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本編
44話 殿下が来た その6
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「あー、何の騒ぎ?」
ユーリが食堂へ顔を出すとそこでは昨日に引き続き今度は絵具と紙を使ってなにやら熱心に作業している様子であった、パトリシアの指揮の下、エレインとアフラが絵筆を動かし、巻き込まれたのであろうサビナとカトカもそれを手伝っている、なんと珍しい事にソフィアまでもがパタパタと歩き回っていた、ユーリは取り敢えずカトカに近付いて問いかける、すると、
「リシア様の絵画教室?図面教室でしょうか、とても興味深いです、面白いですよ」
カトカはニヤリと微笑み、
「リシア様、助っ人です」
さらに邪悪な笑みを浮かべてパトリシアを見上げる、
「ほっほっほっ、ユーリ先生ですわね、素晴らしい助っ人ですわ」
パトリシアがフンスと胸を張り、ユーリをしっかりとその視線に捉えた、
「これはリシア様、御機嫌麗しゅう・・・」
傍若無人なユーリであるがクロノス以外の王族には謙虚である、弱弱しく挨拶すると、
「御機嫌よう、先生、さっ、先生も一つ知恵を貸していただけないかしら?」
パトリシアはニヤニヤとユーリを見下ろす、
「えっと・・・どういう事なんでしょう?」
「こちらをご覧下さる?壁に描く模様を考えてましたの」
数枚の上質紙をユーリの前に並べるパトリシアである、そこには単純な格子模様や、円を組み合わせたもの、波のような文様や、線を悪戯に引いただけのようなものなど様々である、唯一共通しているのはその色である、全てが薄い赤色であった、
「ほう・・・これは・・・なるほど、興味深い・・・ふんふん」
ユーリは一目でそれらに魅了されたようである、
「所長好きそうですよねこういうの」
その様子にサビナが微笑み、
「ふふ、如何です先生?」
パトリシアもどうだと言わんばかりである、
「はい、これは良いですね、うん、なるほど、これを壁の模様ですか・・・面白い・・・」
ユーリがその内の一枚を手にして壁に向かって掲げ、
「そっか・・・壁に刻んでしまうのも面白いのか・・・できるかな?素材が問題か・・・いや、それは・・・」
ブツブツと別の事を考え始めた様子である、
「転送陣は隠す必要があったけど・・・そうなると、あれは隠すよりも表に出す方がいいのよね・・・そっか・・・そうなると、室内よりも外かな・・・規模が大きくなる・・・それは計算によるわよね・・・式を組み替えて・・・前に使ったあれを活かせば・・・」
呟きながらフラフラと黒板へ向かうと、何やら式を書き始めた、左手にもつ紙をチラリチラリと見つつ、右手は忙しく動いている、
「えっと・・・どうしたんですの・・・」
取り残されてしまったパトシリアが不安そうにカトカへ顔を近づける、
「あー、久しぶりに始まったみたいですね・・・」
「そうね、ほっときましょう」
カトカとサビナは慣れたもののようである、しかし、エレインとアフラも顔を上げて不思議そうな顔となり、
「えっと・・・」
パトリシアは困惑しきって黒板に向かうユーリの背を見つめる、
「ほっといていいわよー、ユーリはああいう人なのよ」
そこでやっとソフィアが口を出した、
「ああいう人?」
「そうなの、魔法陣とか式とかそういう事考え出すとね、自分の世界に入っちゃうのよ、あたしらが何を言おうが無視されるのがオチだからほうっておいて、それよりこれ良い感じじゃない?」
エレインの描いた紙を摘まみ上げるソフィアである、パトリシアはソフィアがそう言うのであればと視線を戻し、
「あら、可愛いですわね、なるほど、菱形ですか・・・」
「そうですね、四角の形を変えると面白いかなと思いまして」
「いいですよね、これ、単純だけどそれだけじゃない感じです」
「こう、色を塗る箇所を増やしたいですわね・・・交互にこう塗れないかしら」
「やってみますね」
エレインが絵筆を構え直すと、
「もどったー」
ミナの声が玄関に響いた。
「ユラ様、ヘター」
「えっ、何という事を言うのかしらこの娘は」
「えー、ワンコに見えないよー」
「だって、馬ですもの」
「えー、お馬さん?」
「そうですよ」
「そうなの?でも・・・えー、お馬さん?」
「見えないかしら・・・」
深刻そうに悩みだすウルジュラと困惑しているミナである、買い物から帰った二人は当然のように作業に参加した、しかし、二人共にその主旨を完全に無視して自由に絵画を楽しんでいる様子である、尚、寮へと帰ってきたのはミナとレイン、ウルジュラとその従者のみである、王妃達は屋敷へ戻り、従者の大半も大荷物を抱えてそちらへ追随したとの事である、その隣りでは、
「これは凄いですね、奥行が感じられます、吸い込まれるような感じですね・・・」
「本当だ、えっ、どう書けばいいんですの?」
パトリシアとアフラがレインの描いた文様に釘付けとなっていた、エレインも言葉を無くして見入っている、
「そうじゃのう、まずは中心線を引くのじゃ、そこから斜めに線を引き下ろす、で、横線は平行で良いぞ、それを基準にして下を広く、中心線に近い部分を狭く線を引く、で、斜線を等間隔で描くそれだけじゃな」
そう高説を垂れるレインであった、なんとも得意気である、
「まぁ、なるほど・・・確かにそれだけなんですね・・・」
「はい、言われてみれば・・・これは素晴らしいですよ・・・」
「ふふん、それでの、この中心線にの」
レインは絵筆ではなく石墨を手にすると、さっと書き加えた、
「木ですか・・・」
「まぁ、なんと言うか・・・これだけで絵になりますわね・・・」
「はい、とても詩的に感じられます・・・何でしょう、楽しいような懐かしいような、何とも言えない感覚ですね」
「じゃろう、コツとしてはあれじゃな、あまり大きく描かない事じゃな、それとゴチャゴチャ書き込むのも興が削がれるというものじゃ、そうじゃのう、この木に対して、こんな感じで人を書く程度で良いと思うぞ」
レインが木の側に人形の影を描写し、その足元に猫であろうか小動物を書き入れる、
「可愛いですね・・・」
「素晴らしい・・・」
「エレインさん、これにしましょう、色々と書きましたが、これが一番良いですわ」
「はい、リシア様・・・レインちゃん、この絵をお店の壁に描きたいのですが、良いでしょうか」
エレインが興奮しつつレインに許可を求める、
「構わんぞ、ふふん、なんじゃ、皆、見る目があるのう」
さらに得意そうににやつくレインである、さらに黒板の前では、
「ここの文様は省略できるかと思いますが」
「それは、必要でしょ、こっちからの流れを増幅したいのよ」
「ですと、別系統でもう一本流れを入れないとですよ」
「・・・そうね、そうなるとこっちから引っ張ってきて・・・」
研究所組の3人はユーリが勢いのままに書いた魔法陣の前で喧々諤々とやり始めている、
「組み直した方がいいですね、私ならこっちから伸ばします」
「でも、あれですよね、全体に光を受けるのであれば、単独で増幅可能なのではないですか?」
「あー、どうだろう・・・そっか、そこだけ積層構造にしてみようかしら・・・裏面も使えるかなって思っているんだけど」
「裏面ですか・・・いいですね、それ、そうしますと、この反応部分を大きくできますよ」
「そうね、そっか、じゃ、あれか、ここからここまでは裏面で、こっちからこっちを表面」
「繋ぎ部分はどうします?」
「えっと、例の蜘蛛糸でいいでしょ」
「であれば、冷凍箱みたいに操作部分を別にも出来ますが」
「それもあったわね・・・そっか、操作部分か・・・」
「大きすぎるとそれが問題になりますよね」
「そうね、これにしてもどこまでの大きさですか?」
「2階建ての建物の壁・・・のつもり」
「デカイですね」
「うん、大きすぎません?」
「だって、大きければ大きい程光を受けれるじゃない」
「雨とか風とか問題ですよ」
「それは・・・そうね、そうなるとせめてあれか、扉を潜れるくらいか・・・」
「折りたたみにしてみたらどうです?」
「連結部分の接続が不安でしょ、それ」
