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本編

34話 研究会と講習会 その2

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「ふう、こうなりますと店舗ですわねー」

「はい、本格的に探さないとですね」

六花商会の事務所でエレインとテラが大きく溜息を吐いた、

「新商品も考えないとなー、やっぱり3種類だけだと寂しい気がするんだよねー」

ブノワトが難しい顔でボリボリと頭を掻いた、3人は商工ギルドから帰ったばかりである、昨日、クロノスの城でのお披露目会の最中にギルドの使いが召喚状を携えて事務所を訪問しており、本日、ギルドマスターと事務員を向こうにして打ち合わせをしてきたのであった、

「お茶どうぞー」

マフレナが事務所へ茶を持って入ってくる、

「ありがとうございます」

ブノワトが礼を言い、エレインとテラはニコヤカに受け取った、

「ギルドの用ってガラス鏡の件だったのですか?」

マフレナも席に着くと、困った顔を並べる3人に問いかける、

「そうですね、ガラス鏡部会の発足が正式に認められまして」

エレインが答え、マフレナはオーと小さく快哉を上げる、

「で、正式名称も決まりました」

再びマフレナは快哉を上げるが、

「しかし」

エレインは腕を組み、

「はい、公表は店舗の開店を待ってとのギルドの決定ですね」

テラがエレインの言を継いだ、

「あー、あれですか?商品をちゃんと提供する為ですか?」

「そのようです、ま、ギルドの思惑・・・というか、懸念も分かるのですよね」

「そうですねー、協会を立ち上げたはいいがその商品を見る事も出来ないでは、ギルドとしても面目が立たないというか」

「はい、有名無実というか」

「なるほど、そうですよねー」

マフレナも事の問題を理解したようである、

「でも、事務員さんとかは相変わらず乗り気でしたし、ギルドマスターも言い難そうにしてましたから、ま、その点はほら、向こうとしても熟慮の末といった感じではあったのですが」

「でも、当初は貴族様相手の商売になるのでしょう?」

「その予定です、しかし、実店舗が在るのと無いのとでは、説得力が全然違いますから」

「そこなのですよね、実際の物も見せる事はできますし、技術を教える事も可能なのですが、頒布できない点で商売とは見なされない?ギルドマスターの意見も正しいと思います」

「ま、一歩前進と思いましょう」

エレインがそう締め括って4人は大きく溜息を吐いた、

「それでは、改めて店舗の対策を考えましょうか、同時に出来る事を熟しながら準備にかからないと、ギルドの人達にもブノワトさんのお父さん達にも申し訳がありません」

エレインは茶を啜って立ち上がると黒板へ向かう、

「必要なのは、店舗と人員それと新商品ですわね」

白墨を手にして黒板に必要事項を記入していく、やがてオリビアも合流して本格的な打合せが始まった。



「こんにちわー」

5人が喧々諤々と話し込んでいる所に来客のようである、マフレナがオリビアを制して対応にあたり、

「えっと、ギルドの担当の方との事ですが、どうされますか」

「ギルド?」

突然の訪問である為エレイン達は不思議そうに小首を傾げた、

「はい、お話ししたい事があるとの事ですが?」

マフレナは訪問客が口にした要件をそのままエレインに伝える、

「はー、ま、いいでしょうか、入ってもらって下さい、では、茶を」

オリビアが席を立ち、エレインは入り口近くのテーブルへ移動する、

「どうぞ」

マフレナの案内で姿を表したのはギルドの事務方で六花商会担当のミースであった、

「ありゃ、ミースじゃんどうしたの?」

ブノワトが驚いて声を上げる、

「あ、ブノワトもいたんだ、良かったー」

ニコヤカに微笑むミース、しかし、あっと表情を引き締めると、

「お忙しい所、突然お邪魔しましてすいません」

丁寧に一同へ頭を下げる、

「いえいえ、どうぞ、お座り下さい、お世話になっておりますから、畏まらないで下さい」

エレインは見知った顔という事もあり、柔らかい笑顔を見せる、

「ありがとうございます」

ミースは再び礼をするとエレインの差す席へ座った、

「先程は有難うございました、お骨折り頂いたのではないですか?」

エレインは社交辞令を口にする、こういったちょっとした所作に経営者として、社会人としてのそれが身に付いて来ているようで、ブノワトは思わずニヤリと微笑んだ、

「いえ、こちらこそ、その力足らずで、どうしても、その、実物を見せたりもしたんですが、御老人達は販路が確立されてないと駄目、の一点張りでして」

ミースはすまなそうに困った顔を見せる、

「いえ、十分に理解できます、長老方の意見も正しいと思いますわ」

エレインはやんわりと受け取り、ミースはどこかホッとしたように、

「そう言って貰えると、すいません」

再び謝意を示した、

「それで、どうしたの?仕事は終わった時間でしょ?」

ブノワトが遠慮なく問いかける、

「うん、じゃない、はい、えっとですね」

ミースはエレインの手前、言葉を正している様子である、ブノワトがエレインの隣りに席を移し、オリビアが茶を供すると、畏まって頭を下げた、

「すいません、あの、単刀直入で申し訳ないのですが」

ミースは上目遣いでエレインを伺いつつ、

「その、噂になっていまして・・・」

言い難そうに言葉を続ける、

「噂ですか?」

エレインとブノワトは同時に小首を傾げ、若干離れて様子を見ているテラとマフレナとオリビアも悪評でも立ったかと眉間に皺を寄せた、

「はい、その、皆さんの服装というか、衣装というか、その・・・」

ミースはチラリとテラとオリビアに視線を向ける、

「あっ」

「そっち?」

「あー」

「それもあったわねー」

「そりゃそうだ」

5人は緊張から一気に弛緩してそれぞれに短い納得の声を上げた、

「はい、そういう事です」

ミースは恥ずかしそうに微笑み、

「良かったー、また、悪い話しかと思っちゃったー」

ブノワトは笑顔になり、

「そうよねー、しっかり忘れてたわ、それもあったわね」

「はい、うんうん、そりゃ気付くよ、テラさんそれでギルドにいったんでしょ?」

マフレナがニヤニヤとテラの胸へ遠慮のない視線を向け、

「行きましたけどー、だって、エレインさんもブノワトさんも一緒じゃないですか」

「いや、あんたのは攻撃力が高いのよ」

マフレナがニヤリとテラを斜に睨む、

「その表現はどうかと・・・」

「いいえ、別格です」

「わ、オリビアさんまで酷い」

「自覚してるくせにー」

「そうですね、自覚してないわけがないです」

「えっ、オリビアさんホントに酷い」

「そんな事言って、嬉しいくせにー」

「あー、マフレナさんには嘘つけないかー」

テラがニヤーと下品に微笑む、

「ほらー」

「白状しましたね」

「ふふん、有効活用しているだけですわよ」

「ちょっと、それは私に対する当てつけかしら?」

奥に座る3人をエレインが一睨みする、

「あ、私は会長の味方ですよー、無いもの同盟ですからー」

マフレナがテラとオリビアから若干身を引き、

「う、オリビアさん、劣勢ですわ」

「そうですね、これも持てるが故の孤独であると思います」

ふふんとオリビアは余裕の笑みを見せ、

「あ、それカッコイイねー」

「はい、孤高の戦士は勁烈である故に孤高なのです」

「むきー、オリビアー、後が怖いですわよー」

「まぁ、それは楽しみです」

涼しい顔のオリビアに、エレインは頬を引き攣らせてフンと鼻息を荒くする、

「えっと、いいですか?」

「あー、ごめんなさいね」

エレインは一転笑顔を浮かべ、ミースは楽しそうに戯れる一同に呆気にとられつつ、

「その、秘訣というか、何かあるのでしょうか?」

「そうですわね、うーん、どうしましょう、テラさん、この件も進めないといけないですわね」

「そうですね、では、ミースさんに事の仔細を説明して、その上で施策についても意見を頂きましょう」

「ありゃ、考えてた?」

ブノワトがエレインとテラへ視線を送る、

「勿論ですわ、商売にならないとしても無料で広めるつもりもありませんでしたから、丁度いいですわ、ミースさんに知恵を借りましょう」

エレインはニヤリとミースに向き直ると、

「まずはですね」

下着についての講釈が始まり、ミースは真剣に耳を傾けるのであった。
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