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31話 スイカとメロンと干しブドウ その14
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「さてと」
とソフィアが食堂に降り、部屋の一角を閉める書物の山に手をかけようと思った瞬間、
「戻りました、あ、良かったソフィアさん」
玄関からエレインがフラリと入ってきた、やや憔悴のようである、
「あら、お帰り、向こうはどうだった?」
ソフィアが朗らかに振り向くと、
「御機嫌ようソフィアさん」
エレインの後ろには満面の笑みを湛えるパトリシアの姿があった、
「わ、リシア様、御機嫌麗しゅうございます?」
慌てたソフィアの慇懃な疑問交じりの挨拶である、
「ふふ、そう、驚かないで下さいまし」
パトリシアは機嫌の良い笑顔を浮かべ、
「ソフィアさん、聞きましたよ、また、面白いものを発案されたようで」
笑顔の裏に何やら秘めた思いが垣間見える、それは面白い物を見付けた者の、肉食獣が草食獣を見付けた時の、いや、蜘蛛が羽虫を捕らえた時の、殺気と食欲と愉悦を綯い交ぜにしたそれである、
「あはは、ソーデスネー、リシア様もお気に入り頂いたようですわね」
オホホホとソフィアは笑い、
「勿論ですわよ」
オホホホホとパトリシアも笑う、
「すいません、そういう事なので、御助力お願いしたいです」
エレインが困った顔で上目遣いとなった、
「へ、ええ、勿論、でも、テラさんとオリビアさんで十分じゃない?私必要?」
「はい、オリビアは別件で仕事中でして、支払いに歩いて貰っています、で、テラさんとジャネットさん達が事務所で待っております、そのリシア様とアフラさん、それとリシア様の側仕えの方々もいらしてまして、指導役が足りないのです」
エレインはすまなそうに話すが、ソフィアはまぁこうなるだろうな等とは思っていた、
「はいはい、予想通りかしら、じゃ、そっち行くわ、材料と道具はある?」
「はい、ジャネットさん達のは自分で買って来てました、リシア様の分も向こうから持ち込んであります」
「そっか、じゃ、そっち行くわね」
ソフィアがやれやれと玄関へ向かう、
「ふふ、ソフィアさん、あのようなものは、先にこちらで披露して頂かなくては」
パトリシアの何とも狂暴な視線がソフィアへ向かう、
「えー、でも、ほら、これもあれですよ、切っ掛けとしては、アフラさんが訪問着を仕立てるようにと心遣いを下さったからですわ、それはリシア様のお気遣いでもありましたでしょう?」
「ま、私が原因だと言いますの?」
「婉曲的にはそうですね、テラさんが困っているというので作ってみたのですよ、ほら、私は別に無くても良いですが、テラさんはとても魅力的になりましたでしょ」
「そうなのですよ、あれは暴力と呼ぶに相応しい魅力ですわ、あのような見せ方があったとは、もう、想像もしませんでした」
パトリシアは爛々と光る目でウットリとした表情になる、
「あはは、ま、一つ言えるのはやり過ぎない事ですわね、エレインさんを見てもお分かりのように丁度良い分量というものがあると思います、エレインさんがテラさんのような物をぶら下げていたら品が無いというもの、自分の魅力を活かせる程度を弁えるのが良さでございますよ」
「まぁ、なるほど、ふふ、ではその匙加減も含めて御教授頂きたいですわね」
パトリシアは不敵に笑うが、その瞳の奥に燃えていた加虐の炎が静かに潰え、純粋な好奇心が取って代わる、
「そうですね」
ソフィアはニコヤカな笑みを見せ、3人は連れ立って事務所へと向かうのであった。
「わ、何事です?」
屋敷に戻ったオリビアは素直に驚いて事務室の前で足を止めた、事務室内には大量の皮革と端切れをテーブルに広げて背を丸めるジャネット達の姿と、その間を忙しそうに歩き回るテラとソフィア、部屋の奥には一際目を引く存在が鎮座しており、それがパトリシアだと気付くのに時間はかからなかった、
「わ、今度はどうしたの?服屋さんでも始めるの?」
ブノワトがオリビアの脇から事務所を覗く、
