458 / 1,160
本編
48話 モニケンダムお土産探訪 その2
しおりを挟む
「そうだ、ルルっちはどうする?」
ジャネットが振り向き鏡の前で髪留めをとっかえひっかえして遊んでいるルルに問いかけた、早起きしたルルは朝食はとっくに済ませ、エレインとテラ、オリビアもさっさと済ませて事務所に向かった、休日の朝を優雅に楽しんでいるのはジャネットとケイスである、すっかりこのまったりとした朝食とお茶の時間に馴染んだようで、朝食を終えた二人はソフィアにピーピー言われながらトレーを片付け、さて今日は何をするかと茶を片手に額を突き合わせる、ミナとレインは読書の時間である、こちらもまったりと朝食後の時間を過ごしていた、
「どうするって何がですか?」
ルルは髪留めを数本挿して御満悦で振り返る、
「わ、可愛いね」
ケイスがニコニコとルルを褒め、ルルはエヘヘとだらしない笑みを浮かべる、
「ホントだ、なんだルルっちよく見れば美形だな・・・」
ジーっとルルを見つめるジャネットに、
「よく見ればは失礼ですよー」
ケイスが微笑みながら窘める、
「えへへー、そんなー、私なんか全然ですよー」
だらしない笑顔はそのままに鏡に向き直るルルである、
「あ、で、なんですか?」
ルルは鏡越しにジャネットに問い返した、
「うん、ほら、街中の案内とかもしておいた方がいいのかなーって、話してたんだよ、で、今日やるんならルルっちの予定もあるべなーって思ってさー」
「それ嬉しいです、予定って言われてもまったく考えてないですよー、こんなに早く着くなんて思ってなかったですし、学校が1日からって言われて、それまでどうすればいいんだろうって感じです」
「あー、そうなるよねー、私の時はどうだったっかなー、2・3日はブラブラしてたと思うけど・・・」
ケイスがうーんと天井を仰ぐ、
「そうだよねー、そう言えば・・・こんなに仲良くなかったよね、寮の中って」
ジャネットもうーんと悩みながら頬を掻いた、
「そうだよねー、みんなで食事をする事も無かったしなー」
「うんうん、他の人と話すことも無かったしね・・・」
ジャネットとケイスはしみじみと呟いた、
「えっ、そうなんですか?昨日の感じだと皆さん仲良さそうですけど・・・」
ルルは不安そうに振り向いた、
「うん、今は仲良いよ」
「そうですね、ソフィアさんのお陰だと思ってますけど・・・」
「そうだねー、前はゴミ屋敷だったからねー」
「ゴミ屋敷ですか?」
「うん、この部屋も何だか分んない物でいっぱいだったし、2階も3階もだけど」
「そうですね、玄関も匂いが酷かったですよね・・・」
「そうそう、で、ソフィアさんが来て、なんじゃこりゃーって大掃除して」
「うん、あっという間に綺麗になってね、有難かったなー」
「あー、で、ケイスが姿を現して・・・」
「それは言わないで下さい」
ケイスはジロリとジャネットを睨む、
「ありゃ、言っちゃダメ?」
「駄目じゃないけど・・・言いふらして欲しくないです・・・」
「それもそっか・・・ふふ、まぁ、良かったじゃない、あのままだと、ホントにどうにかなってたよ」
「そう・・・ですね、そうなんですよね・・・感謝してもしきれないな・・・」
ケイスは懐かしそうにそして悲しそうに顔を顰めて俯いた、
「何かあったんです?」
ルルが興味を引かれたのか席を立ってジャネットの隣りに腰を下す、
「そうだねー、そのうち、ケイスから話すんじゃない?」
ジャネットは適当に誤魔化し、
「どうでしょう、少なくとも自慢できる事ではないですから・・・」
ケイスは口籠る、ルルはそんなに深刻な事なのかなと二人を見比べながらそれ以上追及する事は無かった、
「あ、でね、アニタ達の寮もさ、綺麗になったらみんな仲良くなったって言ってたよ」
「へー、そうなんですか?」
話題が変わりケイスはパッと顔を上げ、ルルはアニタとはと首を傾げるも黙ってその先を待つ、
