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本編
51話 宴の始末 その10
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事務所の厨房ではクレオの一時の調理が一段落し、事務室へ焼き立てのそれらを持ち込むと、ルルの土産用にと藁箱3つにギッシリと詰められた、
「こんなにいいんですか?」
「いいんじゃない?実家とおばさん用でしょ、それと御近所さん用として・・・うん、足りないくらいださ」
ジャネットが遠慮するなと微笑み、調理を手伝った一同もニコヤカに微笑んでいる、皆、最初は羨ましいとの声が多かったが、それは妬みの思いからではない、純粋に羨ましかったのである、特に日持ちのしない菓子を実家に送る事など難しいどころかほぼ無理であることは、それぞれがモニケンダムに来る道中で嫌というほど思い知った、最も交通の便が整っているグルジアでさえ実家のあるヘルデルへ荷物を送るとなると3日は見なければならず、さらに運送業者の気分と天候次第で長くなる事はあっても短くなる事はない、特別な輸送隊を組む事も出来るのであるが、土産程度それを仕立てるなど現実的とは言えなかった、
「じゃ、すいません、ありがとうございます、遠慮なく送ります」
ルルははにかんだ笑顔で皆を見渡し、皆はニコリと微笑み返す、
「ん、そうだね、そうするとあのおっきい伯父さんが来るの?」
「その予定です、昼過ぎくらいに来ると思うよってソフィアさんが今朝教えてくれました、アフラさんも」
「そっか、じゃそろそろだね、うーん、そうすると、あれか研究所に届けてしまおう、それが終わったらお茶会にしましょうか」
ジャネットが段取りを口にするが、クレオの一時を山と盛った大皿を前にしても、新入生達は鏡の方にチラチラと視線を奪われている、箱詰め作業中もそうであったがやはり巨大な鏡はその存在感を無視できるものではなく、まして年若い娘達である、色気より食い気と言うが、この場にあっては色気が勝ってしまっているようだ、
「ありゃ、そっちかー」
ジャネットはすぐに察して微笑むと、
「ま、気持ちは分かるな、うん、じゃ、どうしようかマフダっちと私とルルさんで運んじゃうか、リーニーさんは上に報告お願いしていいですか?」
「はい」
リーニーがサッと席を立ち、マフダとルルが3つの籠に別けられたロールケーキへ手を伸ばす、
「じゃ、あれだ、みんなはゆっくり鏡見てていいよー、ミナっち教えて上げてねー」
ジャネットも籠へ手を伸ばす、ミナが不思議そうにジャネットを見上げ、
「えー、なにをー?」
と純粋な疑問を口にする、
「なにを・・・って、そりゃそうか、うーんとあれだ、鏡の遊び方とか?」
「遊び方?」
「うん、ミナっち得意ださ」
「うん、分かったー」
ミナはピョンと飛び跳ねると鏡の前で物珍しそうにしている一同をかき分け、
「ほら、こうするのー」
と姿見に取り付いて、
「変な顔ー、どうどう?」
「わっ、凄い」
「うん、変な顔だー」
「キャー、可愛いー」
「でしょー、ほらほら、目が3つー」
「おお、そんな遊び方があるなんて・・・」
「ミナちゃん、天才だ・・・」
あっという間にキャッキャッと黄色い歓声が響き渡る、その声を背中に受けながらジャネット達は寮へと向かい、
「あー、留守番お疲れー」
食堂で書を開いているケイスに声を掛けた、
「あら、終わり?」
「うん、こっちはねー、手が多いからあっという間だったよー、ソフィアさんは?」
「まだですね、あっ、クロ・・・じゃなかったスイランズ様が来ましたよ」
「へっ、どうしたんだろう?」
「ソフィアさんを探してましたけど、寝てますっていったら、そうかって、戻りました」
「そっか、うん、わかった」
