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本編
39話 チンチクリンな職人さん その4
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「一つ目は今朝方にテラさんと話していた事なのですが・・・」
エレインは下着専門店に関する案を開陳し、
「いかがでしょう?」
そう締めくくる、エフモントとフィロメナはなるほどと理解を示したが、当のマフダは難しそうな顔であった、
「あー、うん、とても魅力的な案ですが・・・」
フィロメナがマフダの様子を見ながら言葉を濁した、
「ですね、私としてもエフモントさんからお話しを聞いた限りの人物で想定した案です、こんなに真面目でおとなしそうなお嬢さんとは思いませんでしたから」
ニコリとマフダへ笑顔を向けるエレインである、
「そう思う?うん、そうなんだよね、対人関係の仕事は難しいと思うんだよねー、経営者なんてもっての外だし・・・」
フィロメナが首を傾げ、マフダもコクコクと何度も頷いた、
「ですので、お会いしてから思い付いたのが、二つあります」
エレインはソーダ水を一口飲み込むと、
「一つ目が最も無難な案です、私共は現在人手が足りない状況です、ですので従業員として雇用したいのです」
「えっ」
とマフダは驚いて顔を上げる、
「但し、この場合ですが、折角の服飾の技術を活かす場は少ないと思います、先程説明した通り、下着そのものを販売する事も、服飾に手を伸ばす事も考えておりません、飲食とガラス関係が商売の中心となります、ですので、3年も修行してらしたのにそれを無為にする可能性が大きいです、それでも良い・・・というのはあれですね、それでもやりたいとそう思って頂けるのであれば、従業員としてお力を貸して下さい」
「確かにそれが最も無難な方策ですな」
エフモントが頷く、
「そうね、それも面白いと思うな、あたしは、だって・・・こんな美味しいものにガラス鏡だよ・・・うん、真っ当な商売だし」
フィロメナも嬉しそうに頷く、
「そして、もう一つ・・・これはフィロメナさんに協力頂く事となるかな・・・いや・・・うん、先の話しだわね」
エレインは不穏な微笑みを浮かべ、
「どうでしょう、遊女さん専門の服飾店・・・というのは・・・」
突飛な発案である、マフダは勿論フィロメナとエフモントが言葉を無くし、テラさえも何を言っているのかとエレインの顔を凝視した、
「あら?変かしら?」
4人の反応にエレインは不思議そうに首を傾げる、
「いや、変ではないが・・・どうだろう・・・裏の商売になるんじゃないかな?」
エフモントが腕を組んで首を傾げ、
「そうだね・・・遊女を標榜するのはどうだろう・・・」
フィロメナも難色を示す、
「そうなんですか?でも、私は今日初めてフィロメナさんにお会いしたのですが、とても魅力的に見えます、テラさんはどうです?」
「え、あ、はい、確かに女性として魅力がありますね、はい、それに、こう言っては失礼ですが、知的でもあるし、とても優しいし・・・はい」
テラは突然の質問にたどたどしく答えた、
「・・・ありがとうございます」
フィロメナは困った顔で礼を口にする、
「そこで、そんな女性達が身に着けるものを・・・違いますね、遊女さんがより輝けるような、その魅力をより引き出すような・・・そんな服を手掛ける店・・・服だけではないですね、ちょっとした小物とか、勿論化粧もですが、そんな店があったら・・・どうでしょう、私としてはとても興味がありますわね」
エレインがそのなんとなく思い付いた案を口にするや否や、
「あの・・・それです・・・それなんです」
マフダが興奮して大声を上げると同時に勢いよく席を立った、両拳を固く胸元で組んで目には感激の為か涙まで貯めている、フィロメナはビクリと驚き、エフモントとテラは呆気にとられている、
「姉ちゃん達はとっても綺麗なんです、妹達も絶対に綺麗になるんです、でも、私はほらチンチクリンだから、でも、みんなの役に立ちたくて、それで、服の修行も頑張ったし、家事もやるんですけど、そうじゃないんです、綺麗な人をもっと綺麗にしたいんです、でも、今の服はなんか違うんです、姉ちゃん達の綺麗な身体の線が隠れちゃって、野暮ったいなって思ってて、でも裸は違うし、それで、それに・・・」
