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本編
41話 家門祭りは泥遊び その2
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「御免、居られるかー」
寮の玄関先を過ぎた所で馬車が停まった、程なくレアンが颯爽と寮へと顔を出す、やや古風な訪問の挨拶であった、
「おはようございます、あら、可愛らしい」
出迎えたソフィアはそのお洒落な装いに素直な賛辞を贈った、
「むふー、であろう、この髪飾りは素晴らしいのう、ソフィアさんの発案と聞いたぞ、次から次へと大したものじゃの」
レアンは嬉しそうに微笑む、今日の彼女は髪を結いあげており、実に大人っぽい雰囲気を醸し出していた、さらに右側頭部にガラス製の髪留めが輝いている、伯爵家令嬢ともなればもっと高価な品を身に付けても良いのであろうが、レアンはエレインから贈られたそれを一目で気に入り、今朝もユスティーナを巻き込んで側仕えと共にあーでもないこーでもないと時間をかけて髪型を決めた、
「お褒めに預かり光栄ですわ、ふふ、それもお嬢様が身に付けて下さったからですね、輝きが違うように思います」
歯の浮くような誉め言葉である、ソフィアの口から出た言葉としては実に珍しい、
「ふふ、そうか、母上にもな、一番美しいと褒めて頂いたのだ」
得意満面なレアンである、
「あら、それであればモニケンダムで一番美しいお嬢様という事になりますわね」
「そうかのう?そうかもしれんのう」
背筋が痒くなるような続けざまの誉め言葉である、月並みの娘であれば流石に謙遜するものであろうが、そこは生粋のお嬢様たるレアンである、もっと褒めろと小さい胸を張った、
「ソフィー、これでいいー」
そこへミナがヒョイと顔を出す、
「おう、ミナ、迎えに来たぞ」
レアンは上機嫌で微笑むが、
「むー、待ってー、髪留めが変なのー」
ミナはレアンに買ってもらった訪問着に身を包み、しっかりとおめかししている、しかし、本人が言う通りにその髪には数本の髪留めが刺さり、先日のレアンのような面白い状態であった、
「あははは、どうした、沢山刺せば可愛くなるのであろう?」
「うー、違うのー、お嬢様いじわるだー」
「はいはい、もう、ごめんさないね、お嬢様少々お待ちください」
ソフィアはミナを鏡の前に座らせると、
「お花の髪留めは何処?」
「これー」
「うん、じゃ、お花はこっちに飾って、反対側は整えて・・・こんな感じでどう?」
「うー、もっと刺したいー」
「だーめ、十分可愛いわよ、ね、レインもそう思うでしょ」
「そうじゃのう、十分じゃ」
「そう?」
「うむ、ま、儂の方が可愛いがのー」
「うー、レインうるさいー」
「こら、じゃ、反対側を小さいので押さえましょうか・・・これでどう?」
「うー、これならいい・・・」
「そ、じゃ、ほらいってらっしゃい、お淑やかにするのよ」
「うん、わかった」
「もう、いつも返事だけはいいんだから」
「そうじゃの、返事だけは満点じゃのう」
「お嬢様、お待たせー」
ミナはピョンと勢いよく席を立つとレアンの元へ駆けていく、
「うむ、ほう、それが今日のお気に入りか?」
レアンはミナの頭を凝視する、レースで作られた可愛らしい花がちょこんとその髪を飾っていた、
「ふふん、ニャンコじゃないのよ、今日はお花なのー」
「なるほど、それも良いのう、どうじゃ?今日は自信作なのじゃぞ」
レアンもフフンと得意気な顔になる、
「あー、キラキラのやつだー、可愛いねー」
「だろう?」
「うん、ピカピカしてるー、いいなー、ミナも欲しいなー、エレイン様くれないかなー」
「頼めば良いであろう、エレイン会長なら喜んで用意してくれるぞ」
「うー、そうかなー」
ミナは羨ましそうにレアンの髪留めを注視する、
「ミナはもー、こういう時はレアンお嬢様を褒めるんですよ、髪飾りを褒めては駄目ですよ」
ソフィアが困った顔で口を挟む、
「えー、そうなのー?」
