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本編
13話 夏の日の策謀 その4
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「で結局これって何なんですか?」
ケイスが木簡を縦にしたり横にしたりしつつユーリに問うた、エレインとジャネットはそうそうに退散しオリビアとケイスも諦め顔である、
「下水道の回収物、何が書かれているのかも分からないし、何語かも不明なのよ、あのストラウク先生もお手上げなのよね」
ユーリは食事を終え白湯を片手に一服している、
「ふーん、なら金貨10枚も分かりますねー」
「そうですね、文字なのは分かりますがどこから読むかすら分かりません」
「ところどころ擦れてるし、ただの模様だったりして」
「そうなると、じゃこれそのものは一体何なんでしょう?飾りかしら?」
「うーん、何かの看板とか?」
二人は木簡を前にしてあーでもないこーでもないと楽しそうではある、
「あら、二人共そういうの好きなの?」
ユーリは楽し気な二人に興味を持ったようである、
「えー、好きといえば好きですねぇー、楽しいじゃないですかーこういう謎解き?みたいなの」
ケイスは笑みを見せ、
「そうですね、なぞなぞみたいで面白いですよ」
オリビアが賛同する、
「そっかー、言語に詳しい人というかそういうのを楽しめる人も欲しいのよねー、あんたら卒業したら研究所に来ない?」
「いや、そこまではどうでしょう?」
オリビアは難色を示し、
「えへへ、私は戻らないとですから」
ケイスもあっさりと断った、
「何よー、つれないわねぇー、でも、研究生活も楽しいものよ、日々発見の数々で、まー、政治さえ何とかしてくれれば・・・なのよねー」
ユーリは諸問題を思い出したらしい、大きく溜息を吐いた、
「何?また何かあったの?」
ソフィアが食堂に戻ってきた、手には白湯を持っている、
「そうねぇ、問題なのよねぇー、何かさー領主様の嫌がらせが始まったらしくてさー」
ユーリは夕食のトレーを横にずらしてテーブルに上半身を投げ出した、
「嫌がらせねぇー」
ソフィアは相槌を打つ、
「うん、調査の進み具合が遅くなるかなぁーって感じなんだけど、その間に別の嫌がらせが始まりそうでねぇー、いや、向うのやる事にはケチ付けるわけにはいかないしねぇー、こっちとしてはお手上げなのよー」
「ふーん、上には言ったの?」
「まだ、さっきストラウク先生と現状確認して、これからかな?上の人達まだ仕事中かしら?」
「どうかしらね、まぁ、行くんでしょ?」
「うん、行かないわけにはいかないじゃない、はぁー、メンドー、ユーウーツー」
ユーリはテーブル上で平らに脱力したままである、
「こら、ミナ、悪戯しないの」
だらしないユーリの姿にどう遊んでやろうかとミナとレインが様子を伺うが、察したソフィアに制された、
「ほら、二人とも休む時間でしょ、今日はどうしたの?二人共元気ね?」
「うむ、昼寝したからかのー、なぁ、ミナ?」
「うー、でも、オネムだよー」
レインは元気であるが、ミナは良い時間のようである、
「はい、先生、お返しします」
オリビアがユーリの前に木簡を置いた、
「あら、降参?」
「そうですね、全く、チンプンカンプンです、何語かも分からないって結構きついですね」
「見た事の無い文字って結構楽しいんですね、やっぱり謎解きみたいで楽しいかもです、答えがわかれば尚良いですけど」
オリビアはあっさりと負けを認め、ケイスはそれでも楽しそうである、
「そうか、うーん、言語を専門にしている研究者っているのかしらね、あらためて探して貰おうかしら」
スッとユーリは上体を起こした、
「んじゃ、私は上がります、ケイスさんも?」
「そうですね、では、おやすみなさい」
二人は軽く目礼すると自室へ戻った、
「ふぬー、まぁ、何も手柄が無いわけではないかしら、取り合えず、良い事と悪い事どっちから聞く?ってやつ?うん、ちょっと憧れるわよね」
