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本編
43話 職人達とネイルケア その11
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「それで、相談?」
「はい、従業員の募集ってまだ大丈夫でしょうか?」
「あー、学園でって事よね」
「はい、それも動いていかないとな、となりまして」
「そうよねー、聞く限り新しいお店の事でしょう?」
「はい、そうなります」
夕食後、エレインがユーリを捕まえ真面目な口調である、ソフィアとテラとオリビアは厨房で後片付け中であり、ミナとレインは宿舎へ引き上げた、
「そうなると急いだほうがいいわね、卒業式が30日で、今日が24日でしょ、卒業してから学園に来る人ってまずいないからね」
「あっ、そうでしたね、そっか、卒業か・・・忘れてた、学園に行ってないからな、まるで感覚がズレてますね」
エレインはハッと驚いた顔である、
「そうね、ま、明日が25で、大急ぎで掲示してもらって、25・26・27の午前まで募集、27の午後に選考して28日に通達、29日に面接・・・かな?上手くいけばそんな感じ?都合よすぎるかな?」
ユーリが指折り数えて段取りを確認する、
「そんな簡単にできますか?」
エレインが深刻そうに問うと、
「さぁ、知らないわー」
あっけらかんと無責任な返答である、これにはエレインは勿論、何とはなしに聞いていたジャネットやサビナも眉間に皺を寄せる、
「なによ、そんな顔されても私がどうこう出来る事は無いわよ、段取り悪かったのはエレインさんであって、私は与り知らぬ事だわ」
まったくの正論である、エレインはぐうの音も無く黙り込み、それもそうだとサビナとカトカは頷いた、
「ま、エレインさんが忙しかったのは分っていた事だけどね、でも、まだ日にちはあるんだし、学生上がりを雇いたいのであればギリギリの時期よね、うん、明日一番でダナに相談すればいいわよ、彼女も忙しいでしょうけど、エレインさんを邪険にする事は無いんじゃない?」
「そうですね、はい、ダナさんにはお世話になってますしね」
「うん、今日もね例のクリームの事で大騒ぎしてたわよ、そのうち六花商会で販売するはずよーって言ったら、絶対買うーって、良かったわね、あれ、好評みたいよ」
「あ、そうだ、報告してなかった、私もいろいろ聞かれたよー、検証に参加してない連中が参加したいって言ってきたしー、参加してる連中が触れ回ったんじゃないかな?うん、で、次いつやるのって、次も作るのって?そんな感じ?」
ジャネットが編み物の手を止めて顔を上げる、
「あ、私もです、参加した人からあれは凄いねって、それと先生達も医学科でも研究したいとかなんとか言ってましたよ」
「それならこっちにも来たかな?取り敢えず次回の研究会で検証の報告があるのでって逃げたから、後お願いね」
ユーリがあっさりとサビナに押し付ける、
「えっ、また、そんな簡単にー」
悲鳴を上げるサビナである、
「だって、そう言うしかないじゃない、私は助言は出来るけど、実際に動くのはあんたなんだし、これも大事な経験よ、医学科の先生達は優しい人多いから、手伝って貰えばー」
「そうは言っても、具体的には・・・」
サビナがうーんと首を捻る、
「あー、そこは・・・ほら・・・どうしよう?」
ユーリがどういうわけかジャネットに問いかける、
「えっ、私っすか、えっと、はい、わかりません」
元気よく答えるジャネットである、
「うん、じゃ、私も、わかりません」
ユーリはどうやらふざけている様子である、ジャネット同様に大声を上げる始末であった、
「ショチョー」
「今のはちょっと、流石にですよ・・・」
カトカとエレインが顔を顰める、
「ありゃ、駄目?・・・じゃ、あれだ、医学科の先生達には薬として使えるかどうかを検証して貰えばいいんじゃない?治療薬としての有効性とか、どのような怪我に有効とか・・・」
一転真面目に答えるユーリである、
「そうなりますよね・・・」
サビナはふむと腕を組む、
「で、こっちはあくまで美容目的として使い勝手とかお洒落?とかそういう方面で開発していってさ、で、お互いに情報を交換しあう感じで、あれよ、もう、やわらかクリームはあんたの専売特許みたいなもんなんだから、好きに動きなさいな、あ、でも専売はあれか、エレインさんのところか」
「でも・・・」
サビナが口を開いた瞬間にテラとオリビアが食堂へ戻ってきた、ソフィアも手を拭いながら入って来る、
「あ、ソフィアさん、やわらかクリームの件なんですけど」
サビナは丁度良いとソフィアを捕まえた、
