セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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26話 優しい小父さん達と精霊の木 その1

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翌日、昼を過ぎた頃合いに事務所には続々と人が集まってきた、ヘッケル工務店からいつもの二人に加え、ブラスの実父であるエト・ヘッケルが、メーデルガラス店からは、バーレントとコッキーが、それとこちらも二人の実父である、ロブ・メーデルが姿を表し、さらにフローケル鍛冶屋のディモ・フローケルがヘッケル工務店と共に事務所の玄関を潜った、この人物はブノワトの実父である、対して六花商会はエレインとテラ、マフレナが一行を出迎えた、

「お忙しい所、ありがとうございます」

参加者の顔ぶれを見ながらエレインはニコヤカに挨拶から始める、

「こちらこそ場を提供頂いて感謝致します、会長には今回の件、何から何まで御尽力頂きまして誠に感謝の念に堪えません」

一同を代表してエトが慇懃に頭を下げた、堅苦しい口調である、

「あー、緊張しないで大丈夫だよ、失礼な言葉でなければ」

常とは違う義父の様子にブノワトが小声で忠告する、

「そうは言うがよ」

エトは非難の目線をブノワトに送るが、

「そうですね、ブノワトさんの言う通りですよ、話しやすい言葉で結構です」

エレインが微笑み、

「しかし、そうですね、色話は勘弁して下さい、それと下品な話しも、慣れていないので」

続いたエレインの言葉に、親父達は苦笑いを浮かべ、その息子、娘は軽く笑った、

「それでと、今日の主旨としましては明日ギルドにて開催される領主様とギルド長を交えての会議に対する打合せとなります」

「領主様も本気なんだねー、もう少し先になるかと思ってたー」

「そうよね、領主様って忙しいんでしょ?」

ブノワトとコッキーが砕けた調子で発言する、

「それだけ期待されているのですよ、実際に皆さんは関わって頂いていますので、あの商品の重要性は理解されておると思うのですが」

エレインはチラリと壁際に並んだ鏡を見る、皆がそちらを一瞥し、

「そうだよなー」

と改めて自分達の関わった品の価値を思い直した、

「そうなると、まずはある程度、その協会、又は部会の名称と、大雑把な規約それと代表は・・・ブノワトで決定でいいのかな?そういった諸々を決めていった方がいいと思うのな、領主様は商品についてはもう御存知であるとの事だし、ギルド長か、あれがこいつを見たら、おったまげるぞ」

ロブが具体的な議題を提出する、ロブは商工ギルド内でのガラス産業部会の理事を勤めている、やはり現役の理事ともなれば部会運営に必要な事がある程度頭に入っているのであろう、

「そうだな、そうなると打合せもくそも無くなるからな」

ディモが頷くが、

「あっ、くそっていうのは拙いか?」

フッと顔を上げて隣に座る娘に小声で問うが、一同の耳には当然のように入り、

「その程度は構いませんよ」

エレインは笑い、皆も微笑んで、

「そうかい、そりゃ、ありがてぇ」

薄くなりつつある後ろ頭をボリボリと掻いた、

「そうですね、では、本日大雑把にでも決めておくことを先に出しましょう、その通りになる事は無いでしょうが、明日の打合せを順調に進める事を念頭に置いて意見を頂ければと思います」

エレインがテラに目配せすると、テラは黒板に各項目を書き出した、

「まずは、部会名称、規約、代表、他にはありますか?」

「はい、新規に参加する場合の条件とかは規約に含まれますか?」

バーレントが手を上げる、

「うん、それは規約になるが、最も大事な点だな、ちゃんと決めとかないと駄目だな」

ロブが答える、テラが項目に付け足し、

「あ、ギルド内に事務所を置けるんでしょ?常駐する人とか必要?」

「事務所というか机は貰える筈だな、但し人を置くかどうかはこっちの裁量だな、部会に用があるなら代表に直接って事もあるぜ」

「なるほど、それはどうだろう、始めのうちは必要かなぁ?コッキー、事務員やる?」

「えー、ギルドで座り仕事ですかー、あー、駄目っす」

「あはは、こんなんが座ってたら部会が舐められちまうよ」

「あー、親父ヒデー」

「でも、一人は欲しいかな?エレインさんのところから出せない?奥様方で出来る人いないかな?ほら、時間も公務時間で良いわけだし」

公務時間とは朝の鐘から午後一番の鐘の間の時間の事である、

「うーん、勤務時間は大丈夫かと思いますが、仕事内容次第かなと思います」

「あー、そうだよねー」

「ま、事務所ができたらでも構わないか」

「そうですね、他にはありますか」

「はい、所属する事によっての利点?それと新規会員への誓約とかも叩き台が欲しいと思います」

バーレントの発言はいちいち真面目である、

「そうだな、あ、そうか、部会設立の主旨も明確にしておこうか、ほら、ガラス鏡の技術の秘匿や利益の独占は当然・・・あ、ギルドの約款に抵触するのかな」

ブラスが首を捻る、

「利益の独占と明確に謳う事はできないでしょうね、私としてもそれは望んでいないです、領主様としては暫くの間はこの技術をモニケンダム内に留めたいと考えている様子でした、皆さんが知っての通り、制作に於いては他業種の技術が必要とはいえ再現は難しく無い品でありますから」

「そっか、そうなると、逆にあれかな?やりたいとして手を上げた工場とかを積極的に引き込んでいく感じにしたいのかな?」

「そうでしょうね、領主様としては一大産業として根付かせたいとの思いもあると思いますし、私としてもそうなっていければ良いと考えてます」

「しかし、そうなると会長はあまり儲からないかもしれないぞ」

「それはほら、何とでも、ガラス鏡の老舗としての名前、さらにその流通に関わる事、そして商品展開、等々出来ることはあると思います、皆さんの協力があってこそですが、それに何も高額で寡占する事や、儲けは大事ですが莫大に儲けるだけなら部会や協会等と言わずにこっそりと作って貴族相手に売り捌いていますよ、貴族様達は基本的に見栄っ張りなので、何処で手に入れたかなんて喧伝しませんもの」

「なるほど」

エレインとの付き合いが浅い面々が頷いている、

「大きく商売を考えるなら一家に一枚と言わず、一人一枚所持できるような市場の方がより健康的で儲かると思っております、その為には、現在の生産体制は、失礼ながら脆弱です、勿論皆さんとしては工場の拡張等も考えて貰っているかと思いますが、それも定期的な発注が無ければ難しいのではないですか?」

「その通りだな」

「健康的とは面白い表現ですね」

ブラスとバーレントが大きく頷いた、

「はい、ですので、以前にもお話しした通り、商会としましては、最初の内は貴族相手の商売になります、貴族向け商業区に店を出すのが良いかと考えております、暫くはビックリするほどの利益を出せるかと思います、その後、状況を見ながら、安価な製品を市民向けに販売したい・・・その間、貴族を相手にしている間の事ですね、皆さんの生産体制の確立や技術向上を図っていき、また、産業を担いたいと手を上げた工場も取り込んでいく、そうやって確立していけば、その組織はそう簡単には真似できるものでは無くなっているのではないかと・・・ましてモニケンダム以外で作成されるであろう同種の品に対して価格的にも品質に於いても有利に立てると、そのように考えております」

「なるほど、そこまで考えているのであれば、その旨をはっきりとギルド長と領主様へ伝える事だな、俺は会長の考えを支持するぜ」

ディモが嬉しそうに表明した、

「ほら、ブノワトを協会長にするなんて言い出したからさ、また、適当なと思ったが、会長、あんた中々に考えているんだな、いや、参った」

ディモが続けて言った言葉にブノワトが顔色を失いつつ睨むが、

「お褒めに預かり光栄ですわ、では、理想とする方向性についてはそのような感じで宜しいでしょうか?」

皆、賛同の意を告げる、

「はい、では、細かい点を決めていきましょう」

エレインは黒板を確認しつつ、打合せは進んでいくのであった。
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