「なによそれ?」
ソフィアが問うと、
「知らない?どこかで見た演劇にそんな台詞があったのよ」
「演劇ねぇー、旅芸人のしか見た事ないかしら、そういえばこっちの演劇って本格的なのよね」
「そうよー、そうだ、あんたまだ行った事なかったっけ、今度行こうよ、ミナもレインも一緒に」
「子供もいけるの?」
「大丈夫と思うわよ、ほら折角訪問着、買ってもらったんでしょ?」
「まぁそうだけど」
上等な訪問着は綺麗に整頓されて厳重に保管されている、上等過ぎて普段使いにはまったく合わない代物であり、またそういう用途の装いでもない、
「あ、そうだ、でも、あれって貰っておいて良いものかしら?」
ソフィアは疑問を口にする、
「いいんじゃないの?だって平民から貴族にお返しって言ってもねぇ、何が出来るのかしら?」
「そうよねぇ、今回のあれは貴族のお戯れって事で済まそうかしら」
ソフィアがそう言って自分を納得させた時、
「倉庫?物置場所?資材と建築道具、管理者名カロリ・ケール?擦れて読めないのう・・・」
ミナが手にして縦横に回転させて遊んでいた木簡をレインが声に出して読み上げた、
「へー、レイン、すごーい」
ミナは素直に感心している、
「なに、あなた、それ読めるの?」
ユーリが大声を上げ腰を上げた、
「うむ、これは読めるのう、簡単じゃぞ、少々悪筆じゃがのう」
ユーリの反応に対しレインは涼しい顔であった、しかし、ソフィアが放った非難の視線に気付くと、
「ふむ、冗談じゃ」
とレインは瞬時に韜晦する事とした、が、
「駄目よ、冗談じゃないわよ、読めるんでしょ、教えなさいよ」
ユーリは興奮してレインに詰め寄った、テーブル越しとはいえその圧は凄まじく間に挟まれたミナは分かりやすく小さくなっている、
「これは、イカン、ソフィア、助けよ」
ユーリの熱い視線を正面から受け止めたレインは、たまらずにソフィアを見る、
「はいはい、ユーリ落ち着いて、ほら、ミナが怖がってるでしょ」
ソフィアはユーリとレインの間に入って何とか場を鎮めるのであった。
ケイスが木簡を縦にしたり横にしたりしつつユーリに問うた、エレインとジャネットはそうそうに退散しオリビアとケイスも諦め顔である、
「下水道の回収物、何が書かれているのかも分からないし、何語かも不明なのよ、あのストラウク先生もお手上げなのよね」
ユーリは食事を終え白湯を片手に一服している、
「ふーん、なら金貨10枚も分かりますねー」
「そうですね、文字なのは分かりますがどこから読むかすら分かりません」
「ところどころ擦れてるし、ただの模様だったりして」
「そうなると、じゃこれそのものは一体何なんでしょう?飾りかしら?」
「うーん、何かの看板とか?」
二人は木簡を前にしてあーでもないこーでもないと楽しそうではある、
「あら、二人共そういうの好きなの?」
ユーリは楽し気な二人に興味を持ったようである、
「えー、好きといえば好きですねぇー、楽しいじゃないですかーこういう謎解き?みたいなの」
ケイスは笑みを見せ、
「そうですね、なぞなぞみたいで面白いですよ」
オリビアが賛同する、
「そっかー、言語に詳しい人というかそういうのを楽しめる人も欲しいのよねー、あんたら卒業したら研究所に来ない?」
「いや、そこまではどうでしょう?」
オリビアは難色を示し、
「えへへ、私は戻らないとですから」
ケイスもあっさりと断った、
「何よー、つれないわねぇー、でも、研究生活も楽しいものよ、日々発見の数々で、まー、政治さえ何とかしてくれれば・・・なのよねー」
ユーリは諸問題を思い出したらしい、大きく溜息を吐いた、
「何?また何かあったの?」
ソフィアが食堂に戻ってきた、手には白湯を持っている、
「そうねぇ、問題なのよねぇー、何かさー領主様の嫌がらせが始まったらしくてさー」
ユーリは夕食のトレーを横にずらしてテーブルに上半身を投げ出した、
「嫌がらせねぇー」
ソフィアは相槌を打つ、