軽い報告を交わしつつ3階へ向かい、分かりやすい場所に籠を下ろす、すると、
「おや、なんだそりゃ?」
山と積まれた木簡の間からクロノスがヌッと顔を出し、
「わっ、スイランズ様、お疲れ様です」
条件反射でジャネットは直立不動で背筋を伸ばす、
「ん、お疲れさん」
クロノスは柔らかく微笑みつつ3人へ近寄ると、
「ほう、甘い匂いだな、菓子か?」
「はい、ユーリ先生から注文頂いたロールケーキでございます」
「ユーリか・・・これは下手に手を付けると痛い目を見るな」
ニヤリと微笑むクロノスである、ユーリの名が出なければ手を伸ばしていたのであろうか、やや意地悪そうに微笑むその顔はその懸念を見事に裏打ちしている、
「えっと、御所望であれば用意致しますが?」
ジャネットが察して問いかけるが、
「いらん、いらん、気にするな、それよりソフィアはまだ起きてこないのか?」
「はい、まだのようです」
「そうか、じゃ、まぁ、いいか・・・ジャネット、大荷物があるから持って来る、全て食い物だ、食糧庫に頼めるか?」
「はい、わかりました」
ジャネットはビシリと背筋を伸ばし、
「それと、ルル、ゲインも連れてくるからちょっと待ってろ」
「あっ、はい、ありがとうございます」
ルルもつられて姿勢を正す、クロノスはニコリと口の端を上げて奥へと向かった、
「?・・・あの・・・どこに行かれるんですか?」
マフダがその背を不思議そうに見つめてそっと二人に問いかける、ジャネットとルルはエッと驚いて顔を見合わせると、
「あー、正しい疑問だ・・・」
「そうですよね、私もびっくりしました・・・」
「あっ、そっか、ルルっちは通った事あるのかー」
「はい、こっちに来る時に・・・」
「へー、いいなー、羨ましー、私はソフィアさんに聞いただけなんだよなー」
「そうなんですか?何か皆さん普通に使っているのかと・・・だって、伯父さんとか先生とか涼しい顔ですし、こっちでは当たり前なのかなって・・・」
「それはないよ、だって・・・うん、あー、マフダっち、あれだ、研究所の秘密ってやつなんだわ」
マフダが不思議そうな顔のままジャネットの答えに小首を傾げた、
「ほら、ユーリ先生の研究?なもんで、なんか色々と凄いらしいのよ」
なんとも惚けた上に適当な説明である、マフダははぁーと気の抜けた声を発し、
「なもんで、うん、そういうもんだって事にしておいて、それと他言しちゃ駄目だよ」
とマフダの顔を不安そうに見下ろす、
「はい、その・・・良く分かりませんが、そういうのであれば」
「ルルっちもね」
ジャネットはルルへも確認し、
「はい、勿論です」
ルルは大きく頷いた、
「よし・・・そうだな、二人共あれだ、幸せになりたかったら絶対に黙っておくこと、変な噂とかも駄目だかんね、マフダっちは仕事続けられないし、ルルっちは追い出されるかもだし、最悪の場合は、ホントの本気で命の危険が危険になって家族にも迷惑かかるからね」
ジャネットの真剣な瞳と常とは異なる真面目な上にきな臭い忠告が二人に送られる、マフダとルルはゴクリと喉を鳴らして神妙に頷いた、
「よし、じゃ、マフダっちは事務所に戻ってもらって、少し遅れるって連絡お願いね」
「はい」
マフダは神妙な顔のまま背筋を伸ばし、サッと回れ右をして階段を下り、
「じゃ、どうしようか、下で待つのが良いのかな?」
「そうですね、はい」
ジャネットとルルも食堂へと下りた、すると、
「あ、ソフィアさん大丈夫ですか?」
食堂ではマフダが玄関へ向かう所で、ソフィアとケイスがニコヤカにおしゃべりしていた、ソフィアは大分体調は良さそうに見受けられ、その顔は緊張感の無いいつもの柔和なそれであり、ソフィアはジャネットとルルに視線を移すと、
「あー、ごめんねー、やっぱ歳ねー」
と柔らかく申し訳なさそうな笑顔を浮かべる、
