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本編

15話 商会設立 その5

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夕飯は川魚の団子スープとパンケーキであった、魚の骨を煮込んだスープには数種の根菜類が入り、柔らかく煮込まれたそれらと川魚の肉団子に皆は絶賛の声を上げた、

「で、塀も作る事にしたの?」

「はい、ソフィアさんとも打合せしまして、やはりちゃんと仕切っておかないと何かあってからでは申し訳ないですから」

エレインはパンケーキを千切って口に運ぶ、ふーんとユーリは相槌をうちつつ、

「そう・・・お金大丈夫?」

「何とか・・・工期も間に合いそうですし、その点は大丈夫です、それにジャネットのお陰でブラスさんに借りが出来まして」

エレインはニヤリと笑みし、ちらりとジャネットを見ると、ジャネットはサッと左手で親指を上げて見せた、

「へー、何よそれ面白そうね」

「面白いですよ、でも、ヘッケル夫妻にとっては恥ずかしい事らしいので、他言は無しですわ」

「ふーん、そう」

ユーリは何やら考えている様子であるが、

「・・・そのうちに笑い話になる?」

静かにエレインに問う、

「そうですわね、10年も経てば・・・いえ、来年には笑い話にできるかと・・・」

「なら良いわ、それまで楽しみにしておきましょう」

ユーリはニコリと笑顔を見せた。



「ソフィア、カトカから聞いたわよー」

夕食後、食堂からは三々五々人影は消えていき、厨房で洗い物が終わったソフィアは白湯を片手にユーリの側の席に着く、

「そう、あなたはホントいい部下を持ったわね」

「なによそれ、わざわざ言われなくても身に染みてるわよ」

「そう、なら大事になさいな」

「大事にしてるわよ、で、どうするの?あなた一人ではもう難しいんじゃない?」

「まったくよ、どうしましょう?」

ソフィアはややふざけた顔をする、

「まったく、それでカトカに話したわけ?」

「いやー、別にねそれは偶々だったけどね」

ソフィアはゆっくりと白湯に口を付ける、

「ふーん・・・そろそろ・・・クロノス側の研究所が動き出すらしいのよ」

ユーリも白湯に手を伸ばす、

「なら、そっちに渡す?」

「あなたがそれでいいなら・・・なんだけど」

「いいわよ、でも・・・」

「でも、何?」

「活用に関してはこっちが主導にならないと面白くないかなって、思ったりして」

「へー、何?そんなに有用なの?」

「そりゃそうよ、あなたもほらいつだったか樽に水を汲んだでしょ、あと、田舎に居た時は毎朝水汲みだったじゃない、あれが、指一本よ、凄まじく楽できるわね、特に私達みたいな主婦にはね」

「そうかー、あれは何気に重労働だもんね、水汲みは嫌いだったなー、私もー」

ユーリは遠い目をして黒板を見る、

「そうよ、だからそっちではあれね、詳細な研究をしてもらって、その結果を貰えれば、私は私で好きにやるわよ、それで良ければと思ったりして」

「また、都合のいい事言って・・・」

「何よ、どうせそのうち誰かが気付いたわよ、それが早いか遅いかだけだわ」

「それはそうかもだけど、じゃ、クロノスにはそう言っておくわね、研究所が立ち上がってもやる事無いです、では恰好つかないし、下手したらあっちの所長もやれと言われそうなのよね、学園のセンセをやってる暇が無いわ」

ユーリは静かに溜息を吐く、

「そう、給金上がるんじゃないの?」

「そりゃ、そうだろうけど、今でも十分以上に貰ってるわよ、持つべきものは権力者の友人よね、今更ながら実感してるわ」

「今更ー?そうね、冒険者やってる時はこんな事してるなんて想像も出来なかったわね」

ソフィアは昼間の思考を思い出す、郷里を離れて生きていることが未だにどうもしっくりこないのだ、なにかフワフワとしている感じがする、

「そうかしら、まぁ、そんなもんよ、じゃ、研究の一部を肩代わりするって感じで動くわよ、というよりもあれかしら学術的な研究は受け持つって感じよね、あ、それと、サビナとやってるあれ、お金、こっちで出すわよ、結構な金額らしいじゃない?ガラス使えばそうなるだろうけど・・・」

「えっ、うん、まぁ、そう・・・まぁ、そっか、ならお願いしようかしら・・・」

ソフィアらしくも無く歯切れの悪い答えであるが、恐らくソフィアの中にも矜持というものはあって、ユーリに頼りっぱなしになる事に、遠慮よりも引け目を感じているのであろう、

「お金関連は素直に頼りなさいよ、どうせ私のお金じゃないんだし、それと人もね、カトカとサビナを自由・・・とは言えないけど使っていいからね、ま、言わなくても使ってもらっていたけどもね」

ユーリはやや語尾を強調する、

「あら、正式にお許しがでちゃったわね、じゃ、あっちの件も手を出せるかしら?」

ソフィアが小首を傾げた瞬間、

「何、他にもあるの?」

ユーリの強い視線がソフィアに向かうが、ソフィアはふふんと鼻で笑うのであった。
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