「そうです」
「でもでも、お嬢様はいつも可愛いよー」
「あら」
とソフィアは驚き、
「ふふ、それに気付いておるとはミナは大したものだのう」
レアンも満更ではない様子である、満足そうに微笑んだ、
「でしょー」
満面の笑みを浮かべてサンダルを履くミナである、
「そうね、いつも可愛いけど、今日は特別に可愛いでしょ」
ソフィアもそこ譲れない、
「えー、でも、いつもの方も可愛いよー」
しかしミナの口が減ることは無い、いつの間にやらまた一つ賢くなった様子である、子供の成長は早いなとソフィアは苦笑いを浮かべつつ、
「まったくもー」
レアンの目の前である、ソフィアはここは自分が引くべきねと矛を収めた、レアンはその遣り取りに苦笑いとも照れ笑いともとれる、こそばゆい微笑みを口元に貼り付け、
「ふん、まぁよしとするか、では、いくぞ、ミナ、レインも」
いつの間にやら準備を終えていたレインと、サンダルを履き終えたミナへと元気良く声をかける、
「うん、行く」
「うむ」
二人は笑顔で答え、
「気を付けてね、おしとやかによ」
ソフィアの駄目だしとばかりの忠告に、
「行ってくるー」
ミナは大きく手を振って、3人は楽しそうに市場へと向かう、当たり前のようにそれに付き従うライニールの背を確認し、ソフィアはやれやれと吐息を吐くと、
「さて、ユーリを起こそうかしら・・・」
サッと踵を返し3階へ向かった。
「何?もう準備するの?」
ユーリがめんどくさそうに厨房へ顔を出した、ソフィアが一度起こしたがすぐには目覚めず、好きにすればと捨て台詞を残して一階に下りたソフィアであった、ユーリは陽の光に追い立てられるように何とか覚醒し、のそりのそりとその身体を一階へと降ろしたのである、
「そうよ、ほら、いつもは準備する時間がないからだけど、今日はしっかりと時間もあるし食材もあるしね、ちゃんとしたものを出さないとって思ってね」
ソフィアがまな板に向かいながら答える、まな板の上では鶏肉が一口大にぶつ切りにされ、つぎつぎと調理用のボールに投げ込まれていた、
「ふーん、せっかくのお祭りでしょ、あんたもいけばいいのに」
ユーリはつっかけをひっかけて厨房へ下りた、
「別にいいわよ、ミナとレインはレアンお嬢様と遊びに行ったし、お祭りだからって浮かれるような事も無いし、信心もないからね、今日のお祭りがどこの神様かも知らないしねー」
「あー、そうよねー、8月の祭りってなんの祭りなのかしら?やっぱり秋祭り?」
どうやらユーリも祭りそのものに興味が無いらしい、幼馴染とはいえ二人そろって何とも無粋な事である、
「どうなのかな?あんたの方が長いんだから私が聞きたいくらいよ」
「それもそうね、あ、何かつまむものない?朝飯代わりに」
「つまむものって、ほれ、トレーに朝食あるわよ」
ソフィアが顎で配膳台を差す、そこには一人分のトレーが置いてある、御丁寧に綺麗な布巾も乗せられていた、
「わ、ありがとう、何?妙に気が利くわねー」
ユーリは嬉しそうにトレーを手にすると作業台に置いて、近くの椅子を足で手繰り寄せる、
「そりゃまあね」
ソフィアは適当に答えつつ、調味料へと手を伸ばす、
「あ、そうだ、明日かな?ブラスさんが来てさ裏の工事の最終打合せって事になったんだけど、あんたどうする?」
「あら、聞いてないわね」
「うん、言ってないもん」
「あのねー」
ソフィアがジロリとユーリを睨む、
「なによ、どうせ寮から出ないんだからいいでしょ」
ユーリはどこ吹く風とオートミールを口に運ぶ、
「そうだけど・・・友達無くすわよ」
ソフィアは嫌そうに目を細めた、
「友達なんてあんたくらいしかいないわよ」
「そりゃどうも・・・嬉しくないけど」
「何よそれ、あんたこそ友達無くすんじゃない?」
「言ってなさいよ」
ソフィアは背を向けるとボールにドボドボと魚醤を注ぎ込む、さらに柑橘類の絞り汁が入った特性の壺と調理用に確保してあるワインへと手を伸ばした、
「んで、ほら、工事の開始に先立ってって事でね、こっちで準備する事はそれほど無いとは思うんだけどさ、一応注意事項とかもあると思うしね」
