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本編
17話 再会の夏祭り その7
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やがて食堂にパトリシア一行が入って来る、わいわいと騒がしくなった事に気付きソフィアは食堂へ顔を出した、
「お帰りなさい皆さん」
ソフィアが優しく微笑む、
「あら、ソフィアさん、戻りましたわ、やはりお祭りは楽しいですわね」
満足気に笑みするパトリシア、その隣りにはマリアの胸で寝息を立てているイージスと、その顔を愛おし気に見詰めるエレインが佇む、
「あら、イージス様はお休みですね、奥の部屋をお使い下さい、粗末ですが寝具をお持ちしますね」
ソフィアの提案にマリアは快く頷いた、ソフィアはパタパタと走り回って奥の個人部屋に幼児が横になるには十分な空間を作るとマリアを呼んだ、
「すいません、ソフィアさん、ありがとうございます」
マリアは優しくイージスを寝かせ、エレインもその隣りで甲斐甲斐しく世話を焼く、
「リシア様と同行されていたんですね」
ソフィアの問いに、
「はい、やっぱりイージスをやんごとなき方々にお任せするのは気が引けまして・・・」
「それは、そうですね」
ソフィアは納得する、
「ええ、でも、エレインとこうして楽しめたのは久方ぶりでしたから、イージスがちょっとだけ妬いちゃって」
とマリアは苦笑いし、エレインも微笑する、
「そっか、そういう事もありますよね、では、夕食までゆっくりなさって下さい」
とソフィアはその場を辞すと、エレインがすぐに追い付き、
「ソフィアさん、すいません、会食の件、お気を使わせたんじゃないですか」
パトリシアから聞いたのであろう、すまなそうな顔をして実に社会人らしくソフィアを労わる、
「そんな事無いわ、ほら、ウルジュラ様もいらっしゃってるし、勿論マリア様もだけど、何よりね」
とソフィアは言葉を切り、
「男がいないのよ、楽しいと思わない?」
ニヤリと笑みするソフィアに、
「・・・もう、なら、そういう事でいいです」
エレインは困り顔になるが、内心ソフィアの言う事を理解したようである、
「あ、厨房にジャネットさんとアニタさんがいるわよ、報告は受けた?」
「え、あ、まだですね、行きます」
「あ、それと、トーラーさんに会食は遠慮して貰うようにやんわりと、その、お願いできない?」
「え、あー、分かりました、それは任せて下さい」
エレインは笑みしつつ自信満々に答え、パタパタと厨房に走るのであった。
食堂に戻るとミナとレインが普段の服装でパトリシアとウルジュラ相手に何やら楽し気にしている、
「あら、ミナ、ちゃんとご挨拶はしたの?」
「うん、ユラ様は鳥が好きなんだって、だから、これもね鳥さんなの」
ミナの前には新しい木工細工が置いてあった、
「あら、ヘッケルさんの所にも行ったんですか」
「えぇ、前に来た時の土産としてメイドに配ったんですが、足りなくて、今日買い足したんですの、それにユラも欲しがってましたし」
「だって、姉様が自慢気に見せるんですもの、なんというかこの素朴な感じがいいんですよね」
ウルジュラも御満悦の様子である、
「うん、だから、お花入れるの、ユラ様は何が好き?えっとね、リシア様は薔薇なのね、だからー」
ミナはお気に入りの壺を手にしている、その中を覗き込んで思案しているようである、
「何のお花があるんですか?」
「えっと、これは薔薇なの、でこれは何だっけ・・・」
ミナはレインに問いつつ花びらを並べていった、
「しかし、あれね、あの花びら、ぜんぜん萎びないわね・・・」
ふとソフィアは気付き、ハッとレインを見る、レインもまたソフィアを見てすぐに視線を逸らした、あーそういうことねとソフィアは理解して溜息を吐くと、殊更騒ぎ立てない事にして厨房へ戻る、
「なるほど、これは美味しいですわね」
厨房では一つの鍋を3人が覗き込んでいた、
「ちょっと、味見で食べ尽くしては駄目ですからね」
察したソフィアが釘を刺すと、誤魔化し笑いを浮かべた3人が振り返る、もうとソフィアは呆れつつ鍋の様子を伺う、
「うん、もう少しとろみがでて、そうね・・・スライムの手前くらいで完成ね・・・スライム見た事ある?」
「あります、あります、でも、あそこまでプルプルになります?」
「うん、だからその手前まで、混ぜ続けるのが肝要よ」
「はい、でも、これは、あれですね、ミルクアイスケーキに匹敵する料理ですね」
「そう?」
「あの、ソフィアさん、これを商会で出しても宜しいのですか?」
エレインが上目遣いで問う、
「構わないわよ、それより、エレインさんはお店の方は大丈夫なの?それからオリビアさんの姿が見えないけど、ほら、皆さんの相手はいいからしっかり仕事をなさい」
ソフィアの苦笑交りの苦言に、
「そうですね、そうでした」
エレインはそそくさと勝手口に走る、
「さて、じゃ、こっちも一気にやっちゃいますか、では、アニタさん、そっちはジャネットさんに任せて油を用意しますよ、それともう一品お願いしたいのがあるからね、そっちはもっと大変よ」
とソフィアもまた追い込みをかけるのであった。
「お帰りなさい皆さん」
ソフィアが優しく微笑む、
「あら、ソフィアさん、戻りましたわ、やはりお祭りは楽しいですわね」
満足気に笑みするパトリシア、その隣りにはマリアの胸で寝息を立てているイージスと、その顔を愛おし気に見詰めるエレインが佇む、
「あら、イージス様はお休みですね、奥の部屋をお使い下さい、粗末ですが寝具をお持ちしますね」
ソフィアの提案にマリアは快く頷いた、ソフィアはパタパタと走り回って奥の個人部屋に幼児が横になるには十分な空間を作るとマリアを呼んだ、
「すいません、ソフィアさん、ありがとうございます」
マリアは優しくイージスを寝かせ、エレインもその隣りで甲斐甲斐しく世話を焼く、
「リシア様と同行されていたんですね」
ソフィアの問いに、
「はい、やっぱりイージスをやんごとなき方々にお任せするのは気が引けまして・・・」
「それは、そうですね」
ソフィアは納得する、
「ええ、でも、エレインとこうして楽しめたのは久方ぶりでしたから、イージスがちょっとだけ妬いちゃって」
とマリアは苦笑いし、エレインも微笑する、
「そっか、そういう事もありますよね、では、夕食までゆっくりなさって下さい」
とソフィアはその場を辞すと、エレインがすぐに追い付き、
「ソフィアさん、すいません、会食の件、お気を使わせたんじゃないですか」
パトリシアから聞いたのであろう、すまなそうな顔をして実に社会人らしくソフィアを労わる、
「そんな事無いわ、ほら、ウルジュラ様もいらっしゃってるし、勿論マリア様もだけど、何よりね」
とソフィアは言葉を切り、
「男がいないのよ、楽しいと思わない?」
ニヤリと笑みするソフィアに、
「・・・もう、なら、そういう事でいいです」
エレインは困り顔になるが、内心ソフィアの言う事を理解したようである、
「あ、厨房にジャネットさんとアニタさんがいるわよ、報告は受けた?」
「え、あ、まだですね、行きます」
「あ、それと、トーラーさんに会食は遠慮して貰うようにやんわりと、その、お願いできない?」
「え、あー、分かりました、それは任せて下さい」
エレインは笑みしつつ自信満々に答え、パタパタと厨房に走るのであった。
食堂に戻るとミナとレインが普段の服装でパトリシアとウルジュラ相手に何やら楽し気にしている、
「あら、ミナ、ちゃんとご挨拶はしたの?」
「うん、ユラ様は鳥が好きなんだって、だから、これもね鳥さんなの」
ミナの前には新しい木工細工が置いてあった、
「あら、ヘッケルさんの所にも行ったんですか」
「えぇ、前に来た時の土産としてメイドに配ったんですが、足りなくて、今日買い足したんですの、それにユラも欲しがってましたし」
「だって、姉様が自慢気に見せるんですもの、なんというかこの素朴な感じがいいんですよね」
ウルジュラも御満悦の様子である、
「うん、だから、お花入れるの、ユラ様は何が好き?えっとね、リシア様は薔薇なのね、だからー」
ミナはお気に入りの壺を手にしている、その中を覗き込んで思案しているようである、
「何のお花があるんですか?」
「えっと、これは薔薇なの、でこれは何だっけ・・・」
ミナはレインに問いつつ花びらを並べていった、
「しかし、あれね、あの花びら、ぜんぜん萎びないわね・・・」
ふとソフィアは気付き、ハッとレインを見る、レインもまたソフィアを見てすぐに視線を逸らした、あーそういうことねとソフィアは理解して溜息を吐くと、殊更騒ぎ立てない事にして厨房へ戻る、
「なるほど、これは美味しいですわね」
厨房では一つの鍋を3人が覗き込んでいた、
「ちょっと、味見で食べ尽くしては駄目ですからね」
察したソフィアが釘を刺すと、誤魔化し笑いを浮かべた3人が振り返る、もうとソフィアは呆れつつ鍋の様子を伺う、
「うん、もう少しとろみがでて、そうね・・・スライムの手前くらいで完成ね・・・スライム見た事ある?」
「あります、あります、でも、あそこまでプルプルになります?」
「うん、だからその手前まで、混ぜ続けるのが肝要よ」
「はい、でも、これは、あれですね、ミルクアイスケーキに匹敵する料理ですね」
「そう?」
「あの、ソフィアさん、これを商会で出しても宜しいのですか?」
エレインが上目遣いで問う、
「構わないわよ、それより、エレインさんはお店の方は大丈夫なの?それからオリビアさんの姿が見えないけど、ほら、皆さんの相手はいいからしっかり仕事をなさい」
ソフィアの苦笑交りの苦言に、
「そうですね、そうでした」
エレインはそそくさと勝手口に走る、
「さて、じゃ、こっちも一気にやっちゃいますか、では、アニタさん、そっちはジャネットさんに任せて油を用意しますよ、それともう一品お願いしたいのがあるからね、そっちはもっと大変よ」
とソフィアもまた追い込みをかけるのであった。
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