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本編
50話 光柱は陽光よりも眩しくて その21
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その後、夕食なのであるが手間のかかった料理は難しいなとソフィアは考え、エレインに溶岩板を貸してもらい、
「皆で薄パン焼いておいて、大量に作っちゃって、食べきれないくらい、あ、ジャネットさんケイスさん監督役宜しくね」
と食堂で薄パン作りをやらせ、厨房ではオリビアとグルジアを助手においてホワイトシチューを仕込み、生野菜を大量に切る、その上でこちらも大量の肉類を雑多に焼き上げた、
「綺麗なスープ?煮物?ですね・・・初めて見ました、美味しそう・・・」
グルジアは赤い魔法石のコンロの使い勝手に悲鳴のような歓声を上げ、その後オリビアによって仕上げられたホワイトシチューの光輝く姿に関心しつつその芳香を思い切り吸い込み、
「これは、美味しい匂いだ・・・」
とウットリと呟いた、
「味も良いのです、どうぞ」
オリビアは軽くホワイトシチューを掻き混ぜて一緒になって味見である、グルジアは声にならない歓喜の声を上げ、オリビアはうんこんなもんかと頷いて、
「良い感じだと思います、如何でしょうか」
ソフィアも同じように味見をし、
「ん・・・美味しいわね、これなら売り物にもなるわー、流石オリビアさんねー」
様々な野菜の甘味と絶妙な塩気、それらをトロリとまとめ上げるホワイトソースの味わいに、素直な賛美を贈った、
「そうですよ、とんでもなく美味しいですよ」
グルジアは飛び跳ねるようにはしゃぐが、
「ソフィアさんのお陰です」
どこまでも冷静なオリビアである、しかし、よく見れば薄っすらとその口角が上がっている、
「もー、素直に喜びなさいよ、可愛い顔が台無しだわー」
「そうですよ、女は愛嬌ですからね」
「そうそう、男を落とすにはね、笑顔よ、え・が・お」
「それと料理ね」
「笑顔で釣って料理で胃袋掴めってね」
「ですよねー」
グルジアは世間的には立派な未亡人である、それをこの場で公言してはいないが、言葉の端々にはやや所帯じみたおばさん臭さが現れており、それはそのまま彼女の経験から来るものなのであるが、そうなると最も気が合うのはやはりソフィアであった、グルジアの生い立ちと境遇を考えればテラとの親和性も高い、さらに生家どうしも商売上、取引もあった関係である、お互いに顔を合わせた事もあるのであるが、二人共にその事には気付いていなかった、何しろそれは10年も前の事である、グルジアは子供でテラは既に大人として第一線に立っていた、テラとしては商売相手の御令嬢で、グルジアとしては綺麗な大人のおねーさん程度の認識でその時は愛想良く挨拶しただけである、グルジアが商人としてこの場にあればまた話しは違うのであろうが、今は一生徒に過ぎず、生家の事を積極的に喧伝する気はさらさら無かった、そんな訳でテラとは仲良くなってはいないが、かと言って残念ながら他の生徒達は彼女にとっては幼すぎる感がある、それはグルジアとしては覚悟の上で入学したのであるが、そうは言っても簡単に馴染めるものではない、心のどこかで彼女達との関係に一線を引いてしまっているような感じがあり、どうしても子供として見てしまっている、ミナやレインに対するそれと同じである、グルジアはそれを自覚しつつも、慣れの問題かしらと気にしない事にしていた、こちらの環境に身を置いて3日も経たないのである、恐らくであるが新入生達は皆、どこかしら無理をしているであろう、初めての寮生活と始まってもいない学園生活を前にしてはそれも無理からぬ事である、しかし、先輩達を見る限り、ここでの生活が日常になってしまえばなんの事はなさそうで、自分もさっさとそうならなければなと実に逞しくも堅実な大人らしい考えであった、
「はいはい、そうですね」
オリビアはニコリと微笑み、二人を華麗にいなす、