「あー、そうよね、でも、私としてはほら、それほどは無いかな?お店の邪魔にならなければいいんじゃないの?」
「そっか、それは話してあるからなー、何とでもなりますよってブラスさんは言ってたけどね、ま、信用するしかないわね」
「あ、あれは?」
「なに?」
「スライムとヒトデとシジミ?」
「あー、それはほら浄化槽が出来てからでいいかなって思うかな?知り合いの冒険者に聞いたら湖で簡単に採れますよって事だったから、ほら、生きの良いのが欲しいじゃない、今持ってこられても困るしね」
「・・・それもそうね」
「あ、そうだ、無色の魔法石の実験ってどうなってるの?」
「どうなってるって?」
「少しは進んだ?」
「そうね、実用できる程度にはってところかな?もう少し量が欲しいかな?余ってるのある?」
「うーん、少しはあるかな?正確にはカトカに聞いてみないと分かんないかしら」
「そっか、じゃ、採ってきて」
「簡単に言うわねー、ま、良いけどさ、今の内に採れるだけ採っておこうかしら?使えるのが周知されたらあれよね、盗掘とか問題になるかもね」
「それもあるわよね、最初に見付けた場所にある分は採り尽くしてもいいんじゃない?」
「あー、それも思ったんだけど、後々誤魔化せないとって思ってね、遠慮してたんだわ、ほら、領主様の手前もあるし」
「随分殊勝ね、でも確かに、変に拗れるような事はしたくないわよね、仲良くはしてるつもりだけど、奥様とお嬢さんとだからね、御本人とは数える程度しか会ってないし、何考えてるかなんて分かりはしないしね、やり過ぎは問題よね」
「そうなのよ、うん、加減が難しいかなって、ま、実際に浄化槽の有用性が証明できればまた一段階先に進めるとは思うけどね」
「そうねー、あー、早く出来ないかな?水汲みもオマル掃除も無くなるのよ、楽園だわ」
「・・・所帯じみた楽園ね・・・」
「あんですって?」
再びソフィアの冷たい視線がユーリを射貫く、ユーリはその視線を身を背を丸くして交わしつつ朝食をかっ込むのであった。
寮の玄関先を過ぎた所で馬車が停まった、程なくレアンが颯爽と寮へと顔を出す、やや古風な訪問の挨拶であった、
「おはようございます、あら、可愛らしい」
出迎えたソフィアはそのお洒落な装いに素直な賛辞を贈った、
「むふー、であろう、この髪飾りは素晴らしいのう、ソフィアさんの発案と聞いたぞ、次から次へと大したものじゃの」
レアンは嬉しそうに微笑む、今日の彼女は髪を結いあげており、実に大人っぽい雰囲気を醸し出していた、さらに右側頭部にガラス製の髪留めが輝いている、伯爵家令嬢ともなればもっと高価な品を身に付けても良いのであろうが、レアンはエレインから贈られたそれを一目で気に入り、今朝もユスティーナを巻き込んで側仕えと共にあーでもないこーでもないと時間をかけて髪型を決めた、
「お褒めに預かり光栄ですわ、ふふ、それもお嬢様が身に付けて下さったからですね、輝きが違うように思います」
歯の浮くような誉め言葉である、ソフィアの口から出た言葉としては実に珍しい、
「ふふ、そうか、母上にもな、一番美しいと褒めて頂いたのだ」
得意満面なレアンである、
「あら、それであればモニケンダムで一番美しいお嬢様という事になりますわね」
「そうかのう?そうかもしれんのう」
背筋が痒くなるような続けざまの誉め言葉である、月並みの娘であれば流石に謙遜するものであろうが、そこは生粋のお嬢様たるレアンである、もっと褒めろと小さい胸を張った、
「ソフィー、これでいいー」
そこへミナがヒョイと顔を出す、
「おう、ミナ、迎えに来たぞ」
レアンは上機嫌で微笑むが、
「むー、待ってー、髪留めが変なのー」
ミナはレアンに買ってもらった訪問着に身を包み、しっかりとおめかししている、しかし、本人が言う通りにその髪には数本の髪留めが刺さり、先日のレアンのような面白い状態であった、
「あははは、どうした、沢山刺せば可愛くなるのであろう?」
