かりました・・・では、そうね、レアンのソフティーはどれがいいのかしら」
ユスティーナが唐突に話題を変えてレアンの身体へ視線を移す、
「む、私は別に必要ないですぞ」
「いいえ、これからこの品は淑女の嗜みになりますよ、女であれば身に着ける品となるでしょう、若いうちから慣れておくのも大事ですよ」
「そうでしょうが・・・」
レアンは何とも難しい顔となる、どうやらレアンは保守的な性格らしい、対してユスティーナは革新的なのであろう、新しもの好きとも言える、
「そうなりますと、えーと、どれかな・・・」
サビナが木簡を捲り、
「あぁ、これなどはいかがでしょう、店員の対応はそこそこですが、初めてのソフティーとしては必要十分ともありますね、商品の特徴はこちらに、こちらの店のエーレは着けやすく肌触りが良いとありますね」
サビナが一枚を取り出して二人の前に置いた、
「むっ、エーレと決まったのですか?」
レアンはムッとその木簡を睨むが、
「そりゃそうでしょ」
ユスティーナはあっさりとしたもので、
「実際の品は見れますの?」
「はい、事務所にあるかと思います、あー、エレインさんが戻られたら・・・そうなんですよね、やはり木簡の内容だけでは分かりにくいですよね、せめて挿絵があればと思いますが・・・」
エレインとオリビアは洗髪中である、リーニーとカチャーも折角だからと共にしていた、テラは所用で外出中であり、マフダは一人事務所番であった、
「いいえ、これで良いのではないですか」
ユスティーナは木簡を熟読しつつ、
「そうね・・・うん、思うに・・・この木簡を見て興味を持ったらその店に行く気になりますでしょう、それも普段立ち寄らない店であっても、どういうものかと気になりますからね・・・そうすれば、その店にある他の品も当然のように目にするはずです、それが良い刺激になるのではないかと思いますね、どうしても・・・そうね、特に衣服については、平民の方々は中古の服を買うか生地を買ってきて自分で裁縫すると聞いてます、それとおさがりですか、服はどうしても高価な物ですからね、でも新しい服を購入するという習慣も市場として必要でしょうし、何より新しい意匠を知るのには専門家が作った品に触れるという事が必要です、そうでないといつまで経っても衣服は古いままで発展しないのではないかと思うのですよね」
「そこまでお考えでしたか・・・」
サビナは素直に目を剥いた、正直ユスティーナがそこまで考えられる人間とは思っていなかったのである、
「ふふ、こちらにお邪魔するようになって、レアンが急に大人になったでしょう、これは負けてられないかしらと私も勉強しているのですよ」
ニコリと微笑むユスティーナに、レアンも驚いた様子で、
「そうなのですか?いつの間に?」
「そうなんですよ・・・うふふ、あのね、マリレーナ先生に時間を貰ってね、貴方がいない間にね」
ユスティーナは意地悪そうにしかし知的に微笑む、マリレーナとはレアンの家庭教師である、
「勉強はね、いつでもどこでも出来ます、書を開くだけでも、知識のある人に考えを聞くだけでも立派な勉強です、こうしてサビナ先生にお話しを伺うだけでも貴重な勉強ですよ」
さらに知的に微笑むユスティーナに、
「・・・そうですね、はい、そう思います」
レアンは眉間に力を入れ改めて木簡に向かう、ユスティーナの言葉通りにレアンはこの寮に関わるようになって各段に成長している、ソフィアによってユスティーナの病を克服した事も生活環境の改善としては大きかったと思われるが、エレインの実行力やジャネット達平民の逞しくも勤勉な様にも良い影響を受けている、
「で・・・そうね、折角これほどの品なのです・・・ふむ・・・どうでしょう、どちらかで開陳される事は考えていらっしゃらないのですか?」
「あー、すいません、そうなると私の手を離れます、エレイン会長の判断になるかと思います」
「それもそうね・・・うーん」
