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本編
39話 チンチクリンな職人さん その7
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「おはようございます」
翌朝、テラが事務所を開け、さてとと気合を入れた所に甲高く元気な声が届いた、テラは何かしらと玄関へ向かい、子供のような小さく丸っこい影を認め、
「あら、おはようございます、早いのね」
ニコリと微笑む、来客はマフダである、昨日と同様にやや表情は堅いままであるが、今日は一人で来た様子であった、
「はい、あの、こういう時は朝一で行くもんだって、親父もねーちゃんもいうもんだから、それに、朝は早いんです、修業してましたから」
マフダはやはり緊張の為か固くなっている様子である、早口でしゃべりまくりムフーと鼻息を荒くした、
「まぁ、ふふ、そうか、じゃ、どうしようかな、サビナさんはまだだし、そうね・・・どうぞ入って、面白いもの見せてあげる」
テラはマフダを迎え入れる、マフダはギクシャクと歩を進め、
「朝はね掃除しながら各部屋を見て回るのよ」
テラの柔らかい声に若干の母性が感じられるのは気のせいであろうか、自身もそうと気付かずに口元のみに薄い笑みを浮かべるテラである、
「あ、私、手伝います、やらせて下さい」
「えー、そうねー、それはほら、正式に従業員になってからでいいわよ」
マフダが慌てて掃除用具に手を伸ばすのをテラはやんわりと断り、
「今日はまだお客様よ、じゃ、地下からね」
そう言って地下室の換気を行いつつ冷凍箱を見せ、厨房へ向かい床を掃きながら回転機構の使い方や泡立て器、クッキーの型、溶岩板等を説明した、それら一つ一つに歓喜と驚愕の声を上げるマフダである、テラはその反応にそりゃそうよねと微笑みつつ廊下の掃除に移った頃合いでエレインが顔を出した、
「わ、もう来たの?」
テラの影に隠れるマフダに気付き思わず大声をあげる、
「はい、親父もねーちゃんもこういうときは朝一で行けっていうもんですから」
マフダは同じ言い訳を展開しつつ恥ずかしそうに微笑む、
「そっか、という事は家族と相談したの?」
「はい、あのねーちゃん達も親父もその・・・妙にやる気というか、面白いってはしゃいじゃって・・・」
「あら、なら、どうしましょうか・・・テラさんゆっくり話す?」
「そうですね、こちらが終わりましたらでいいですか?」
「そうしましょう、じゃ、マフダさん、ガラス鏡でも使って下さい、今日は独り占めできますよ」
その魅力的な誘いにマフダは小さく歓喜の声を上げ、エレインは微笑みつつ事務所へ入る二人であった、それからテラが掃除を終えて事務所に入ると、
「マフダさん、こちらへ」
テラがマフダに声をかけつつエレインの元へと歩み寄る、そしてエレインの事務机に向かって二人は椅子を並べると、
「さて、じゃ、どうするか結論は出たのですか?」
テラがマフダへ問う、
「はい、その、お世話になりたいです、えっと、昨日のエレイン会長の案のその・・・一番難しいので」
マフダは両膝に置いた両手拳にギュッと力を入れ、昨日以上に力の籠った視線をエレインへ向けた、
「それは嬉しいです、でも、思った以上に困難である事は理解されてます?」
エレインは内心ではそうなるであろうと高を括っていたのであるが、マフダの覚悟の程度を知る為にと、意地悪く問い返した、
「はい、あの、フィロメナねーちゃんには家の事はいいからそっちを頑張れって言われて、親父は金なら幾らでも出してやるって・・・その凄い乗り気でした、それと、他のねーちゃん達もそういう服を着てみたいってすんごい言われてしまって、なんか、逆にその・・・やらないって言えなくなっちゃった感じになっちゃって、あ、でも、私もやりたいんです、遊女用というか女性の魅力を引き出す服を作りたいです、なので、なんでもやります、やらせて下さい」
マフダは早口でしゃべりまくった、朝から元気だこととエレインは思いつつ、
「そうなると、御家族の理解は得られたのね」
ニコリと口角を上げ、
「覚悟もある様子ですわね、テラさんはどう思います?」
