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本編
36話 講習会と髪飾り その10
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「もー、だらしないですわ、エレインさんともあろう人が」
「パトリシア様、疲労で倒れる事はありますよ」
「何を言ってますの?エレインさんはまだ若いんですからね、疲労等と寝惚けた事を言っていてはなりません」
エレインの自室でパトリシアがプリプリと怒りを口にし、アフラが慌てて諫めるがパトリシアは治まらない様子である、3階での打ち合わせを終え、エレインが体調を崩して臥せっていると聞いたパトリシアは急遽アフラを呼び出し、大量の見舞を持ってエレインの自室へと乗り込んだのである、驚くオリビアと目を覚ましだいぶ調子を戻したエレインが出迎えた、
「アフラさん、パトリシア様のお怒りは嬉しいくらいです、人というのは体調が悪くなると優しくなる様子で、何ともこそばゆかったのです」
エレインが本調子では無いものの柔らかい笑顔を見せる、お世辞である事は丸わかりなのだが、
「ほら、見なさい」
パトリシアがアフラを見上げ、
「エレインさん、それは当たり前です、パトリシア様、今のはおべっかというものです」
アフラがピシリと言い放ち、
「あら」
とパトリシアがエレインへ視線を戻す、
「そうでもないですよ、オリビアは常以上に優しいですし、ソフィアさんも、ミナちゃんも来て頭を撫でて頂きました」
エレインは嬉しそうに微笑む、
「たまには倒れるのもいいもんだと、そう夢の中で思っておりました」
「まぁ、そうですわね、私も倒れてみようかしら?アフラが少しは優しくなるかも」
「パトリシア様」
ジロリとアフラが睨む、
「冗談ですわ」
パトリシアがチラリとアフラを見上げ、
「悪い冗談と良い冗談があるのです」
アフラは再びピシリと言い放つ、
「もう、御免なさいねエレインさん、アフラってば機嫌が悪いみたいで」
「いえいえ、お二人の顔を見れて嬉しいです、それにお見舞いまで頂いて感激です」
エレインは部屋の隅に積まれた木箱へと視線を移した、木箱の上には綺麗な鉢植えが置かれている、花の名前は分からなかったが良い匂いが漂っていた、
「申し訳ありません、エレイン様、パトリシア様はお見舞い慣れしていないのですよ」
アフラが溜息交じりで呟いた、
「なにせ王女様ですからね、病人の元を訪問する事がほぼ無いのです、快癒された後でお邪魔する事はあるのですが、それはほら、挨拶みたいなものですから」
「アフラ、何を言ってますの?」
パトリシアがジロリと見上げ、
「事実です、まったく、どこの世にお見舞いに来てだらしない等と言う人がおりますか、病人を見舞うという事は元気になるように励ますものです、ニコヤカに笑って優しく接するものなのですよ」
「む、そうなのですか?」
パトリシアは今度はオリビアに問いかけ、オリビアは何とも困った顔になる、
「むー、どうやら、アフラの言う事が正しいような気がしてきましたわね、エレインさん失礼しましたわ」
パトリシアも実に柔軟な思考の持ち主である、自分に非があると理解するが早いかエレインを気遣う方向へ舵を切ったらしい、
「そんな失礼なんて、私は明日にも元気になりますので、お気になさらず、病とは言えないものですから」
「それでもですわ、しかし、倒れるほど仕事が忙しかったのですか?なんならアフラを貸し出しましょうか?」
パトリシアは変な方向へ気を利かし始める、
「それではパトリシア様が寂しくなってしまいますよ、大丈夫です、オリビアもテラさんもジャネットさん達もおります、皆、優秀な人達ですわ、恐らくあれです、少しばかり気負いすぎたのです、オリビアにも鍛え方が足りないとそう叱られました」
エレインはニコリとオリビアを見上げる、
「まぁ、それならいいですが、私で出来ることがあれば言いなさいね、王国内であれば私に出来ない事は無いのですから」
パトリシアの力強すぎる労いの言葉に、エレインは苦笑いを見せつつ、
「そうですね、その時は御助力をお願いします」
「うん、それで宜しい」
二人は優しく微笑みあい、アフラとオリビアも口元を綻ばせた、