ユスティーナは人差し指を唇に付けて沈思し、
「例えばですが、公共の場・・・で、女性が気軽に立ち寄る場所・・・もしくは女性が多い場所・・・そういう所でこちらを自由に見る事が出来れば・・・と思うのですよね」
考えながらその思考を口にする、
「なるほど・・・それは素晴らしいですね」
「でしょう、勿論無料で、ただどうかしら、壁にこう貼っただけでもいいような・・・それとあれね、各店舗にも了解が必要になるかしら?」
「・・・そうですね、でも、それだとこの資料の良さが無くなるような気がします、こちらの対応の部分ですね、この部分に良い変化が表れると・・・うん、研究者としては面白くない・・・のかな・・・でも・・・うーん」
サビナも腕を組んで悩み始めた、それは観察者が研究対象に影響を与えるという愚行である、研究対象は自身がそうである事を認知しその研究の結果によって行動を変化させる事がありうる、これは観察者としては非常に上手く無い、それどころか研究そのものを崩壊させかねないのである、サビナは研究者としてそれを危惧した、
「あら・・・そっか、あれね、良い接客になっては面白くないという事ね」
ユスティーナがニヤリと理解を示した、サビナは頭の回転が速い人だなと感じつつ、
「はい、この接客対応の部分、これもまた、面白いのですよ、私としてはその、商人とのやりとりもまた商習慣の一つ・・・と考えております、学園長も特にこの部分が秀逸といって喜んでおられました、このまま時間の経過でどのように洗練されていくか、それが観点として興味深いとも・・・なので、早急な変化は嬉しい事なのですが、経過を観察するという観点に立つと・・・何とも具合が良くないのですね、こちら側は出来るだけ関与しないのが・・・でも、お客さんとしたら対応が良くなるに越した事はないとも思いますし、難しいところです・・・」
「なるほど・・・では、この部分は隠して、各店舗の商品とその特徴だけでも良いのではなくて?あっ、値段も欲しいわね」
「・・・そうですね、資料は資料、宣伝・・・宣伝でいいのかな、ま、それはそれとしてという形ですね・・・」
サビナがうんうんと悩み始めた所に、
「気持ちよかったー」
「だろう?」
「でも、めんどくさいのー」
「はいはい、わかった、わかった」
洗髪を終えたミナとレインが騒がしく食堂に入って来た、
「あー、サビナだー、どうしたのー」
ミナは頭に手ぬぐいを巻いたままサビナに向かい、レインはヤレヤレと暖炉の前に座り込み、髪の水気を拭い始める、
「ユスティーナ様と勉強中なのです」
サビナがニコリと微笑む、
「勉強?」
「そうね、あー、何て言うのかしら・・・市井の文化・・・かしら?」
「学園長が風俗史と呼んでおります」
「フウゾクシ・・・それはまた初耳ですわね」
「そうですね、学園長も文化史を編纂するにあたり適当な言葉が無いのでそう名付けたそうです、曰く市井の平民の風習とか商習慣とか楽しみとか生活の根幹部分、そう言ったものを丸っとまとめてそう呼称したいのだとか」
「あら、それは素晴らしい・・・学園長ともなれば言葉も作らなければならないのね」
「そうらしいですね、ただ、まだ何処にも発表してないので、他の学者さんに使っても通用しないかもしれません」
「あら、それは残念」
「ブー、難しい話ししてるー」
ミナが不満顔でピョンピョン飛び跳ねた、
「こりゃ、邪魔するでない」
レアンがジロリとミナを睨み、
「・・・むー、怒られた・・・」
ミナがしょぼんと顔を伏せた、
「ええーい、そんな顔をするでないわ、ほりゃ、なんじゃ、お手玉じゃ、相手せい」
スクッと腰を上げたレアンに、
「いいの?」
ミナは満面の笑顔を向けると、
「ふふん、少しは上手くなったのか?」
「むー、お嬢様はへたっちょでしょー」
「なにおー」
キャーキャー喚きながら暖炉に向かう二人である、
「もう、でね」