「そんなー、ソフィアさんはまだまだ若いですよー」
「そうですよー、あれですユーリ先生が変なんです」
「寝るのは大事ですよー」
口々に優しく労わる言葉が浴びせかけられた、
「ふふ、ありがとう、たまに暴れるとこれだからね、普段から暴れてればいいのかしら?ユーリみたいに」
「あー、それはどうかと思います」
「うん、ユーリ先生が二人になったら私らが死んじゃいますよ」
「ユーリ先生ってそんなに凄いんですか?」
「そりゃもう凄いの凄くないのって・・・む、居ないよね?」
ジャネットはサッと階段を振り返る、
「あっはっは、ジャネットそれは酷いよー」
「いや、ユーリ先生の事だから、ほら、他人事言ったら茶を点てろって言うじゃん」
「そうだけどー」
「それにユーリ先生だよー」
「こらこら、あまり言ってるとホントに来るわよ」
ソフィアも笑いつつ場を納めると、
「さて、ミナとレインは?」
「事務所でお茶してます、お菓子作りを手伝って貰いました」
「あや、子守りもさせちゃったか、ごめんなさいね」
「全然です、それと、クロノス様が来ます、何か大荷物があるって言ってました」
「えっ、なんだろう?」
「食料がどうのって・・・」
「あー、それはありがたいわねー」
「はい、なので、どうしようかな?ルルさんは伯父さん待ちだよね?」
「はい、そうですね」
「じゃ、任せていいですか?私とケイスはむこうに合流した方が良いかなって?」
「ん、分かった、ありがとね」
ジャネットとケイスはソフィアの様子に安堵したようで、二人並んで玄関へ向かいつつ、
「ミナちゃんも安心だねー」
「そうだねー、でも、お菓子作りで機嫌良くなったよ」
「そうなんだー、ミナちゃんも現金だなー」
「ねー」
と二人もそれなりにソフィアの事を心配していたのであろう、足取りも軽く事務所へ向かった、
「じゃ、少し待つか、あっ、お土産は大丈夫?」
「うふふ、これがあれば完璧です、美味しく出来ましたから、絶対です」
ルルは大事そうに小脇に抱えていた藁箱をテーブルにそっと置いた。
「こんなにいいんですか?」
「いいんじゃない?実家とおばさん用でしょ、それと御近所さん用として・・・うん、足りないくらいださ」
ジャネットが遠慮するなと微笑み、調理を手伝った一同もニコヤカに微笑んでいる、皆、最初は羨ましいとの声が多かったが、それは妬みの思いからではない、純粋に羨ましかったのである、特に日持ちのしない菓子を実家に送る事など難しいどころかほぼ無理であることは、それぞれがモニケンダムに来る道中で嫌というほど思い知った、最も交通の便が整っているグルジアでさえ実家のあるヘルデルへ荷物を送るとなると3日は見なければならず、さらに運送業者の気分と天候次第で長くなる事はあっても短くなる事はない、特別な輸送隊を組む事も出来るのであるが、土産程度それを仕立てるなど現実的とは言えなかった、
「じゃ、すいません、ありがとうございます、遠慮なく送ります」
ルルははにかんだ笑顔で皆を見渡し、皆はニコリと微笑み返す、
「ん、そうだね、そうするとあのおっきい伯父さんが来るの?」
「その予定です、昼過ぎくらいに来ると思うよってソフィアさんが今朝教えてくれました、アフラさんも」
「そっか、じゃそろそろだね、うーん、そうすると、あれか研究所に届けてしまおう、それが終わったらお茶会にしましょうか」
ジャネットが段取りを口にするが、クレオの一時を山と盛った大皿を前にしても、新入生達は鏡の方にチラチラと視線を奪われている、箱詰め作業中もそうであったがやはり巨大な鏡はその存在感を無視できるものではなく、まして年若い娘達である、色気より食い気と言うが、この場にあっては色気が勝ってしまっているようだ、
「ありゃ、そっちかー」
ジャネットはすぐに察して微笑むと、
