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本編

27話 トイレと楽しいキャンプ その10

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「改めて見ると景色も良いな、あれは湖か、大分涼しくなったが、パトリシア、平気か?」

「まぁ、私を気にかけるなんて珍しい」

「そう言うな、城にいたら回りの者が甲斐甲斐しく動いておるだろう、俺が何かする前に誰彼とまぁ過保護な事だ」

「それは当然です、大事な跡継ぎですよ」

アフラが厳しい視線をクロノスへ送る、

「分っているわ、しかし、過ぎるのも問題と思うぞ」

「そうですわ、馬にも乗れないなんて、腕がなまってしまいます」

「いや、馬はよせ」

クロノスは真顔になる、

「はい、馬は勘弁して下さい」

アフラも真剣な視線である、

「なら、何なら宜しいの?久しぶりに剣でも振ろうかしら」

「あー、どうだろう、人形相手ならまぁいいのではないか?」

「そうですね、つわりも治まってきているようですし、主治医と相談しましょう」

「良かったわ、このまま籠の鳥かと思ってました」

「リシアを入れておける籠があったら見てみたいわ、あれか、鉄の牢獄みたいなものか、ドラゴンでも入れておけるような」

「あー、クロノス、後が怖いですわよ、そうだ、人形役を勤めて下さらない?遠慮しませんわよ」

「ほう、英雄様を人形扱いか、王女様は贅沢よな」

仲の良い夫婦の明け透けな会話である、居城では難しいものなのであろうか、二人は毒づきつつも笑顔であり、アフラも力の抜けた優しい顔となる、

「ふんふん、やはり火力は十分でしたが、周囲に付く汚れが気になりますね」

カトカが仕事の終わった溶岩板を調査している、

「そうだねー、うーん、店で使う分には十分そうなんだけど、あれかしら?油ものには弱いかしら?溶岩板を取り外せるようにしないと洗うのも難しいようねー」

サビナも自身の使った溶岩板に付いた焦げをヘラで掻き落としつつ答えた、

「あ、それ要望で出てました、ブロンパンを焼いた後に丸っと洗って良いかどうか確認しておいてって」

オリビアが参戦する、

「そうね、水洗いは可能ね、陶器板は割れない限り使用できるのは実証済み、但し、魔法陣の部分の汚れは誤動作の可能性もあるから、そこだけ綺麗な布で拭きとる感じで」

カトカが答え、

「あ、でも重いよね、現状はどう掃除してるの?」

「使い終わったら綺麗な布で清掃しております、油は使いませんし、それだけでも良いかなとも思いますが、やはりあれですね、良く使う部分が黒ずんできていて、そうではない部分で見た目の差が出てきています、汚れではないんですが、しようがない所かなとも」

「あー、使用劣化は確かにね」

「うん、でもそれだけ使って貰っているって事だから、半日の半分は起動させ続けているって感じでしょ」

「そうですね」

「一般家庭の作業と比べて何倍くらいかしら?軽く4倍以上は使われているって事かな、うん、そう考えると一般向けに販売しても十分使い出があるかな?あ、価格次第か」

「そうね、耐久性は十分と思っていいと思うわね、そうなると、クロノス様の意見も合わせて、陶器部分の改良と、どうだろう、溶岩板もいっその事鉄板に変えてみない?」

「あ、それいいと思います、鉄板で縁がこう盛り上がってる感じのあるじゃないですか、ああいうので取り外しができれば尚良いですよね」

オリビアが冷たくなった溶岩板の回りに壁を作るような仕草を見せる、

「なるほど、そうなると市販品の市場調査をしておきましょうか、それとも専用の形にして寡占しちゃう?」

「そうですね、陶器側の形状を変えて発熱部分の文様も変えてか・・・直接触れなくても温められるようにした方が良いのかな?それだと熱伝導が今一つなんだよなー、文様を隠したいけど、見えないように別の文様を上に描いてもいいのかな?うん、市販品となると真似されるのは仕方ないのかな?」

「あの、でしたら、どちらも使えた方が便利ですよ、それと薬缶もかけられるようにして頂くとより良いかなと」

「薬缶かー、案の一つにあったのよ、薬缶と一体化して冒険者相手に売れないかなって」

「一体化はどうでしょう?薬缶そのものが重くなったり、陶器の扱いに苦慮するようであれば本末転倒のような?であればこの半分のさらに半分程度の大きさで、薬缶とかあと鍋も・・・実はその大きさでいいのかなと思いますね、一般家庭で使う鍋であればそれほど大きくないですし、どうでしょう」

オリビアが自信無さそうに提案する、

「なるほど、小さくてもいいのか、うん、それいいわ、流石オリビアさん、やはり使う人の意見は大事だわ」

サビナが感心してオリビアに笑いかけ、

「うん、そうね、そうなると、小さくするのも考えないとか、文様が小さくなると火力が落ちるかな?でも・・・ま、やってみないとですね、それと材質による熱伝導の違いも調査したいかな、文様は直に触れさせないとだから・・・うん、耐久力に難があるかしら?ま、それもやってみてからね」

カトカも納得したらしい、うんうんと頷いている、

「良かった、期待してお待ちしてます」

オリビアの朗らかな笑みに二人は任せてと胸を張った、

「でね、でね、ソフィと作ったの、ブランコっていうの、楽しいのよ」

ブランコに座りミナがリンドを相手にしている、

「ふむ、揺らして遊ぶのですか、よく考えられていますね」

リンドは空いたブランコの縄に触れて軽く揺らしてみる、

「でしょ、でしょ、でね、エレイン様はへたっちょなの、ね」

「ま、ミナさん、なんですの?レインさんには勝負で勝ちましたわよ」

エレインは焚火の炎を眺めていたが自身の名を聞いて立ち上がった、

「えー、勝ったのは見たけど、へたっちょはへたっちょだったよー」

「まー、まだ言いますの?もう、そうですわね、大人用の作りましょう、この低さでは足が長いと不利ですわ」

「あー、ブランコのせいにしてるー、エレイン様オージョーギワ悪ーい」

「あら、難しい言葉を使えますのね」

「えへへ、ジャネットが言ってたのよ、えっと、素直に認められない事?」

「合ってますね、ミナさんは博識ですな」

リンドが笑い、

「もう、ミナさんには負けますわ」

エレインは優しく微笑むのであった。
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