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本編

24話 お嬢様と4本フォーク その8

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「で、領主様はどうだったの」

テーブルに突っ伏したままのユーリにソフィアは静かに問う、

「あー、たぶんだけど、いい感じだったわー、なんか私の事も憶えてたみたいでねー」

とユーリはゆっくりと上体を起こす、

「ほら、下水道調査の件、遠回しだけど謝ったのかな?そんな感じー」

「へー、良かったじゃない」

「うん、で、エレインさんと共謀して下水道から鏡の製法が見付かったって事にしたから」

「それはありがと、そうなると少しは興味を引けた?」

「そうね、下水道の詳しい話は改めてって事になったわ、学園の方へ連絡が行く予定、ほら、領主様、忙しいからね、でも、鏡の前ではしゃいでたわ」

「あらあら、すると奥様は?」

「元気だったわよ、あんたが来ると思ってたみたいでね、私の顔を見て残念そうにしてたわ」

「それは申し訳なかったわね」

「でも、ほら、お互い顔は合わせてたからね、こっちの素性が分かったら優しくしてくれたわよ、いい人ね」

「そう、じゃ、取り合えず行って良かったんじゃない?」

「取り敢えずね、でもまー、あー、変な所に力が入ってるわね、背中が痛いわ」

ユーリは大きく両肩を回す、

「お疲れ様、あ、エレインさんは?」

「んー、商工ギルドで降ろしてもらってたわ、それからブノワトさんの所に行くって、根回しね、大変だわ」

他人事のように言って茶に手を伸ばす、

「そっか、すると例の部会の話しかしら?」

「そうね、領主様も乗り気でね、そういう事ならギルド長と職人達とエレインさん?まぁ関係者ね、集めてしっかりと話したいってさ、ま、これを見たらそうなるわよね」

ユーリは脱力したままガラス鏡を見る、

「そうなると、いよいよエレインさん忙しくなるわね」

ソフィアはほくそ笑む、

「なによ、他人事みたいに」

「他人事よー、まぁ、頑張ってる若者を見るのは楽しいし、こっちも元気になれるからね、それにガラス鏡を量産できるようになったら作りたいものもあるしね」

「どんなの?」

「内緒」

あん?とユーリは片眉を吊り上げる、

「あ、でも、あれね、理想とする品があるんだけど、どうだろう?赤い魔法石って数少ないわよね」

「まぁ、そうね、上にある分とクロノスの所にある分だけだしね、早いところ諸々を解明したいけど、こればっかりはねー」

「そうよね、うーん」

とソフィアは天を仰いで、

「さっき、カトカさんとも話したんだけど」

と無色の魔法石の活用案について話しだした、

「あら、それも面白いわね、でも、出来るかしら?」

「出来そうだなーとは思っているんだけどね、弄ってみたけど安定はしてないわね、少し方向性を変えて見ようかなとは思っているんだけど」

「そっか、上手くいったら教えて頂戴」

「そのつもり、でね、陶器への魔法陣ってあんたが考えたんでしょ」

ソフィアが珍しくもユーリの研究に興味を示した、

「まぁね、ほら、魔族の使ってた魔法陣を応用してみたのよ、それと釉薬ねこれが肝、構造としては・・・」

「あ、詳しい話しはいいわ、そういうのは苦手だから」

ソフィアはあっさりとユーリの言葉を遮った、

「なに言ってるのよ、頭の出来ならそこそこ良いでしょ」

「そこそこってなによ、面倒な話しが面倒なだけよ」

「面倒って、まぁ、面倒か、で、それがどうしたの?」

「応用できないかなって思ってね、あれは・・・そうね、他の材を下地にしても使えるの?」

「あー、使えるけど、劣化が激しかったわね、さっきも言ったけど釉薬が肝なのよ、それと魔法陣に使う触媒がねその釉薬用に調整した物だから、転送魔法陣に使ってる触媒とは全く別物なのよ、安くて大量に作れるから便利になったって感じ、本来であれば転送魔法陣の触媒を使えば何にでも刻めるでしょ、って、あれはあんたの発案だったわね」

「そっか、そういう事だったのね、確かにそうよね」

とソフィアは腕を組んで小首を傾げ、

「うん、分かった、ちょっとやってみるわ、出来たら見てみてくれる?」

「勿論よ、材料欲しかったら言ってね、カトカとサビナにも言っておくわ」

「ありがと、あ、そうだ、カトカさんに調べもの頼んじゃったけどいい?」

「構わないわよ、あの娘もたまには他の仕事しないと腐っちゃうわ」

「そっか」

ソフィアは笑顔になり、

「お茶、足すわよ?」

「あー、ありがとう、静かでいいわね、人がいないと」

「そうね」

二人は微笑みつつ暫し茶を楽しんだ、しかし、

「ソフィー、山、行っていいー?」

ガツガツとつっかけの激しい音と共にミナの声が響いた、

「あら、静かな時間は貴重ねー」

ソフィアはやれやれと腰を上げると、

「はいはい、行っていいけど足元には注意しなさいよ」

「分かったー、じゃ、行くー」

再びつっかけの激しい音が響く、

「山って?裏山?」

「そうよ、あ、ユーリも行く?なんか山道が丁度良くあってね、草を払ったら上まで行けたのよ」

ソフィアはニコリと適当に誤魔化す、

「ふーん、そっかー、丁度良くねー」

長い付き合いのユーリにはその誤魔化しは通じなかったようである、ユーリは目を細めてソフィアを見つめるが、

「ま、いっか、その内でいいわ、お嬢様もいるしね、あ、学園、顔ださなきゃだわ」

ユーリは残った茶を呷るとヨイショと立ち上がった、

「ん、じゃ、取り敢えずそんな所で」

「ん、お疲れ様」

ソフィアも腰を上げ、ユーリは階段へと向かうのであった。
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