105 / 1,050
本編
15話 商会設立 その5
しおりを挟む
夕飯は川魚の団子スープとパンケーキであった、魚の骨を煮込んだスープには数種の根菜類が入り、柔らかく煮込まれたそれらと川魚の肉団子に皆は絶賛の声を上げた、
「で、塀も作る事にしたの?」
「はい、ソフィアさんとも打合せしまして、やはりちゃんと仕切っておかないと何かあってからでは申し訳ないですから」
エレインはパンケーキを千切って口に運ぶ、ふーんとユーリは相槌をうちつつ、
「そう・・・お金大丈夫?」
「何とか・・・工期も間に合いそうですし、その点は大丈夫です、それにジャネットのお陰でブラスさんに借りが出来まして」
エレインはニヤリと笑みし、ちらりとジャネットを見ると、ジャネットはサッと左手で親指を上げて見せた、
「へー、何よそれ面白そうね」
「面白いですよ、でも、ヘッケル夫妻にとっては恥ずかしい事らしいので、他言は無しですわ」
「ふーん、そう」
ユーリは何やら考えている様子であるが、
「・・・そのうちに笑い話になる?」
静かにエレインに問う、
「そうですわね、10年も経てば・・・いえ、来年には笑い話にできるかと・・・」
「なら良いわ、それまで楽しみにしておきましょう」
ユーリはニコリと笑顔を見せた。
「ソフィア、カトカから聞いたわよー」
夕食後、食堂からは三々五々人影は消えていき、厨房で洗い物が終わったソフィアは白湯を片手にユーリの側の席に着く、
「そう、あなたはホントいい部下を持ったわね」
「なによそれ、わざわざ言われなくても身に染みてるわよ」
「そう、なら大事になさいな」
「大事にしてるわよ、で、どうするの?あなた一人ではもう難しいんじゃない?」
「まったくよ、どうしましょう?」
ソフィアはややふざけた顔をする、
「まったく、それでカトカに話したわけ?」
「いやー、別にねそれは偶々だったけどね」
ソフィアはゆっくりと白湯に口を付ける、
「ふーん・・・そろそろ・・・クロノス側の研究所が動き出すらしいのよ」
ユーリも白湯に手を伸ばす、
「なら、そっちに渡す?」
「あなたがそれでいいなら・・・なんだけど」
「いいわよ、でも・・・」
「でも、何?」
「活用に関してはこっちが主導にならないと面白くないかなって、思ったりして」
「へー、何?そんなに有用なの?」
「そりゃそうよ、あなたもほらいつだったか樽に水を汲んだでしょ、あと、田舎に居た時は毎朝水汲みだったじゃない、あれが、指一本よ、凄まじく楽できるわね、特に私達みたいな主婦にはね」
「そうかー、あれは何気に重労働だもんね、水汲みは嫌いだったなー、私もー」
ユーリは遠い目をして黒板を見る、
「そうよ、だからそっちではあれね、詳細な研究をしてもらって、その結果を貰えれば、私は私で好きにやるわよ、それで良ければと思ったりして」
「また、都合のいい事言って・・・」
「何よ、どうせそのうち誰かが気付いたわよ、それが早いか遅いかだけだわ」
「それはそうかもだけど、じゃ、クロノスにはそう言っておくわね、研究所が立ち上がってもやる事無いです、では恰好つかないし、下手したらあっちの所長もやれと言われそうなのよね、学園のセンセをやってる暇が無いわ」
ユーリは静かに溜息を吐く、
「そう、給金上がるんじゃないの?」
「そりゃ、そうだろうけど、今でも十分以上に貰ってるわよ、持つべきものは権力者の友人よね、今更ながら実感してるわ」
「今更ー?そうね、冒険者やってる時はこんな事してるなんて想像も出来なかったわね」
ソフィアは昼間の思考を思い出す、郷里を離れて生きていることが未だにどうもしっくりこないのだ、なにかフワフワとしている感じがする、
「そうかしら、まぁ、そんなもんよ、じゃ、研究の一部を肩代わりするって感じで動くわよ、というよりもあれかしら学術的な研究は受け持つって感じよね、あ、それと、サビナとやってるあれ、お金、こっちで出すわよ、結構な金額らしいじゃない?ガラス使えばそうなるだろうけど・・・」
