セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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50話 光柱は陽光よりも眩しくて その19

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その頃学園では、学園長と事務長、ユーリとその助手2人、さらにリンドが加わって対策会議である、事務長が衛兵から直接聞いた所、今回の光は街中のあらゆる所から見る事が出来たらしく、平地で遮蔽物と言えば建物と小高い丘と小山程度しかないモニケンダムであればさもありなんと事務長は笑うしかなかった、取り敢えず事務長は何らかの魔法実験であると言い訳し、より詳細な事は確認の上衛兵の屯所へ向かう事を伝えた、衛兵はそういう事であればと引き上げたのであるが、学園には物珍しそうに光を見上げながらフラフラと民衆が集まって来ており、これもいかんと学園の守衛に命じて関係者以外は出入りを禁じた、しかし、よりめんどくさかったのがその学園関係者である、学生は勿論であるが、講師達も休みとなれば寄り付くことはない連中までもがこぞって集まっている様子で、事情を知らない事務員を捕まえてどういう事かと質問攻めである、事務長は学園長に許可を取り学園関係者には修練場への出入りを許可した、そうしなければとても収まるとは思えないほどの騒ぎであったのである、急遽事務員とこちらも慌てて顔を出した非番の衛兵に指示を出し修練場の出入り可能な場所に大きく縄を張り衛兵を立たせると、そこから内に入らなければ見学しても良いとして開放したのである、そして、

「やれやれです」

学園長室にて状況を報告した事務長は大きく溜息を吐いた、

「すいません、事務長」

流石のユーリも責任を感じてか小さくなって謝罪を口にする、

「いや、かまいません、たまにはこういうのも面白いものですよ、ふふ、学部長連中が揃って肩をいからせてましたわ、あれは一見の価値がありますぞ」

疲れた顔であるが実に楽しそうに皮肉を口にする事務長に、ユーリはそれでもすまなそうにしており、

「ほう、そうか、あいつらも少しは目が覚めれば良いがのう・・・」

学園長がほくそ笑む、あいつらとは学部長連中の事であろう、先日研究心が足りんと叱責した所である、まるで何処吹く風と涼しい顔をしていた連中があれをどう見るかと学園長は何気に期待していたりもする、

「そうなりますと、まずは適当な言い訳が必要ですな、先程の案で良いかなと思いますが・・・」

リンドが冷静に議題を提示する、事務長とユーリが学園長室に来るまで、学園長とリンド、それからサビナは額を突き合わせて対応策を協議していたのである、二人とカトカが合流したうえで改めてとの事である、

「うむ、そうですな、ここは・・・うん、ユーリ先生、一つ濡れ衣を被って頂けますか?」

学園長は話し合われた策の一つで最も現実的な案を選択したようである、それは実に簡単で、ホルダー研究所による大規模な実験であったとするものである、学園内でもユーリの名前が出れば研究熱心で何をやっているか良く分からんとされ、一目置くというよりも煙たがられて近寄る者が無い存在のユーリであれば、今回の騒動でも拍が付いた上に関係者に対して納得させやすい、実際結界の作成にも関わっており、騒動の原因の一人である以上、今後詳細を聞かれた際にも説明が容易だろう、素直に答えるかどうかは本人の気分次第ではあるだろうが、

「はい、それはもう、そのつもりでした」

ユーリもそうするしかないであろうなと腹を括っていた、一度北ヘルデルに向かい、呼び出されて戻る間にもユーリは思考を巡らせ、何をどう対処するにしても首謀者がいなければならず、この場合、自分がそうなるのが最も懸命で賢い方策だろうと学園長と同じ結論に至っている、

「そうですか・・・申し訳ないですな・・・」

リンドが神妙に頷く、

「そんな、私もソフィアも少しばかりか・・・そうですね・・・かなり思慮を欠いていたと思います、結果的には明確な成果がありましたのでそれで良しとしたいと思いますが・・・何よりも殿下の為でしたから」

ユーリは反省の弁を口にして、さらにイフナースを慮る言葉を選んだ、これはリンドに対する一つの誇示なのであるが、単純に彼の身を案じていたのも確かである、そして、

「そうすると、どうしましょうか・・・あー、せめて・・・そうですね、口裏合わせの言い訳を作りましょう、ここはしっかりと対応しないとですからね」

クッと口元に力を籠めると、明るく強い言葉を発した、覚悟を決めた女は強い、ただでさえ勝気な性格の上に傾国を遥かに超える実力を持つユーリである、老獪な3人を前にして主導権をあっさりと奪うと、

「私の研究として結界を使った防御実験を行っていた事にしましょう、いや・・・そうですね、魔法の収束と拡散の実験・・・少し長いですがそうしましょうか、どう見ても結界は良いのですが、防御の形ではないですからね」

「そのままですな」

「それはもう、嘘は少ない方が良いです」

「うむ、では、それが失敗したとしますか?」

「そうですね、失敗でもいいですし想定外の作動をした事にしましょう、これも真実により近いので」

「確かに」

「で、問題としてはあの状態が恐らくですが3日は続きます」

「そんなにですか?」

「はい、なので、衛兵に対しては危険は無い事を説明する必要があるかと・・・」

「それもありますな、安全である事を喧伝しませんと」

「遠目で見る限りは危険とは思わんでしょう・・・」

「いえ、いきなりあんなものが見えたら不安ですよ、危険よりも不安の方が問題です、それに暗くなったら目立ちますし、恐らく学園全体が昼のように明るいですよ、街中もなってみなければ分かりませんがかなり明るいのではないかと思います」

「それも・・・そうですな・・・」

「何気に便利そうですね・・・」

「うん、何かに使えそう・・・」

「そりゃそうだけど・・・」

「あっ、じゃ、実験はそれにしましょう、夜を昼にする実験」

「能天気過ぎるわよ」

「えー、分かりやすいですよ」

「かもだけど」

「確かにもう少し規模を小さくすれば可能ではないか?」

「ですけど、街中にあれを置くのですか?」

「うむ、そうじゃな、街路樹のように並べるのはどうじゃ?規模の小さい物をな、若しくはあれじゃ、新しい壁掛けの松明としてじゃな各家の玄関に掲げるとかじゃな」

「それは便利そうですね」

「光の魔法を使えないと駄目ですよ」

「そうじゃが、灯りの魔法であれば光でも炎でも、雷は難しかろうが、精霊魔法でも代用可能な形にすれば良い」

「うーん、結界を組み直さないとですが、可能は可能ですね・・・しかし、持続時間が不安・・・かなー」

「一晩で良いのじゃ、それもあれだ、ゆっくり遊んで帰る迄の時間で十分なんじゃよ」

「そう考えると一晩で無くて良いのですな」

「そうなるじゃろ」

「うーん、街中が明るくなるのは良い事だと思いますけど・・・」

静かに見守っていたサビナとカトカも口を出しつつ、あっさりと事の本質からズレたようである、研究畑の人間にありがちな事であるが、リンドまでもこれは面白いと議論に口を出そうとして思い留まり、

「話しを戻しましょうか」

咳払いと共に冷静に話題を修正した、

「あっ、そうですね、でも・・・うん、今のでいいのかな?」

「そうですね、収束と拡散それから、灯りの魔法を長時間使う為の実験も兼ねていたという事にして」

「うん、少しばかりやり過ぎてしまった・・・で、納得頂けるものでしょうか?」

ユーリとサビナとカトカは何とも在り来たりな言い訳に行きついたが、現状を考えるとそれが一番角が立たないように聞こえる、その上理解が容易い、何事も分かりやすい事は良い事である、

「・・・そうじゃな・・・うん、それにしてはあまりに巨大過ぎる気もするが・・・」

「調子に乗ってしまったという事で良いのではないですか?」

事務長も3人の案に乗ったようである、

「調子に乗り過ぎでは?」

「そこはほれ、女を使うのじゃ」

「女ですか?」

「うむ、女3人いろいろやっていたらやり過ぎた、ごめんなさい、とな、そう言われてニコヤカに微笑まれたら、儂らは・・・いや、男はな、それ以上何も言えないものじゃぞ」

「また、卑怯な事を・・・」

「女の権謀術じゃろ?」

「そんな大袈裟なものですか?」

「そうだぞ、男を手玉に取ってこそ良い女というものじゃ、フィロメナの口癖じゃな」

「フィロメナ・・・あー、奥様ですね」

「えっ、奥様ってそんな感じなのですか?」

「おう、そうじゃ、若い頃から知恵の回る女でな、悪知恵とか狡猾とかそういう類じゃな・・・いや、あれじゃぞ、儂には優しいのじゃぞ」

「へーヘー、是非お会いしたいです」

「私もー」

「はい、是非その手管を御教授頂きたいですね」

「あっ、それいいかもね、淑女の嗜みって感じで」

「面白そうですね、うけますよ絶対」

「それは・・・考えておく」

再び議題は大きくズレているが、リンドはこの程度の言い訳が良い塩梅なのであろうなと小さく微笑み、

「では、それで行きましょう、事務長は屯所でしたな、領主邸にも一報必要でしょう、そちらは学園長にお任せするとして、他にまわる所はありますか?それと関係者以外の対処ですな、幸いなことに生徒が休みでありますし、実際に見せる事も混乱を収める方法の一つであると思います、一般開放が必要かどうかは・・・うん、これこそ領主と衛兵と相談の上でという事で如何ですかな」

関係各所への後始末の段取りに話しを移し、さらにその後の対応を議題として提供した。
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