「うん、あっちは2人部屋が基本じゃん、だから、アニタもパウラとしか話しもしなかったらしいんだけど、大掃除して寮母さんが増えて、そしたら食事もみんなで一緒に摂れるようになって、で、話しするようになったってさ」
「それは良かったねー、へー、そうなんだー」
「他の寮って2人部屋なんですか?」
「そうよー、1人部屋って贅沢なんだからねー」
「そうそう、男共なんか4人部屋もあるらしいよ」
「うわっ、それ汚そう」
「だよねー」
「絶対汚いですよ、その上臭そう」
「あはは、ルルっち言いすぎー」
「えー、うちの男共の部屋なんて酷いですよ、あれを思い出すと・・・」
「それはあるね」
「そうなの?うちは女ばっかだからなー」
「酷いですよ、男だけの部屋は」
「うんうん、確かにね、うちも母ちゃんがいくら言っても掃除しなくてねー」
「そうですよね」
「うん、寝藁とか真っ黒なのよ」
「そうそう、で、寝台の下から変な色の下着とか出てきて」
「あー、それわかるー」
「・・・汚いなー・・・」
ジャネットとルルは共通の話題で笑い合い、ケイスはそういうものなのかと想像して身震いする、
「さてと・・・あら、朝からお茶会?」
そこへ片付けを終えたソフィアが顔を出す、
「えへへ、今後の作戦会議です」
ジャネットがニヘラと答える、
「作戦会議?」
「はい、ルルさんに街を案内したりした方がいいのかなーって、話してました」
ソフィアの不思議そうな顔にケイスが答える、
「へー、それいいわねー、私も案内して欲しいなー」
「えー、そうなんですかー」
「そうよー、私もほらこっちに来て3か月か・・・うん、街の中って詳しくないのよねー」
「なら、みんなで行きましょうか、どうしようかなマフダっちに頼んでさ、モニケンダムの名所巡りとかどう?」
「それいいですね、現地の人巻き込めば楽ですよね」
「うん、私らも知らない所多いしね」
「あら、楽しそうね」
ソフィアもそれは良いかもと腰を下す、
「ですよねー、マフダっちに聞いてみようかな?」
「いいんじゃないですか、ブノワトさんでもいいですしね」
「あ、そっか、ねーさんでもいいのか・・・うん、そうと決まれば・・・」
ジャネットがムンと立ち上がるが、
「あー、ジャネットさん、もしちゃんとやるのであれば、全員揃ってからの方が良いかもねー」
ソフィアがやんわりと押し留めた、
「全員ですか?」
3人の目がソフィアに集まる、
「そうよ、予定だと後4人来るからね」
「へー、そうなんだー」
「一気に5人も増えるの?」
「うわ、姦しくなるなー」
「今でも十分姦しいわよ、だから、5人揃った後の方が良いんじゃない?」
「なるほど、分かりました」
ジャネットは改めてムンと胸を張ると、
「では、どうしようかな、うん、新入生歓迎モニケンダム観光会ってのはどうでしょう?」
「うわ、本格的」
ソフィアは微笑み、
「仰々しいなー、でも良いかもねー」
「・・・楽しそうですね」
ケイスとルルも嬉しそうにジャネットを見上げる、
「じゃ、早速、マフダっち来てるかな?」
「マフダさんも早いですから来てるんじゃないですか?」
「そうなると、あっ、そうだ、ルルっち暇ならさ、事務所に遊びに来れば?」
「事務所?ですか?」
「うん、俺達の商会の事務所」
「俺達の商会?」
「そうなんですよ、エレインさんが会長で、私達はなんと創業者扱いなんです」
「えっ、どういう事ですか?」
「ふふん、話せば長いんだけどね、ま、そういう訳」
「どういう訳よ」
「ま、いいじゃんいいじゃん」
「えっと・・・大丈夫ですか?」
ルルは若干不安そうにソフィアを伺う、
「大丈夫よー、身の危険は少ないかしらねー、取って食われる事はない筈よ、あ、ジャネットさんに扱き使われるかも、そうなったらちゃんとお給金貰うのよー」
「えー、駄目ー?」
「駄目って、そりゃそうでしょー、創業者の偉い人なんだから、ルルさんはまだお客様なんだからね、大事に扱いなさい」
「えー、後輩なら手下みたいなもんじゃんさー」
「手下ってあんたねー、あー、でもあれか学科が一緒だとそんな感じになるのかー」
「そうですよー、後輩は先輩の言う事に絶対服従っすよ」
「・・・そうなんですか?」
ルルはいよいよ不安そうな顔となる、
「そういうものよね・・・あっ、でもあれだ、ジャネットさんに虐められたら私に言いなさい、ちゃんと締めてあげるから」
ソフィアはニヤリとルルを見つめ、
「締めるって具体的には?」
ケイスがニヤニヤと問う、
「そうね、夕飯が一品少なくなるとかー」
「えっ」
「毎日洗濯させるとかー」
「えっ」
「あっ、ユーリにチクルとか?」
「げぇっ」
ジャネットはソフィアを見下ろして固まり、ソフィアはうふふと見上げつつ、
「ま、大丈夫よジャネットさんは姉御肌のいい女だからね、先輩として頼ってあげなさい、逆に扱き使ってあげるくらいで丁度いいわよー」
ニコリと微笑んだ、
「え、えっと、うん、ルルっち、お手柔らかにね・・・」
急に萎れたジャネットに、ルルは忙しい人だなーと微笑み、
「ふふ、先輩を作るのは後輩の仕事だからね、良い先輩に鍛え上げるのよ」
ソフィアはさらにジャネットを追い込む事を口にする、そこへ、
「おあよー」
階段から寝ぼけた声が響いた、ユーリである、
「えっ、起きてなかったの?」
ソフィアは驚いて腰を上げ、
「んー、今起きたー」
ボリボリと腹を掻きながらボーっと近寄るユーリ、
「朝御飯はー?」
虚ろな瞳で綺麗に何も無い配膳台を見る、
「あっ・・・そっか、御免、ルルさんの分を作らなかったんだ・・・そっか、なんか変だなーって思ったのよー」
ソフィアは大声で喚きながら誤魔化すように笑いだす、
「ん?どういう事?」
「だからー、人数分作ったんだけどー、ルルさんが増えているのを忘れてたのー」
「それは・・・つまり・・・」
ユーリはうーんと唸りながら小首を傾げ、
「うん、ユーリの分無いわ、あはは、御免ね」
明るく笑って開き直るソフィアと、
「んー、じゃ・・・どうする?」
普段であればギャーギャーと喚き立てる所であろうが、まだ寝ぼけているのか困った顔で問いかけるユーリ、
「どうしようか?リンゴならあるかな?干し肉と卵はすぐ焼いてあげる」
「・・・んー・・・あーそういう事か・・・じゃ、それでいいわー」
「あはは、ごめんねユーリ、しっかり忘れてたわ」
ソフィアはバタバタと厨房へ戻り、
「ソフィアさんでも忘れる事あるんだねー」
「うん、完璧寮母と思ってた・・・」
「完璧寮母ってなんですか?」
ユーリの有様とソフィアの慌てぶりに3人は呆けた顔を並べていた。
ジャネットが振り向き鏡の前で髪留めをとっかえひっかえして遊んでいるルルに問いかけた、早起きしたルルは朝食はとっくに済ませ、エレインとテラ、オリビアもさっさと済ませて事務所に向かった、休日の朝を優雅に楽しんでいるのはジャネットとケイスである、すっかりこのまったりとした朝食とお茶の時間に馴染んだようで、朝食を終えた二人はソフィアにピーピー言われながらトレーを片付け、さて今日は何をするかと茶を片手に額を突き合わせる、ミナとレインは読書の時間である、こちらもまったりと朝食後の時間を過ごしていた、
「どうするって何がですか?」
ルルは髪留めを数本挿して御満悦で振り返る、
「わ、可愛いね」
ケイスがニコニコとルルを褒め、ルルはエヘヘとだらしない笑みを浮かべる、
「ホントだ、なんだルルっちよく見れば美形だな・・・」
ジーっとルルを見つめるジャネットに、
「よく見ればは失礼ですよー」
ケイスが微笑みながら窘める、
「えへへー、そんなー、私なんか全然ですよー」
だらしない笑顔はそのままに鏡に向き直るルルである、
「あ、で、なんですか?」
