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本編
35話 秋のはじまり その1
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「もどったー」
ミナが日課を熟して食堂へ駆け込んできた、
「はい、お疲れさまー」
ソフィアはテーブルに置いた木簡と手にした黒板を見比べながら適当に出迎える、
「あと、お客様ー、ねーさんとおっちゃんとねーちゃん、一緒に来たのー」
ミナがソフィアに抱き着くと同時に、
「こんにちわー」
聞き慣れた声が玄関に響く、
「あ、来たわね、一緒に来たの?」
「うん、遊びながら来たー」
ミナは楽しそうにソフィアに報告する、
「そっか、良かったわね、あ、レインは?」
「なんじゃ」
レインが買い物籠をよいしょとテーブルに持ち上げた、
「あ、ありがとう、お疲れ様」
ソフィアは腰を上げ、
「じゃ、ミナ、お客様を入れてあげて」
「わかったー」
ミナは玄関へと走り、
「ソフィーが入ってーって言ってたー」
ミナの元気な声が玄関に響き、ブノワトの礼の言葉と同時にパタパタと身支度の音が聞こえる、
「今日は良い物あった?」
ソフィアがレインに問う、
「うむ、昨日と変わらぬの、鳥のいいのがあったぞ、それと岩塩と油は別で届くはずじゃ」
「そっか、ありがとう」
ソフィアは買い物籠を持ち上げて厨房へ向かい、すぐに食堂へ戻ると、ブノワトとブラス、コッキーがミナを相手にして楽しそうに笑っている、
「お忙しい所ごめんねー、あ、コッキーさんも、ありがとね」
「いえいえ、すいません、ねーさんに呼ばれちゃってー」
コッキーはミナの頭を撫でつけながら笑顔を見せ、
「だってー、あんたは工場から出てこないんだもん、少しは外に出ないと干からびるよ」
「えー、でもー、鏡作るの楽しいんですよー」
「分かる気はするけどさー」
「あ、そうだ、メロン美味しかったです、ありがとうございます」
コッキーが思い出して丁寧に頭を下げた、
「それは良かった、お礼はミナとレインに言って、私は何もしてないからー」
ソフィアは微笑みつつ、
「あ、お茶入れるわね、そこのテーブルに座ってて、ついでにその木簡と黒板適当に見てて」
ソフィアはサッと厨房へ戻り、
「そうだよねー、ミナちゃんとレインちゃんが作ったんだよねー、メロン美味しかったよー、ありがとねー」
「えへへ、美味しかった?えへへ」
嬉しそうに微笑むミナとニコニコと戯れるコッキー、ブノワトとブラスは示されたテーブルに着くと、木簡と黒板へ手を伸ばす、
「む、これはまた・・・」
ブラスは不思議そうにそこに示された図面を見つめ、
「うん、こっちも・・・なるほど、うん、コッキー連れてきて良かったな」
ブノワトもなるほどと黒板を注視した、
「あのね、あのね、あれー、ミナとレインが書いたのー」
ミナがコッキーの手を引いて暖炉の前に立ち、レインはめんどくさそうに鉱石の書物に手を伸ばす、
「へー、凄いね、わ、立派な絵だ、カッコイイー」
「でしょ、でしょ、あのね、裏山の木を書いたのー、ガクエンチョーセンセーとー、あのね、あのね、絵具を初めて使ったの、難しかったのー」
「そっかー、でも凄いなこれ、えっと、こっちがミナちゃんの絵?」
「そうだよー、分かるー?」
「分かる分かる、いいねー、元気な絵だねー」
「えへへ、レインのも凄いでしょー」
「そうだねー、レインちゃんのはとっても綺麗だねー、細かいなー」
「ねー、あ、あとね、あとね、これもガクエンチョーセンセーから貰ったの、お魚の本なんだよー」
「お魚の本?」
「うん、えっとね、えっとね」
ミナがマントルピースからよいしょと魚類の本を降ろし、暖炉の前のいつもの遊び場に本を開いて座り込む、
「ほら、これ、タコ」
「わ、え、タコ?」
「うん、えっとね、海にいるんだってー、でね、海見たのー、すんごいおっきいのー、真っ平なのー」
「おっきくて、真っ平?」
「そうなの、でね、お船がいっぱい浮いてたの、でね、でね、テラさんがね、お仕事落ち着いたらタコを持って来るって言ってたー」