「さっ、パトリシア様、研究所へ行きましょう、サビナさんを待たせております」
「あ、そうね、エレインさんゆっくり休むのよ、オリビアさん、木箱の中に滋養に良いと聞く丸薬と薬草を漬け込んだワインがありますから、それを少量寝る前に飲ませて下さい、それと、イチジクとザクロとベリーが・・・」
パトリシアは言葉を続けながら腰を上げ扉へ向かう、
「はいはい、オリビアさん、処方の紙が入っております、それを参考にして下さい、では、お騒がせしました」
アフラがパトリシアを押し出すように退室し、残された二人は同時に溜息を吐いて、
「ふぅ、ありがたいことです」
「そうですね」
二人は静かに微笑みあった。
「ほう、これは大したものだな」
「はい、最初見たときはどうしたものかと思いました」
「すごいねー、これなーにー?」
「あー、ミナちゃん、ゴメン、触んないで、いじられると何が何やら分からなくなるのー」
パトリシアが3階へ戻ると木簡の山の前でクロノスとカトカが話し合っており、その山の中にミナとレインの姿が見え隠れしている、悲鳴を上げたのは姿が見えないがサビナであるらしい、
「あら、早いのね」
「まぁな、裏山に行って現地を見せておしまいだよ、ブレフトが目を回していたぞ、な、ミナ坊」
クロノスがミナに話しかけるが当のミナは木簡の山の中でかくれんぼでもしているらしく返事は無い、
「ありゃ・・・ま、ブレフトも判断基準が無いからな、そうだと言われればそうですとしか言えないさ」
「それもそうね、私達も同じようなものだけど、それで、ユーリさんが言ってたのがこれなのですわね」
パトリシアは思考を瞬時に切り替え木簡の山へと視線を移す、
「そうらしい、サビナ、解説を頼む、それと、例の下着のまとめたものはあるか?」
「はい、お待ち下さい」
サビナが山の中から大量の木簡を持って現れた、
「えーと、下着のまとめは・・・あ、商会に貸し出したままじゃないかな」
「そうですね、回収してきますね」
カトカがサッと動いて階段へ向かう、
「じゃ、先にこちらを、経緯は所長から聞いていると思いますが、こちらの木簡がほぼ全て服飾・・・というよりも布と糸、それから毛皮、そして染め方から、織り方・・・一切合切ですね、製糸から革のなめし加工まで、およそ服飾と言うものの領域に関わる全てと言っても過言ではない資料になります」
「なるほど、染め方に織り方か」
クロノスはふんふんと頷き、
「ふふ、凄いですね」
パトリシアは楽しそうにほくそ笑む、
「はい、学園長の集めた資料になりまして、洋の東西を問わずといいますか、各地方での独特な織物や文様等もありました、恐らくですが、学園長が放浪しつつ集めた資料の内のその一部であると思います、特筆すべきはその地方毎にまとめられている点ですね、実際にその物を収集する場合があるかと思いますがその点でも活用できる資料です、ただし全体的な検証は必要と思います、学園長自身もそのように仰っていました」
「なるほど、まぁ、そうだろうな、それでも大したもんだ」
「そうなのです、で、現在は各資料を分類整理している段階です、実はこの部屋に入りきらなかった資料も学園に置いてありまして・・・」
「なるほどな、ユーリが人手を欲しがるわけだ」
「そうなのよ、理解してくれたー」
「おや、御夫婦で興味があるとは嬉しい限りですな」
ユーリが転送室から姿を表し、その後ろには学園長の姿もある、
「おう、先生、急で申し訳ないな」
「いやいや、儂の研究に関する事じゃ、なんでも聞いてくれ、パトリシア様、御機嫌麗しゅう」
学園長は心底嬉しそうに笑顔を見せ、ゆっくりとパトリシアへ頭を垂れる、
「学園長もお元気そうね」
パトリシアはニコリと微笑み、
「こちらの資料は学園長が収集されたとか、素晴らしいですわね」
「おう、分かりますかな、儂が一番先に興味を持ったのが、アオウミサラグモの糸でしてな、この糸が丈夫で水に強いのですな、南の方のクモなのですが、そこの漁師がその蜘蛛糸で網や釣り糸を作るんですな、さらにその糸を縫製にも使うと聞きましてな、ハタッと気付いたんじゃな、各地の文化を収集する中で服飾とそれに類する事を収集しておらなんだと、そこで、巡遊を逆に戻りましてな各地の布に関する事を集め直したのじゃよ」
「そ、そんな物語があったのですか」
サビナが呆気にとられている様子である、
「おう、始まりはそうなのじゃ、同じように気付いたのがあれじゃ、焼き物じゃ、陶器もな、各地で様々に違う物でな、あれも土の違いと釉薬の違いそれと用途によって異なる面白い品であろう、さらにその装飾じゃな、あれは儀式が絡むものもあれば、単に遊びで入れられたものもある、利便性を考えてあるものもあれば、焼成の過程でそうなったと面白いから使っているなんてものもあってな、これは面白いとなってまた戻ってな」
「先生、それで、この資料についてなのだがな」
クロノスがこれは長話になると判断して強引に話を区切ると、
「サビナが手掛ける作業に人手が欲しいのだ、それと、学術とした場合研究者を増やす事になるだろ?」
「おう、ユーリ先生から聞いておる、儂は賛成じゃ、事務長にも聞いてみたが感触は悪くない、講師達はまぁそれぞれだな、野郎どもはまるで興味を示さなかったが、女性の講師達は数が少ないが興味を持っておった、生活科の講師なんぞは私がやればよかったと歯噛みしておったぞ」
学園長は明るく笑って、
「市井の物も興味のある者も多いであろうし、なにより、商売に直結する分野であろう、将来的な発展を考えても有益と思っておる、で、予算組はどう考えておるのだ?」
「話しが速いな、予算を増やすのは簡単だし、その予定だ、来月で期が変わるだろ、それに合わせて増額しよう」
「ほう、それはそれは、では、正式に事務長を巻き込んだ方が良いかのう」
「うむ、20日以降で予算組の打ち合わせがあるだろ、その場で正式決定とするが、ま、事務長にはその旨伝えておけば良いと思うが、今月は何かと忙しいのであろうしな」
「そうだの、今日も声を掛けたのだが、泣き言を言われてな」
学園長はカラカラと笑った、
「なるほど、そうなると」
「うむ、こちらの準備は整っているのう」
「そうですわね、楽しみですわ」
3人の瞳がサビナに向かい、
「えっと」
サビナは思わず身を屈めてしまう、
「あー、そういうわけだから、サビナしっかりやりなさいよ、みんな、あんたに期待しているんだから」
ユーリが楽しそうに笑った。
「パトリシア様、疲労で倒れる事はありますよ」
「何を言ってますの?エレインさんはまだ若いんですからね、疲労等と寝惚けた事を言っていてはなりません」
エレインの自室でパトリシアがプリプリと怒りを口にし、アフラが慌てて諫めるがパトリシアは治まらない様子である、3階での打ち合わせを終え、エレインが体調を崩して臥せっていると聞いたパトリシアは急遽アフラを呼び出し、大量の見舞を持ってエレインの自室へと乗り込んだのである、驚くオリビアと目を覚ましだいぶ調子を戻したエレインが出迎えた、
「アフラさん、パトリシア様のお怒りは嬉しいくらいです、人というのは体調が悪くなると優しくなる様子で、何ともこそばゆかったのです」
エレインが本調子では無いものの柔らかい笑顔を見せる、お世辞である事は丸わかりなのだが、
「ほら、見なさい」
パトリシアがアフラを見上げ、
「エレインさん、それは当たり前です、パトリシア様、今のはおべっかというものです」
アフラがピシリと言い放ち、
「あら」
とパトリシアがエレインへ視線を戻す、
「そうでもないですよ、オリビアは常以上に優しいですし、ソフィアさんも、ミナちゃんも来て頭を撫でて頂きました」
エレインは嬉しそうに微笑む、
「たまには倒れるのもいいもんだと、そう夢の中で思っておりました」
「まぁ、そうですわね、私も倒れてみようかしら?アフラが少しは優しくなるかも」
「パトリシア様」
ジロリとアフラが睨む、
「冗談ですわ」
パトリシアがチラリとアフラを見上げ、
「悪い冗談と良い冗談があるのです」
アフラは再びピシリと言い放つ、
「もう、御免なさいねエレインさん、アフラってば機嫌が悪いみたいで」
「いえいえ、お二人の顔を見れて嬉しいです、それにお見舞いまで頂いて感激です」
エレインは部屋の隅に積まれた木箱へと視線を移した、木箱の上には綺麗な鉢植えが置かれている、花の名前は分からなかったが良い匂いが漂っていた、
「申し訳ありません、エレイン様、パトリシア様はお見舞い慣れしていないのですよ」
アフラが溜息交じりで呟いた、
「なにせ王女様ですからね、病人の元を訪問する事がほぼ無いのです、快癒された後でお邪魔する事はあるのですが、それはほら、挨拶みたいなものですから」
「アフラ、何を言ってますの?」
パトリシアがジロリと見上げ、
「事実です、まったく、どこの世にお見舞いに来てだらしない等と言う人がおりますか、病人を見舞うという事は元気になるように励ますものです、ニコヤカに笑って優しく接するものなのですよ」
「む、そうなのですか?」
パトリシアは今度はオリビアに問いかけ、オリビアは何とも困った顔になる、
「むー、どうやら、アフラの言う事が正しいような気がしてきましたわね、エレインさん失礼しましたわ」
パトリシアも実に柔軟な思考の持ち主である、自分に非があると理解するが早いかエレインを気遣う方向へ舵を切ったらしい、
「そんな失礼なんて、私は明日にも元気になりますので、お気になさらず、病とは言えないものですから」
「それでもですわ、しかし、倒れるほど仕事が忙しかったのですか?なんならアフラを貸し出しましょうか?」
パトリシアは変な方向へ気を利かし始める、
「それではパトリシア様が寂しくなってしまいますよ、大丈夫です、オリビアもテラさんもジャネットさん達もおります、皆、優秀な人達ですわ、恐らくあれです、少しばかり気負いすぎたのです、オリビアにも鍛え方が足りないとそう叱られました」
エレインはニコリとオリビアを見上げる、
「まぁ、それならいいですが、私で出来ることがあれば言いなさいね、王国内であれば私に出来ない事は無いのですから」
パトリシアの力強すぎる労いの言葉に、エレインは苦笑いを見せつつ、
「そうですね、その時は御助力をお願いします」
「うん、それで宜しい」
二人は優しく微笑みあい、アフラとオリビアも口元を綻ばせた、
「さっ、パトリシア様、研究所へ行きましょう、サビナさんを待たせております」
「あ、そうね、エレインさんゆっくり休むのよ、オリビアさん、木箱の中に滋養に良いと聞く丸薬と薬草を漬け込んだワインがありますから、それを少量寝る前に飲ませて下さい、それと、イチジクとザクロとベリーが・・・」
パトリシアは言葉を続けながら腰を上げ扉へ向かう、
「はいはい、オリビアさん、処方の紙が入っております、それを参考にして下さい、では、お騒がせしました」
アフラがパトリシアを押し出すように退室し、残された二人は同時に溜息を吐いて、
「ふぅ、ありがたいことです」
「そうですね」
二人は静かに微笑みあった。
「ほう、これは大したものだな」
「はい、最初見たときはどうしたものかと思いました」
「すごいねー、これなーにー?」
「あー、ミナちゃん、ゴメン、触んないで、いじられると何が何やら分からなくなるのー」
パトリシアが3階へ戻ると木簡の山の前でクロノスとカトカが話し合っており、その山の中にミナとレインの姿が見え隠れしている、悲鳴を上げたのは姿が見えないがサビナであるらしい、
「あら、早いのね」
「まぁな、裏山に行って現地を見せておしまいだよ、ブレフトが目を回していたぞ、な、ミナ坊」
クロノスがミナに話しかけるが当のミナは木簡の山の中でかくれんぼでもしているらしく返事は無い、
「ありゃ・・・ま、ブレフトも判断基準が無いからな、そうだと言われればそうですとしか言えないさ」
「それもそうね、私達も同じようなものだけど、それで、ユーリさんが言ってたのがこれなのですわね」
パトリシアは思考を瞬時に切り替え木簡の山へと視線を移す、
「そうらしい、サビナ、解説を頼む、それと、例の下着のまとめたものはあるか?」
「はい、お待ち下さい」
サビナが山の中から大量の木簡を持って現れた、
「えーと、下着のまとめは・・・あ、商会に貸し出したままじゃないかな」
「そうですね、回収してきますね」
カトカがサッと動いて階段へ向かう、
「じゃ、先にこちらを、経緯は所長から聞いていると思いますが、こちらの木簡がほぼ全て服飾・・・というよりも布と糸、それから毛皮、そして染め方から、織り方・・・一切合切ですね、製糸から革のなめし加工まで、およそ服飾と言うものの領域に関わる全てと言っても過言ではない資料になります」
「なるほど、染め方に織り方か」
クロノスはふんふんと頷き、
「ふふ、凄いですね」
パトリシアは楽しそうにほくそ笑む、
「はい、学園長の集めた資料になりまして、洋の東西を問わずといいますか、各地方での独特な織物や文様等もありました、恐らくですが、学園長が放浪しつつ集めた資料の内のその一部であると思います、特筆すべきはその地方毎にまとめられている点ですね、実際にその物を収集する場合があるかと思いますがその点でも活用できる資料です、ただし全体的な検証は必要と思います、学園長自身もそのように仰っていました」
「なるほど、まぁ、そうだろうな、それでも大したもんだ」
「そうなのです、で、現在は各資料を分類整理している段階です、実はこの部屋に入りきらなかった資料も学園に置いてありまして・・・」
「なるほどな、ユーリが人手を欲しがるわけだ」
「そうなのよ、理解してくれたー」
「おや、御夫婦で興味があるとは嬉しい限りですな」
ユーリが転送室から姿を表し、その後ろには学園長の姿もある、
「おう、先生、急で申し訳ないな」
「いやいや、儂の研究に関する事じゃ、なんでも聞いてくれ、パトリシア様、御機嫌麗しゅう」
学園長は心底嬉しそうに笑顔を見せ、ゆっくりとパトリシアへ頭を垂れる、
「学園長もお元気そうね」
パトリシアはニコリと微笑み、
「こちらの資料は学園長が収集されたとか、素晴らしいですわね」
「おう、分かりますかな、儂が一番先に興味を持ったのが、アオウミサラグモの糸でしてな、この糸が丈夫で水に強いのですな、南の方のクモなのですが、そこの漁師がその蜘蛛糸で網や釣り糸を作るんですな、さらにその糸を縫製にも使うと聞きましてな、ハタッと気付いたんじゃな、各地の文化を収集する中で服飾とそれに類する事を収集しておらなんだと、そこで、巡遊を逆に戻りましてな各地の布に関する事を集め直したのじゃよ」
「そ、そんな物語があったのですか」
サビナが呆気にとられている様子である、
「おう、始まりはそうなのじゃ、同じように気付いたのがあれじゃ、焼き物じゃ、陶器もな、各地で様々に違う物でな、あれも土の違いと釉薬の違いそれと用途によって異なる面白い品であろう、さらにその装飾じゃな、あれは儀式が絡むものもあれば、単に遊びで入れられたものもある、利便性を考えてあるものもあれば、焼成の過程でそうなったと面白いから使っているなんてものもあってな、これは面白いとなってまた戻ってな」
「先生、それで、この資料についてなのだがな」
クロノスがこれは長話になると判断して強引に話を区切ると、
「サビナが手掛ける作業に人手が欲しいのだ、それと、学術とした場合研究者を増やす事になるだろ?」
「おう、ユーリ先生から聞いておる、儂は賛成じゃ、事務長にも聞いてみたが感触は悪くない、講師達はまぁそれぞれだな、野郎どもはまるで興味を示さなかったが、女性の講師達は数が少ないが興味を持っておった、生活科の講師なんぞは私がやればよかったと歯噛みしておったぞ」
学園長は明るく笑って、
「市井の物も興味のある者も多いであろうし、なにより、商売に直結する分野であろう、将来的な発展を考えても有益と思っておる、で、予算組はどう考えておるのだ?」
「話しが速いな、予算を増やすのは簡単だし、その予定だ、来月で期が変わるだろ、それに合わせて増額しよう」
「ほう、それはそれは、では、正式に事務長を巻き込んだ方が良いかのう」
「うむ、20日以降で予算組の打ち合わせがあるだろ、その場で正式決定とするが、ま、事務長にはその旨伝えておけば良いと思うが、今月は何かと忙しいのであろうしな」
「そうだの、今日も声を掛けたのだが、泣き言を言われてな」
学園長はカラカラと笑った、
「なるほど、そうなると」
「うむ、こちらの準備は整っているのう」
「そうですわね、楽しみですわ」
3人の瞳がサビナに向かい、
「えっと」
サビナは思わず身を屈めてしまう、
「あー、そういうわけだから、サビナしっかりやりなさいよ、みんな、あんたに期待しているんだから」
ユーリが楽しそうに笑った。
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