「ん?何?」
ソフィアは軽い感じで返しつつ、ジャネットとケイスの側に座り編み物籠へ手を伸ばす、
「えっと、このまま、私が中心でいいんですか?」
「なにが?」
「やわらかクリームですよ、所長には好きにやれって言われるんですが、あれは元々ソフィアさんの発明じゃないですかー」
「違うわよー」
ユーリ以上に軽く適当なソフィアである、
「違うって・・・」
「だから、エルフの人達に教えてもらったの、私が思い付いたわけではないし、作り出したものでもないわよ」
「そりゃ、そうでしょうけど・・・」
「何度も言ってるでしょ、私が教えた事は好きにすればいいんだわ、私としては別に見返りを寄越せなんて言わないから、それにあのクリームに関しては、こっちの世の中でもどこかで似たような物があるかもしれないしね、私やあんたらが知らないだけでさ、そんなもんを私の手柄だーなんて言う気はないわねー」
「そう言われましても・・・」
サビナはいよいよ困惑する、こういうやり取りは何度目になるのであろうか、他人事であった時は傍観していたが、いざ当事者になると心底困ってしまうものである、
「それこそあれよ、ユーリみたいにさ、魔族の魔法陣を解読したり、陶器版に魔法陣を刻む技術を確立したっていうのであればよ、私も胸を張るんだけどね、私のはどこまでいっても聞きかじりだからね、良い感じの物をこっちで再現したいってだけだもの、やる気のある若者に囲まれておばさんとしては嬉しい限りよ」
「おばさんって・・」
「うん、ソフィアさんをおばさんと思った事ないですよー」
ジャネットとケイスがソフィアを見る、
「だって、ミナから見たら、ユーリはおばちゃんなのよ、なら私だっておばさんじゃない」
「それは相対的なものですよ、私なんておばあちゃんじゃないですか」
テラも流石に黙っていられない、
「そっか、ま、いいでしょ、自分で言う分には、そういうわけだから、私は私で楽しんでるだけだから、遠慮なくやりなさい・・・あ、でも、あれかお洒落にするのは私がやるんだっけか・・・難しいなぁ・・・爪の手入れで勘弁してくれない?」
ソフィアがエレインへと視線を向ける、
「勘弁なんて、それこそお釣りがきますよ、何言ってるんですか」
「そうね、大したもんだわ、なんか、磨いてもらった爪を撫でるのが癖になりそうよ」
ユーリがその言葉の通り、磨いた爪を撫ている、
「そうですね、なんか、落ち着いてみると指先が宝石になったみたい・・・うふ、嬉しいですよね」
カトカはうっとりと爪先を見つめた、
「それは良かったわ、あ、で、それはどうするの?話したんでしょ?」
ソフィアが再度エレインへ問う、ソフィアが夕食の支度に入った後で研究所組と六花商会、それに職人の二人によってどう扱っていくかを打ち合わせたようである、ソフィア自身は相も変わらず無関心であった、
「あ、はい、えっと、取り敢えずブノワトさんとコッキーさんがやすりを作る事になりました、あのごついやすりは扱いが難しいですからね、もっと、こう、片手で使えるような感じにしたいと言ってましたね」
「そうそう、で、できるだけ細かくするとも言ってました」
エレインとジャネットが答える、
「そっかー、そうよねー、あのかなやすりではちょっとね、使いづらいわよね」
ソフィアはガラス鏡の側に置かれたやすりの箱へ視線を飛ばす、それらは日中の活躍を終え魔法の光の下クログロとした輝きを照り返していた、
「はい、で、それが出来たら改めて練習しようかと思います、それと、顔料の件は・・・」
「あ、それ、明日買ってきますよ、何色がいいですか?」
サビナが手を上げた、
「あら、そっちで出してくれるの?」
「出すわよー、あれこそ美容ど真ん中でしょ、私の散髪よりも新しい事だわ、受けるわよー、若いのにも、金持ちにもー」
ユーリがニヤついている、
「そうなんだ、じゃ、遠慮なく、えっと、あれだ、色よりも原料ね、人の体に触れても害の無いもの?あるかしら?」
「あるとは思いますよ、でも、それって?」
「うん、塗るのよ、爪を」
あっさりとその使途を口にするソフィアである、
「えっ、それって・・・」
「はい、大丈夫なんですか?」
「・・・想像できないな・・・」
突然の事に皆驚いている、
「なによ、これも実験よ、旦那がね、カッコよくなるぞーって言ってたのよ、それを思い出してね、ま、これはあれだ上手い事塗れればいいんだけどね、ま、やってみましょうよ、でも、やすりが出来てからでいいかしら?」
「いえ、サビナさん」
エレインが腰を上げる、
「そうね、明日絶対買ってきます、やりましょう」
サビナもなにやら気合が入った様子である、