とユスティーナが口を開いた瞬間、
「すいません、失礼かと思いますが」
おずおずとグルジアが話し掛けた、
「ん、グルジアさんも興味ある?」
ニコリと微笑むユスティーナに、
「はい、というか、その・・・」
グルジアは新入生達へ視線を巡らせた、
「あら・・・」
どうやら二人の会話はしっかりと新入生達の耳に届いていたらしい、
「その、私達も勉強させて頂ければ・・・」
遠慮がちに呟くグルジアに、
「ふふ、そうね、皆さんも勉強に来てるんですもんね、なら、どうしましょうか」
「そうですね、うーん・・・うん、あれです、取り敢えず回し読みしましょう、感想が欲しいとエレイン会長も言ってましたし、私としては読みやすくて面白い資料なのですが、若い人達はどう感じるか知りたいですね」
どこまでも研究肌のサビナである、
「なら、どうぞ、皆さんも」
優しく受け入れるユスティーナに新入生達は嬉しそうに席を立つ、そこへ、
「ふー、スッキリしますわねー」
「お嬢様、しっかり乾かさないと」
「はいはい、じゃ、マフダさんと代わってあげてね、テラさんは戻ったかしら?」
「事務所行きますね」
洗髪を終えたエレインとオリビアが戻ってきた、
「あ、エレイン会長、この品は事務所にありますか?」
サビナが早速エレインを捕まえる、そして、勉強の会場は事務所へと移ったのであった。
「気持ちいい・・・」
「そうだねー」
「頭が軽くなりました・・・」
「そだねー」
「良い香り・・・幸せ・・・」
「だねー」
初めて洗髪した者達はその快感と心地良い疲労感にすっかりと骨抜きになっている、
「ほう、なるほど・・・これは面白いですね・・・」
「そうね、こういう見方があるとは、新鮮ですわね」
別のテーブルではエレインが持ち込んだマフダがまとめている下着の資料をユスティーナとレアンが熱心に読み込んでいた、
「そうなのです、学園長もこれは続けるべきとの事でして、一級の歴史的資料になるであろうとの事でした」
サビナが解説を加える、サビナはエレインに乞われ手伝いを切り上げて二人の相手となっていた、
「まぁ、それは素晴らしい・・・」
「王都や他の都市ではこういった資料は無いのですか?」
「すいません、私の知っている範囲では無さそうです、書として編纂されるものはどうしても高尚とされる分野に集中しますので、このように市井の一風景を切り取った資料は少ないものと思います」
「なるほど・・・資料的な価値は良く分かりました・・・では、そうね、レアンのソフティーはどれがいいのかしら」
ユスティーナが唐突に話題を変えてレアンの身体へ視線を移す、
「む、私は別に必要ないですぞ」
「いいえ、これからこの品は淑女の嗜みになりますよ、女であれば身に着ける品となるでしょう、若いうちから慣れておくのも大事ですよ」
「そうでしょうが・・・」
レアンは何とも難しい顔となる、どうやらレアンは保守的な性格らしい、対してユスティーナは革新的なのであろう、新しもの好きとも言える、
「そうなりますと、えーと、どれかな・・・」
サビナが木簡を捲り、
「あぁ、これなどはいかがでしょう、店員の対応はそこそこですが、初めてのソフティーとしては必要十分ともありますね、商品の特徴はこちらに、こちらの店のエーレは着けやすく肌触りが良いとありますね」
サビナが一枚を取り出して二人の前に置いた、
「むっ、エーレと決まったのですか?」
レアンはムッとその木簡を睨むが、
「そりゃそうでしょ」
ユスティーナはあっさりとしたもので、
「実際の品は見れますの?」
「はい、事務所にあるかと思います、あー、エレインさんが戻られたら・・・そうなんですよね、やはり木簡の内容だけでは分かりにくいですよね、せめて挿絵があればと思いますが・・・」
エレインとオリビアは洗髪中である、リーニーとカチャーも折角だからと共にしていた、テラは所用で外出中であり、マフダは一人事務所番であった、
「いいえ、これで良いのではないですか」
ユスティーナは木簡を熟読しつつ、
「そうね・・・うん、思うに・・・この木簡を見て興味を持ったらその店に行く気になりますでしょう、それも普段立ち寄らない店であっても、どういうものかと気になりますからね・・・そうすれば、その店にある他の品も当然のように目にするはずです、それが良い刺激になるのではないかと思いますね、どうしても・・・そうね、特に衣服については、平民の方々は中古の服を買うか生地を買ってきて自分で裁縫すると聞いてます、それとおさがりですか、服はどうしても高価な物ですからね、でも新しい服を購入するという習慣も市場として必要でしょうし、何より新しい意匠を知るのには専門家が作った品に触れるという事が必要です、そうでないといつまで経っても衣服は古いままで発展しないのではないかと思うのですよね」
「そこまでお考えでしたか・・・」
サビナは素直に目を剥いた、正直ユスティーナがそこまで考えられる人間とは思っていなかったのである、
「ふふ、こちらにお邪魔するようになって、レアンが急に大人になったでしょう、これは負けてられないかしらと私も勉強しているのですよ」
ニコリと微笑むユスティーナに、レアンも驚いた様子で、
「そうなのですか?いつの間に?」
「そうなんですよ・・・うふふ、あのね、マリレーナ先生に時間を貰ってね、貴方がいない間にね」
ユスティーナは意地悪そうにしかし知的に微笑む、マリレーナとはレアンの家庭教師である、
「勉強はね、いつでもどこでも出来ます、書を開くだけでも、知識のある人に考えを聞くだけでも立派な勉強です、こうしてサビナ先生にお話しを伺うだけでも貴重な勉強ですよ」
さらに知的に微笑むユスティーナに、
「・・・そうですね、はい、そう思います」
レアンは眉間に力を入れ改めて木簡に向かう、ユスティーナの言葉通りにレアンはこの寮に関わるようになって各段に成長している、ソフィアによってユスティーナの病を克服した事も生活環境の改善としては大きかったと思われるが、エレインの実行力やジャネット達平民の逞しくも勤勉な様にも良い影響を受けている、
「で・・・そうね、折角これほどの品なのです・・・ふむ・・・どうでしょう、どちらかで開陳される事は考えていらっしゃらないのですか?」
「あー、すいません、そうなると私の手を離れます、エレイン会長の判断になるかと思います」
「それもそうね・・・うーん」
ユスティーナは人差し指を唇に付けて沈思し、
「例えばですが、公共の場・・・で、女性が気軽に立ち寄る場所・・・もしくは女性が多い場所・・・そういう所でこちらを自由に見る事が出来れば・・・と思うのですよね」
考えながらその思考を口にする、
「なるほど・・・それは素晴らしいですね」
「でしょう、勿論無料で、ただどうかしら、壁にこう貼っただけでもいいような・・・それとあれね、各店舗にも了解が必要になるかしら?」
「・・・そうですね、でも、それだとこの資料の良さが無くなるような気がします、こちらの対応の部分ですね、この部分に良い変化が表れると・・・うん、研究者としては面白くない・・・のかな・・・でも・・・うーん」
サビナも腕を組んで悩み始めた、それは観察者が研究対象に影響を与えるという愚行である、研究対象は自身がそうである事を認知しその研究の結果によって行動を変化させる事がありうる、これは観察者としては非常に上手く無い、それどころか研究そのものを崩壊させかねないのである、サビナは研究者としてそれを危惧した、
「あら・・・そっか、あれね、良い接客になっては面白くないという事ね」
ユスティーナがニヤリと理解を示した、サビナは頭の回転が速い人だなと感じつつ、