「あら、えっこれ?」
コッキーが不思議そうにタコの絵図を見る、
「あのね、美味しいんだってー」
「え、これが?」
「うん、テラさんが言ってたー」
「へー、え、これ食べるの?」
コッキーはいよいよ難しい顔で絵図を眺め、
「はいはい、ミナー、コッキーさんを離してあげてー、お仕事のお話になるからー」
「えー」
「えー、じゃない、あ、そうだ、エレインさん呼んできて、暇だったら打ち合わせに顔を出してーって」
「えー、うー、わかったー」
ミナが不承不承と立ち上がり、
「ほら、本、ちゃんと片付ける」
「うー、わかったー」
見た目に分かるほどにノロノロと本を片付ける、
「もー、お仕事終わったら遊ぼうね」
コッキーがミナの頭に優しく触れると、
「ホント?分かった、じゃ、すぐに呼んで来る」
ミナはパッと表情を明るくして玄関へ走り、
「こら、走らない」
ソフィアに注意され、ミナはブーと不平を言いつつも事務所へと向かった。
「なるほど、実に単純ですね」
「そうね、でも、利便性は高いわよ」
「そうですわね、技術的には可能でしょうか?」
「なんとかなると思います・・・ただ、こっちは何とかなりますが、裏地が木で支えられるのかな・・・」
エレインが合流して食堂内では本格的に打ち合わせが始まった、ソフィアからガラス鏡の新製品に関する案が提出され、エレインは突然の事に歓喜し、ブノワトとコッキーも嬉しそうに傾聴する、しかし、それが作成可能かどうかについてとなると、職人達は難しい顔となった、
「そうねー、単純に考えて今の大鏡で3つ・・・4つ・・・それ以上かしら、人の大きさを全て映すとなるとこのくらいの大きさが欲しいと思うんだけど、工場を見た限り可能かなって思ったのよねー、どう?」
「そうですね、工程を考えれば可能です、しかし、木製裏地が問題になるかなと、現状の大きさであればそれほど気にはならないのですが、この大きさになると鏡全体にこう・・・歪みが出てくると思います、木だと・・・ガラスを支えられるのかな?それと全体的な過重も・・・」
コッキーは大きく首を捻った、
「うん、ちょっときついかな?裏地を厚くすれば可能かもだけど、作業が難しくなるかもなー」
ブラスも同様に渋い顔である、
「あ、じゃ、ほら、兄貴が今やってる鉄を磨いて銀の代用にならないかってやつ、あれならできるんじゃない?」
ブノワトがブラスに問う、
「あれかー、でも、研磨が上手くいかないってぼやいてたぞー」
「いや、そこはほら木と同程度に研磨して、表面が滑らかであればいいんだし、それを銀で覆って、ガラスを合わせればいいんじゃないかな?兄貴と親父は鉄に拘っているみたいだけど、鉄を銀のように輝かせる必要はないじゃない、そうすれば」
「そうなると・・・鉄じゃなくて銅でもいいんだよな、銅の方が柔らかいし、研磨も少しは楽だろうし」
「そうだよね、そうなると・・・出来そうかな?」
「できます?」
エレインが静かに問う、
「うん、やってみる価値はあるかな・・・これってあれですよね、床に置いてもいいんですよね」
「そうね、絶対に重くなる品だしね、床に置いて壁に打ち付けてしまわないと倒れてきたら大惨事よね、さっきも言ったけど開き戸と同じくらいの大きさが欲しいのよね、そうなるともう壁の一部が鏡になる感じ?・・・どう?・・・良いと思わない?」
「なるほど、壁ですか・・・」
「うん、壁の一部が完全に鏡になるんだよね」
「はい、全身が映せて・・・」
「すごい便利」
「その上、豪華ですわね」
「でしょー」
5人は静かにほくそ笑む、
「そうなると、こちらの床に置く方は、それほど難儀でも無いのかな?」
ブラスが木簡に書かれたもう一方の絵図を差す、それはソフィアが書いた実に簡単な図である、ソフィアはガラス鏡の新製品として3つの商品を考案していた、一つ目が先の話題に上がった人よりも大きな全身を映せる鏡であり、ソフィア曰く開き戸と同じくらいの大きさが欲しいとの事である、次に提案したのが、細く縦に長い鏡で、床に置いて衝立のように使う為に背面に支えとなる棒が図示されていた、
「そうですね、こっちであれば木製裏地でも可能かな?縦の長さはどの程度ですか?」
「そうね、ミナ・・・レインかな、レインの身長くらいあれば十分かしら?ま、私もチラッと見た事がある程度の品だから、あの人達・・・小柄なのよね」
ソフィアは何かを思い出して木戸へ視線を泳がす、
「なるほど、では、成人男性の半分くらいかな?」
「そうね、恐らくだけどその程度で十分よ、用途としてはこの二つは一緒なんだけど、こっちはほら出かける前に服装を直す程度の使い方なのかな?この寮だと、例えばこの部屋とか玄関の脇に置いて使う感じ?」
「そっか、そういうことですか」
コッキーが目から鱗と頷いて、
「確かに、そうですわ、これは、盲点でしたわ、そうですわよ」
エレインも気付いたようである、
「なに?どういう事?」
ブノワトが二人へ視線を移す、
「はい、この二つの鏡は顔とか髪とかを映すのではなくて、服装を映す鏡なんです」
「そうですわ、使い方を想像すると、鏡に大して一歩引いて全身を映して、細かい点は見えなくても良くて、こう、全体の調整をする感じですわね」
エレインとコッキーがやや興奮気味に説明する、
「そうね、そう考えて貰えば、この二つの目的が理解しやすいかしらね」
ソフィアはニコリと微笑む、
「なるほどなー」
「うんうん、そうなると、これは貴族様もだけど、服屋さんにも欲しいよねー」
「あ、それいいですわね、吊るしの服を自分で確認しながら選べるようになりますわね」
「あー、でも吊るしの服って中々買わないですよー」
「コッキー、エレイン会長は貴族様なのよー」
ブノワトがフルフルと頭を振る、
「あ、御免なさい、忘れてました、すいません」
コッキーは慌てて謝罪し、
「ふふ、大丈夫ですわ、私も忘れてしまいますから、それもしょっちゅう」
エレインは楽しそうに微笑み、
「え、エレインさんそれちょっとヤバくない?」
「大丈夫ですわ、貴族なんてそんなもんでしてよ」
エレインは鷹揚に高笑いを発し、平民4人はその様に苦笑いとなるのであった。
ミナが日課を熟して食堂へ駆け込んできた、
「はい、お疲れさまー」
ソフィアはテーブルに置いた木簡と手にした黒板を見比べながら適当に出迎える、
「あと、お客様ー、ねーさんとおっちゃんとねーちゃん、一緒に来たのー」
ミナがソフィアに抱き着くと同時に、
「こんにちわー」
聞き慣れた声が玄関に響く、
「あ、来たわね、一緒に来たの?」
「うん、遊びながら来たー」
ミナは楽しそうにソフィアに報告する、
「そっか、良かったわね、あ、レインは?」
「なんじゃ」
レインが買い物籠をよいしょとテーブルに持ち上げた、
「あ、ありがとう、お疲れ様」
ソフィアは腰を上げ、
「じゃ、ミナ、お客様を入れてあげて」
「わかったー」
ミナは玄関へと走り、
「ソフィーが入ってーって言ってたー」
ミナの元気な声が玄関に響き、ブノワトの礼の言葉と同時にパタパタと身支度の音が聞こえる、
「今日は良い物あった?」
ソフィアがレインに問う、
「うむ、昨日と変わらぬの、鳥のいいのがあったぞ、それと岩塩と油は別で届くはずじゃ」
「そっか、ありがとう」
ソフィアは買い物籠を持ち上げて厨房へ向かい、すぐに食堂へ戻ると、ブノワトとブラス、コッキーがミナを相手にして楽しそうに笑っている、
「お忙しい所ごめんねー、あ、コッキーさんも、ありがとね」
「いえいえ、すいません、ねーさんに呼ばれちゃってー」
コッキーはミナの頭を撫でつけながら笑顔を見せ、
「だってー、あんたは工場から出てこないんだもん、少しは外に出ないと干からびるよ」
「えー、でもー、鏡作るの楽しいんですよー」
「分かる気はするけどさー」
「あ、そうだ、メロン美味しかったです、ありがとうございます」
コッキーが思い出して丁寧に頭を下げた、
「それは良かった、お礼はミナとレインに言って、私は何もしてないからー」
ソフィアは微笑みつつ、
「あ、お茶入れるわね、そこのテーブルに座ってて、ついでにその木簡と黒板適当に見てて」
ソフィアはサッと厨房へ戻り、
「そうだよねー、ミナちゃんとレインちゃんが作ったんだよねー、メロン美味しかったよー、ありがとねー」
「えへへ、美味しかった?えへへ」
嬉しそうに微笑むミナとニコニコと戯れるコッキー、ブノワトとブラスは示されたテーブルに着くと、木簡と黒板へ手を伸ばす、
「む、これはまた・・・」
ブラスは不思議そうにそこに示された図面を見つめ、
「うん、こっちも・・・なるほど、うん、コッキー連れてきて良かったな」
ブノワトもなるほどと黒板を注視した、
「あのね、あのね、あれー、ミナとレインが書いたのー」
ミナがコッキーの手を引いて暖炉の前に立ち、レインはめんどくさそうに鉱石の書物に手を伸ばす、
「へー、凄いね、わ、立派な絵だ、カッコイイー」
「でしょ、でしょ、あのね、裏山の木を書いたのー、ガクエンチョーセンセーとー、あのね、あのね、絵具を初めて使ったの、難しかったのー」
「そっかー、でも凄いなこれ、えっと、こっちがミナちゃんの絵?」
「そうだよー、分かるー?」
「分かる分かる、いいねー、元気な絵だねー」
「えへへ、レインのも凄いでしょー」
「そうだねー、レインちゃんのはとっても綺麗だねー、細かいなー」
「ねー、あ、あとね、あとね、これもガクエンチョーセンセーから貰ったの、お魚の本なんだよー」
「お魚の本?」
「うん、えっとね、えっとね」
ミナがマントルピースからよいしょと魚類の本を降ろし、暖炉の前のいつもの遊び場に本を開いて座り込む、
「ほら、これ、タコ」
「わ、え、タコ?」
「うん、えっとね、海にいるんだってー、でね、海見たのー、すんごいおっきいのー、真っ平なのー」
「おっきくて、真っ平?」
「そうなの、でね、お船がいっぱい浮いてたの、でね、でね、テラさんがね、お仕事落ち着いたらタコを持って来るって言ってたー」
「あら、えっこれ?」
コッキーが不思議そうにタコの絵図を見る、
「あのね、美味しいんだってー」
「え、これが?」
「うん、テラさんが言ってたー」
「へー、え、これ食べるの?」
コッキーはいよいよ難しい顔で絵図を眺め、
「はいはい、ミナー、コッキーさんを離してあげてー、お仕事のお話になるからー」
「えー」
「えー、じゃない、あ、そうだ、エレインさん呼んできて、暇だったら打ち合わせに顔を出してーって」
「えー、うー、わかったー」
ミナが不承不承と立ち上がり、
「ほら、本、ちゃんと片付ける」
「うー、わかったー」
見た目に分かるほどにノロノロと本を片付ける、
「もー、お仕事終わったら遊ぼうね」
コッキーがミナの頭に優しく触れると、
「ホント?分かった、じゃ、すぐに呼んで来る」
ミナはパッと表情を明るくして玄関へ走り、
「こら、走らない」
ソフィアに注意され、ミナはブーと不平を言いつつも事務所へと向かった。
「なるほど、実に単純ですね」
「そうね、でも、利便性は高いわよ」
「そうですわね、技術的には可能でしょうか?」
「なんとかなると思います・・・ただ、こっちは何とかなりますが、裏地が木で支えられるのかな・・・」
エレインが合流して食堂内では本格的に打ち合わせが始まった、ソフィアからガラス鏡の新製品に関する案が提出され、エレインは突然の事に歓喜し、ブノワトとコッキーも嬉しそうに傾聴する、しかし、それが作成可能かどうかについてとなると、職人達は難しい顔となった、
「そうねー、単純に考えて今の大鏡で3つ・・・4つ・・・それ以上かしら、人の大きさを全て映すとなるとこのくらいの大きさが欲しいと思うんだけど、工場を見た限り可能かなって思ったのよねー、どう?」
「そうですね、工程を考えれば可能です、しかし、木製裏地が問題になるかなと、現状の大きさであればそれほど気にはならないのですが、この大きさになると鏡全体にこう・・・歪みが出てくると思います、木だと・・・ガラスを支えられるのかな?それと全体的な過重も・・・」
コッキーは大きく首を捻った、
「うん、ちょっときついかな?裏地を厚くすれば可能かもだけど、作業が難しくなるかもなー」
