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本編
14話 踏み出す前の・・・ その8
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「さ、こっちは出来ました、ジャネットさんはどうですか?」
ケイスが数枚の黄色がかったパンが乗った皿を持ち、その後ろからオリビアが小さな壺を3つ持って食堂に戻ってきた、
「良かった、助けて・・・」
ジャネットは研究所組の輪の中からケイスの元へ逃げ出した、
「はいはい、どうしたんです?」
ケイスは楽しそうにテーブルに皿を並べ、オリビアがその側に壺を置いた、
「ユーリ先生、怖い・・・」
ジャネットは心底疲れたようにボソリと言うと、
「あんですって?」
ユーリの敏感な悪口センサーに早速検知されたらしい、
「ユーリ先生、そんな険しい顔しないでくださいよ」
ケイスは簡単にユーリをいなすと、
「アイスケーキは出来てるのね?なら、実際に作って見せますねー」
まずはと皆の視線をテーブルに集めた、
「えっと、以前ソフィアさんの開いた宴会?の時の薄いパンに挟む料理、あれを参考にさせて頂きました」
ケイスは消沈するジャネットを置いて説明を始める、
「まず、用意したのはこの丸いパンですね、これは卵とミルクを中心としたパンというにはちょっと?な感じのパンです、で、このパンも若干甘いですね」
ケイスは説明に困って苦笑いを浮かべる、確かに皿の上のパンはパンというには黄色過ぎる品で、卵焼きと言われればそれの方が近いようである、が正直なところどちらでもあってどちらとも明確に違っていた、
「それで、それで?」
ミナが楽しそうに先を促す、
「はい、で、ここにアイスケーキをこう置きまして」
紫大理石の端に置かれたアイスケーキを取るとパンの中央に置いた、
「そして、このように巻きます」
クルクルと円形のパンを三角錐に形作る、途端に小さな歓声が上がった、
「あら、可愛らしい見た目ね」
「ホントです、さらに楽し気に見えますね」
「えへへ、でしょう?」
ケイスは屈託の無い笑みを見せ、
「このままでも美味しいのですが、ここに新開発のこちら」
やや大袈裟に3種の壺を見せる、
「これは、ミナさん、きっと大好きになりますよー」
壺の蓋をとりスプーンを入れると中から赤いドロッとした液体を掬い出しパンの中、アイスケーキを中心にしてトロリと回しかけた、
「わー、なに?なに?」
ミナがキラキラと光る目でケイスの手元を凝視する、
「はい、これが商品としての完成形です、見た目は如何でしょう」
ケイスは出来た三角の畳まれたパンを皿に置いてテーブルの中心へ押しやる、黄色のパンとアイスケーキの白、そこに赤いソースが彩りを添え、華やかな見た目となっている、
「ほほう、これは良いな、彩り豊かだし、形も良いぞ」
菓子の見た目に対して最も手厳しいレインが満面の笑みである、
「でしょう、レインちゃんに合格点貰えるように頑張ったんだから」
ケイスは胸を張り、ジャネットも漸く調子を取り戻したのか満足気な顔である、
「そっか、こうすればあれね、木片とか皿が無くても」
ソフィアはポンと手を叩く、
「はい、食べやすいと思いますし、食べ歩きも出来ますね」
ケイスの説明にソフィアは感心し、エレインはうんうんと頷いた、
「うむ、では、味じゃのう?」
「ですね、では、ちょっと形が崩れますが切り分けますね、で、他にも」
と言うと、ジャネットとオリビアが素早く動いて同じものを作ると、別の壺から黄色の果実片の入ったソースと見慣れた黒砂糖のソースをかけて皿に置いた、
「はいこちらも、切り分けますねー」
ケイスはそれぞれを幾つかに切り分けると、
「さ、どうぞ、ミナちゃん、はい」
赤いソースがタップリ付いた一片をミナに渡し、ソフィア達もそれぞれに手を伸ばす、
「んーーーー、美味しいー、イチゴだーーー、これすきー」
早速頬張ったミナは歓喜の声を上げる、