「そうそう、良い顔するじゃない」
「でしょー、オリビアさんはねー、磨かなくても光っているんだから」
「そうなんですか?じゃ、もっと磨きましょうよ、もっと輝きますよー」
「そうねー、でもそれは、エレインさんに許可貰わないとだわ」
「あー、それが一番難関ですねー」
「そうなのよー」
しかし、おばさん二人はやはり強敵である、まだまだオリビアでは太刀打ちできないようであった、オリビアは何とも複雑な表情を浮かべ、
「どうします、鍋ごと持っていきましょうか?」
と真面目な顔でソフィアへ問いかけた、その頃食堂では、
「結構焼いたねー」
ジャネットが大量に焼かれ山と積まれた薄パンにいいのかなと首を傾げ、
「いいんじゃないですか?ソフィアさんが焼けるだけ焼いてって言ってましたし、材料もまだありますし」
ルルも小首を傾げつつ、その手はすでに慣れた感じで薄パンを伸ばしている、薄パンの調理は難しいものではなく、ルル達新入生は勿論であるが、ミナも調子に乗って焼き続けていた、新入生達にとっては溶岩板の調理はやはり物珍しい上に便利なもので、家にも欲しいの大合唱である、
「そうだねー、ま、余っても朝食にすればいいしね」
「そうですよー、あー、もしかして今日はあれですかね?」
ケイスがニヤリと微笑む、
「あー、そうかもねー、美味しかったよねー」
「はい、美味しかったですよー」
ジャネットとケイスが意地悪く微笑み合い、
「えー、何ですか、何かあるんですか?」
ルルのみならずサレバとコミン、レスタも興味津々で二人を見つめる、
「えへへ、うん、取り敢えず待とうか、楽しいよー」
「そうですね、美味しいしー、楽しいんですよねー」
「楽しいんですか?」
「そうだよ、楽しいの・・・うふふ」
ケイスの含み笑いを4人は不思議そうに見つめ、
「あっ、来たー」
ジャネットが大鍋と共に食堂に入って来たオリビアを大声で迎えた。
「えっ、あんたまた来たの?」
街中は陽が落ち厚い雲が流れて来た為、本来であれば漆黒の夜である、しかし、その日は街の中心で燦然と輝く光柱の為に突然のお祭り気分となった、女子供の姿はさすがに少なかったが、男共は店から持ち出した料理を前にして酒を片手に街路で騒いでおり、それを咎める者は少ない、衛兵の巡回も頻繁になっているが、その衛兵でさえ一緒に酒盛りをしたいと羨ましそうな顔である、それも仕方がないと言って良い、モニケンダムの住人は大変に祭り好きなのである、毎月のように大きな祭りを行政として開催しているのは、小さい祭りを勝手にやらせると3日に一度は祭りの日になってしまう為である、それはそれで構わないようにも思うが、小さいとはいえ立派な祭りで、さらに生来の祭り好きとなると、公務に携わる者達もそれに駆り出されるのが当たり前となり、また、駆り出された当の本人達も祭りを楽しむ事に遠慮が無い、結果、公務を中心として大変に仕事が滞るという事態が発生したらしい、そのため時の領主は一計を案じ、細々とした祭りを月ごとに大きな祭りに集約することで、公務と祭事の均衡を保つ事にした、当初は文句の方が多かったと記録にはあるが、今ではすっかりと馴染んでいる、そのような住人達である、広報官により危険は無い事が周知され、それはさらに人口を膾炙して不安感も恐怖も薄れてしまった、それは実に良い事なのであるが、そうなると、この特異な現象は立派な催事である、夜になっても昼のように明るく、遠目にみても螺旋を描く光の渦は神秘的で美しい、酒のつまみになるどころか祭りの催し物としても格好の代物である、となれば祭り好きの住人達の魂は祭りに向かうのであった、単純に飲んで騒ぐ為の言い訳でしかないとも言えるし、実際にそうなのであるが、そして、学園の一室にもその余波はしっかりと伝播したようで、
「おう、なんだ?お前も見物か?」
クロノスが酒を片手に御機嫌で、
「ソフィアさん、ぬしもどうだ?」