ルルは鏡越しにジャネットに問い返した、
「うん、ほら、街中の案内とかもしておいた方がいいのかなーって、話してたんだよ、で、今日やるんならルルっちの予定もあるべなーって思ってさー」
「それ嬉しいです、予定って言われてもまったく考えてないですよー、こんなに早く着くなんて思ってなかったですし、学校が1日からって言われて、それまでどうすればいいんだろうって感じです」
「あー、そうなるよねー、私の時はどうだったっかなー、2・3日はブラブラしてたと思うけど・・・」
ケイスがうーんと天井を仰ぐ、
「そうだよねー、そう言えば・・・こんなに仲良くなかったよね、寮の中って」
ジャネットもうーんと悩みながら頬を掻いた、
「そうだよねー、みんなで食事をする事も無かったしなー」
「うんうん、他の人と話すことも無かったしね・・・」
ジャネットとケイスはしみじみと呟いた、
「えっ、そうなんですか?昨日の感じだと皆さん仲良さそうですけど・・・」
ルルは不安そうに振り向いた、
「うん、今は仲良いよ」
「そうですね、ソフィアさんのお陰だと思ってますけど・・・」
「そうだねー、前はゴミ屋敷だったからねー」
「ゴミ屋敷ですか?」
「うん、この部屋も何だか分んない物でいっぱいだったし、2階も3階もだけど」
「そうですね、玄関も匂いが酷かったですよね・・・」
「そうそう、で、ソフィアさんが来て、なんじゃこりゃーって大掃除して」
「うん、あっという間に綺麗になってね、有難かったなー」
「あー、で、ケイスが姿を現して・・・」
「それは言わないで下さい」
ケイスはジロリとジャネットを睨む、
「ありゃ、言っちゃダメ?」
「駄目じゃないけど・・・言いふらして欲しくないです・・・」
「それもそっか・・・ふふ、まぁ、良かったじゃない、あのままだと、ホントにどうにかなってたよ」
「そう・・・ですね、そうなんですよね・・・感謝してもしきれないな・・・」
ケイスは懐かしそうにそして悲しそうに顔を顰めて俯いた、
「何かあったんです?」
ルルが興味を引かれたのか席を立ってジャネットの隣りに腰を下す、
「そうだねー、そのうち、ケイスから話すんじゃない?」
ジャネットは適当に誤魔化し、
「どうでしょう、少なくとも自慢できる事ではないですから・・・」
ケイスは口籠る、ルルはそんなに深刻な事なのかなと二人を見比べながらそれ以上追及する事は無かった、
「あ、でね、アニタ達の寮もさ、綺麗になったらみんな仲良くなったって言ってたよ」
「へー、そうなんですか?」
話題が変わりケイスはパッと顔を上げ、ルルはアニタとはと首を傾げるも黙ってその先を待つ、
「うん、あっちは2人部屋が基本じゃん、だから、アニタもパウラとしか話しもしなかったらしいんだけど、大掃除して寮母さんが増えて、そしたら食事もみんなで一緒に摂れるようになって、で、話しするようになったってさ」
「それは良かったねー、へー、そうなんだー」
「他の寮って2人部屋なんですか?」
「そうよー、1人部屋って贅沢なんだからねー」
「そうそう、男共なんか4人部屋もあるらしいよ」
「うわっ、それ汚そう」
「だよねー」
「絶対汚いですよ、その上臭そう」
「あはは、ルルっち言いすぎー」
「えー、うちの男共の部屋なんて酷いですよ、あれを思い出すと・・・」
「それはあるね」
「そうなの?うちは女ばっかだからなー」
「酷いですよ、男だけの部屋は」
「うんうん、確かにね、うちも母ちゃんがいくら言っても掃除しなくてねー」
「そうですよね」
「うん、寝藁とか真っ黒なのよ」
「そうそう、で、寝台の下から変な色の下着とか出てきて」
「あー、それわかるー」
「・・・汚いなー・・・」
ジャネットとルルは共通の話題で笑い合い、ケイスはそういうものなのかと想像して身震いする、
「さてと・・・あら、朝からお茶会?」
そこへ片付けを終えたソフィアが顔を出す、