「はい、そうですね、御家族の支援があるとなれば、だいぶ現実的になってくるかと思います、私に異議はありません」
テラの言葉にマフダはホッとその緊張を少しばかり和らげた様子である、
「そうですか、では、そうですね、明日、改めて就業条件をお話ししましょう、その際にはフィロメナさんが居た方が良いかしら?私としてはマフダさんを一人前と認めて対応したいところなのですが・・・」
「えっと、その、その辺はあれです、最初から修業のつもりでしたから、そのお給料を頂くのは・・・」
「あら、タダ働き?」
エレインは片眉を上げる、
「それは駄目ですね、まだそういう事を言うのであればこの話しは無かった事になりますよ」
テラ迄もがキツイ口調となる、
「えっ・・・あの・・・」
マフダは二人の突然の圧にどうしたものかと冷や汗を浮かべる、
「マフダさん、昨日も言いましたが修業などと生ぬるい考えは捨てて下さい」
「そうですよ、ここではしっかりと働いて貰います、その上でしっかりと賃金を受け取る事です」
「ただし、賃金を支払う以上、責任を持って事に当たって頂きますからね」
「そうですよ、しっかりと働いて貰いますから、その点を特にしっかりと心に刻むように」
二人から早口で責め立てられマフダは身を縮こまらせ、小さくごめんなさいと呟いた、
「それで良いです、そうすると、正式にはいつから勤務できます?」
エレインは一転柔らかい口調に変わる、
「あ、はい、えっと、明日からでも大丈夫です」
「?今の修業先というのは?」
「はい、昨日の内に話しをしてきました、そういう事であればと、こころよく・・・は無いのかな?突然だったので渋い顔をしてましたが・・・認めてくれた感じです・・・」
「ならいいですが、先に走るばかりで、後を汚すのは駄目ですよ、一つ一つしっかりと始末をつけないと後々面倒な事になりかねません」
テラが神妙に助言する、
「はい、それは親父にも言われてました、その、こちらにお邪魔する前から・・・なので、しっかりと話してきました、大丈夫だと思います」
マフダの言にエレインとテラは若干不安になるが、本人がそう言う限り信じる他無いかしらと取り敢えず飲み込んだ、
「分かりました、マフダさんの言葉を信用致します、ま、フィロメナさんがいるのであればその辺もしっかりしてそうですよね」
「そうですね、そうしますと、お祭りの準備から入ってもらいましょうか・・・」
テラは黒板に描かれた予定表を確認する、
「そうね、その後は暫くは店舗の方に入って貰って、調理の方をしっかりと覚えて下さい、それと接客も・・・」
「そうですよね、接客もあるんですよね・・・」
マフダは不安そうに俯いた、
「慣れる事ですね、ま、大丈夫でしょう、何事もやってみる事です」
「はい、頑張ります」
マフダは口元を引き締めて顔を上げる、
「その意気ですよ、そうですね・・・後は・・・・」
エレインはうーんと首を傾げる、
「マフダさんから要望とか、心配事とかありますか?事前に話しておきたい事とか」
テラがエレインに変わって問う、
「あ、はい、その・・・さっき思い出したというか・・・その、あれなんですけど」
「あれ?」
「はい、私全く魔力無いんですが大丈夫でしょうか・・・」
マフダは上目づかいでエレインを伺い、エレインはあっと小さく驚きの声をあげる、
「それは・・・どうでしょう?」
エレインは眉間に皺を寄せながらテラに問う、
「そうですね・・・」
テラもうーんと首を傾げた、
「その・・・さっき、地下の冷凍箱ですか?とか、真っ黒い板のあれとか・・・使えるのかなって・・・なっちゃって」
「あー、確認していませんでしたわね・・・」
エレインが申し訳なさそうに呟く、
「でも、調理に関しては魔力の無い従業員も居りますし、そこは上手い事組めば大丈夫かと・・・でも、研究所の方は・・・」
テラがそこまで口にして、
「あっ」
と大きく声を上げた、
「なに?」
エレインが思わず問うと、
「はい、先日、3階でお酒を呑んだ時にユーリ先生が言ってましたね、魔力が全く無い人が欲しい・・・そんな感じでした」
「あらそうなの?」