さらに国王その人も既に出来上がっている様子である、困った事にロキュスと学園長、挙句に事務長迄が学園の一室を酒の匂いで満たしていた、
「どうだと言われましても・・・」
ソフィアはあからさまに嫌悪を滲ませた渋い顔となる、ソフィアは寮生の食事を済ませると、大量に焼いた薄パンに生野菜と肉、それから塩味ととろみを足して味を濃くしたホワイトシチューを垂らしかけ挟んだものを差し入れとして持って来た、諸々の事情に感付いているエレイン達の手伝いもあって大量に作ったそれを事務員と共に対応に追われていたカトカに渡すと、これほど喜ばれるかと驚く程の歓声が上がり、これは本当に申し訳ない事をしたんだなとソフィアは反省の念を強くした、しかし、リンドが何とも困った顔でソフィアを案内した先では、この有様である、
「まったく、いいんですか?事務長まで・・・」
最も常識人であり、事務員や衛兵達の責任者であるはずの事務長を軽く睨むが、
「うむ、陛下やボック学園長と飲めるなど、一生にあるかなしかですからな」
事務長はニコヤカに微笑む始末である、
「もう・・・」
これはどうしようも無いなとソフィアはリンドを伺うが、リンドも同意なのであろう、フルフルと黙して頭を振った、まったくどうしたものかとソフィアが口を開きかけた瞬間、
「あっ、ソフィア、あれまだあるか?」
クロノスがそういえばと顔を上げる、
「あれ?」
「あの、カブの漬物、レイン嬢お手製の」
「なに、レイン嬢だと?」
国王が急に色めき立つ、
「あるわよ、なに?肴にしたいの?」
「出来ればな、少しばかり融通してくれんかな?」
クロノスらしくない猫撫で声であった、クロノスとしてもこの状況に少しは引け目を感じているのであろう、しかし、国王の手前、ロキュスの手前、学園長の手前がある、ソフィアは大きく溜息を吐いてこれだから男共はと一同を一睨みすると、
「はいはい、持って来るわ」
とサッと踵を返した、
「すまんな」
クロノスの謝意と、
「クロノス、レイン嬢のお手製とはなんだ?どういう事だ?」
国王の驚きつつも慌てた声が背後で響く、ソフィアはこれは徹夜になるのかしらと、心の底から己の思い込みから生じた諸々の失態を猛省するのであった。
「皆で薄パン焼いておいて、大量に作っちゃって、食べきれないくらい、あ、ジャネットさんケイスさん監督役宜しくね」
と食堂で薄パン作りをやらせ、厨房ではオリビアとグルジアを助手においてホワイトシチューを仕込み、生野菜を大量に切る、その上でこちらも大量の肉類を雑多に焼き上げた、
「綺麗なスープ?煮物?ですね・・・初めて見ました、美味しそう・・・」
グルジアは赤い魔法石のコンロの使い勝手に悲鳴のような歓声を上げ、その後オリビアによって仕上げられたホワイトシチューの光輝く姿に関心しつつその芳香を思い切り吸い込み、
「これは、美味しい匂いだ・・・」
とウットリと呟いた、
「味も良いのです、どうぞ」
オリビアは軽くホワイトシチューを掻き混ぜて一緒になって味見である、グルジアは声にならない歓喜の声を上げ、オリビアはうんこんなもんかと頷いて、
「良い感じだと思います、如何でしょうか」
ソフィアも同じように味見をし、
「ん・・・美味しいわね、これなら売り物にもなるわー、流石オリビアさんねー」
様々な野菜の甘味と絶妙な塩気、それらをトロリとまとめ上げるホワイトソースの味わいに、素直な賛美を贈った、
「そうですよ、とんでもなく美味しいですよ」
グルジアは飛び跳ねるようにはしゃぐが、
「ソフィアさんのお陰です」
どこまでも冷静なオリビアである、しかし、よく見れば薄っすらとその口角が上がっている、
「もー、素直に喜びなさいよ、可愛い顔が台無しだわー」
「そうですよ、女は愛嬌ですからね」
「そうそう、男を落とすにはね、笑顔よ、え・が・お」
「それと料理ね」
「笑顔で釣って料理で胃袋掴めってね」
「ですよねー」