「はい、この接客対応の部分、これもまた、面白いのですよ、私としてはその、商人とのやりとりもまた商習慣の一つ・・・と考えております、学園長も特にこの部分が秀逸といって喜んでおられました、このまま時間の経過でどのように洗練されていくか、それが観点として興味深いとも・・・なので、早急な変化は嬉しい事なのですが、経過を観察するという観点に立つと・・・何とも具合が良くないのですね、こちら側は出来るだけ関与しないのが・・・でも、お客さんとしたら対応が良くなるに越した事はないとも思いますし、難しいところです・・・」
「なるほど・・・では、この部分は隠して、各店舗の商品とその特徴だけでも良いのではなくて?あっ、値段も欲しいわね」
「・・・そうですね、資料は資料、宣伝・・・宣伝でいいのかな、ま、それはそれとしてという形ですね・・・」
サビナがうんうんと悩み始めた所に、
「気持ちよかったー」
「だろう?」
「でも、めんどくさいのー」
「はいはい、わかった、わかった」
洗髪を終えたミナとレインが騒がしく食堂に入って来た、
「あー、サビナだー、どうしたのー」
ミナは頭に手ぬぐいを巻いたままサビナに向かい、レインはヤレヤレと暖炉の前に座り込み、髪の水気を拭い始める、
「ユスティーナ様と勉強中なのです」
サビナがニコリと微笑む、
「勉強?」
「そうね、あー、何て言うのかしら・・・市井の文化・・・かしら?」
「学園長が風俗史と呼んでおります」
「フウゾクシ・・・それはまた初耳ですわね」
「そうですね、学園長も文化史を編纂するにあたり適当な言葉が無いのでそう名付けたそうです、曰く市井の平民の風習とか商習慣とか楽しみとか生活の根幹部分、そう言ったものを丸っとまとめてそう呼称したいのだとか」
「あら、それは素晴らしい・・・学園長ともなれば言葉も作らなければならないのね」
「そうらしいですね、ただ、まだ何処にも発表してないので、他の学者さんに使っても通用しないかもしれません」
「あら、それは残念」
「ブー、難しい話ししてるー」
ミナが不満顔でピョンピョン飛び跳ねた、
「こりゃ、邪魔するでない」
レアンがジロリとミナを睨み、
「・・・むー、怒られた・・・」
ミナがしょぼんと顔を伏せた、
「ええーい、そんな顔をするでないわ、ほりゃ、なんじゃ、お手玉じゃ、相手せい」
スクッと腰を上げたレアンに、
「いいの?」
ミナは満面の笑顔を向けると、
「ふふん、少しは上手くなったのか?」
「むー、お嬢様はへたっちょでしょー」
「なにおー」
キャーキャー喚きながら暖炉に向かう二人である、
「もう、でね」
とユスティーナが口を開いた瞬間、
「すいません、失礼かと思いますが」
おずおずとグルジアが話し掛けた、
「ん、グルジアさんも興味ある?」
ニコリと微笑むユスティーナに、
「はい、というか、その・・・」
グルジアは新入生達へ視線を巡らせた、
「あら・・・」
どうやら二人の会話はしっかりと新入生達の耳に届いていたらしい、
「その、私達も勉強させて頂ければ・・・」
遠慮がちに呟くグルジアに、
「ふふ、そうね、皆さんも勉強に来てるんですもんね、なら、どうしましょうか」
「そうですね、うーん・・・うん、あれです、取り敢えず回し読みしましょう、感想が欲しいとエレイン会長も言ってましたし、私としては読みやすくて面白い資料なのですが、若い人達はどう感じるか知りたいですね」
どこまでも研究肌のサビナである、
「なら、どうぞ、皆さんも」
優しく受け入れるユスティーナに新入生達は嬉しそうに席を立つ、そこへ、
「ふー、スッキリしますわねー」
「お嬢様、しっかり乾かさないと」
「はいはい、じゃ、マフダさんと代わってあげてね、テラさんは戻ったかしら?」
「事務所行きますね」
洗髪を終えたエレインとオリビアが戻ってきた、
「あ、エレイン会長、この品は事務所にありますか?」
サビナが早速エレインを捕まえる、そして、勉強の会場は事務所へと移ったのであった。
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