「はい、学園関連の人達はほとんどが大なり小なり魔力を持っているそうで、全く無い人の方が珍しいんだとか、で、そういう人もいないと駄目なんだよ的な・・・そんな感じでした・・・すいません、酔っていたのでうろ覚えです・・・」
「まぁ・・・確かに・・・ユーリ先生はそうなんですよ、魔力の無い人を重要視しているんですよね、下手にあるよりも無い人の方が使えるんだとか、冒険者のパーティーを組む時にもそれが活かされているとかなんとか聞いた事があります・・・」
「へー、そうなんですか・・・なら・・・」
「大丈夫そうですね、でも、先に話しましょう、サビナさんに相談してみましょうか、書類仕事だけなら魔力は必要無いでしょうし」
「裁縫の仕事にもですよ」
「それを言ったら料理にだって本来は無くても良いものですからね」
「そうですね」
エレインとテラは納得したらしい、しかし、置いてけぼりとなったマフダは不安そうに二人を交互に見つめている、
「あ、ごめんなさい、お店の方は何とでもなりますから」
テラがニコリと微笑み、
「研究所の方もたぶんですが、大丈夫だと思います、ですが、先に相談しますので、安心・・・は違うかな、ま、そんな感じで」
エレインは誤魔化し笑いを浮かべる、
「は、はい、すいません、先に申し上げるべき事でした・・・ごめんなさい」
マフダは小さな肩をより小さくして俯いた、
「いいえ、こちらこそちゃんと聞くべきでしたね、ごめんなさいね」
「そうですね、ま、冷凍箱とか溶岩板とか見たらそりゃ・・・ね、不安にもなるわよね」
テラは謝り、エレインは理解を示す、エレインは続けて他にはありますかと尋ね、今のところは・・・とマフダは小さく答えた、
「そっか、じゃ、取り合えず今日はお客様だけど、朝の仕込みをやってみます?そうね、まずは調理の腕前を確認したいですしね、適当に作ってみて、完成品はお土産にしていいですよ」
「えっ、いいんですか?」
マフダはパッと顔を上げる、
「お土産にしていいのは今日だけですからね、テラさん、サビナさんが来る迄はそれでお願いできますか?」
「はい、では、早速、サビナさんが来たら、講習会の準備ですから、あまり時間が無いかもですね」
テラはサッと腰を上げ、マフダもピョンと席を立つ、
「はい、では、宜しくね」
ニコリと二人を見送るエレインであった。
翌朝、テラが事務所を開け、さてとと気合を入れた所に甲高く元気な声が届いた、テラは何かしらと玄関へ向かい、子供のような小さく丸っこい影を認め、
「あら、おはようございます、早いのね」
ニコリと微笑む、来客はマフダである、昨日と同様にやや表情は堅いままであるが、今日は一人で来た様子であった、
「はい、あの、こういう時は朝一で行くもんだって、親父もねーちゃんもいうもんだから、それに、朝は早いんです、修業してましたから」
マフダはやはり緊張の為か固くなっている様子である、早口でしゃべりまくりムフーと鼻息を荒くした、
「まぁ、ふふ、そうか、じゃ、どうしようかな、サビナさんはまだだし、そうね・・・どうぞ入って、面白いもの見せてあげる」
テラはマフダを迎え入れる、マフダはギクシャクと歩を進め、
「朝はね掃除しながら各部屋を見て回るのよ」
テラの柔らかい声に若干の母性が感じられるのは気のせいであろうか、自身もそうと気付かずに口元のみに薄い笑みを浮かべるテラである、
「あ、私、手伝います、やらせて下さい」
「えー、そうねー、それはほら、正式に従業員になってからでいいわよ」
マフダが慌てて掃除用具に手を伸ばすのをテラはやんわりと断り、
「今日はまだお客様よ、じゃ、地下からね」
そう言って地下室の換気を行いつつ冷凍箱を見せ、厨房へ向かい床を掃きながら回転機構の使い方や泡立て器、クッキーの型、溶岩板等を説明した、それら一つ一つに歓喜と驚愕の声を上げるマフダである、テラはその反応にそりゃそうよねと微笑みつつ廊下の掃除に移った頃合いでエレインが顔を出した、
「わ、もう来たの?」
テラの影に隠れるマフダに気付き思わず大声をあげる、
「はい、親父もねーちゃんもこういうときは朝一で行けっていうもんですから」
マフダは同じ言い訳を展開しつつ恥ずかしそうに微笑む、
「そっか、という事は家族と相談したの?」
「はい、あのねーちゃん達も親父もその・・・妙にやる気というか、面白いってはしゃいじゃって・・・」
