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本編
17話 再会の夏祭り その8
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「それでは」
とソフィアは杯を片手に立ち上がる、しかし、誰もソフィアに視線を向けるものはいなかった、列席者は皆眼前の料理に目を奪われている、
「えーと、本日は思い付きで会食を開きました、聞いたところによると夏祭りとは豊穣に感謝するお祭りとのことなので、まぁいいかしらとも思います、で」
と食堂内を見渡すが、やはり誰も聞いてないかしらと不安になるが、一対の目だけがソフィアを見ていた、
「はいはい、前向上はいいから乾杯でしょー」
ユーリの無遠慮な声が響き、押さえた笑い声がそこここに広がった、
「そうね、では、杯はありますねー、あー、リシア様はお酒駄目ですよー」
「わかってますよ、まったく、みんなしてー」
パトリシアの不満な声にさらに笑いが広がった、
「それでは、カンパーイ」
食堂内に乾杯の声が広がった、ソフィアは手にした杯をグイッと煽る、
「わー、美味しいワインねー、流石リシア様の秘蔵品」
と満足気に笑みする、
「では、料理の方説明しますねー」
とソフィアは続けた、本日のメイン料理は大量に上げた鶏の唐揚げと川魚の団子入りホワイトシチューである、さらに評判の良かった薄パンを2種類、大量の野菜と果物を使ったサラダが彩りを添えており、その隣りには2種の白色のソースが添えられていた、
「えっと、まずは、ソースが2つありますが、サラサラしているのがバーニャカウダと呼ばれる田舎のソースです、でもう一つがマヨソースです、ドロっとしている方ですね、全然違う風味なのでちょっと試してからお好きな方でお楽しみ下さい、で、薄パンについては前回と同様です、お好きな具材を挟んで頂く感じになります、少々はしたないですがパンに挟んで食べるとまた違った味を楽しめるかと思います」
今日の料理は以前にも供された品が多く、寮生達は嬉々として手を伸ばしているが、初見の者は若干戸惑っている様子であった、
「揚げ物は以前と同様の品ですが、添えられたミカンを絞っても美味しいですし、ソースを付けても美味しいです、取り皿に取って食べて下さいね、それと、一番大事な点は食べ過ぎないようにして下さい、この後、スイーツも用意してあります、こちらは本邦初公開な品ですのでお楽しみにー」
おぉーと歓声が広がり、それと同時にソフィアは席に着く、
「まぁ、さらにスイーツですか?ソフィアさんの達者振りはレアンから聞いてましたが、凄いですね」
初参加のユスティーナがレアンの隣りで感心している、
「そうなのです、ソフィアさんは凄いのです」
何故かレアンが自慢気に語り、
「むー、ソフィはフツーなんだって、言ってるよー」
ミナが良く分からない擁護に回った、
「そうか?でもこの大量の料理は大したもんなんだぞ」
レアンはミナを諭すが、
「ふふ、今日はねー、ジャネットさんとアニタさんとオリビアさんにも手伝って貰ったからね、だから私はフツーなの」
ソフィアは杯を片手にニコリと笑みした、
「そうか、確かに一人で作れる量ではないな、うん」
とレアンは変に納得して薄パンに手を伸ばす、
「あ、あのねー、このパンはねー」
とミナも薄パンに手を伸ばすとレアンに実例を見せる、レアンとユスティーナはふんふんとミナの手元を注視するのであった、
「ユナ、こちらのサラダは絶品ですわね、このバーニャカウダでしたか、このソースの深みのある味わいは素晴らしいです」
「そうですか、私はこのマヨソースの方が好きですわ」
王族姉妹は楽し気にサラダを頬張っている、
「なるほど、生野菜と果物を合わせる事でみずみずしさと食感が楽しめるのですね」
「そうか、これを薄パンに挟んでも」
とパトリシアは薄パンにサラダを並べバーニャカウダを垂らし掛けて口に運ぶ、
「うふ、うんうん」
と嬉しそうに笑顔で咀嚼し、
「これは美味しい、是非屋敷でも作らせましょう」
「それは、良いですね」
ウルジュラも薄パンに手を伸ばすのであった、
「ほら、イージス様、この揚げ物が美味しいのですよ」
とエレインは何ともだらしない顔でイージスに小皿を差し出す、