「ふふ、イチゴのソースよ美味しいでしょう?」
「うん、これは美味しいのう」
レインも満面の笑みを浮かべ、
「うわ、これはまた、このソースも美味しいけど、このパンのしっとり感とふにふに感がいいわね」
「はい、アイスケーキの冷たさを柔らかく包み込んでいますね、これは素晴らしい」
「甘さ控えめなのがいいわよね、あんた達、ホント凄いわ、うん、偉い」
「このパンだけでも美味しいんじゃないの?・・・うん、私なら・・・」
そこここで楽し気な声が上がり、やはりそれなりに緊張していた3人はホッと溜息を吐くと、
「こちらのミカンのソースも、って、先に言っちゃった、この黄色のソースがミカンの皮を入れたミカンソースになってるのですが、こちらは若干苦味があります、でも、それがまたいいんですよ」
黄色のソースをかけた分の皿を空いた皿と交換する、
「わ、私こっちの方が好きかも」
すぐに手を伸ばしたカトカも満面の笑みを浮かべる、ここ数日は厳しい顔であったが、やはりスイーツは心を柔らかくするらしい、実に良い笑顔である、
「あら、じゃ、私も・・・」
あっという間に皿は空になり、こちらも上々の反応である、
「そして、定番の黒砂糖のソースです」
ケイスが薦める迄も無く、その皿も一瞬で空になった、
「うん、これは売れるわね」
ソフィアはフーと満足気に吐息を吐いて、ニヤリと笑いケイスを見る、
「えへへ、ソフィアさんのお墨付きを貰っちゃいましたね」
「流石ですわ、ケイスさんもジャネットさんもアニタさんもパウラさんも皆、素晴らしいですわ」
エレインは心底嬉しそうである、今日の商品開発は完全に任せて参加せず、自身は部屋に籠ってギルドへの提出書類を作成していたのである、
「お嬢様、これはこちらもしっかりしないといけませんよ」
オリビアの冷静な一言に、
「勿論ですわよ、もう、何度目か分かりませんがやる気が充填されましたわ」
エレインは一層顔を強張らせる、
「ふふん、これで勝つる、我が陣営は最強なりや、世界征服迄あと3歩くらい?かな?」
ジャネット節が復活して食堂内は笑いに包まれるのであった。
ケイスが数枚の黄色がかったパンが乗った皿を持ち、その後ろからオリビアが小さな壺を3つ持って食堂に戻ってきた、
「良かった、助けて・・・」
ジャネットは研究所組の輪の中からケイスの元へ逃げ出した、
「はいはい、どうしたんです?」
ケイスは楽しそうにテーブルに皿を並べ、オリビアがその側に壺を置いた、
「ユーリ先生、怖い・・・」
ジャネットは心底疲れたようにボソリと言うと、
「あんですって?」
ユーリの敏感な悪口センサーに早速検知されたらしい、
「ユーリ先生、そんな険しい顔しないでくださいよ」
ケイスは簡単にユーリをいなすと、
「アイスケーキは出来てるのね?なら、実際に作って見せますねー」
まずはと皆の視線をテーブルに集めた、
「えっと、以前ソフィアさんの開いた宴会?の時の薄いパンに挟む料理、あれを参考にさせて頂きました」
ケイスは消沈するジャネットを置いて説明を始める、
「まず、用意したのはこの丸いパンですね、これは卵とミルクを中心としたパンというにはちょっと?な感じのパンです、で、このパンも若干甘いですね」
ケイスは説明に困って苦笑いを浮かべる、確かに皿の上のパンはパンというには黄色過ぎる品で、卵焼きと言われればそれの方が近いようである、が正直なところどちらでもあってどちらとも明確に違っていた、
「それで、それで?」
ミナが楽しそうに先を促す、
「はい、で、ここにアイスケーキをこう置きまして」
紫大理石の端に置かれたアイスケーキを取るとパンの中央に置いた、
「そして、このように巻きます」
クルクルと円形のパンを三角錐に形作る、途端に小さな歓声が上がった、
「あら、可愛らしい見た目ね」
「ホントです、さらに楽し気に見えますね」
「えへへ、でしょう?」
ケイスは屈託の無い笑みを見せ、
「このままでも美味しいのですが、ここに新開発のこちら」