「あら、なら、どうしましょうか・・・テラさんゆっくり話す?」
「そうですね、こちらが終わりましたらでいいですか?」
「そうしましょう、じゃ、マフダさん、ガラス鏡でも使って下さい、今日は独り占めできますよ」
その魅力的な誘いにマフダは小さく歓喜の声を上げ、エレインは微笑みつつ事務所へ入る二人であった、それからテラが掃除を終えて事務所に入ると、
「マフダさん、こちらへ」
テラがマフダに声をかけつつエレインの元へと歩み寄る、そしてエレインの事務机に向かって二人は椅子を並べると、
「さて、じゃ、どうするか結論は出たのですか?」
テラがマフダへ問う、
「はい、その、お世話になりたいです、えっと、昨日のエレイン会長の案のその・・・一番難しいので」
マフダは両膝に置いた両手拳にギュッと力を入れ、昨日以上に力の籠った視線をエレインへ向けた、
「それは嬉しいです、でも、思った以上に困難である事は理解されてます?」
エレインは内心ではそうなるであろうと高を括っていたのであるが、マフダの覚悟の程度を知る為にと、意地悪く問い返した、
「はい、あの、フィロメナねーちゃんには家の事はいいからそっちを頑張れって言われて、親父は金なら幾らでも出してやるって・・・その凄い乗り気でした、それと、他のねーちゃん達もそういう服を着てみたいってすんごい言われてしまって、なんか、逆にその・・・やらないって言えなくなっちゃった感じになっちゃって、あ、でも、私もやりたいんです、遊女用というか女性の魅力を引き出す服を作りたいです、なので、なんでもやります、やらせて下さい」
マフダは早口でしゃべりまくった、朝から元気だこととエレインは思いつつ、
「そうなると、御家族の理解は得られたのね」
ニコリと口角を上げ、
「覚悟もある様子ですわね、テラさんはどう思います?」
「はい、そうですね、御家族の支援があるとなれば、だいぶ現実的になってくるかと思います、私に異議はありません」
テラの言葉にマフダはホッとその緊張を少しばかり和らげた様子である、
「そうですか、では、そうですね、明日、改めて就業条件をお話ししましょう、その際にはフィロメナさんが居た方が良いかしら?私としてはマフダさんを一人前と認めて対応したいところなのですが・・・」
「えっと、その、その辺はあれです、最初から修業のつもりでしたから、そのお給料を頂くのは・・・」
「あら、タダ働き?」
エレインは片眉を上げる、
「それは駄目ですね、まだそういう事を言うのであればこの話しは無かった事になりますよ」
テラ迄もがキツイ口調となる、
「えっ・・・あの・・・」
マフダは二人の突然の圧にどうしたものかと冷や汗を浮かべる、
「マフダさん、昨日も言いましたが修業などと生ぬるい考えは捨てて下さい」
「そうですよ、ここではしっかりと働いて貰います、その上でしっかりと賃金を受け取る事です」
「ただし、賃金を支払う以上、責任を持って事に当たって頂きますからね」
「そうですよ、しっかりと働いて貰いますから、その点を特にしっかりと心に刻むように」
二人から早口で責め立てられマフダは身を縮こまらせ、小さくごめんなさいと呟いた、
「それで良いです、そうすると、正式にはいつから勤務できます?」
エレインは一転柔らかい口調に変わる、
「あ、はい、えっと、明日からでも大丈夫です」
「?今の修業先というのは?」
「はい、昨日の内に話しをしてきました、そういう事であればと、こころよく・・・は無いのかな?突然だったので渋い顔をしてましたが・・・認めてくれた感じです・・・」
「ならいいですが、先に走るばかりで、後を汚すのは駄目ですよ、一つ一つしっかりと始末をつけないと後々面倒な事になりかねません」
テラが神妙に助言する、
「はい、それは親父にも言われてました、その、こちらにお邪魔する前から・・・なので、しっかりと話してきました、大丈夫だと思います」
マフダの言にエレインとテラは若干不安になるが、本人がそう言う限り信じる他無いかしらと取り敢えず飲み込んだ、
「分かりました、マフダさんの言葉を信用致します、ま、フィロメナさんがいるのであればその辺もしっかりしてそうですよね」