「ま、気持ちは分かるな、うん、じゃ、どうしようかマフダっちと私とルルさんで運んじゃうか、リーニーさんは上に報告お願いしていいですか?」
「はい」
リーニーがサッと席を立ち、マフダとルルが3つの籠に別けられたロールケーキへ手を伸ばす、
「じゃ、あれだ、みんなはゆっくり鏡見てていいよー、ミナっち教えて上げてねー」
ジャネットも籠へ手を伸ばす、ミナが不思議そうにジャネットを見上げ、
「えー、なにをー?」
と純粋な疑問を口にする、
「なにを・・・って、そりゃそうか、うーんとあれだ、鏡の遊び方とか?」
「遊び方?」
「うん、ミナっち得意ださ」
「うん、分かったー」
ミナはピョンと飛び跳ねると鏡の前で物珍しそうにしている一同をかき分け、
「ほら、こうするのー」
と姿見に取り付いて、
「変な顔ー、どうどう?」
「わっ、凄い」
「うん、変な顔だー」
「キャー、可愛いー」
「でしょー、ほらほら、目が3つー」
「おお、そんな遊び方があるなんて・・・」
「ミナちゃん、天才だ・・・」
あっという間にキャッキャッと黄色い歓声が響き渡る、その声を背中に受けながらジャネット達は寮へと向かい、
「あー、留守番お疲れー」
食堂で書を開いているケイスに声を掛けた、
「あら、終わり?」
「うん、こっちはねー、手が多いからあっという間だったよー、ソフィアさんは?」
「まだですね、あっ、クロ・・・じゃなかったスイランズ様が来ましたよ」
「へっ、どうしたんだろう?」
「ソフィアさんを探してましたけど、寝てますっていったら、そうかって、戻りました」
「そっか、うん、わかった」
軽い報告を交わしつつ3階へ向かい、分かりやすい場所に籠を下ろす、すると、
「おや、なんだそりゃ?」
山と積まれた木簡の間からクロノスがヌッと顔を出し、
「わっ、スイランズ様、お疲れ様です」
条件反射でジャネットは直立不動で背筋を伸ばす、
「ん、お疲れさん」
クロノスは柔らかく微笑みつつ3人へ近寄ると、
「ほう、甘い匂いだな、菓子か?」
「はい、ユーリ先生から注文頂いたロールケーキでございます」
「ユーリか・・・これは下手に手を付けると痛い目を見るな」
ニヤリと微笑むクロノスである、ユーリの名が出なければ手を伸ばしていたのであろうか、やや意地悪そうに微笑むその顔はその懸念を見事に裏打ちしている、
「えっと、御所望であれば用意致しますが?」
ジャネットが察して問いかけるが、
「いらん、いらん、気にするな、それよりソフィアはまだ起きてこないのか?」
「はい、まだのようです」
「そうか、じゃ、まぁ、いいか・・・ジャネット、大荷物があるから持って来る、全て食い物だ、食糧庫に頼めるか?」
「はい、わかりました」
ジャネットはビシリと背筋を伸ばし、
「それと、ルル、ゲインも連れてくるからちょっと待ってろ」
「あっ、はい、ありがとうございます」
ルルもつられて姿勢を正す、クロノスはニコリと口の端を上げて奥へと向かった、
「?・・・あの・・・どこに行かれるんですか?」
マフダがその背を不思議そうに見つめてそっと二人に問いかける、ジャネットとルルはエッと驚いて顔を見合わせると、
「あー、正しい疑問だ・・・」
「そうですよね、私もびっくりしました・・・」
「あっ、そっか、ルルっちは通った事あるのかー」
「はい、こっちに来る時に・・・」
「へー、いいなー、羨ましー、私はソフィアさんに聞いただけなんだよなー」
「そうなんですか?何か皆さん普通に使っているのかと・・・だって、伯父さんとか先生とか涼しい顔ですし、こっちでは当たり前なのかなって・・・」
「それはないよ、だって・・・うん、あー、マフダっち、あれだ、研究所の秘密ってやつなんだわ」
マフダが不思議そうな顔のままジャネットの答えに小首を傾げた、
「ほら、ユーリ先生の研究?なもんで、なんか色々と凄いらしいのよ」
なんとも惚けた上に適当な説明である、マフダははぁーと気の抜けた声を発し、
「なもんで、うん、そういうもんだって事にしておいて、それと他言しちゃ駄目だよ」
とマフダの顔を不安そうに見下ろす、
「はい、その・・・良く分かりませんが、そういうのであれば」
「ルルっちもね」
ジャネットはルルへも確認し、
「はい、勿論です」
ルルは大きく頷いた、
「よし・・・そうだな、二人共あれだ、幸せになりたかったら絶対に黙っておくこと、変な噂とかも駄目だかんね、マフダっちは仕事続けられないし、ルルっちは追い出されるかもだし、最悪の場合は、ホントの本気で命の危険が危険になって家族にも迷惑かかるからね」
ジャネットの真剣な瞳と常とは異なる真面目な上にきな臭い忠告が二人に送られる、マフダとルルはゴクリと喉を鳴らして神妙に頷いた、
「よし、じゃ、マフダっちは事務所に戻ってもらって、少し遅れるって連絡お願いね」
「はい」
マフダは神妙な顔のまま背筋を伸ばし、サッと回れ右をして階段を下り、
「じゃ、どうしようか、下で待つのが良いのかな?」
「そうですね、はい」
ジャネットとルルも食堂へと下りた、すると、
「あ、ソフィアさん大丈夫ですか?」
食堂ではマフダが玄関へ向かう所で、ソフィアとケイスがニコヤカにおしゃべりしていた、ソフィアは大分体調は良さそうに見受けられ、その顔は緊張感の無いいつもの柔和なそれであり、ソフィアはジャネットとルルに視線を移すと、
「あー、ごめんねー、やっぱ歳ねー」
と柔らかく申し訳なさそうな笑顔を浮かべる、
「そんなー、ソフィアさんはまだまだ若いですよー」
「そうですよー、あれですユーリ先生が変なんです」
「寝るのは大事ですよー」
口々に優しく労わる言葉が浴びせかけられた、
「ふふ、ありがとう、たまに暴れるとこれだからね、普段から暴れてればいいのかしら?ユーリみたいに」
「あー、それはどうかと思います」
「うん、ユーリ先生が二人になったら私らが死んじゃいますよ」
「ユーリ先生ってそんなに凄いんですか?」
「そりゃもう凄いの凄くないのって・・・む、居ないよね?」
ジャネットはサッと階段を振り返る、
「あっはっは、ジャネットそれは酷いよー」
「いや、ユーリ先生の事だから、ほら、他人事言ったら茶を点てろって言うじゃん」
「そうだけどー」
「それにユーリ先生だよー」
「こらこら、あまり言ってるとホントに来るわよ」
ソフィアも笑いつつ場を納めると、
「さて、ミナとレインは?」
「事務所でお茶してます、お菓子作りを手伝って貰いました」
「あや、子守りもさせちゃったか、ごめんなさいね」
「全然です、それと、クロノス様が来ます、何か大荷物があるって言ってました」
「えっ、なんだろう?」
「食料がどうのって・・・」
「あー、それはありがたいわねー」
「はい、なので、どうしようかな?ルルさんは伯父さん待ちだよね?」
「はい、そうですね」
「じゃ、任せていいですか?私とケイスはむこうに合流した方が良いかなって?」
「ん、分かった、ありがとね」
ジャネットとケイスはソフィアの様子に安堵したようで、二人並んで玄関へ向かいつつ、
「ミナちゃんも安心だねー」
「そうだねー、でも、お菓子作りで機嫌良くなったよ」
「そうなんだー、ミナちゃんも現金だなー」
「ねー」
と二人もそれなりにソフィアの事を心配していたのであろう、足取りも軽く事務所へ向かった、
「じゃ、少し待つか、あっ、お土産は大丈夫?」
「うふふ、これがあれば完璧です、美味しく出来ましたから、絶対です」
ルルは大事そうに小脇に抱えていた藁箱をテーブルにそっと置いた。
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