「あー、そうか、なるほどね、面白いかもねー」
ユーリは左手の指を見つめながら呟いた。
「はい、従業員の募集ってまだ大丈夫でしょうか?」
「あー、学園でって事よね」
「はい、それも動いていかないとな、となりまして」
「そうよねー、聞く限り新しいお店の事でしょう?」
「はい、そうなります」
夕食後、エレインがユーリを捕まえ真面目な口調である、ソフィアとテラとオリビアは厨房で後片付け中であり、ミナとレインは宿舎へ引き上げた、
「そうなると急いだほうがいいわね、卒業式が30日で、今日が24日でしょ、卒業してから学園に来る人ってまずいないからね」
「あっ、そうでしたね、そっか、卒業か・・・忘れてた、学園に行ってないからな、まるで感覚がズレてますね」
エレインはハッと驚いた顔である、
「そうね、ま、明日が25で、大急ぎで掲示してもらって、25・26・27の午前まで募集、27の午後に選考して28日に通達、29日に面接・・・かな?上手くいけばそんな感じ?都合よすぎるかな?」
ユーリが指折り数えて段取りを確認する、
「そんな簡単にできますか?」
エレインが深刻そうに問うと、
「さぁ、知らないわー」
あっけらかんと無責任な返答である、これにはエレインは勿論、何とはなしに聞いていたジャネットやサビナも眉間に皺を寄せる、
「なによ、そんな顔されても私がどうこう出来る事は無いわよ、段取り悪かったのはエレインさんであって、私は与り知らぬ事だわ」
まったくの正論である、エレインはぐうの音も無く黙り込み、それもそうだとサビナとカトカは頷いた、
「ま、エレインさんが忙しかったのは分っていた事だけどね、でも、まだ日にちはあるんだし、学生上がりを雇いたいのであればギリギリの時期よね、うん、明日一番でダナに相談すればいいわよ、彼女も忙しいでしょうけど、エレインさんを邪険にする事は無いんじゃない?」
「そうですね、はい、ダナさんにはお世話になってますしね」
「うん、今日もね例のクリームの事で大騒ぎしてたわよ、そのうち六花商会で販売するはずよーって言ったら、絶対買うーって、良かったわね、あれ、好評みたいよ」
「あ、そうだ、報告してなかった、私もいろいろ聞かれたよー、検証に参加してない連中が参加したいって言ってきたしー、参加してる連中が触れ回ったんじゃないかな?うん、で、次いつやるのって、次も作るのって?そんな感じ?」
ジャネットが編み物の手を止めて顔を上げる、
「あ、私もです、参加した人からあれは凄いねって、それと先生達も医学科でも研究したいとかなんとか言ってましたよ」
「それならこっちにも来たかな?取り敢えず次回の研究会で検証の報告があるのでって逃げたから、後お願いね」
ユーリがあっさりとサビナに押し付ける、
「えっ、また、そんな簡単にー」
悲鳴を上げるサビナである、
「だって、そう言うしかないじゃない、私は助言は出来るけど、実際に動くのはあんたなんだし、これも大事な経験よ、医学科の先生達は優しい人多いから、手伝って貰えばー」
「そうは言っても、具体的には・・・」
サビナがうーんと首を捻る、
「あー、そこは・・・ほら・・・どうしよう?」
ユーリがどういうわけかジャネットに問いかける、
「えっ、私っすか、えっと、はい、わかりません」
元気よく答えるジャネットである、
「うん、じゃ、私も、わかりません」
ユーリはどうやらふざけている様子である、ジャネット同様に大声を上げる始末であった、
「ショチョー」
「今のはちょっと、流石にですよ・・・」
カトカとエレインが顔を顰める、
「ありゃ、駄目?・・・じゃ、あれだ、医学科の先生達には薬として使えるかどうかを検証して貰えばいいんじゃない?治療薬としての有効性とか、どのような怪我に有効とか・・・」
一転真面目に答えるユーリである、
「そうなりますよね・・・」
サビナはふむと腕を組む、
「で、こっちはあくまで美容目的として使い勝手とかお洒落?とかそういう方面で開発していってさ、で、お互いに情報を交換しあう感じで、あれよ、もう、やわらかクリームはあんたの専売特許みたいなもんなんだから、好きに動きなさいな、あ、でも専売はあれか、エレインさんのところか」
「でも・・・」
サビナが口を開いた瞬間にテラとオリビアが食堂へ戻ってきた、ソフィアも手を拭いながら入って来る、
「あ、ソフィアさん、やわらかクリームの件なんですけど」
サビナは丁度良いとソフィアを捕まえた、
「ん?何?」
ソフィアは軽い感じで返しつつ、ジャネットとケイスの側に座り編み物籠へ手を伸ばす、
「えっと、このまま、私が中心でいいんですか?」
「なにが?」