ブラスも同様に渋い顔である、
「あ、じゃ、ほら、兄貴が今やってる鉄を磨いて銀の代用にならないかってやつ、あれならできるんじゃない?」
ブノワトがブラスに問う、
「あれかー、でも、研磨が上手くいかないってぼやいてたぞー」
「いや、そこはほら木と同程度に研磨して、表面が滑らかであればいいんだし、それを銀で覆って、ガラスを合わせればいいんじゃないかな?兄貴と親父は鉄に拘っているみたいだけど、鉄を銀のように輝かせる必要はないじゃない、そうすれば」
「そうなると・・・鉄じゃなくて銅でもいいんだよな、銅の方が柔らかいし、研磨も少しは楽だろうし」
「そうだよね、そうなると・・・出来そうかな?」
「できます?」
エレインが静かに問う、
「うん、やってみる価値はあるかな・・・これってあれですよね、床に置いてもいいんですよね」
「そうね、絶対に重くなる品だしね、床に置いて壁に打ち付けてしまわないと倒れてきたら大惨事よね、さっきも言ったけど開き戸と同じくらいの大きさが欲しいのよね、そうなるともう壁の一部が鏡になる感じ?・・・どう?・・・良いと思わない?」
「なるほど、壁ですか・・・」
「うん、壁の一部が完全に鏡になるんだよね」
「はい、全身が映せて・・・」
「すごい便利」
「その上、豪華ですわね」
「でしょー」
5人は静かにほくそ笑む、
「そうなると、こちらの床に置く方は、それほど難儀でも無いのかな?」
ブラスが木簡に書かれたもう一方の絵図を差す、それはソフィアが書いた実に簡単な図である、ソフィアはガラス鏡の新製品として3つの商品を考案していた、一つ目が先の話題に上がった人よりも大きな全身を映せる鏡であり、ソフィア曰く開き戸と同じくらいの大きさが欲しいとの事である、次に提案したのが、細く縦に長い鏡で、床に置いて衝立のように使う為に背面に支えとなる棒が図示されていた、
「そうですね、こっちであれば木製裏地でも可能かな?縦の長さはどの程度ですか?」
「そうね、ミナ・・・レインかな、レインの身長くらいあれば十分かしら?ま、私もチラッと見た事がある程度の品だから、あの人達・・・小柄なのよね」
ソフィアは何かを思い出して木戸へ視線を泳がす、
「なるほど、では、成人男性の半分くらいかな?」
「そうね、恐らくだけどその程度で十分よ、用途としてはこの二つは一緒なんだけど、こっちはほら出かける前に服装を直す程度の使い方なのかな?この寮だと、例えばこの部屋とか玄関の脇に置いて使う感じ?」
「そっか、そういうことですか」
コッキーが目から鱗と頷いて、
「確かに、そうですわ、これは、盲点でしたわ、そうですわよ」
エレインも気付いたようである、
「なに?どういう事?」
ブノワトが二人へ視線を移す、
「はい、この二つの鏡は顔とか髪とかを映すのではなくて、服装を映す鏡なんです」
「そうですわ、使い方を想像すると、鏡に大して一歩引いて全身を映して、細かい点は見えなくても良くて、こう、全体の調整をする感じですわね」
エレインとコッキーがやや興奮気味に説明する、
「そうね、そう考えて貰えば、この二つの目的が理解しやすいかしらね」
ソフィアはニコリと微笑む、
「なるほどなー」
「うんうん、そうなると、これは貴族様もだけど、服屋さんにも欲しいよねー」
「あ、それいいですわね、吊るしの服を自分で確認しながら選べるようになりますわね」
「あー、でも吊るしの服って中々買わないですよー」
「コッキー、エレイン会長は貴族様なのよー」
ブノワトがフルフルと頭を振る、
「あ、御免なさい、忘れてました、すいません」
コッキーは慌てて謝罪し、
「ふふ、大丈夫ですわ、私も忘れてしまいますから、それもしょっちゅう」
エレインは楽しそうに微笑み、
「え、エレインさんそれちょっとヤバくない?」
「大丈夫ですわ、貴族なんてそんなもんでしてよ」
エレインは鷹揚に高笑いを発し、平民4人はその様に苦笑いとなるのであった。
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