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本編
17話 再会の夏祭り その10
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皿洗いを終えてソフィアと寮生が食堂に入ると、ユーリがカトカとサビナを捕まえて管を巻いていた、その姿を見止めたジャネットは、
「あー、台無しだよもー」
開口一番、非難の声を上げる、
「あによ、大人の世界は辛いのよ」
キッとユーリは睨み返した、
「うわ、出来上がってる、じゃ」
とジャネットは早々に退散し他の生徒も我先にと2階へ上がった、
「もう、お酒も飲めない癖にー」
「ちょっと、悪酔いしすぎよ」
ソフィアは呆れつつもユーリの隣りに座る、
「いいのよ、偶には飲ませてよ、この酒美味いのよ」
とユーリは杯を空ける、
「あー、ここは任せて貰っていいわよ、二人も帰んなさい」
カトカとサビナは疲れた顔である、
「ありがとうございます、では、お言葉に甘えて」
とカトカは席を立った、
「なら私も、その、すいません」
続いてサビナも腰を上げ、
「大丈夫、大丈夫、それより夜道を気をつけてね、泊って行ってもいいのよ」
「あ、いえ、大丈夫です、学園のすぐ隣りが宿舎なので、はい」
そう言いつつ二人も上階へ消えた、
「むー、結局あれかー、私にはソフィアだけかー」
いよいよ悪い酒である、
「もう、どうしたのよ、あんたが悪酔いするなんて珍しい、酔い覚まし掛ける?」
「うんにゃ、もう少しこのままで、酔いたいの」
あらあらとソフィアは顔を顰める、
「でね、今日さ、学園長と事務長とあの学部長が揃って領主様と祭りの飲み会なんだって」
ユーリは訥々と話し始めた、その内容からすると先の二人には勿論ソフィア以外の同席者には語れなかった事のようである、
「へーそうなの」
「うん、でね、学部長が領主派閥なのは知ってたけどさ、学園長と事務長も取り込まれた感じなのよ、挙句、学部長の奴、妙に優しいのよ、まーたなんか仕掛けようとしてるんだわ、ムカつくー」
「へー、そうなんだ」
「そうよ、またよ、こっちは研究だ、王族の相手だ、なんだかんだでもー、なのにさ、どういう魂胆なんだかもー」
まるで牛ねとソフィアは呆れつつ、
「そういう事なら、あなたはユスティーナ様と仲良くなっちゃいなさいよ」
「え、誰と?」
「ユスティーナ様」
「誰それ?」
「あなたねー」
とソフィアは尚も呆れつつ、
「レアンお嬢様の隣りに座ってたでしょさっき迄、あの細身の綺麗な方」
「んー、あー、居たねー、誰かなーって思って見てたけど、楽しそうにしてたからまぁいっかって思ったわ」
「ホントにもー、あの方がレアンお嬢様のお母様のユスティーナ様よ」
「へー、っていう事は」
とユーリは小首を傾げる、
「えっと、確か、ライニールが領主の従者で、そのお嬢様がレアンでその従者がライニールで、その母親がユスティーナで・・・えっ?」
何とも迂遠な連想ゲームの果てにユーリは気付いた様子である、
「そういう事なの?」
と熱っぽい視線をソフィアに向ける、
「うん、そういう事、ついでにこないだ店舗に来たわよカラミッド様?でいいのかな?」
「へ、ホントに、何しに?」
「えっと、ほら、開店前に来賓を招待した時に親子3人でね、楽しそうだったわよ」
「え、どういう事?」
「もう、このスカポンタンは」
とソフィアは右手拳の中に呪文を唱えてユーリの額に押し当てた、
「あ、待って、ソフィア、それはー」
ユーリは情けない声を上げながらもソフィアの為すがままに身を委ねる、やがて、
「あー、折角の酔いが、消えていくー」
暫く目を閉じ上半身を右に左に揺らすと、シャッキリと背を正し、ふーと一息吐いた、
「で、話続ける?」
「うん、興味ある」
でね、とソフィアは店舗に来た際のカラミッドの様子とその経緯、それによってクレオノート家御用達の看板を頂いた事等を纏めて話して聞かせる、
「んー、そういう事かー、なら、あの学部長の感じといい、学園長と事務長が誘われた事といい、もしかして、こっちを取り込むつもりなのかしら?」
「さぁ、それはどうだろう、向うの目的も真意もまだまだ見えないんでしょ、でも、あの感じだと学園には、少なくとも商会に対しては良い感情を持ってると思うわね、もしくはそういう風に心変わりしたか・・・」
「あー、じゃ、いったんあれかなクロノスと相談かな、あんたも一緒に話してくれる?」
「それは構わないけど、そんな大事?」
「うん、ほら、トーラーさんも何やら動いてるみたいなのよ、変に拗れる前に大本を押さえておいて、できればね、ほら、聞いた感じだともう、って感じだしね、めんどくさいから直接話し付けてもらえばいいじゃない、おっさん同士仲良くしろって」
「それが出来ないからこうなってるんじゃないの?」
「いやいや、結局あれよ、国内政治に関しては腹割って話すのが一番の解決よ、それが国外となるとお話合いで済まないけど、国内であればなんとでも治め方があるじゃない」
「そういうもの?」
「そういうもんよ、いっその事アンタが取り持ってもいいんじゃない?もしくはエレインさんに一肌脱いでもらっても、恐らく上手く行けば皆幸せに落ち着けると思うわね」
「幸せって、失敗したらきついわよ」
「きついで済めばいいけどね、下手したら学園の取り壊しにもなりかねないかしら・・・なら変に手を出しては駄目ね、今の友達付き合いの延長であれば何も問題はなさそうだし・・・うん、こちらが仕込む事は無いか・・・な、でもあれよ、なんかあの直線番長ってば妙に好戦的な所があるからね、有事ならそれでいいけど、今は折角の平時なのよ・・・まぁ、だからこそ腐る物もあるし、だからこそ栄えるものもあるんだけど・・・はぁ、でも、私としては内戦だけは嫌よね」
「それは・・・そうね」
とソフィアは頷く、
「うん、じゃ、そういう事で、あんたも飲みなさい、旨いわよ」
「はー、もう、少しだけよ」
ソフィアもお酒は嫌いではない、まして今日の酒はクロノス所蔵の一品である、二人はその後静かに酌み交わしたのであった。
「あー、台無しだよもー」
開口一番、非難の声を上げる、
「あによ、大人の世界は辛いのよ」
キッとユーリは睨み返した、
「うわ、出来上がってる、じゃ」
とジャネットは早々に退散し他の生徒も我先にと2階へ上がった、
「もう、お酒も飲めない癖にー」
「ちょっと、悪酔いしすぎよ」
ソフィアは呆れつつもユーリの隣りに座る、
「いいのよ、偶には飲ませてよ、この酒美味いのよ」
とユーリは杯を空ける、
「あー、ここは任せて貰っていいわよ、二人も帰んなさい」
カトカとサビナは疲れた顔である、
「ありがとうございます、では、お言葉に甘えて」
とカトカは席を立った、
「なら私も、その、すいません」
続いてサビナも腰を上げ、
「大丈夫、大丈夫、それより夜道を気をつけてね、泊って行ってもいいのよ」
「あ、いえ、大丈夫です、学園のすぐ隣りが宿舎なので、はい」
そう言いつつ二人も上階へ消えた、
「むー、結局あれかー、私にはソフィアだけかー」
いよいよ悪い酒である、
「もう、どうしたのよ、あんたが悪酔いするなんて珍しい、酔い覚まし掛ける?」
「うんにゃ、もう少しこのままで、酔いたいの」
あらあらとソフィアは顔を顰める、
「でね、今日さ、学園長と事務長とあの学部長が揃って領主様と祭りの飲み会なんだって」
ユーリは訥々と話し始めた、その内容からすると先の二人には勿論ソフィア以外の同席者には語れなかった事のようである、
「へーそうなの」
「うん、でね、学部長が領主派閥なのは知ってたけどさ、学園長と事務長も取り込まれた感じなのよ、挙句、学部長の奴、妙に優しいのよ、まーたなんか仕掛けようとしてるんだわ、ムカつくー」
「へー、そうなんだ」
「そうよ、またよ、こっちは研究だ、王族の相手だ、なんだかんだでもー、なのにさ、どういう魂胆なんだかもー」
まるで牛ねとソフィアは呆れつつ、
「そういう事なら、あなたはユスティーナ様と仲良くなっちゃいなさいよ」
「え、誰と?」
「ユスティーナ様」
「誰それ?」
「あなたねー」
とソフィアは尚も呆れつつ、
「レアンお嬢様の隣りに座ってたでしょさっき迄、あの細身の綺麗な方」
「んー、あー、居たねー、誰かなーって思って見てたけど、楽しそうにしてたからまぁいっかって思ったわ」
「ホントにもー、あの方がレアンお嬢様のお母様のユスティーナ様よ」
「へー、っていう事は」
とユーリは小首を傾げる、
「えっと、確か、ライニールが領主の従者で、そのお嬢様がレアンでその従者がライニールで、その母親がユスティーナで・・・えっ?」
何とも迂遠な連想ゲームの果てにユーリは気付いた様子である、
「そういう事なの?」
と熱っぽい視線をソフィアに向ける、
「うん、そういう事、ついでにこないだ店舗に来たわよカラミッド様?でいいのかな?」
「へ、ホントに、何しに?」
「えっと、ほら、開店前に来賓を招待した時に親子3人でね、楽しそうだったわよ」
「え、どういう事?」
「もう、このスカポンタンは」
とソフィアは右手拳の中に呪文を唱えてユーリの額に押し当てた、
「あ、待って、ソフィア、それはー」
ユーリは情けない声を上げながらもソフィアの為すがままに身を委ねる、やがて、
「あー、折角の酔いが、消えていくー」
暫く目を閉じ上半身を右に左に揺らすと、シャッキリと背を正し、ふーと一息吐いた、
「で、話続ける?」
「うん、興味ある」
でね、とソフィアは店舗に来た際のカラミッドの様子とその経緯、それによってクレオノート家御用達の看板を頂いた事等を纏めて話して聞かせる、
「んー、そういう事かー、なら、あの学部長の感じといい、学園長と事務長が誘われた事といい、もしかして、こっちを取り込むつもりなのかしら?」
「さぁ、それはどうだろう、向うの目的も真意もまだまだ見えないんでしょ、でも、あの感じだと学園には、少なくとも商会に対しては良い感情を持ってると思うわね、もしくはそういう風に心変わりしたか・・・」
「あー、じゃ、いったんあれかなクロノスと相談かな、あんたも一緒に話してくれる?」
「それは構わないけど、そんな大事?」
「うん、ほら、トーラーさんも何やら動いてるみたいなのよ、変に拗れる前に大本を押さえておいて、できればね、ほら、聞いた感じだともう、って感じだしね、めんどくさいから直接話し付けてもらえばいいじゃない、おっさん同士仲良くしろって」
「それが出来ないからこうなってるんじゃないの?」
「いやいや、結局あれよ、国内政治に関しては腹割って話すのが一番の解決よ、それが国外となるとお話合いで済まないけど、国内であればなんとでも治め方があるじゃない」
「そういうもの?」
「そういうもんよ、いっその事アンタが取り持ってもいいんじゃない?もしくはエレインさんに一肌脱いでもらっても、恐らく上手く行けば皆幸せに落ち着けると思うわね」
「幸せって、失敗したらきついわよ」
「きついで済めばいいけどね、下手したら学園の取り壊しにもなりかねないかしら・・・なら変に手を出しては駄目ね、今の友達付き合いの延長であれば何も問題はなさそうだし・・・うん、こちらが仕込む事は無いか・・・な、でもあれよ、なんかあの直線番長ってば妙に好戦的な所があるからね、有事ならそれでいいけど、今は折角の平時なのよ・・・まぁ、だからこそ腐る物もあるし、だからこそ栄えるものもあるんだけど・・・はぁ、でも、私としては内戦だけは嫌よね」
「それは・・・そうね」
とソフィアは頷く、
「うん、じゃ、そういう事で、あんたも飲みなさい、旨いわよ」
「はー、もう、少しだけよ」
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