「えへへ、今後の作戦会議です」
ジャネットがニヘラと答える、
「作戦会議?」
「はい、ルルさんに街を案内したりした方がいいのかなーって、話してました」
ソフィアの不思議そうな顔にケイスが答える、
「へー、それいいわねー、私も案内して欲しいなー」
「えー、そうなんですかー」
「そうよー、私もほらこっちに来て3か月か・・・うん、街の中って詳しくないのよねー」
「なら、みんなで行きましょうか、どうしようかなマフダっちに頼んでさ、モニケンダムの名所巡りとかどう?」
「それいいですね、現地の人巻き込めば楽ですよね」
「うん、私らも知らない所多いしね」
「あら、楽しそうね」
ソフィアもそれは良いかもと腰を下す、
「ですよねー、マフダっちに聞いてみようかな?」
「いいんじゃないですか、ブノワトさんでもいいですしね」
「あ、そっか、ねーさんでもいいのか・・・うん、そうと決まれば・・・」
ジャネットがムンと立ち上がるが、
「あー、ジャネットさん、もしちゃんとやるのであれば、全員揃ってからの方が良いかもねー」
ソフィアがやんわりと押し留めた、
「全員ですか?」
3人の目がソフィアに集まる、
「そうよ、予定だと後4人来るからね」
「へー、そうなんだー」
「一気に5人も増えるの?」
「うわ、姦しくなるなー」
「今でも十分姦しいわよ、だから、5人揃った後の方が良いんじゃない?」
「なるほど、分かりました」
ジャネットは改めてムンと胸を張ると、
「では、どうしようかな、うん、新入生歓迎モニケンダム観光会ってのはどうでしょう?」
「うわ、本格的」
ソフィアは微笑み、
「仰々しいなー、でも良いかもねー」
「・・・楽しそうですね」
ケイスとルルも嬉しそうにジャネットを見上げる、
「じゃ、早速、マフダっち来てるかな?」
「マフダさんも早いですから来てるんじゃないですか?」
「そうなると、あっ、そうだ、ルルっち暇ならさ、事務所に遊びに来れば?」
「事務所?ですか?」
「うん、俺達の商会の事務所」
「俺達の商会?」
「そうなんですよ、エレインさんが会長で、私達はなんと創業者扱いなんです」
「えっ、どういう事ですか?」
「ふふん、話せば長いんだけどね、ま、そういう訳」
「どういう訳よ」
「ま、いいじゃんいいじゃん」
「えっと・・・大丈夫ですか?」
ルルは若干不安そうにソフィアを伺う、
「大丈夫よー、身の危険は少ないかしらねー、取って食われる事はない筈よ、あ、ジャネットさんに扱き使われるかも、そうなったらちゃんとお給金貰うのよー」
「えー、駄目ー?」
「駄目って、そりゃそうでしょー、創業者の偉い人なんだから、ルルさんはまだお客様なんだからね、大事に扱いなさい」
「えー、後輩なら手下みたいなもんじゃんさー」
「手下ってあんたねー、あー、でもあれか学科が一緒だとそんな感じになるのかー」
「そうですよー、後輩は先輩の言う事に絶対服従っすよ」
「・・・そうなんですか?」
ルルはいよいよ不安そうな顔となる、
「そういうものよね・・・あっ、でもあれだ、ジャネットさんに虐められたら私に言いなさい、ちゃんと締めてあげるから」
ソフィアはニヤリとルルを見つめ、
「締めるって具体的には?」
ケイスがニヤニヤと問う、
「そうね、夕飯が一品少なくなるとかー」
「えっ」
「毎日洗濯させるとかー」
「えっ」
「あっ、ユーリにチクルとか?」
「げぇっ」
ジャネットはソフィアを見下ろして固まり、ソフィアはうふふと見上げつつ、
「ま、大丈夫よジャネットさんは姉御肌のいい女だからね、先輩として頼ってあげなさい、逆に扱き使ってあげるくらいで丁度いいわよー」
ニコリと微笑んだ、
「え、えっと、うん、ルルっち、お手柔らかにね・・・」
急に萎れたジャネットに、ルルは忙しい人だなーと微笑み、
「ふふ、先輩を作るのは後輩の仕事だからね、良い先輩に鍛え上げるのよ」