「うん、調査の進み具合が遅くなるかなぁーって感じなんだけど、その間に別の嫌がらせが始まりそうでねぇー、いや、向うのやる事にはケチ付けるわけにはいかないしねぇー、こっちとしてはお手上げなのよー」
「ふーん、上には言ったの?」
「まだ、さっきストラウク先生と現状確認して、これからかな?上の人達まだ仕事中かしら?」
「どうかしらね、まぁ、行くんでしょ?」
「うん、行かないわけにはいかないじゃない、はぁー、メンドー、ユーウーツー」
ユーリはテーブル上で平らに脱力したままである、
「こら、ミナ、悪戯しないの」
だらしないユーリの姿にどう遊んでやろうかとミナとレインが様子を伺うが、察したソフィアに制された、
「ほら、二人とも休む時間でしょ、今日はどうしたの?二人共元気ね?」
「うむ、昼寝したからかのー、なぁ、ミナ?」
「うー、でも、オネムだよー」
レインは元気であるが、ミナは良い時間のようである、
「はい、先生、お返しします」
オリビアがユーリの前に木簡を置いた、
「あら、降参?」
「そうですね、全く、チンプンカンプンです、何語かも分からないって結構きついですね」
「見た事の無い文字って結構楽しいんですね、やっぱり謎解きみたいで楽しいかもです、答えがわかれば尚良いですけど」
オリビアはあっさりと負けを認め、ケイスはそれでも楽しそうである、
「そうか、うーん、言語を専門にしている研究者っているのかしらね、あらためて探して貰おうかしら」
スッとユーリは上体を起こした、
「んじゃ、私は上がります、ケイスさんも?」
「そうですね、では、おやすみなさい」
二人は軽く目礼すると自室へ戻った、
「ふぬー、まぁ、何も手柄が無いわけではないかしら、取り合えず、良い事と悪い事どっちから聞く?ってやつ?うん、ちょっと憧れるわよね」
「なによそれ?」
ソフィアが問うと、
「知らない?どこかで見た演劇にそんな台詞があったのよ」
「演劇ねぇー、旅芸人のしか見た事ないかしら、そういえばこっちの演劇って本格的なのよね」
「そうよー、そうだ、あんたまだ行った事なかったっけ、今度行こうよ、ミナもレインも一緒に」
「子供もいけるの?」
「大丈夫と思うわよ、ほら折角訪問着、買ってもらったんでしょ?」
「まぁそうだけど」
上等な訪問着は綺麗に整頓されて厳重に保管されている、上等過ぎて普段使いにはまったく合わない代物であり、またそういう用途の装いでもない、
「あ、そうだ、でも、あれって貰っておいて良いものかしら?」
ソフィアは疑問を口にする、
「いいんじゃないの?だって平民から貴族にお返しって言ってもねぇ、何が出来るのかしら?」
「そうよねぇ、今回のあれは貴族のお戯れって事で済まそうかしら」
ソフィアがそう言って自分を納得させた時、
「倉庫?物置場所?資材と建築道具、管理者名カロリ・ケール?擦れて読めないのう・・・」
ミナが手にして縦横に回転させて遊んでいた木簡をレインが声に出して読み上げた、
「へー、レイン、すごーい」
ミナは素直に感心している、
「なに、あなた、それ読めるの?」
ユーリが大声を上げ腰を上げた、
「うむ、これは読めるのう、簡単じゃぞ、少々悪筆じゃがのう」
ユーリの反応に対しレインは涼しい顔であった、しかし、ソフィアが放った非難の視線に気付くと、
「ふむ、冗談じゃ」
とレインは瞬時に韜晦する事とした、が、
「駄目よ、冗談じゃないわよ、読めるんでしょ、教えなさいよ」
ユーリは興奮してレインに詰め寄った、テーブル越しとはいえその圧は凄まじく間に挟まれたミナは分かりやすく小さくなっている、
「これは、イカン、ソフィア、助けよ」
ユーリの熱い視線を正面から受け止めたレインは、たまらずにソフィアを見る、
「はいはい、ユーリ落ち着いて、ほら、ミナが怖がってるでしょ」
ソフィアはユーリとレインの間に入って何とか場を鎮めるのであった。
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