「あ、オリビアお帰りー、ねーさん、こんちわです」
ジャネットが二人に気付いて顔を上げ、釣られてアニタ達も笑顔で振り返る、
「オリビア、こちらへ」
エレインもすぐに気付いて片手を上げるとオリビアを呼びつけた、
「わ、リシア様だ、挨拶した方が良いよね?」
ブノワトがこっそりとオリビアに問う、
「そうですね、訪問着の件もありますし」
うんそうだねとブノワトが頷いて二人はパトリシアの対面に座るエレインの元へ足を運んだ、
「リシア様、御機嫌麗しゅう」
オリビアが静かに頭を垂れ、ブノワトもそれに倣う、
「オリビアさん、ブノワトさん御機嫌よう」
パトリシアが柔らかい笑顔で二人を迎え、しかし、その視線は真っ直ぐにオリビアを射貫いた、それは無遠慮に胸に向かっている、
「なるほど、これがそうですわね、テラさんともエレインさんとも違う、本来の形・・・」
強い視線がオリビアを襲う、
「そうですね、あ、評判はどうでした?」
エレインの大雑把な質問がオリビアに向けられた、
「これのことですよね」
オリビアが自身の胸を見る、
「勿論です」
エレインがニコリと笑みする、
「評判と言われても困りますが、そうですね、男性の皆様は妙に浮足立っておられました、その、奇妙にニヤケている感じですね、皆さん機嫌は良かったですよ、おまけで干しアンズを一箱頂きました、明日届きます、それと、そうですね、視線は常に下にあった・・・というかやはり胸に向けられていたと思います」
オリビアが訥々と自身に向けられた反応を語る、
「女性の、ギルド職員さんも最初は驚いている風だったのですが、落ち着いてからもその視線は下でしたね、目線が合う事は殆ど無かったです」
オリビアは月末である為各仕入れ先と商工ギルドへの支払いに歩き、最後に寄ったヘッケル工務店からブノワトと共に事務所へ戻ってきたのである、
「なるほど、ブノワトさんの感想はどうですか?」
エレインがブノワトに問う、
「あ、えっと、その、素直に言っていい?」
いいですよとエレインが答え、
「あのね、びっくりした、それでスゲーってなって、目が離せなくなった、で、オリビアさんの言う通りだね、なんか胸に話しかけてたよ、うん」
ブノワトはオリビアの胸をチラチラ見ながら感想を口にする、
「そうですわよねー、ほら、テラさんとエレインさんのも御覧なさい」
パトリシアが楽しそうに二人を指差す、ブノワトはその指先に釣られるように二人に視線を移し、まぁと小さく声を上げ、
「わ、テラさんスゲー、エレインさん美しいー、なんか、なんか、あれですね、それぞれの魅力が全開って感じですね」
これまた素直な感想を口にした、
「そうでしょー、素晴らしいですわ」
何故かパトリシアが誇らしげである、
「えっと、もしかして、皆さんでそれを」
ブノワトがパトリシアに問う、
「そうですわ、こんなものを見せられては、ねー、女として・・・ね」
パトリシアはニヤリと微笑み、隣に座るアフラはなんとも困った顔となる、
「なるほど、えっと、えっと、私もその知りたいかなーって、思うんだけど・・・」
ブノワトがエレインとオリビアを上目遣いで見つめる、
「勿論ですわよ、ブノワトさんを仲間外れにはしませんわ」
エレインが胸を張る、
「嬉しいー、で、どういう事なんです?」
ブノワトが身を乗り出した、
「そうですね、あ、ソフィアさん、オリビアが来ましたので改めて講義をお願いできますか?その違いとか、理想的な形とか」
エレインは振り返ってソフィアを探しながら呼び掛けた、
「はいはい」
ソフィアがヒョイと顔を上げ黒板の前に進み出た、
では、と咳払いを一つして、
「えっと、じゃ、あれね、オリビアさんこちらへ、テラさんもお願いね、で、かなり現実的で容赦無い言い方になるけどその点は御理解下さい、その・・・何とも、ほら、個人の生まれ持った物の話しなので、こればかりはほら努力や経験で何とかなるものではないですから」
ソフィアは一同を睥睨しつつ、先にことわりの文言を述べた、オリビアとテラは少々緊張しながらもソフィアの隣に立つ、
「では、そうですね、まずはオリビアさんから」
そこからソフィアは先に作られた革紐を手にして、オリビアの身体を例にしつつ、その構造を説明していく、以前から人に教えるのが苦手であるとユーリに評されていたソフィアであるが、中々に堂に入ったものであった、それなりに慣れてきたのであろうか、
「で、ここね、重要な点としては、胸の位置ね、これは私の経験と観察からそうなんじゃないかなって事なんだけど、大体そうね15歳位の年齢の胸の位置が理想的なんじゃないかなって思うのね、あ、人によるわよ、で、その位置がオリビアさんの現状ね」
ソフィアがオリビアの胸を差す、なるほどとパトリシア周辺から声が上がった、
「はい、御理解頂けるかと思いますが、歳を取ると下がります、もう、あれね、若さを失うとともにこう疲れていく感じ?」
ソフィアはここが笑いどころと笑顔になるが、一同の真面目な視線が揺らぐ事は無い、
「ありゃ、えっと、それでね、私なんかはいま大体この辺かしら」
ソフィアは自身の笑いを誤魔化しつつ今度は自身の胸の位置を手で示した、
「大雑把に言って、拳一つ分・・・いや、それこそ胸一つ分と言っていいかもですね、で、これは私にこの下着を教えてくれた人が言ってたのですが、このオリビアさんの位置が理想的だなって事です、大きい人も小さい人もこの位置を目安にしてみて下さい、ま、簡単に言うと、胸の下のお腹の始まりと胸の境界といっていいのかな、えっと、書きますね」
黒板に横から見た人体を書き、
「ここですね、で、ここからこう山・・・丘かな?を作ってあげるようにすると美しくなるかなと思います、で、この革紐の下の部分をここで締めるんですね」
「えっと、すいません、その胸が下がるというのはどう下がるんですか?」
アニタがそろそろと手を上げた、
「はい、これも人によりますが、この下乳の部分は下がりにくいらしいです、但し胸そのものがこうズレる感じで下がります、で、大きい人はこう垂れる感じになりますね、小さい人はあまり変わりないかな、はっきり言ってしまいますけどね」
人体に線を増やして説明した、
「確かにそうですね、はい、言われてみれば確かに」
パトリシアの側仕えである高齢の女性が納得して頷き、その周囲の者も同様に理解を示した、
「あ、良かった、そうですね、若い娘たちは分からないでしょうけど、歳をとると分かりますよね」
ソフィアが嬉しそうに笑う、
「はい、そこでですね、まず、若い娘さん達はこの丘を自分の胸の大きさと形に合わせて柔らかい布で支えてあげるようにすれば十分です、オリビアさんのがそれです、女性の線が柔らかく見えて美しいでしょ?」
一同の視線がオリビアに向かった、オリビアは恥ずかしそうに俯いてしまう、
「で、贅沢を言えば、胸と胸を寄せてあげる・・・こう両側から持ち上げる感じですね」
ソフィアがオリビアの背後に回ってその両脇から手を差し入れ、脇の下から胸を持ち上げるような仕草となる、
「こうしますと、オリビアさんくらいに大きいと胸と胸で谷間が作れます、見せれないですけどね」
ソフィアは微笑み、オリビアは顔を赤くした、一同はふんふんと真面目に頷いている、
「無い人や小さい人はそこまでは考えずに胸の位置を理想的な高さで固定するようにして下さい、一度納めてみて苦しかったり痛かったりしたら駄目です、あくまで革紐で胸を支える、その点が重要です、いいですね、そうだ、先に言うべき事があったんだ」
ソフィアはオリビアの身体から手を離し、一度咳払いをすると、
「これは、大前提として申し上げたいのですが、大きければいいというわけではないです、大きく見せる事は簡単です、しかし、身体全体、それと顔との均衡です、細くたおやかな身体に不釣り合いに大きい胸は似合いません、無理して大きく見せる必要は無いです、これは絶対です、いいですね、それとは逆に小さくしようとすると、これも苦しいだけです、この下着は女性が動きやすくかつ、息苦しくなく、さらに着けやすい、個々人の身体に合わせた利便性の高い品であると認識して下さい、オリビアさんやテラさんのように見た目が美しくなるのは副次的な効果と割り切って下さい、いいですね」
ソフィアのやや強い口調を一同は真剣に受け止めたようである。
とソフィアが食堂に降り、部屋の一角を閉める書物の山に手をかけようと思った瞬間、
「戻りました、あ、良かったソフィアさん」
玄関からエレインがフラリと入ってきた、やや憔悴のようである、
「あら、お帰り、向こうはどうだった?」
ソフィアが朗らかに振り向くと、
「御機嫌ようソフィアさん」
エレインの後ろには満面の笑みを湛えるパトリシアの姿があった、
「わ、リシア様、御機嫌麗しゅうございます?」
慌てたソフィアの慇懃な疑問交じりの挨拶である、
「ふふ、そう、驚かないで下さいまし」
パトリシアは機嫌の良い笑顔を浮かべ、
「ソフィアさん、聞きましたよ、また、面白いものを発案されたようで」
笑顔の裏に何やら秘めた思いが垣間見える、それは面白い物を見付けた者の、肉食獣が草食獣を見付けた時の、いや、蜘蛛が羽虫を捕らえた時の、殺気と食欲と愉悦を綯い交ぜにしたそれである、
「あはは、ソーデスネー、リシア様もお気に入り頂いたようですわね」
オホホホとソフィアは笑い、
「勿論ですわよ」
オホホホホとパトリシアも笑う、
「すいません、そういう事なので、御助力お願いしたいです」
エレインが困った顔で上目遣いとなった、
「へ、ええ、勿論、でも、テラさんとオリビアさんで十分じゃない?私必要?」
「はい、オリビアは別件で仕事中でして、支払いに歩いて貰っています、で、テラさんとジャネットさん達が事務所で待っております、そのリシア様とアフラさん、それとリシア様の側仕えの方々もいらしてまして、指導役が足りないのです」
エレインはすまなそうに話すが、ソフィアはまぁこうなるだろうな等とは思っていた、
「はいはい、予想通りかしら、じゃ、そっち行くわ、材料と道具はある?」
「はい、ジャネットさん達のは自分で買って来てました、リシア様の分も向こうから持ち込んであります」
「そっか、じゃ、そっち行くわね」
ソフィアがやれやれと玄関へ向かう、
「ふふ、ソフィアさん、あのようなものは、先にこちらで披露して頂かなくては」
パトリシアの何とも狂暴な視線がソフィアへ向かう、
「えー、でも、ほら、これもあれですよ、切っ掛けとしては、アフラさんが訪問着を仕立てるようにと心遣いを下さったからですわ、それはリシア様のお気遣いでもありましたでしょう?」
「ま、私が原因だと言いますの?」
「婉曲的にはそうですね、テラさんが困っているというので作ってみたのですよ、ほら、私は別に無くても良いですが、テラさんはとても魅力的になりましたでしょ」
「そうなのですよ、あれは暴力と呼ぶに相応しい魅力ですわ、あのような見せ方があったとは、もう、想像もしませんでした」
パトリシアは爛々と光る目でウットリとした表情になる、
「あはは、ま、一つ言えるのはやり過ぎない事ですわね、エレインさんを見てもお分かりのように丁度良い分量というものがあると思います、エレインさんがテラさんのような物をぶら下げていたら品が無いというもの、自分の魅力を活かせる程度を弁えるのが良さでございますよ」
「まぁ、なるほど、ふふ、ではその匙加減も含めて御教授頂きたいですわね」
パトリシアは不敵に笑うが、その瞳の奥に燃えていた加虐の炎が静かに潰え、純粋な好奇心が取って代わる、
「そうですね」
ソフィアはニコヤカな笑みを見せ、3人は連れ立って事務所へと向かうのであった。
「わ、何事です?」
屋敷に戻ったオリビアは素直に驚いて事務室の前で足を止めた、事務室内には大量の皮革と端切れをテーブルに広げて背を丸めるジャネット達の姿と、その間を忙しそうに歩き回るテラとソフィア、部屋の奥には一際目を引く存在が鎮座しており、それがパトリシアだと気付くのに時間はかからなかった、
「わ、今度はどうしたの?服屋さんでも始めるの?」
ブノワトがオリビアの脇から事務所を覗く、
「あ、オリビアお帰りー、ねーさん、こんちわです」
ジャネットが二人に気付いて顔を上げ、釣られてアニタ達も笑顔で振り返る、
「オリビア、こちらへ」
エレインもすぐに気付いて片手を上げるとオリビアを呼びつけた、
「わ、リシア様だ、挨拶した方が良いよね?」
ブノワトがこっそりとオリビアに問う、
「そうですね、訪問着の件もありますし」
うんそうだねとブノワトが頷いて二人はパトリシアの対面に座るエレインの元へ足を運んだ、
「リシア様、御機嫌麗しゅう」
オリビアが静かに頭を垂れ、ブノワトもそれに倣う、
「オリビアさん、ブノワトさん御機嫌よう」
パトリシアが柔らかい笑顔で二人を迎え、しかし、その視線は真っ直ぐにオリビアを射貫いた、それは無遠慮に胸に向かっている、
「なるほど、これがそうですわね、テラさんともエレインさんとも違う、本来の形・・・」
強い視線がオリビアを襲う、
「そうですね、あ、評判はどうでした?」
エレインの大雑把な質問がオリビアに向けられた、
「これのことですよね」
オリビアが自身の胸を見る、
「勿論です」
エレインがニコリと笑みする、
「評判と言われても困りますが、そうですね、男性の皆様は妙に浮足立っておられました、その、奇妙にニヤケている感じですね、皆さん機嫌は良かったですよ、おまけで干しアンズを一箱頂きました、明日届きます、それと、そうですね、視線は常に下にあった・・・というかやはり胸に向けられていたと思います」
オリビアが訥々と自身に向けられた反応を語る、
「女性の、ギルド職員さんも最初は驚いている風だったのですが、落ち着いてからもその視線は下でしたね、目線が合う事は殆ど無かったです」
オリビアは月末である為各仕入れ先と商工ギルドへの支払いに歩き、最後に寄ったヘッケル工務店からブノワトと共に事務所へ戻ってきたのである、
「なるほど、ブノワトさんの感想はどうですか?」
エレインがブノワトに問う、
「あ、えっと、その、素直に言っていい?」
いいですよとエレインが答え、
「あのね、びっくりした、それでスゲーってなって、目が離せなくなった、で、オリビアさんの言う通りだね、なんか胸に話しかけてたよ、うん」
ブノワトはオリビアの胸をチラチラ見ながら感想を口にする、
「そうですわよねー、ほら、テラさんとエレインさんのも御覧なさい」
パトリシアが楽しそうに二人を指差す、ブノワトはその指先に釣られるように二人に視線を移し、まぁと小さく声を上げ、
「わ、テラさんスゲー、エレインさん美しいー、なんか、なんか、あれですね、それぞれの魅力が全開って感じですね」
これまた素直な感想を口にした、
「そうでしょー、素晴らしいですわ」
何故かパトリシアが誇らしげである、
「えっと、もしかして、皆さんでそれを」
ブノワトがパトリシアに問う、
「そうですわ、こんなものを見せられては、ねー、女として・・・ね」
パトリシアはニヤリと微笑み、隣に座るアフラはなんとも困った顔となる、
「なるほど、えっと、えっと、私もその知りたいかなーって、思うんだけど・・・」
ブノワトがエレインとオリビアを上目遣いで見つめる、
「勿論ですわよ、ブノワトさんを仲間外れにはしませんわ」
エレインが胸を張る、
「嬉しいー、で、どういう事なんです?」
ブノワトが身を乗り出した、
「そうですね、あ、ソフィアさん、オリビアが来ましたので改めて講義をお願いできますか?その違いとか、理想的な形とか」
エレインは振り返ってソフィアを探しながら呼び掛けた、
「はいはい」
ソフィアがヒョイと顔を上げ黒板の前に進み出た、
では、と咳払いを一つして、
「えっと、じゃ、あれね、オリビアさんこちらへ、テラさんもお願いね、で、かなり現実的で容赦無い言い方になるけどその点は御理解下さい、その・・・何とも、ほら、個人の生まれ持った物の話しなので、こればかりはほら努力や経験で何とかなるものではないですから」
ソフィアは一同を睥睨しつつ、先にことわりの文言を述べた、オリビアとテラは少々緊張しながらもソフィアの隣に立つ、
「では、そうですね、まずはオリビアさんから」
そこからソフィアは先に作られた革紐を手にして、オリビアの身体を例にしつつ、その構造を説明していく、以前から人に教えるのが苦手であるとユーリに評されていたソフィアであるが、中々に堂に入ったものであった、それなりに慣れてきたのであろうか、
「で、ここね、重要な点としては、胸の位置ね、これは私の経験と観察からそうなんじゃないかなって事なんだけど、大体そうね15歳位の年齢の胸の位置が理想的なんじゃないかなって思うのね、あ、人によるわよ、で、その位置がオリビアさんの現状ね」
ソフィアがオリビアの胸を差す、なるほどとパトリシア周辺から声が上がった、
「はい、御理解頂けるかと思いますが、歳を取ると下がります、もう、あれね、若さを失うとともにこう疲れていく感じ?」
ソフィアはここが笑いどころと笑顔になるが、一同の真面目な視線が揺らぐ事は無い、
「ありゃ、えっと、それでね、私なんかはいま大体この辺かしら」
ソフィアは自身の笑いを誤魔化しつつ今度は自身の胸の位置を手で示した、
「大雑把に言って、拳一つ分・・・いや、それこそ胸一つ分と言っていいかもですね、で、これは私にこの下着を教えてくれた人が言ってたのですが、このオリビアさんの位置が理想的だなって事です、大きい人も小さい人もこの位置を目安にしてみて下さい、ま、簡単に言うと、胸の下のお腹の始まりと胸の境界といっていいのかな、えっと、書きますね」
黒板に横から見た人体を書き、
「ここですね、で、ここからこう山・・・丘かな?を作ってあげるようにすると美しくなるかなと思います、で、この革紐の下の部分をここで締めるんですね」
「えっと、すいません、その胸が下がるというのはどう下がるんですか?」
アニタがそろそろと手を上げた、
「はい、これも人によりますが、この下乳の部分は下がりにくいらしいです、但し胸そのものがこうズレる感じで下がります、で、大きい人はこう垂れる感じになりますね、小さい人はあまり変わりないかな、はっきり言ってしまいますけどね」
人体に線を増やして説明した、
「確かにそうですね、はい、言われてみれば確かに」
パトリシアの側仕えである高齢の女性が納得して頷き、その周囲の者も同様に理解を示した、
「あ、良かった、そうですね、若い娘たちは分からないでしょうけど、歳をとると分かりますよね」
ソフィアが嬉しそうに笑う、
「はい、そこでですね、まず、若い娘さん達はこの丘を自分の胸の大きさと形に合わせて柔らかい布で支えてあげるようにすれば十分です、オリビアさんのがそれです、女性の線が柔らかく見えて美しいでしょ?」
一同の視線がオリビアに向かった、オリビアは恥ずかしそうに俯いてしまう、
「で、贅沢を言えば、胸と胸を寄せてあげる・・・こう両側から持ち上げる感じですね」
ソフィアがオリビアの背後に回ってその両脇から手を差し入れ、脇の下から胸を持ち上げるような仕草となる、
「こうしますと、オリビアさんくらいに大きいと胸と胸で谷間が作れます、見せれないですけどね」
ソフィアは微笑み、オリビアは顔を赤くした、一同はふんふんと真面目に頷いている、
「無い人や小さい人はそこまでは考えずに胸の位置を理想的な高さで固定するようにして下さい、一度納めてみて苦しかったり痛かったりしたら駄目です、あくまで革紐で胸を支える、その点が重要です、いいですね、そうだ、先に言うべき事があったんだ」
ソフィアはオリビアの身体から手を離し、一度咳払いをすると、
「これは、大前提として申し上げたいのですが、大きければいいというわけではないです、大きく見せる事は簡単です、しかし、身体全体、それと顔との均衡です、細くたおやかな身体に不釣り合いに大きい胸は似合いません、無理して大きく見せる必要は無いです、これは絶対です、いいですね、それとは逆に小さくしようとすると、これも苦しいだけです、この下着は女性が動きやすくかつ、息苦しくなく、さらに着けやすい、個々人の身体に合わせた利便性の高い品であると認識して下さい、オリビアさんやテラさんのように見た目が美しくなるのは副次的な効果と割り切って下さい、いいですね」
ソフィアのやや強い口調を一同は真剣に受け止めたようである。
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