ソフィアはさらにジャネットを追い込む事を口にする、そこへ、
「おあよー」
階段から寝ぼけた声が響いた、ユーリである、
「えっ、起きてなかったの?」
ソフィアは驚いて腰を上げ、
「んー、今起きたー」
ボリボリと腹を掻きながらボーっと近寄るユーリ、
「朝御飯はー?」
虚ろな瞳で綺麗に何も無い配膳台を見る、
「あっ・・・そっか、御免、ルルさんの分を作らなかったんだ・・・そっか、なんか変だなーって思ったのよー」
ソフィアは大声で喚きながら誤魔化すように笑いだす、
「ん?どういう事?」
「だからー、人数分作ったんだけどー、ルルさんが増えているのを忘れてたのー」
「それは・・・つまり・・・」
ユーリはうーんと唸りながら小首を傾げ、
「うん、ユーリの分無いわ、あはは、御免ね」
明るく笑って開き直るソフィアと、
「んー、じゃ・・・どうする?」
普段であればギャーギャーと喚き立てる所であろうが、まだ寝ぼけているのか困った顔で問いかけるユーリ、
「どうしようか?リンゴならあるかな?干し肉と卵はすぐ焼いてあげる」
「・・・んー・・・あーそういう事か・・・じゃ、それでいいわー」
「あはは、ごめんねユーリ、しっかり忘れてたわ」
ソフィアはバタバタと厨房へ戻り、
「ソフィアさんでも忘れる事あるんだねー」
「うん、完璧寮母と思ってた・・・」
「完璧寮母ってなんですか?」
ユーリの有様とソフィアの慌てぶりに3人は呆けた顔を並べていた。
1
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
魔法少女になれたなら【完結済み】
M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】
【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】
【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】
とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。
そこから少女の生活は一変する。
なんとその本は魔法のステッキで?
魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。
異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。
これは人間の願いの物語。
愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに――
謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。
・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。
爆誕!異世界の歌姫~チートもヒロイン補正もないので、仕方がないから歌います~
ロゼーナ
ファンタジー
気づいたら異世界の森の中に転移していたアラサー会社員チヨリ。何かチートがあるかと期待したものの、装備はパジャマ、お金なし、自動翻訳機能なしでいきなり詰む。冷静かつ図太い性格(本人談)を存分に生かし、開き直って今日も楽しく歌をうたう。
*ほのぼの異世界生活、後にちょっと冒険。チートあり。血生臭い争いは起こりませんが、ケガや出血の描写は多少出てきます。ちびっ子や恋愛要素もあり。
*9/27追記:全編完結いたしました。応援ありがとうございました!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。


こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる