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本編

30話 雨を降らせた悪だくみ その4

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「えっと、なんか、こっち来る度にその、大きな事に巻き込まれる感じがして怖いんですけど」

アフラが退出し、ブノワトが早速泣き言を言い始める、

「あら、なかなかに出来る経験ではないわよ、折角なんだから楽しみなさい」

ソフィアは終始発言が軽い、

「そうは言いますけどー」

ブノワトの泣きそうな顔に変化は見られない、それどころかより酷くなっている感すらある、

「いえ、ソフィアさんの前向きな姿勢はこの場合大事だと思いますよ、折角の機会ですもの、国王陛下にお目にかかる事なんて一生に一度あるかないかです」

「エレインさんまで、そんなー、さっき迄こっち側だったじゃないですかー」

「そうですけど、それはソフィアさんの傍若無人に対してですわ、リシア様とお付き合いする以上いつかはこうなるかなと思っておりましたし」

エレインは頬杖をつき遠い目で虚空を見る、

「あら、エレインさんは肝がお座りになっておられますわね」

ソフィアがニヤリと笑う、

「そうでしょうか、ソフィアさんには負けますわ、まったく、ソフィアさんがこちらに来られてから楽しい事ばかりです」

「あら、皮肉?」

「素直な所感です」

エレインとソフィアは不適に見つめ合う、

「あの私って今回必要です?」

恐る恐るとブノワトが問う、

「勿論ですよ、こういう場合は職人も必要です、作成者本人が居れば話しも弾みますから」

エレインの冷静な言葉に、

「そうですか・・・あの、私は一介の平民なんですよ、なんとかなりません?」

「あら、それは私だって同じよ」

ソフィアは鼻で笑い、

「それなら、わたくしは一介の子爵家令嬢でございますわよ、跪きますの?」

エレインはお嬢様言葉を使い右手の甲で口元を隠して、艶めかしい視線をブノワトへ送る、

「あ、エレインさんそれ言うー?」

「おっほっほっほ、結局貴族も平民も変わりませんわ、単に役割の違い、仕事の違いですわよ」

「そんな事言ってー」

「エレインさんもあれねだいぶ擦れてきたわね、それじゃあれよ貴族に戻った時に大変よ」

「そうでしょうか?リシア様やクロノス様と比べたら全然ですよ」

「あの二人を出したら駄目よ、ぶっ飛び過ぎてるわ」

「それこそ失礼ですよ」

エレインとソフィアは笑いあい、ブノワトは笑うべきかどうか判断出来ない様子である、

「さて、じゃ、どうしよう?訪問着か、今日行く?」

ソフィアは話題を変えた、

「あ、今日はどうでしょう?あの手の店って先触れが必要なので、せめて前日に予約を取らないと店にも入れてくれませんよ」

「そうなんだ、じゃ、お願いできる?」

「はい、午後からでもいいかな?オリビアに頼みます、えーと、5人分かな?私とソフィアさんとブノワトさんとテラさんと、オリビアにも良い服着せたいなー」

「そうね、オリビアさんはいつも作業着だからねー」

「あれが制服と思っているんですよあの娘は、お洒落しろっていっても分からないみたいで」

「そっか、職業病ってやつ?」

「いいえ、あれはずぼらと言って良い部類のあれです、同じような服しか持ってないので代わり映えしないんですよね、メイドだからって言ってますが面倒臭いんですよ、たぶん」

フンスと鼻を鳴らすエレイン、

「そうなると、今回はあれね、オリビアさんをお洒落にするのを主目的にしますか、それと、勿論だけどブノワトさんも」

ソフィアの瞳が怪しく輝き、ブノワトに突き刺さる、

「だから、私はー」

「遠慮しては駄目ですよ、今後ギルドの会合へ顔出すことも増えるでしょうし、この際2・3着訪問着を仕立てておきましょう」

「そ・・・んな、贅沢な・・・」

ブノワトはエレインの言葉に驚いている、

「そうね、ブノワトさんはガラス鏡関連の顔になるんだし、必要よ」

「そう・・・なのかな?そうですか?」

「そうなのですよ、だって部会の中心人物ですもの、何処に出しても恥ずかしく無いようにしないと、しめしってものがつきません」

「でも、ギルドの部会長なんてあれよ、そこらのおっさんばっかりだよ」

「それは存じてますわ、しかし、女性の部会長はブノワトさんだけですよ、女性である事を売りにして有効活用するべきです、さらにその若さです、新しい潮流を作るのは常に若者です、そうでなければならないのです、私はそう考えてブノワトさんを推したのですから」

「また、そんな事言ってー、もー」

「わー、エレインさんカッコイイー、やー、私が男だったら惚れちゃうわー」

ニヤニヤとうすら笑いを浮かべるソフィア、

「いえ、男だったらどうでしょう?言ってる事が女衒みたいですからね、あれです女のままの方が女も惚れちゃうかもですよ」

「あ、ブノワトさんなんて酷い事を、ジャネットさんじゃないんですから」

「えー、ジャネットさんって女の子にモテるの?あ、でも分かる感じするかなー」

「そうらしいですわよ、男にモテたいんじゃー、って時々言ってますからね、まぁ、どこまで本気かは知らないですが、あの娘の事ですから、半分妄想かもですね」

「それは酷いわよ」

ソフィアが苦言を呈すが、

「いえ、ソフィアさん、ジャネットさんには言わないで欲しいのですが、あの娘の地頭の良さは素晴らしいと思いますよ、しかし、ほら、お調子者でしょ、そのくせ変に無頼漢を気取るもんだから目立つんですよね、あの年頃だとどうしても目立つ人が人気者なので、そこを履き違えている可能性があるのですよ」

「あら、冷静な分析ね、これはあれかしら、エレインさんもジャネットさんの支持者なのかしら?」

「ジョーダンは止めて欲しいですわ」

即座に入ったエレインの拒否反応に、ブノワトとソフィアはニヤリと微笑んだ、こうしてエレインをからかいつつ打合せは進み、先方の都合が付けば明日にでも、買い出しに行く事と決定された。
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