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本編

27話 トイレと楽しいキャンプ その1

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その日は朝からバタバタと騒がしかった、騒がしいのは毎朝の事であるが、現場研修へ向かうジャネットとケイスが常とは違う出で立ちであり、その為に何事かとミナがはしゃいだ上にユーリも常とは違う服装であった為、興奮したミナが、

「ミナも行くー、湖行きたいー、野営したいー」

ケイスから仔細を聞いたミナがソフィアの足に纏わりついた、

「あー、あなたは嫌ってほどしてるでしょう」

「やー、皆で野営したいー、楽しそー、湖行きたいー」

困り顔でソフィアが諭すがミナはごねるばかりであった、

「そんな楽しいもんじゃないわよ、ミナはあれ?ナイフだけで焚火起こせる?」

ユーリが楽しそうに聞くと、

「むー、出来るもん、ジャネットに出来るならミナにも出来るもん」

「えっ、私、ミナよりも下?」

驚いて悲鳴を上げるジャネットに皆は明るく笑い、

「そりゃ、そうかもだけど」

笑って答えるユーリ、

「先生まで・・・うー、酷いー」

早朝から泣き崩れるジャネット、勿論嘘泣きであるが、それなりに癪に触っている様子である、

「あっはっは、ミナは何も出来んじゃろ、前に野営した時は、寒いーって、虫が怖いーってタロウにしがみついておった癖に」

「むー、知らないー、今日は寒くないもん、虫も怖くないもん、レイン、キライ」

ふんと勢いよくソッポを向くミナ、

「そうよねー、でも、ミナはあれよ薪を拾うのは上手なのよ、ね」

ソフィアが楽しそうにミナの頭を撫でつけた、

「うん、上手だよ、上手だよ、えっとね、地面に落ちてる枝で、乾いて軽い枝が良いの、濡れてるのとか重いのは駄目なの、それとね、松ぼっくりとかの乾いたのは火を起こす時に便利なのよ」

ミナは喜々として少ない知識を披露する、

「へー、凄いなミナっち、こりゃ本当にミナっちの方が上手いかもなー」

顔を上げるジャネットに、

「でしょー」

と得意気に胸を張るミナ、

「そうですねー、私は野営の経験無いですよ、ここに来る時?学園に入る前の長旅で一回野宿したかなー、宿場町の中でですけど」

ケイスが懐かしそうに呟いた、

「そういうのは野宿って言わないんじゃない?」

「そうなんですか?」

「どうせ、あれでしょ、馬小屋で寝たんでしょ、宿屋がいっぱいで」

「わかります?」

「うん、私もそんな感じだったよ、あれでしょ貴族様が貸し切りにしちゃってしようがなくでしょ」

「そうです、そうです、たぶんですけど、学園に入学する為の貴族様の御一行と鉢合わせしちゃったんですよ」

「そうそう、あれはねー、いくら貴族様でも貸し切りは無しだよねー」

ケイスとジャネットが明るく愚痴るが、何とは無しに聞いていたエレインは、

「まー、そういう事もあるわよね」

と無関心を装いつつも自分を非難しているように聞こえて居た堪れなくなってしまう、

「そうね、二人は・・・ユーリはいいとして、今朝はしっかりと食べていきなさい、暫くあれよ現地調達か干し肉と硬パンでしょ、運が良ければ川魚?」

「そう言えばそうですね」

「うん、そっか、ソフィアさんの料理とお別れになってしまう」

「私はいいってどういうことよ」

「あんたはいいでしょ、野営なんて飽きるほどやってるんだから」

「勿論よ、飽きてるわよ」

「野営なんてね1日で飽きるわよ、今日もあれでしょ、移動して焚火の準備と食事の準備で終わりでしょ、で、夜は交代で見張り番なんだから、今のうちに力付けときなさい、嫌になっても帰ってこれないんだから、あー、虫除け持った?あると便利よ」

「あ、えっと、無いっす」

「あ、私も」

「いらん、いらん、そんな物は現地調達よ、甘やかさないでよねー」

ユーリが大袈裟に手を振った、

「そう、それもそうね」

ソフィアはあっさりと引き下がる、

「え、マジですか」

「そりゃそうよ、今年の現場研修は実戦形式よ、どんな土地でも眠れるようにしっかりと叩き込んであげるからね、去年みたいなお遊びとは違うから、心するように」

「えー、去年も大概でしたよー」

ジャネットの悲鳴に、

「あれで大概なんて、それこそ大概よ、いい?自然なめんな、これが今年の主題よ、いいわね」

ユーリの剣幕にジャネットとケイスは硬い表情で青ざめた、

「むー、ミナもー」

ミナは尚泣きそうな顔でソフィアを見上げる、

「んー、じゃ、そうだ、裏山で野営する?あそこなら安全だしね」

「ホント?」

ピョンとミナが飛び跳ね、

「する、野営する、裏山ね、今日?今日?」

「そうねー、天幕有ったかしら?無くてもまぁ何とかなるか」

「やったー、野営だ、野営だ、ミナも、ミナも野営だよ、決定だよ」

ピョンピョンと飛び跳ねるミナ、

「まったく物好きよねー」

喜ぶミナを一同は微笑ましく眺めた。



「おはようございまーす」

朝の喧噪を終え、ミナとレインが読書に励んでいると玄関先で明るい声が響いた、レインが出迎えるとカトカとサビナが足を拭いているようである、

「ありゃ、今日は表から御出勤かや」

「あ、おはようレインさん」

カトカがニコリと微笑み、

「そうなのよ、ほら、所長が研修に行っちゃったから、転送陣が使えなくてね、ま、それもいっかって事で今日は歩いて来たの」

「なるほどのう」

レインは途端に興味を無くして引っ込んだ、

「ありゃ、素っ気ない」

「そりゃそうよ、別にお客様じゃないし」

二人は慣れた仕草で足を拭き終えると、食堂に入ってくる、

「あ、そっか、お二人は勉強中ね、偉いわねー」

ミナがフッと顔を上げ、

「あ、カトカとサビナだー、どうしたのー」

「んー、今日は表から御出勤なのよー」

「へー、何か今日はあれね、皆違うのね」

楽しそうに笑うミナ、

「皆違うのかー、そういう日もあるよねー」

「そうね、そうね、あ、そうだ、ほら、オジギソウも起きたのよ、昨日はちゃんと寝てたのよ、偉いよね」

ミナはピョンと席を立ち陽の当たる場所に置いた鉢植えに駆け寄った、

「あら、ほんとだ、葉っぱを広げているとちゃんと草なのね」

「そうですね、昨日は皆してツンツンするもんだから、ゆっくり見れなかったけど、こうしてると雑草って言ってしまっていいくらい何気ない草ですね」

「そうなの、だからね、さっきお庭でね、いろんな葉っぱをツンツンしたけど動かないの、やっぱりこれだけみたいなの」

「なるほど、流石、実践派のミナさんですね」

「うんうん、実地での観察は書以上の知識を齎します」

「カトカとサビナも触る?あのね、暗いところに持っていくとすぐに寝ちゃうのよ」

「へー、それも実験済みですか?」

「うん、あのね、えっと、倉庫の暗い所に持っていったらね全部パタンて閉じちゃうの」

「興味深いですね」

「はい、見せて頂けますか?」

「うん、勿論」

ミナは鉢植えを手にすると二人を従えて倉庫へ駆け込む、やがて、小さな歓声の声が上がり、ミナの得意気な解説が倉庫内を満たすのであった。
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