グルジアは世間的には立派な未亡人である、それをこの場で公言してはいないが、言葉の端々にはやや所帯じみたおばさん臭さが現れており、それはそのまま彼女の経験から来るものなのであるが、そうなると最も気が合うのはやはりソフィアであった、グルジアの生い立ちと境遇を考えればテラとの親和性も高い、さらに生家どうしも商売上、取引もあった関係である、お互いに顔を合わせた事もあるのであるが、二人共にその事には気付いていなかった、何しろそれは10年も前の事である、グルジアは子供でテラは既に大人として第一線に立っていた、テラとしては商売相手の御令嬢で、グルジアとしては綺麗な大人のおねーさん程度の認識でその時は愛想良く挨拶しただけである、グルジアが商人としてこの場にあればまた話しは違うのであろうが、今は一生徒に過ぎず、生家の事を積極的に喧伝する気はさらさら無かった、そんな訳でテラとは仲良くなってはいないが、かと言って残念ながら他の生徒達は彼女にとっては幼すぎる感がある、それはグルジアとしては覚悟の上で入学したのであるが、そうは言っても簡単に馴染めるものではない、心のどこかで彼女達との関係に一線を引いてしまっているような感じがあり、どうしても子供として見てしまっている、ミナやレインに対するそれと同じである、グルジアはそれを自覚しつつも、慣れの問題かしらと気にしない事にしていた、こちらの環境に身を置いて3日も経たないのである、恐らくであるが新入生達は皆、どこかしら無理をしているであろう、初めての寮生活と始まってもいない学園生活を前にしてはそれも無理からぬ事である、しかし、先輩達を見る限り、ここでの生活が日常になってしまえばなんの事はなさそうで、自分もさっさとそうならなければなと実に逞しくも堅実な大人らしい考えであった、
「はいはい、そうですね」
オリビアはニコリと微笑み、二人を華麗にいなす、
「そうそう、良い顔するじゃない」
「でしょー、オリビアさんはねー、磨かなくても光っているんだから」
「そうなんですか?じゃ、もっと磨きましょうよ、もっと輝きますよー」
「そうねー、でもそれは、エレインさんに許可貰わないとだわ」
「あー、それが一番難関ですねー」
「そうなのよー」
しかし、おばさん二人はやはり強敵である、まだまだオリビアでは太刀打ちできないようであった、オリビアは何とも複雑な表情を浮かべ、
「どうします、鍋ごと持っていきましょうか?」
と真面目な顔でソフィアへ問いかけた、その頃食堂では、
「結構焼いたねー」
ジャネットが大量に焼かれ山と積まれた薄パンにいいのかなと首を傾げ、
「いいんじゃないですか?ソフィアさんが焼けるだけ焼いてって言ってましたし、材料もまだありますし」
ルルも小首を傾げつつ、その手はすでに慣れた感じで薄パンを伸ばしている、薄パンの調理は難しいものではなく、ルル達新入生は勿論であるが、ミナも調子に乗って焼き続けていた、新入生達にとっては溶岩板の調理はやはり物珍しい上に便利なもので、家にも欲しいの大合唱である、
「そうだねー、ま、余っても朝食にすればいいしね」
「そうですよー、あー、もしかして今日はあれですかね?」
ケイスがニヤリと微笑む、
「あー、そうかもねー、美味しかったよねー」
「はい、美味しかったですよー」
ジャネットとケイスが意地悪く微笑み合い、
「えー、何ですか、何かあるんですか?」
ルルのみならずサレバとコミン、レスタも興味津々で二人を見つめる、
「えへへ、うん、取り敢えず待とうか、楽しいよー」
「そうですね、美味しいしー、楽しいんですよねー」
「楽しいんですか?」
「そうだよ、楽しいの・・・うふふ」
ケイスの含み笑いを4人は不思議そうに見つめ、
「あっ、来たー」
ジャネットが大鍋と共に食堂に入って来たオリビアを大声で迎えた。
「えっ、あんたまた来たの?」