マフダはそこで言葉に詰まってしまった、恐らくずっと悩み考え続けていた事なのであろう、彼女の生活の中で、彼女のその生真面目さを十全に空回りさせて、そして、修行先で目にした下着の資料にある短い一文が彼女にとって天啓になったのだ、マフダがそれまで求めていたものの正体が正にそれであったのだから、
「ふふ、そうですよね、分かります」
エレインはニコリと微笑む、マフダはハッと気付いて顔を真っ赤にして座り直した、
「私もこの下着を身に着けるようになって、改めて既存の服がこう・・・何ともだらしなく感じるようになったんですよね、野暮ったいっていうのはまさにそうですよね」
エレインの言葉にマフダは激しく何度も頷いた、
「そこで、話しを戻すと、遊女さん用の服飾店の開業を目標にして・・・ま、いつ迄とかはまた別にして、それに向けて商会の従業員兼学園の研究員として席を置くというのはどうでしょう?」
「従業員は分かりますが、研究員ですか?」
エフモントが耳慣れない名前に疑問を呈す、
「はい、ご存知の通り私はまだ学生の身分なんです、斜向かいの学園寮が私の住まいでしてね、で、実はそこに研究所がありまして、現在、美容服飾研究会が準備中・・・と言っていいのかな?ま、そういうのがあるのです」
「美容で服飾ですか?学園で?」
フィロメナの興味を惹いたようである、
「はい、ま、その経緯については長くなるんであれですが、下着についてもそこで研究対象となっておりまして、さらに美容ですね、髪型とかお肌の手入れとか、あー、これは内緒なんですがガラス鏡もそこで生まれた品なのです、これも本当に色々あったのですが・・・」
「へー、そりゃまた・・・」
「うん、とんでもないね」
「そこで、先日そこの研究員に・・・ゆくゆくは講師になる予定の方と話しまして、良い人材がいれば紹介してもらうのはやぶさかではないとそう言われております」
「・・・そこに?これを?」
フィロメナは不安そうにマフダを見る、
「そうですね、あ、そうだ、マフダさんは読み書きはできます?」
「えっ、はい、読みは任せて下さい、書きは下手ですがなんとかなります」
「算学はどうです?」
「えっと、足し引きはできます、掛け割りも・・・できました・・・あの使ってないから自信ないです・・・」
「正直ですわね」
エレインは微笑み、
「そうですね、ですので、少しばかり大変ですが、その遊女さん用の店舗に向けて、当商会で仕事をしつつ、その研究員としても働いて頂く・・・」
エレインはそこまで言ってうーんと小首を傾げ、
「かなり大変かしら?」
テラへ問うと、
「・・・そうですね、あの人達の相手ですからね・・・でも、マフダさんなら大丈夫でしょう」
「そう思う?」
「はい、しかし、そうなると守秘する事が多いですよ、皆さん不思議なほどに気にしてませんが、軽口が死刑に繋がりかねないという事を忘れてはいけません」
あまりにも物騒な話しである、フィロメナとマフダはどこまで真実なのか懐疑的な顔であり、エフモントはそうなんだよなと頷いている、
「そうね、それがあるか・・・少々大袈裟に聞こえますが・・・そっか、慣れてしまっていたのかもしれませんね・・・」
エレインは大きく首を傾げつつマフダの様子を伺う、
「それは大丈夫かな・・・」
フィロメナがポツリと呟く、
「ほら、遊女は客の話しを他の客に話す事は絶対にしないし、それをやったら追放だから、この子もその厳しさは知ってるからね・・・」
しかし、どこか心配そうにマフダを見つめる、
「えっと、うん、そういうのは・・・はい、大丈夫・・・と言うのは変ですね、口は堅いです、はい」
マフダはコクリと頷いた、
「そうですか・・・そうですね、場合によってはご実家にも迷惑がかかりますからね、ま、あまりにもあまりにもなので、信じる人の方が少ない・・・そんな感じなんですけどね」
エレインはそう言って微笑むがテラは苦笑いを浮かべ、些末を知るエフモントも渋い顔である、
「ま、これはまだ、一案ですから、で、その店舗については経営をフィロメナさんか、または経営に長けた人、若しくは当商会で担ってもいいかなって思いますね」
「あー、なるほど、そういう事?」
「はい、下着専門店となると服飾のみの取扱いになって色々と微妙なんですが、そうですね、仮に考えて遊女専門店・・・だとちょっと違いますわね」
「いっその事、美容関連を集めた店にしてはいかがです?普段着や訪問着は一切取り扱わず、遊女さん用の服が置いてある店で、小物とか鏡とか、そういう形態であれば、文句もでないでしょう」
テラの発案である、
「それ良いわね、そうしましょうか・・・ま、先の話しですけどね、でもこの方向性であれば・・・」
「いいんじゃない、折角3年も修行したんだもの、それを活かさないと損だしね、この子の本音をやっと聞けたけど・・・まったく、チンチクリンの癖に・・・」
フィロメナは嬉しそうに笑顔をマフダに向けた、
「さて、一応、3つの案を出したけど、マフダさんにとって一番良い方策が一番大変な方策であると思います、さらに言えば、研究室との兼ね合いが上手くいかなかったら、単純に従業員になってしまいますが、ま、それはそれで当商会としては嬉しいかなと思いますわ、仕事はドンドン増えていく予定ですから」
「そうですね、それはそれでしっかりとした従業員です、修行等と寝惚けた事は言わせませんから」
テラがニヤリと微笑む、
「・・・えっと・・・」
マフダはどう答えるべきかフィロメナとエフモントを窺う、
「うん、今すぐに決めろは難しいですわね、そうですね、明後日またお会いしましょうか、こちらとしても研究所さんへ確認が必要ですし、就業条件もまとめておきたいですからね、それにマフダさんもお家の方と話してみてはどうですか?私の案以上に良い方策・・・そうですね、また別の視点で面白い商売の案が出てくるかもしれませんし・・・」
「あー、うん、そういう事なら・・・ほら、この子も落ち着いて考えたいだろうし、あたしとしてはこんなに良い条件は無いと思うけど・・・親父の意見も聞きたいかな・・・それでいい?」
フィロメナがマフダの様子を探りつつ答えた、マフダはその言葉に素直に首を縦に振る、
「そうですな、いや、面白い、エレイン会長、大したもんだ」
エフモントは大きく口を開けて笑い声をあげる、
「あ、そうだ、明日商工ギルドで下着作成の講習会があるのです、お手伝いとして来ませんか?話にあった研究所の人にも紹介できますよ」
テラが明日の予定を思い出してマフダに問う、
「えっ、明日ですか?」
「それもあったわね、ふふ、物事というのは思った以上に素早く動くものですよ」
エレインはフフンと鼻で笑った。
エレインは下着専門店に関する案を開陳し、
「いかがでしょう?」
そう締めくくる、エフモントとフィロメナはなるほどと理解を示したが、当のマフダは難しそうな顔であった、
「あー、うん、とても魅力的な案ですが・・・」
フィロメナがマフダの様子を見ながら言葉を濁した、
「ですね、私としてもエフモントさんからお話しを聞いた限りの人物で想定した案です、こんなに真面目でおとなしそうなお嬢さんとは思いませんでしたから」
ニコリとマフダへ笑顔を向けるエレインである、
「そう思う?うん、そうなんだよね、対人関係の仕事は難しいと思うんだよねー、経営者なんてもっての外だし・・・」
フィロメナが首を傾げ、マフダもコクコクと何度も頷いた、
「ですので、お会いしてから思い付いたのが、二つあります」
エレインはソーダ水を一口飲み込むと、
「一つ目が最も無難な案です、私共は現在人手が足りない状況です、ですので従業員として雇用したいのです」
「えっ」
とマフダは驚いて顔を上げる、
「但し、この場合ですが、折角の服飾の技術を活かす場は少ないと思います、先程説明した通り、下着そのものを販売する事も、服飾に手を伸ばす事も考えておりません、飲食とガラス関係が商売の中心となります、ですので、3年も修行してらしたのにそれを無為にする可能性が大きいです、それでも良い・・・というのはあれですね、それでもやりたいとそう思って頂けるのであれば、従業員としてお力を貸して下さい」
「確かにそれが最も無難な方策ですな」
エフモントが頷く、
「そうね、それも面白いと思うな、あたしは、だって・・・こんな美味しいものにガラス鏡だよ・・・うん、真っ当な商売だし」
フィロメナも嬉しそうに頷く、
「そして、もう一つ・・・これはフィロメナさんに協力頂く事となるかな・・・いや・・・うん、先の話しだわね」
エレインは不穏な微笑みを浮かべ、
「どうでしょう、遊女さん専門の服飾店・・・というのは・・・」
突飛な発案である、マフダは勿論フィロメナとエフモントが言葉を無くし、テラさえも何を言っているのかとエレインの顔を凝視した、
「あら?変かしら?」
4人の反応にエレインは不思議そうに首を傾げる、
「いや、変ではないが・・・どうだろう・・・裏の商売になるんじゃないかな?」
エフモントが腕を組んで首を傾げ、
「そうだね・・・遊女を標榜するのはどうだろう・・・」
フィロメナも難色を示す、
「そうなんですか?でも、私は今日初めてフィロメナさんにお会いしたのですが、とても魅力的に見えます、テラさんはどうです?」
「え、あ、はい、確かに女性として魅力がありますね、はい、それに、こう言っては失礼ですが、知的でもあるし、とても優しいし・・・はい」
テラは突然の質問にたどたどしく答えた、
「・・・ありがとうございます」
フィロメナは困った顔で礼を口にする、
「そこで、そんな女性達が身に着けるものを・・・違いますね、遊女さんがより輝けるような、その魅力をより引き出すような・・・そんな服を手掛ける店・・・服だけではないですね、ちょっとした小物とか、勿論化粧もですが、そんな店があったら・・・どうでしょう、私としてはとても興味がありますわね」
エレインがそのなんとなく思い付いた案を口にするや否や、
「あの・・・それです・・・それなんです」
マフダが興奮して大声を上げると同時に勢いよく席を立った、両拳を固く胸元で組んで目には感激の為か涙まで貯めている、フィロメナはビクリと驚き、エフモントとテラは呆気にとられている、
「姉ちゃん達はとっても綺麗なんです、妹達も絶対に綺麗になるんです、でも、私はほらチンチクリンだから、でも、みんなの役に立ちたくて、それで、服の修行も頑張ったし、家事もやるんですけど、そうじゃないんです、綺麗な人をもっと綺麗にしたいんです、でも、今の服はなんか違うんです、姉ちゃん達の綺麗な身体の線が隠れちゃって、野暮ったいなって思ってて、でも裸は違うし、それで、それに・・・」
マフダはそこで言葉に詰まってしまった、恐らくずっと悩み考え続けていた事なのであろう、彼女の生活の中で、彼女のその生真面目さを十全に空回りさせて、そして、修行先で目にした下着の資料にある短い一文が彼女にとって天啓になったのだ、マフダがそれまで求めていたものの正体が正にそれであったのだから、
「ふふ、そうですよね、分かります」
エレインはニコリと微笑む、マフダはハッと気付いて顔を真っ赤にして座り直した、
「私もこの下着を身に着けるようになって、改めて既存の服がこう・・・何ともだらしなく感じるようになったんですよね、野暮ったいっていうのはまさにそうですよね」
エレインの言葉にマフダは激しく何度も頷いた、
「そこで、話しを戻すと、遊女さん用の服飾店の開業を目標にして・・・ま、いつ迄とかはまた別にして、それに向けて商会の従業員兼学園の研究員として席を置くというのはどうでしょう?」
「従業員は分かりますが、研究員ですか?」
エフモントが耳慣れない名前に疑問を呈す、
「はい、ご存知の通り私はまだ学生の身分なんです、斜向かいの学園寮が私の住まいでしてね、で、実はそこに研究所がありまして、現在、美容服飾研究会が準備中・・・と言っていいのかな?ま、そういうのがあるのです」
「美容で服飾ですか?学園で?」
フィロメナの興味を惹いたようである、
「はい、ま、その経緯については長くなるんであれですが、下着についてもそこで研究対象となっておりまして、さらに美容ですね、髪型とかお肌の手入れとか、あー、これは内緒なんですがガラス鏡もそこで生まれた品なのです、これも本当に色々あったのですが・・・」
「へー、そりゃまた・・・」
「うん、とんでもないね」
「そこで、先日そこの研究員に・・・ゆくゆくは講師になる予定の方と話しまして、良い人材がいれば紹介してもらうのはやぶさかではないとそう言われております」
「・・・そこに?これを?」
フィロメナは不安そうにマフダを見る、
「そうですね、あ、そうだ、マフダさんは読み書きはできます?」
「えっ、はい、読みは任せて下さい、書きは下手ですがなんとかなります」
「算学はどうです?」
「えっと、足し引きはできます、掛け割りも・・・できました・・・あの使ってないから自信ないです・・・」
「正直ですわね」
エレインは微笑み、
「そうですね、ですので、少しばかり大変ですが、その遊女さん用の店舗に向けて、当商会で仕事をしつつ、その研究員としても働いて頂く・・・」
エレインはそこまで言ってうーんと小首を傾げ、
「かなり大変かしら?」
テラへ問うと、
「・・・そうですね、あの人達の相手ですからね・・・でも、マフダさんなら大丈夫でしょう」
「そう思う?」
「はい、しかし、そうなると守秘する事が多いですよ、皆さん不思議なほどに気にしてませんが、軽口が死刑に繋がりかねないという事を忘れてはいけません」
あまりにも物騒な話しである、フィロメナとマフダはどこまで真実なのか懐疑的な顔であり、エフモントはそうなんだよなと頷いている、
「そうね、それがあるか・・・少々大袈裟に聞こえますが・・・そっか、慣れてしまっていたのかもしれませんね・・・」
エレインは大きく首を傾げつつマフダの様子を伺う、
「それは大丈夫かな・・・」
フィロメナがポツリと呟く、
「ほら、遊女は客の話しを他の客に話す事は絶対にしないし、それをやったら追放だから、この子もその厳しさは知ってるからね・・・」
しかし、どこか心配そうにマフダを見つめる、
「えっと、うん、そういうのは・・・はい、大丈夫・・・と言うのは変ですね、口は堅いです、はい」
マフダはコクリと頷いた、
「そうですか・・・そうですね、場合によってはご実家にも迷惑がかかりますからね、ま、あまりにもあまりにもなので、信じる人の方が少ない・・・そんな感じなんですけどね」
エレインはそう言って微笑むがテラは苦笑いを浮かべ、些末を知るエフモントも渋い顔である、
「ま、これはまだ、一案ですから、で、その店舗については経営をフィロメナさんか、または経営に長けた人、若しくは当商会で担ってもいいかなって思いますね」
「あー、なるほど、そういう事?」
「はい、下着専門店となると服飾のみの取扱いになって色々と微妙なんですが、そうですね、仮に考えて遊女専門店・・・だとちょっと違いますわね」
「いっその事、美容関連を集めた店にしてはいかがです?普段着や訪問着は一切取り扱わず、遊女さん用の服が置いてある店で、小物とか鏡とか、そういう形態であれば、文句もでないでしょう」
テラの発案である、
「それ良いわね、そうしましょうか・・・ま、先の話しですけどね、でもこの方向性であれば・・・」
「いいんじゃない、折角3年も修行したんだもの、それを活かさないと損だしね、この子の本音をやっと聞けたけど・・・まったく、チンチクリンの癖に・・・」
フィロメナは嬉しそうに笑顔をマフダに向けた、
「さて、一応、3つの案を出したけど、マフダさんにとって一番良い方策が一番大変な方策であると思います、さらに言えば、研究室との兼ね合いが上手くいかなかったら、単純に従業員になってしまいますが、ま、それはそれで当商会としては嬉しいかなと思いますわ、仕事はドンドン増えていく予定ですから」
「そうですね、それはそれでしっかりとした従業員です、修行等と寝惚けた事は言わせませんから」
テラがニヤリと微笑む、
「・・・えっと・・・」
マフダはどう答えるべきかフィロメナとエフモントを窺う、
「うん、今すぐに決めろは難しいですわね、そうですね、明後日またお会いしましょうか、こちらとしても研究所さんへ確認が必要ですし、就業条件もまとめておきたいですからね、それにマフダさんもお家の方と話してみてはどうですか?私の案以上に良い方策・・・そうですね、また別の視点で面白い商売の案が出てくるかもしれませんし・・・」
「あー、うん、そういう事なら・・・ほら、この子も落ち着いて考えたいだろうし、あたしとしてはこんなに良い条件は無いと思うけど・・・親父の意見も聞きたいかな・・・それでいい?」
フィロメナがマフダの様子を探りつつ答えた、マフダはその言葉に素直に首を縦に振る、
「そうですな、いや、面白い、エレイン会長、大したもんだ」
エフモントは大きく口を開けて笑い声をあげる、
「あ、そうだ、明日商工ギルドで下着作成の講習会があるのです、お手伝いとして来ませんか?話にあった研究所の人にも紹介できますよ」
テラが明日の予定を思い出してマフダに問う、
「えっ、明日ですか?」
「それもあったわね、ふふ、物事というのは思った以上に素早く動くものですよ」
エレインはフフンと鼻で笑った。
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