「あ、そっか・・・」
「そうね、うん、取り敢えずはこれでいいわ、カトカは一旦これ記録しておいて、サビナは材料の計算、私は組み直してみるわ」
どうやらユーリが強引に切り上げたようである、机上での設計だけでは煮詰まるだけである事を彼女は嫌と言うほど経験している、その為見切りをつけるのが異様に早いのであった、最終的になんらかの結論に至ったようであったが、何が出来上がるにしろ組み直すとユーリが口にしている以上、その完成はまだ先と思っていいであろう、カトカとサビナはユーリの号令の下3階へ走り、ユーリ自身は腕を組んで黒板を睨む、
「そうなると・・・ガラスのあれを使ってみたいよね・・・そうなるかな・・・それよりも、魔法石足りるかしら・・・取ってくるか・・・」
さらにブツブツと呟き続けるユーリである、
「うわ、またなんか始めたのか?」
そこへクロノスとイフナースが厨房から顔を出した、
「あら、お帰り、問題無い?」
ソフィアが二人をニコヤカに出迎える、
「問題は無いが・・・あ、手拭いをくれるか汗を拭きたい、井戸使うぞ」
「いいわよー、お好きにどうぞ、それともお湯沸かす?」
「そこまではいいよ」
「でも、殿下は身体洗った方がいいんじゃない、ついでに髪も洗いなさいな」
「あー、あれか・・・イフナース、どうする」
クロノスが振り向いて問う、
「どうとは?」
「髪・・・洗った方がいいな、折角の美形が台無しだ・・・うん、ソフィア頼む」
「はいはい、じゃ、あれだ、水汲みお願いね」
「あん、そうなるか・・・はいはい・・・って、あれだ、お前さんの魔法石の水は使えないのか?」
「・・・そうね、あれを使えば早いわね」
「だろう、お前の発案だろうが、忘れるなよ」
「そうね、ほら、基本的には秘密なのよね、若いのも多いから」
ソフィアは誤魔化し笑いを浮かべつつ内庭へ向かい、
「石鹸あるかな、お前、身体も洗え」
「そうですね、湯浴みなど何年ぶりでしょう・・・」
「そうだろうな、ま、無理するなよ」
「ふっ、お優しいお義兄様ですな」
「言ってろ」
二人も食堂の喧噪を背にして内庭へ向かうのだった。
ユーリが食堂へ顔を出すとそこでは昨日に引き続き今度は絵具と紙を使ってなにやら熱心に作業している様子であった、パトリシアの指揮の下、エレインとアフラが絵筆を動かし、巻き込まれたのであろうサビナとカトカもそれを手伝っている、なんと珍しい事にソフィアまでもがパタパタと歩き回っていた、ユーリは取り敢えずカトカに近付いて問いかける、すると、
「リシア様の絵画教室?図面教室でしょうか、とても興味深いです、面白いですよ」
カトカはニヤリと微笑み、
「リシア様、助っ人です」
さらに邪悪な笑みを浮かべてパトリシアを見上げる、
「ほっほっほっ、ユーリ先生ですわね、素晴らしい助っ人ですわ」
パトリシアがフンスと胸を張り、ユーリをしっかりとその視線に捉えた、
「これはリシア様、御機嫌麗しゅう・・・」
傍若無人なユーリであるがクロノス以外の王族には謙虚である、弱弱しく挨拶すると、
「御機嫌よう、先生、さっ、先生も一つ知恵を貸していただけないかしら?」
パトリシアはニヤニヤとユーリを見下ろす、
「えっと・・・どういう事なんでしょう?」
「こちらをご覧下さる?壁に描く模様を考えてましたの」
数枚の上質紙をユーリの前に並べるパトリシアである、そこには単純な格子模様や、円を組み合わせたもの、波のような文様や、線を悪戯に引いただけのようなものなど様々である、唯一共通しているのはその色である、全てが薄い赤色であった、
「ほう・・・これは・・・なるほど、興味深い・・・ふんふん」
ユーリは一目でそれらに魅了されたようである、
「所長好きそうですよねこういうの」
その様子にサビナが微笑み、
「ふふ、如何です先生?」
パトリシアもどうだと言わんばかりである、
「はい、これは良いですね、うん、なるほど、これを壁の模様ですか・・・面白い・・・」
ユーリがその内の一枚を手にして壁に向かって掲げ、