「そうですね、そうしますと、お祭りの準備から入ってもらいましょうか・・・」
テラは黒板に描かれた予定表を確認する、
「そうね、その後は暫くは店舗の方に入って貰って、調理の方をしっかりと覚えて下さい、それと接客も・・・」
「そうですよね、接客もあるんですよね・・・」
マフダは不安そうに俯いた、
「慣れる事ですね、ま、大丈夫でしょう、何事もやってみる事です」
「はい、頑張ります」
マフダは口元を引き締めて顔を上げる、
「その意気ですよ、そうですね・・・後は・・・・」
エレインはうーんと首を傾げる、
「マフダさんから要望とか、心配事とかありますか?事前に話しておきたい事とか」
テラがエレインに変わって問う、
「あ、はい、その・・・さっき思い出したというか・・・その、あれなんですけど」
「あれ?」
「はい、私全く魔力無いんですが大丈夫でしょうか・・・」
マフダは上目づかいでエレインを伺い、エレインはあっと小さく驚きの声をあげる、
「それは・・・どうでしょう?」
エレインは眉間に皺を寄せながらテラに問う、
「そうですね・・・」
テラもうーんと首を傾げた、
「その・・・さっき、地下の冷凍箱ですか?とか、真っ黒い板のあれとか・・・使えるのかなって・・・なっちゃって」
「あー、確認していませんでしたわね・・・」
エレインが申し訳なさそうに呟く、
「でも、調理に関しては魔力の無い従業員も居りますし、そこは上手い事組めば大丈夫かと・・・でも、研究所の方は・・・」
テラがそこまで口にして、
「あっ」
と大きく声を上げた、
「なに?」
エレインが思わず問うと、
「はい、先日、3階でお酒を呑んだ時にユーリ先生が言ってましたね、魔力が全く無い人が欲しい・・・そんな感じでした」
「あらそうなの?」
「はい、学園関連の人達はほとんどが大なり小なり魔力を持っているそうで、全く無い人の方が珍しいんだとか、で、そういう人もいないと駄目なんだよ的な・・・そんな感じでした・・・すいません、酔っていたのでうろ覚えです・・・」
「まぁ・・・確かに・・・ユーリ先生はそうなんですよ、魔力の無い人を重要視しているんですよね、下手にあるよりも無い人の方が使えるんだとか、冒険者のパーティーを組む時にもそれが活かされているとかなんとか聞いた事があります・・・」
「へー、そうなんですか・・・なら・・・」
「大丈夫そうですね、でも、先に話しましょう、サビナさんに相談してみましょうか、書類仕事だけなら魔力は必要無いでしょうし」
「裁縫の仕事にもですよ」
「それを言ったら料理にだって本来は無くても良いものですからね」
「そうですね」
エレインとテラは納得したらしい、しかし、置いてけぼりとなったマフダは不安そうに二人を交互に見つめている、
「あ、ごめんなさい、お店の方は何とでもなりますから」
テラがニコリと微笑み、
「研究所の方もたぶんですが、大丈夫だと思います、ですが、先に相談しますので、安心・・・は違うかな、ま、そんな感じで」
エレインは誤魔化し笑いを浮かべる、
「は、はい、すいません、先に申し上げるべき事でした・・・ごめんなさい」
マフダは小さな肩をより小さくして俯いた、
「いいえ、こちらこそちゃんと聞くべきでしたね、ごめんなさいね」
「そうですね、ま、冷凍箱とか溶岩板とか見たらそりゃ・・・ね、不安にもなるわよね」
テラは謝り、エレインは理解を示す、エレインは続けて他にはありますかと尋ね、今のところは・・・とマフダは小さく答えた、
「そっか、じゃ、取り合えず今日はお客様だけど、朝の仕込みをやってみます?そうね、まずは調理の腕前を確認したいですしね、適当に作ってみて、完成品はお土産にしていいですよ」
「えっ、いいんですか?」
マフダはパッと顔を上げる、
「お土産にしていいのは今日だけですからね、テラさん、サビナさんが来る迄はそれでお願いできますか?」
「はい、では、早速、サビナさんが来たら、講習会の準備ですから、あまり時間が無いかもですね」
テラはサッと腰を上げ、マフダもピョンと席を立つ、
「はい、では、宜しくね」
ニコリと二人を見送るエレインであった。
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