「うー、違うのー、お嬢様いじわるだー」
「はいはい、もう、ごめんさないね、お嬢様少々お待ちください」
ソフィアはミナを鏡の前に座らせると、
「お花の髪留めは何処?」
「これー」
「うん、じゃ、お花はこっちに飾って、反対側は整えて・・・こんな感じでどう?」
「うー、もっと刺したいー」
「だーめ、十分可愛いわよ、ね、レインもそう思うでしょ」
「そうじゃのう、十分じゃ」
「そう?」
「うむ、ま、儂の方が可愛いがのー」
「うー、レインうるさいー」
「こら、じゃ、反対側を小さいので押さえましょうか・・・これでどう?」
「うー、これならいい・・・」
「そ、じゃ、ほらいってらっしゃい、お淑やかにするのよ」
「うん、わかった」
「もう、いつも返事だけはいいんだから」
「そうじゃの、返事だけは満点じゃのう」
「お嬢様、お待たせー」
ミナはピョンと勢いよく席を立つとレアンの元へ駆けていく、
「うむ、ほう、それが今日のお気に入りか?」
レアンはミナの頭を凝視する、レースで作られた可愛らしい花がちょこんとその髪を飾っていた、
「ふふん、ニャンコじゃないのよ、今日はお花なのー」
「なるほど、それも良いのう、どうじゃ?今日は自信作なのじゃぞ」
レアンもフフンと得意気な顔になる、
「あー、キラキラのやつだー、可愛いねー」
「だろう?」
「うん、ピカピカしてるー、いいなー、ミナも欲しいなー、エレイン様くれないかなー」
「頼めば良いであろう、エレイン会長なら喜んで用意してくれるぞ」
「うー、そうかなー」
ミナは羨ましそうにレアンの髪留めを注視する、
「ミナはもー、こういう時はレアンお嬢様を褒めるんですよ、髪飾りを褒めては駄目ですよ」
ソフィアが困った顔で口を挟む、
「えー、そうなのー?」
「そうです」
「でもでも、お嬢様はいつも可愛いよー」
「あら」
とソフィアは驚き、
「ふふ、それに気付いておるとはミナは大したものだのう」
レアンも満更ではない様子である、満足そうに微笑んだ、
「でしょー」
満面の笑みを浮かべてサンダルを履くミナである、
「そうね、いつも可愛いけど、今日は特別に可愛いでしょ」
ソフィアもそこ譲れない、
「えー、でも、いつもの方も可愛いよー」
しかしミナの口が減ることは無い、いつの間にやらまた一つ賢くなった様子である、子供の成長は早いなとソフィアは苦笑いを浮かべつつ、
「まったくもー」
レアンの目の前である、ソフィアはここは自分が引くべきねと矛を収めた、レアンはその遣り取りに苦笑いとも照れ笑いともとれる、こそばゆい微笑みを口元に貼り付け、
「ふん、まぁよしとするか、では、いくぞ、ミナ、レインも」
いつの間にやら準備を終えていたレインと、サンダルを履き終えたミナへと元気良く声をかける、
「うん、行く」
「うむ」
二人は笑顔で答え、
「気を付けてね、おしとやかによ」
ソフィアの駄目だしとばかりの忠告に、
「行ってくるー」
ミナは大きく手を振って、3人は楽しそうに市場へと向かう、当たり前のようにそれに付き従うライニールの背を確認し、ソフィアはやれやれと吐息を吐くと、
「さて、ユーリを起こそうかしら・・・」
サッと踵を返し3階へ向かった。
「何?もう準備するの?」
ユーリがめんどくさそうに厨房へ顔を出した、ソフィアが一度起こしたがすぐには目覚めず、好きにすればと捨て台詞を残して一階に下りたソフィアであった、ユーリは陽の光に追い立てられるように何とか覚醒し、のそりのそりとその身体を一階へと降ろしたのである、
「そうよ、ほら、いつもは準備する時間がないからだけど、今日はしっかりと時間もあるし食材もあるしね、ちゃんとしたものを出さないとって思ってね」
ソフィアがまな板に向かいながら答える、まな板の上では鶏肉が一口大にぶつ切りにされ、つぎつぎと調理用のボールに投げ込まれていた、
「ふーん、せっかくのお祭りでしょ、あんたもいけばいいのに」
ユーリはつっかけをひっかけて厨房へ下りた、
「別にいいわよ、ミナとレインはレアンお嬢様と遊びに行ったし、お祭りだからって浮かれるような事も無いし、信心もないからね、今日のお祭りがどこの神様かも知らないしねー」
「あー、そうよねー、8月の祭りってなんの祭りなのかしら?やっぱり秋祭り?」
どうやらユーリも祭りそのものに興味が無いらしい、幼馴染とはいえ二人そろって何とも無粋な事である、
「どうなのかな?あんたの方が長いんだから私が聞きたいくらいよ」
「それもそうね、あ、何かつまむものない?朝飯代わりに」
「つまむものって、ほれ、トレーに朝食あるわよ」
ソフィアが顎で配膳台を差す、そこには一人分のトレーが置いてある、御丁寧に綺麗な布巾も乗せられていた、
「わ、ありがとう、何?妙に気が利くわねー」
ユーリは嬉しそうにトレーを手にすると作業台に置いて、近くの椅子を足で手繰り寄せる、
「そりゃまあね」
ソフィアは適当に答えつつ、調味料へと手を伸ばす、
「あ、そうだ、明日かな?ブラスさんが来てさ裏の工事の最終打合せって事になったんだけど、あんたどうする?」
「あら、聞いてないわね」
「うん、言ってないもん」
「あのねー」
ソフィアがジロリとユーリを睨む、
「なによ、どうせ寮から出ないんだからいいでしょ」
ユーリはどこ吹く風とオートミールを口に運ぶ、
「そうだけど・・・友達無くすわよ」
ソフィアは嫌そうに目を細めた、
「友達なんてあんたくらいしかいないわよ」
「そりゃどうも・・・嬉しくないけど」
「何よそれ、あんたこそ友達無くすんじゃない?」
「言ってなさいよ」
ソフィアは背を向けるとボールにドボドボと魚醤を注ぎ込む、さらに柑橘類の絞り汁が入った特性の壺と調理用に確保してあるワインへと手を伸ばした、
「んで、ほら、工事の開始に先立ってって事でね、こっちで準備する事はそれほど無いとは思うんだけどさ、一応注意事項とかもあると思うしね」
「あー、そうよね、でも、私としてはほら、それほどは無いかな?お店の邪魔にならなければいいんじゃないの?」
「そっか、それは話してあるからなー、何とでもなりますよってブラスさんは言ってたけどね、ま、信用するしかないわね」
「あ、あれは?」
「なに?」
「スライムとヒトデとシジミ?」
「あー、それはほら浄化槽が出来てからでいいかなって思うかな?知り合いの冒険者に聞いたら湖で簡単に採れますよって事だったから、ほら、生きの良いのが欲しいじゃない、今持ってこられても困るしね」
「・・・それもそうね」
「あ、そうだ、無色の魔法石の実験ってどうなってるの?」
「どうなってるって?」
「少しは進んだ?」
「そうね、実用できる程度にはってところかな?もう少し量が欲しいかな?余ってるのある?」
「うーん、少しはあるかな?正確にはカトカに聞いてみないと分かんないかしら」
「そっか、じゃ、採ってきて」
「簡単に言うわねー、ま、良いけどさ、今の内に採れるだけ採っておこうかしら?使えるのが周知されたらあれよね、盗掘とか問題になるかもね」
「それもあるわよね、最初に見付けた場所にある分は採り尽くしてもいいんじゃない?」
「あー、それも思ったんだけど、後々誤魔化せないとって思ってね、遠慮してたんだわ、ほら、領主様の手前もあるし」
「随分殊勝ね、でも確かに、変に拗れるような事はしたくないわよね、仲良くはしてるつもりだけど、奥様とお嬢さんとだからね、御本人とは数える程度しか会ってないし、何考えてるかなんて分かりはしないしね、やり過ぎは問題よね」
「そうなのよ、うん、加減が難しいかなって、ま、実際に浄化槽の有用性が証明できればまた一段階先に進めるとは思うけどね」
「そうねー、あー、早く出来ないかな?水汲みもオマル掃除も無くなるのよ、楽園だわ」
「・・・所帯じみた楽園ね・・・」
「あんですって?」
再びソフィアの冷たい視線がユーリを射貫く、ユーリはその視線を身を背を丸くして交わしつつ朝食をかっ込むのであった。
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