「そっか・・・壁に刻んでしまうのも面白いのか・・・できるかな?素材が問題か・・・いや、それは・・・」
ブツブツと別の事を考え始めた様子である、
「転送陣は隠す必要があったけど・・・そうなると、あれは隠すよりも表に出す方がいいのよね・・・そっか・・・そうなると、室内よりも外かな・・・規模が大きくなる・・・それは計算によるわよね・・・式を組み替えて・・・前に使ったあれを活かせば・・・」
呟きながらフラフラと黒板へ向かうと、何やら式を書き始めた、左手にもつ紙をチラリチラリと見つつ、右手は忙しく動いている、
「えっと・・・どうしたんですの・・・」
取り残されてしまったパトシリアが不安そうにカトカへ顔を近づける、
「あー、久しぶりに始まったみたいですね・・・」
「そうね、ほっときましょう」
カトカとサビナは慣れたもののようである、しかし、エレインとアフラも顔を上げて不思議そうな顔となり、
「えっと・・・」
パトリシアは困惑しきって黒板に向かうユーリの背を見つめる、
「ほっといていいわよー、ユーリはああいう人なのよ」
そこでやっとソフィアが口を出した、
「ああいう人?」
「そうなの、魔法陣とか式とかそういう事考え出すとね、自分の世界に入っちゃうのよ、あたしらが何を言おうが無視されるのがオチだからほうっておいて、それよりこれ良い感じじゃない?」
エレインの描いた紙を摘まみ上げるソフィアである、パトリシアはソフィアがそう言うのであればと視線を戻し、
「あら、可愛いですわね、なるほど、菱形ですか・・・」
「そうですね、四角の形を変えると面白いかなと思いまして」
「いいですよね、これ、単純だけどそれだけじゃない感じです」
「こう、色を塗る箇所を増やしたいですわね・・・交互にこう塗れないかしら」
「やってみますね」
エレインが絵筆を構え直すと、
「もどったー」
ミナの声が玄関に響いた。
「ユラ様、ヘター」
「えっ、何という事を言うのかしらこの娘は」
「えー、ワンコに見えないよー」
「だって、馬ですもの」
「えー、お馬さん?」
「そうですよ」
「そうなの?でも・・・えー、お馬さん?」
「見えないかしら・・・」
深刻そうに悩みだすウルジュラと困惑しているミナである、買い物から帰った二人は当然のように作業に参加した、しかし、二人共にその主旨を完全に無視して自由に絵画を楽しんでいる様子である、尚、寮へと帰ってきたのはミナとレイン、ウルジュラとその従者のみである、王妃達は屋敷へ戻り、従者の大半も大荷物を抱えてそちらへ追随したとの事である、その隣りでは、
「これは凄いですね、奥行が感じられます、吸い込まれるような感じですね・・・」
「本当だ、えっ、どう書けばいいんですの?」
パトリシアとアフラがレインの描いた文様に釘付けとなっていた、エレインも言葉を無くして見入っている、
「そうじゃのう、まずは中心線を引くのじゃ、そこから斜めに線を引き下ろす、で、横線は平行で良いぞ、それを基準にして下を広く、中心線に近い部分を狭く線を引く、で、斜線を等間隔で描くそれだけじゃな」
そう高説を垂れるレインであった、なんとも得意気である、
「まぁ、なるほど・・・確かにそれだけなんですね・・・」
「はい、言われてみれば・・・これは素晴らしいですよ・・・」
「ふふん、それでの、この中心線にの」
レインは絵筆ではなく石墨を手にすると、さっと書き加えた、
「木ですか・・・」
「まぁ、なんと言うか・・・これだけで絵になりますわね・・・」
「はい、とても詩的に感じられます・・・何でしょう、楽しいような懐かしいような、何とも言えない感覚ですね」
「じゃろう、コツとしてはあれじゃな、あまり大きく描かない事じゃな、それとゴチャゴチャ書き込むのも興が削がれるというものじゃ、そうじゃのう、この木に対して、こんな感じで人を書く程度で良いと思うぞ」
レインが木の側に人形の影を描写し、その足元に猫であろうか小動物を書き入れる、
「可愛いですね・・・」
「素晴らしい・・・」
「エレインさん、これにしましょう、色々と書きましたが、これが一番良いですわ」