「やわらかクリームですよ、所長には好きにやれって言われるんですが、あれは元々ソフィアさんの発明じゃないですかー」
「違うわよー」
ユーリ以上に軽く適当なソフィアである、
「違うって・・・」
「だから、エルフの人達に教えてもらったの、私が思い付いたわけではないし、作り出したものでもないわよ」
「そりゃ、そうでしょうけど・・・」
「何度も言ってるでしょ、私が教えた事は好きにすればいいんだわ、私としては別に見返りを寄越せなんて言わないから、それにあのクリームに関しては、こっちの世の中でもどこかで似たような物があるかもしれないしね、私やあんたらが知らないだけでさ、そんなもんを私の手柄だーなんて言う気はないわねー」
「そう言われましても・・・」
サビナはいよいよ困惑する、こういうやり取りは何度目になるのであろうか、他人事であった時は傍観していたが、いざ当事者になると心底困ってしまうものである、
「それこそあれよ、ユーリみたいにさ、魔族の魔法陣を解読したり、陶器版に魔法陣を刻む技術を確立したっていうのであればよ、私も胸を張るんだけどね、私のはどこまでいっても聞きかじりだからね、良い感じの物をこっちで再現したいってだけだもの、やる気のある若者に囲まれておばさんとしては嬉しい限りよ」
「おばさんって・・」
「うん、ソフィアさんをおばさんと思った事ないですよー」
ジャネットとケイスがソフィアを見る、
「だって、ミナから見たら、ユーリはおばちゃんなのよ、なら私だっておばさんじゃない」
「それは相対的なものですよ、私なんておばあちゃんじゃないですか」
テラも流石に黙っていられない、
「そっか、ま、いいでしょ、自分で言う分には、そういうわけだから、私は私で楽しんでるだけだから、遠慮なくやりなさい・・・あ、でも、あれかお洒落にするのは私がやるんだっけか・・・難しいなぁ・・・爪の手入れで勘弁してくれない?」
ソフィアがエレインへと視線を向ける、
「勘弁なんて、それこそお釣りがきますよ、何言ってるんですか」
「そうね、大したもんだわ、なんか、磨いてもらった爪を撫でるのが癖になりそうよ」
ユーリがその言葉の通り、磨いた爪を撫ている、
「そうですね、なんか、落ち着いてみると指先が宝石になったみたい・・・うふ、嬉しいですよね」
カトカはうっとりと爪先を見つめた、
「それは良かったわ、あ、で、それはどうするの?話したんでしょ?」
ソフィアが再度エレインへ問う、ソフィアが夕食の支度に入った後で研究所組と六花商会、それに職人の二人によってどう扱っていくかを打ち合わせたようである、ソフィア自身は相も変わらず無関心であった、
「あ、はい、えっと、取り敢えずブノワトさんとコッキーさんがやすりを作る事になりました、あのごついやすりは扱いが難しいですからね、もっと、こう、片手で使えるような感じにしたいと言ってましたね」
「そうそう、で、できるだけ細かくするとも言ってました」
エレインとジャネットが答える、
「そっかー、そうよねー、あのかなやすりではちょっとね、使いづらいわよね」
ソフィアはガラス鏡の側に置かれたやすりの箱へ視線を飛ばす、それらは日中の活躍を終え魔法の光の下クログロとした輝きを照り返していた、
「はい、で、それが出来たら改めて練習しようかと思います、それと、顔料の件は・・・」
「あ、それ、明日買ってきますよ、何色がいいですか?」
サビナが手を上げた、
「あら、そっちで出してくれるの?」
「出すわよー、あれこそ美容ど真ん中でしょ、私の散髪よりも新しい事だわ、受けるわよー、若いのにも、金持ちにもー」
ユーリがニヤついている、
「そうなんだ、じゃ、遠慮なく、えっと、あれだ、色よりも原料ね、人の体に触れても害の無いもの?あるかしら?」
「あるとは思いますよ、でも、それって?」
「うん、塗るのよ、爪を」
あっさりとその使途を口にするソフィアである、
「えっ、それって・・・」
「はい、大丈夫なんですか?」
「・・・想像できないな・・・」
突然の事に皆驚いている、
「なによ、これも実験よ、旦那がね、カッコよくなるぞーって言ってたのよ、それを思い出してね、ま、これはあれだ上手い事塗れればいいんだけどね、ま、やってみましょうよ、でも、やすりが出来てからでいいかしら?」
「いえ、サビナさん」
エレインが腰を上げる、
「そうね、明日絶対買ってきます、やりましょう」
サビナもなにやら気合が入った様子である、
「あー、そうか、なるほどね、面白いかもねー」
ユーリは左手の指を見つめながら呟いた。
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