「うむ、伯母上、先程のお話ですと、ミカンかソースが必要そうであったが?」
「そうですね、何も無くても良いのです、色々と試してみるのが楽しいのです」
「なるほど、では」
とイージスは唐揚げを半分に切るとその小さな口に頬張った、
「あー、可愛らしいー」
エレインの心の声は自然と口から発せられた、
「こら、エレイン、男児に向かって可愛いとは何ですか」
マリアがエレインを窘めるが、その顔もまただらしない笑顔である、
「えー、姉様、そんな事言われましても―」
「うん、確かに美味しいです、では、ミカンをかけてみます」
イージスは二人の遣り取りを素知らぬ顔で果実片に手を伸ばす、
「あ、待って、これはこうやって」
エレインはさっとミカンを取って唐揚げに絞りかけた、メイドや乳母以上の甲斐甲斐しい世話の仕方であった、
「あー、これはあれね、甥っ子にやられちゃった感じねー」
ジャネットが気付いてボソリと呟く、
「そのようですね、これは・・・でも、これはこれで楽しそうでいいじゃないですか」
ケイスはホンワカと二人を眺める、
「ま、そうね、うん、イージスきゅん可愛いからね、それに賢そうだし、しょうがないねー」
うんうんとジャネットは同意しつつ、その手は忙しなくその口に料理を運び込んでいた、
「だからー、私はちゃんとお仕事してたのー」
ユーリは早速出来上がっていた、
「分かりましたから、絡まないで下さい」
カトカとサビナもワインを嗜んでいるがこちらは対照的に冷静である、
「そうですよ、朝だってソフィアさんが起こしにいったじゃないですか」
「そうよー、その後学園に行ったらさ、学園長に捕まるわ、部長に捕まるわでもー」
ユーリはグチグチと話し続ける、
「折角のお休みだったのに、何も進んでないのよ、どう思う?」
「いや、それは働き過ぎですよ、お休みは休むって前に言ってたでしょうに」
「そうですよ、なんです、休みの日に仕事をしたかったんですか?」
「そうなの、今日やりたい事があったの、でもね、でもね、あのジジイ共が、もー」
そう言ってユーリは杯を煽る、
「あー、こりゃ駄目な感じだ」
「そうね、ほっときましょう」
カトカとサビナは頷き合う、
「もー、寝てた方がましだったわよー」
ユーリの叫びは続いたが二人は無視して料理に手を伸ばすのであった。
とソフィアは杯を片手に立ち上がる、しかし、誰もソフィアに視線を向けるものはいなかった、列席者は皆眼前の料理に目を奪われている、
「えーと、本日は思い付きで会食を開きました、聞いたところによると夏祭りとは豊穣に感謝するお祭りとのことなので、まぁいいかしらとも思います、で」
と食堂内を見渡すが、やはり誰も聞いてないかしらと不安になるが、一対の目だけがソフィアを見ていた、
「はいはい、前向上はいいから乾杯でしょー」
ユーリの無遠慮な声が響き、押さえた笑い声がそこここに広がった、
「そうね、では、杯はありますねー、あー、リシア様はお酒駄目ですよー」
「わかってますよ、まったく、みんなしてー」
パトリシアの不満な声にさらに笑いが広がった、
「それでは、カンパーイ」
食堂内に乾杯の声が広がった、ソフィアは手にした杯をグイッと煽る、
「わー、美味しいワインねー、流石リシア様の秘蔵品」
と満足気に笑みする、
「では、料理の方説明しますねー」
とソフィアは続けた、本日のメイン料理は大量に上げた鶏の唐揚げと川魚の団子入りホワイトシチューである、さらに評判の良かった薄パンを2種類、大量の野菜と果物を使ったサラダが彩りを添えており、その隣りには2種の白色のソースが添えられていた、
「えっと、まずは、ソースが2つありますが、サラサラしているのがバーニャカウダと呼ばれる田舎のソースです、でもう一つがマヨソースです、ドロっとしている方ですね、全然違う風味なのでちょっと試してからお好きな方でお楽しみ下さい、で、薄パンについては前回と同様です、お好きな具材を挟んで頂く感じになります、少々はしたないですがパンに挟んで食べるとまた違った味を楽しめるかと思います」
今日の料理は以前にも供された品が多く、寮生達は嬉々として手を伸ばしているが、初見の者は若干戸惑っている様子であった、
「揚げ物は以前と同様の品ですが、添えられたミカンを絞っても美味しいですし、ソースを付けても美味しいです、取り皿に取って食べて下さいね、それと、一番大事な点は食べ過ぎないようにして下さい、この後、スイーツも用意してあります、こちらは本邦初公開な品ですのでお楽しみにー」
おぉーと歓声が広がり、それと同時にソフィアは席に着く、
「まぁ、さらにスイーツですか?ソフィアさんの達者振りはレアンから聞いてましたが、凄いですね」
初参加のユスティーナがレアンの隣りで感心している、
「そうなのです、ソフィアさんは凄いのです」
何故かレアンが自慢気に語り、
「むー、ソフィはフツーなんだって、言ってるよー」
ミナが良く分からない擁護に回った、
「そうか?でもこの大量の料理は大したもんなんだぞ」
レアンはミナを諭すが、
「ふふ、今日はねー、ジャネットさんとアニタさんとオリビアさんにも手伝って貰ったからね、だから私はフツーなの」
ソフィアは杯を片手にニコリと笑みした、
「そうか、確かに一人で作れる量ではないな、うん」
とレアンは変に納得して薄パンに手を伸ばす、
「あ、あのねー、このパンはねー」
とミナも薄パンに手を伸ばすとレアンに実例を見せる、レアンとユスティーナはふんふんとミナの手元を注視するのであった、
「ユナ、こちらのサラダは絶品ですわね、このバーニャカウダでしたか、このソースの深みのある味わいは素晴らしいです」
「そうですか、私はこのマヨソースの方が好きですわ」
王族姉妹は楽し気にサラダを頬張っている、
「なるほど、生野菜と果物を合わせる事でみずみずしさと食感が楽しめるのですね」
「そうか、これを薄パンに挟んでも」
とパトリシアは薄パンにサラダを並べバーニャカウダを垂らし掛けて口に運ぶ、
「うふ、うんうん」
と嬉しそうに笑顔で咀嚼し、
「これは美味しい、是非屋敷でも作らせましょう」
「それは、良いですね」
ウルジュラも薄パンに手を伸ばすのであった、
「ほら、イージス様、この揚げ物が美味しいのですよ」
とエレインは何ともだらしない顔でイージスに小皿を差し出す、
「うむ、伯母上、先程のお話ですと、ミカンかソースが必要そうであったが?」
「そうですね、何も無くても良いのです、色々と試してみるのが楽しいのです」
「なるほど、では」
とイージスは唐揚げを半分に切るとその小さな口に頬張った、
「あー、可愛らしいー」
エレインの心の声は自然と口から発せられた、
「こら、エレイン、男児に向かって可愛いとは何ですか」
マリアがエレインを窘めるが、その顔もまただらしない笑顔である、
「えー、姉様、そんな事言われましても―」
「うん、確かに美味しいです、では、ミカンをかけてみます」
イージスは二人の遣り取りを素知らぬ顔で果実片に手を伸ばす、
「あ、待って、これはこうやって」
エレインはさっとミカンを取って唐揚げに絞りかけた、メイドや乳母以上の甲斐甲斐しい世話の仕方であった、
「あー、これはあれね、甥っ子にやられちゃった感じねー」
ジャネットが気付いてボソリと呟く、
「そのようですね、これは・・・でも、これはこれで楽しそうでいいじゃないですか」
ケイスはホンワカと二人を眺める、
「ま、そうね、うん、イージスきゅん可愛いからね、それに賢そうだし、しょうがないねー」
うんうんとジャネットは同意しつつ、その手は忙しなくその口に料理を運び込んでいた、
「だからー、私はちゃんとお仕事してたのー」
ユーリは早速出来上がっていた、
「分かりましたから、絡まないで下さい」
カトカとサビナもワインを嗜んでいるがこちらは対照的に冷静である、
「そうですよ、朝だってソフィアさんが起こしにいったじゃないですか」
「そうよー、その後学園に行ったらさ、学園長に捕まるわ、部長に捕まるわでもー」
ユーリはグチグチと話し続ける、
「折角のお休みだったのに、何も進んでないのよ、どう思う?」
「いや、それは働き過ぎですよ、お休みは休むって前に言ってたでしょうに」
「そうですよ、なんです、休みの日に仕事をしたかったんですか?」
「そうなの、今日やりたい事があったの、でもね、でもね、あのジジイ共が、もー」
そう言ってユーリは杯を煽る、
「あー、こりゃ駄目な感じだ」
「そうね、ほっときましょう」
カトカとサビナは頷き合う、
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