やや大袈裟に3種の壺を見せる、
「これは、ミナさん、きっと大好きになりますよー」
壺の蓋をとりスプーンを入れると中から赤いドロッとした液体を掬い出しパンの中、アイスケーキを中心にしてトロリと回しかけた、
「わー、なに?なに?」
ミナがキラキラと光る目でケイスの手元を凝視する、
「はい、これが商品としての完成形です、見た目は如何でしょう」
ケイスは出来た三角の畳まれたパンを皿に置いてテーブルの中心へ押しやる、黄色のパンとアイスケーキの白、そこに赤いソースが彩りを添え、華やかな見た目となっている、
「ほほう、これは良いな、彩り豊かだし、形も良いぞ」
菓子の見た目に対して最も手厳しいレインが満面の笑みである、
「でしょう、レインちゃんに合格点貰えるように頑張ったんだから」
ケイスは胸を張り、ジャネットも漸く調子を取り戻したのか満足気な顔である、
「そっか、こうすればあれね、木片とか皿が無くても」
ソフィアはポンと手を叩く、
「はい、食べやすいと思いますし、食べ歩きも出来ますね」
ケイスの説明にソフィアは感心し、エレインはうんうんと頷いた、
「うむ、では、味じゃのう?」
「ですね、では、ちょっと形が崩れますが切り分けますね、で、他にも」
と言うと、ジャネットとオリビアが素早く動いて同じものを作ると、別の壺から黄色の果実片の入ったソースと見慣れた黒砂糖のソースをかけて皿に置いた、
「はいこちらも、切り分けますねー」
ケイスはそれぞれを幾つかに切り分けると、
「さ、どうぞ、ミナちゃん、はい」
赤いソースがタップリ付いた一片をミナに渡し、ソフィア達もそれぞれに手を伸ばす、
「んーーーー、美味しいー、イチゴだーーー、これすきー」
早速頬張ったミナは歓喜の声を上げる、
「ふふ、イチゴのソースよ美味しいでしょう?」
「うん、これは美味しいのう」
レインも満面の笑みを浮かべ、
「うわ、これはまた、このソースも美味しいけど、このパンのしっとり感とふにふに感がいいわね」
「はい、アイスケーキの冷たさを柔らかく包み込んでいますね、これは素晴らしい」
「甘さ控えめなのがいいわよね、あんた達、ホント凄いわ、うん、偉い」
「このパンだけでも美味しいんじゃないの?・・・うん、私なら・・・」
そこここで楽し気な声が上がり、やはりそれなりに緊張していた3人はホッと溜息を吐くと、
「こちらのミカンのソースも、って、先に言っちゃった、この黄色のソースがミカンの皮を入れたミカンソースになってるのですが、こちらは若干苦味があります、でも、それがまたいいんですよ」
黄色のソースをかけた分の皿を空いた皿と交換する、
「わ、私こっちの方が好きかも」
すぐに手を伸ばしたカトカも満面の笑みを浮かべる、ここ数日は厳しい顔であったが、やはりスイーツは心を柔らかくするらしい、実に良い笑顔である、
「あら、じゃ、私も・・・」
あっという間に皿は空になり、こちらも上々の反応である、
「そして、定番の黒砂糖のソースです」
ケイスが薦める迄も無く、その皿も一瞬で空になった、
「うん、これは売れるわね」
ソフィアはフーと満足気に吐息を吐いて、ニヤリと笑いケイスを見る、
「えへへ、ソフィアさんのお墨付きを貰っちゃいましたね」
「流石ですわ、ケイスさんもジャネットさんもアニタさんもパウラさんも皆、素晴らしいですわ」
エレインは心底嬉しそうである、今日の商品開発は完全に任せて参加せず、自身は部屋に籠ってギルドへの提出書類を作成していたのである、
「お嬢様、これはこちらもしっかりしないといけませんよ」
オリビアの冷静な一言に、
「勿論ですわよ、もう、何度目か分かりませんがやる気が充填されましたわ」
エレインは一層顔を強張らせる、
「ふふん、これで勝つる、我が陣営は最強なりや、世界征服迄あと3歩くらい?かな?」
ジャネット節が復活して食堂内は笑いに包まれるのであった。
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