街中は陽が落ち厚い雲が流れて来た為、本来であれば漆黒の夜である、しかし、その日は街の中心で燦然と輝く光柱の為に突然のお祭り気分となった、女子供の姿はさすがに少なかったが、男共は店から持ち出した料理を前にして酒を片手に街路で騒いでおり、それを咎める者は少ない、衛兵の巡回も頻繁になっているが、その衛兵でさえ一緒に酒盛りをしたいと羨ましそうな顔である、それも仕方がないと言って良い、モニケンダムの住人は大変に祭り好きなのである、毎月のように大きな祭りを行政として開催しているのは、小さい祭りを勝手にやらせると3日に一度は祭りの日になってしまう為である、それはそれで構わないようにも思うが、小さいとはいえ立派な祭りで、さらに生来の祭り好きとなると、公務に携わる者達もそれに駆り出されるのが当たり前となり、また、駆り出された当の本人達も祭りを楽しむ事に遠慮が無い、結果、公務を中心として大変に仕事が滞るという事態が発生したらしい、そのため時の領主は一計を案じ、細々とした祭りを月ごとに大きな祭りに集約することで、公務と祭事の均衡を保つ事にした、当初は文句の方が多かったと記録にはあるが、今ではすっかりと馴染んでいる、そのような住人達である、広報官により危険は無い事が周知され、それはさらに人口を膾炙して不安感も恐怖も薄れてしまった、それは実に良い事なのであるが、そうなると、この特異な現象は立派な催事である、夜になっても昼のように明るく、遠目にみても螺旋を描く光の渦は神秘的で美しい、酒のつまみになるどころか祭りの催し物としても格好の代物である、となれば祭り好きの住人達の魂は祭りに向かうのであった、単純に飲んで騒ぐ為の言い訳でしかないとも言えるし、実際にそうなのであるが、そして、学園の一室にもその余波はしっかりと伝播したようで、
「おう、なんだ?お前も見物か?」
クロノスが酒を片手に御機嫌で、
「ソフィアさん、ぬしもどうだ?」
さらに国王その人も既に出来上がっている様子である、困った事にロキュスと学園長、挙句に事務長迄が学園の一室を酒の匂いで満たしていた、
「どうだと言われましても・・・」
ソフィアはあからさまに嫌悪を滲ませた渋い顔となる、ソフィアは寮生の食事を済ませると、大量に焼いた薄パンに生野菜と肉、それから塩味ととろみを足して味を濃くしたホワイトシチューを垂らしかけ挟んだものを差し入れとして持って来た、諸々の事情に感付いているエレイン達の手伝いもあって大量に作ったそれを事務員と共に対応に追われていたカトカに渡すと、これほど喜ばれるかと驚く程の歓声が上がり、これは本当に申し訳ない事をしたんだなとソフィアは反省の念を強くした、しかし、リンドが何とも困った顔でソフィアを案内した先では、この有様である、
「まったく、いいんですか?事務長まで・・・」
最も常識人であり、事務員や衛兵達の責任者であるはずの事務長を軽く睨むが、
「うむ、陛下やボック学園長と飲めるなど、一生にあるかなしかですからな」
事務長はニコヤカに微笑む始末である、
「もう・・・」
これはどうしようも無いなとソフィアはリンドを伺うが、リンドも同意なのであろう、フルフルと黙して頭を振った、まったくどうしたものかとソフィアが口を開きかけた瞬間、
「あっ、ソフィア、あれまだあるか?」
クロノスがそういえばと顔を上げる、
「あれ?」
「あの、カブの漬物、レイン嬢お手製の」
「なに、レイン嬢だと?」
国王が急に色めき立つ、
「あるわよ、なに?肴にしたいの?」
「出来ればな、少しばかり融通してくれんかな?」
クロノスらしくない猫撫で声であった、クロノスとしてもこの状況に少しは引け目を感じているのであろう、しかし、国王の手前、ロキュスの手前、学園長の手前がある、ソフィアは大きく溜息を吐いてこれだから男共はと一同を一睨みすると、
「はいはい、持って来るわ」
とサッと踵を返した、
「すまんな」
クロノスの謝意と、
「クロノス、レイン嬢のお手製とはなんだ?どういう事だ?」
国王の驚きつつも慌てた声が背後で響く、ソフィアはこれは徹夜になるのかしらと、心の底から己の思い込みから生じた諸々の失態を猛省するのであった。
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