「はい、リシア様・・・レインちゃん、この絵をお店の壁に描きたいのですが、良いでしょうか」
エレインが興奮しつつレインに許可を求める、
「構わんぞ、ふふん、なんじゃ、皆、見る目があるのう」
さらに得意そうににやつくレインである、さらに黒板の前では、
「ここの文様は省略できるかと思いますが」
「それは、必要でしょ、こっちからの流れを増幅したいのよ」
「ですと、別系統でもう一本流れを入れないとですよ」
「・・・そうね、そうなるとこっちから引っ張ってきて・・・」
研究所組の3人はユーリが勢いのままに書いた魔法陣の前で喧々諤々とやり始めている、
「組み直した方がいいですね、私ならこっちから伸ばします」
「でも、あれですよね、全体に光を受けるのであれば、単独で増幅可能なのではないですか?」
「あー、どうだろう・・・そっか、そこだけ積層構造にしてみようかしら・・・裏面も使えるかなって思っているんだけど」
「裏面ですか・・・いいですね、それ、そうしますと、この反応部分を大きくできますよ」
「そうね、そっか、じゃ、あれか、ここからここまでは裏面で、こっちからこっちを表面」
「繋ぎ部分はどうします?」
「えっと、例の蜘蛛糸でいいでしょ」
「であれば、冷凍箱みたいに操作部分を別にも出来ますが」
「それもあったわね・・・そっか、操作部分か・・・」
「大きすぎるとそれが問題になりますよね」
「そうね、これにしてもどこまでの大きさですか?」
「2階建ての建物の壁・・・のつもり」
「デカイですね」
「うん、大きすぎません?」
「だって、大きければ大きい程光を受けれるじゃない」
「雨とか風とか問題ですよ」
「それは・・・そうね、そうなるとせめてあれか、扉を潜れるくらいか・・・」
「折りたたみにしてみたらどうです?」
「連結部分の接続が不安でしょ、それ」
「あ、そっか・・・」
「そうね、うん、取り敢えずはこれでいいわ、カトカは一旦これ記録しておいて、サビナは材料の計算、私は組み直してみるわ」
どうやらユーリが強引に切り上げたようである、机上での設計だけでは煮詰まるだけである事を彼女は嫌と言うほど経験している、その為見切りをつけるのが異様に早いのであった、最終的になんらかの結論に至ったようであったが、何が出来上がるにしろ組み直すとユーリが口にしている以上、その完成はまだ先と思っていいであろう、カトカとサビナはユーリの号令の下3階へ走り、ユーリ自身は腕を組んで黒板を睨む、
「そうなると・・・ガラスのあれを使ってみたいよね・・・そうなるかな・・・それよりも、魔法石足りるかしら・・・取ってくるか・・・」
さらにブツブツと呟き続けるユーリである、
「うわ、またなんか始めたのか?」
そこへクロノスとイフナースが厨房から顔を出した、
「あら、お帰り、問題無い?」
ソフィアが二人をニコヤカに出迎える、
「問題は無いが・・・あ、手拭いをくれるか汗を拭きたい、井戸使うぞ」
「いいわよー、お好きにどうぞ、それともお湯沸かす?」
「そこまではいいよ」
「でも、殿下は身体洗った方がいいんじゃない、ついでに髪も洗いなさいな」
「あー、あれか・・・イフナース、どうする」
クロノスが振り向いて問う、
「どうとは?」
「髪・・・洗った方がいいな、折角の美形が台無しだ・・・うん、ソフィア頼む」
「はいはい、じゃ、あれだ、水汲みお願いね」
「あん、そうなるか・・・はいはい・・・って、あれだ、お前さんの魔法石の水は使えないのか?」
「・・・そうね、あれを使えば早いわね」
「だろう、お前の発案だろうが、忘れるなよ」
「そうね、ほら、基本的には秘密なのよね、若いのも多いから」
ソフィアは誤魔化し笑いを浮かべつつ内庭へ向かい、
「石鹸あるかな、お前、身体も洗え」
「そうですね、湯浴みなど何年ぶりでしょう・・・」
「そうだろうな、ま、無理するなよ」
「ふっ、お優しいお義兄様ですな」
「言ってろ」
二人も食堂の喧噪を背にして内庭へ向かうのだった。
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