「えっ、うん、まぁ、そう・・・まぁ、そっか、ならお願いしようかしら・・・」
ソフィアらしくも無く歯切れの悪い答えであるが、恐らくソフィアの中にも矜持というものはあって、ユーリに頼りっぱなしになる事に、遠慮よりも引け目を感じているのであろう、
「お金関連は素直に頼りなさいよ、どうせ私のお金じゃないんだし、それと人もね、カトカとサビナを自由・・・とは言えないけど使っていいからね、ま、言わなくても使ってもらっていたけどもね」
ユーリはやや語尾を強調する、
「あら、正式にお許しがでちゃったわね、じゃ、あっちの件も手を出せるかしら?」
ソフィアが小首を傾げた瞬間、
「何、他にもあるの?」
ユーリの強い視線がソフィアに向かうが、ソフィアはふふんと鼻で笑うのであった。
「で、塀も作る事にしたの?」
「はい、ソフィアさんとも打合せしまして、やはりちゃんと仕切っておかないと何かあってからでは申し訳ないですから」
エレインはパンケーキを千切って口に運ぶ、ふーんとユーリは相槌をうちつつ、
「そう・・・お金大丈夫?」
「何とか・・・工期も間に合いそうですし、その点は大丈夫です、それにジャネットのお陰でブラスさんに借りが出来まして」
エレインはニヤリと笑みし、ちらりとジャネットを見ると、ジャネットはサッと左手で親指を上げて見せた、
「へー、何よそれ面白そうね」
「面白いですよ、でも、ヘッケル夫妻にとっては恥ずかしい事らしいので、他言は無しですわ」
「ふーん、そう」
ユーリは何やら考えている様子であるが、
「・・・そのうちに笑い話になる?」
静かにエレインに問う、
「そうですわね、10年も経てば・・・いえ、来年には笑い話にできるかと・・・」
「なら良いわ、それまで楽しみにしておきましょう」
ユーリはニコリと笑顔を見せた。
「ソフィア、カトカから聞いたわよー」
夕食後、食堂からは三々五々人影は消えていき、厨房で洗い物が終わったソフィアは白湯を片手にユーリの側の席に着く、
「そう、あなたはホントいい部下を持ったわね」
「なによそれ、わざわざ言われなくても身に染みてるわよ」
「そう、なら大事になさいな」
「大事にしてるわよ、で、どうするの?あなた一人ではもう難しいんじゃない?」
「まったくよ、どうしましょう?」
ソフィアはややふざけた顔をする、
「まったく、それでカトカに話したわけ?」
「いやー、別にねそれは偶々だったけどね」
ソフィアはゆっくりと白湯に口を付ける、
「ふーん・・・そろそろ・・・クロノス側の研究所が動き出すらしいのよ」
ユーリも白湯に手を伸ばす、
「なら、そっちに渡す?」
「あなたがそれでいいなら・・・なんだけど」
「いいわよ、でも・・・」
「でも、何?」
「活用に関してはこっちが主導にならないと面白くないかなって、思ったりして」
「へー、何?そんなに有用なの?」
「そりゃそうよ、あなたもほらいつだったか樽に水を汲んだでしょ、あと、田舎に居た時は毎朝水汲みだったじゃない、あれが、指一本よ、凄まじく楽できるわね、特に私達みたいな主婦にはね」
「そうかー、あれは何気に重労働だもんね、水汲みは嫌いだったなー、私もー」
ユーリは遠い目をして黒板を見る、
「そうよ、だからそっちではあれね、詳細な研究をしてもらって、その結果を貰えれば、私は私で好きにやるわよ、それで良ければと思ったりして」
「また、都合のいい事言って・・・」
「何よ、どうせそのうち誰かが気付いたわよ、それが早いか遅いかだけだわ」
「それはそうかもだけど、じゃ、クロノスにはそう言っておくわね、研究所が立ち上がってもやる事無いです、では恰好つかないし、下手したらあっちの所長もやれと言われそうなのよね、学園のセンセをやってる暇が無いわ」
ユーリは静かに溜息を吐く、
「そう、給金上がるんじゃないの?」
「そりゃ、そうだろうけど、今でも十分以上に貰ってるわよ、持つべきものは権力者の友人よね、今更ながら実感してるわ」
「今更ー?そうね、冒険者やってる時はこんな事してるなんて想像も出来なかったわね」
ソフィアは昼間の思考を思い出す、郷里を離れて生きていることが未だにどうもしっくりこないのだ、なにかフワフワとしている感じがする、
「そうかしら、まぁ、そんなもんよ、じゃ、研究の一部を肩代わりするって感じで動くわよ、というよりもあれかしら学術的な研究は受け持つって感じよね、あ、それと、サビナとやってるあれ、お金、こっちで出すわよ、結構な金額らしいじゃない?ガラス使えばそうなるだろうけど・・・」
「えっ、うん、まぁ、そう・・・まぁ、そっか、ならお願いしようかしら・・・」
ソフィアらしくも無く歯切れの悪い答えであるが、恐らくソフィアの中にも矜持というものはあって、ユーリに頼りっぱなしになる事に、遠慮よりも引け目を感じているのであろう、
「お金関連は素直に頼りなさいよ、どうせ私のお金じゃないんだし、それと人もね、カトカとサビナを自由・・・とは言えないけど使っていいからね、ま、言わなくても使ってもらっていたけどもね」
ユーリはやや語尾を強調する、
「あら、正式にお許しがでちゃったわね、じゃ、あっちの件も手を出せるかしら?」
ソフィアが小首を傾げた瞬間、
「何、他にもあるの?」
ユーリの強い視線がソフィアに向かうが、ソフィアはふふんと鼻で笑うのであった。
0
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!
ree
ファンタジー
波乱万丈な人生を送ってきたアラフォー主婦の檜山梨沙。
生活費を切り詰めつつ、細々と趣味を矜持し、細やかなに愉しみながら過ごしていた彼女だったが、突然余命宣告を受ける。
夫や娘は全く関心を示さず、心配もされず、ヤケになった彼女は家を飛び出す。
神様の力でいつの間にか目の前に中世のような風景が広がっていて、そこには普通の人間の他に、二足歩行の耳や尻尾が生えている兎人間?鱗の生えたトカゲ人間?3メートルを超えるでかい人間?その逆の1メートルでずんぐりとした人間?達が暮らしていた。
これは不遇な境遇ながらも健気に生きてきた彼女に与えられたご褒美であり、この世界に齎された奇跡でもある。
ハンドメイドの趣味を超えて、世界に認められるアクセサリー屋になった彼女の軌跡。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
今日も誰かが飯を食いに来る。異世界スローライフ希望者の憂鬱。
KBT
ファンタジー
神の気まぐれで異世界転移した荻野遼ことリョウ。
神がお詫びにどんな能力もくれると言う中で、リョウが選んだのは戦闘能力皆無の探索能力と生活魔法だった。
現代日本の荒んだ社会に疲れたリョウは、この地で素材採取の仕事をしながら第二の人生をのんびりと歩もうと決めた。
スローライフ、1人の自由な暮らしに憧れていたリョウは目立たないように、優れた能力をひた隠しにしつつ、街から少し離れた森の中でひっそりと暮らしていた。
しかし、何故か飯時になるとやって来る者達がリョウにのんびりとした生活を許してくれないのだ。
これは地味に生きたいリョウと派手に生きている者達の異世界物語です。
転生幼女の異世界冒険記〜自重?なにそれおいしいの?〜
MINAMI
ファンタジー
神の喧嘩に巻き込まれて死んでしまった
お詫びということで沢山の
チートをつけてもらってチートの塊になってしまう。
自重を知らない幼女は持ち前のハイスペックさで二度目の人生を謳歌する。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる