セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

11話 お嬢様達の胎動、決意 その7

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翌日放課の時刻になると食堂にはいつもの6人が一つのテーブルに集っていた、

「それでは、仮称バーク女傑会の初会合を始めます」

エレインは立ち上がると宣言する、

「女傑会って・・・その名前、決定なの?」

ジャネットは早速疑問を上げる、

「何か、強すぎる気がします」

パウラが同意する、

「じゃ、猛女会」

エレインがどうでもいいような顔をした瞬間にジャネットは提案する、

「もっと駄目ですよ、酷くしてどうするんです?」

ケイスが悲鳴に近い声を上げる、

「酷くしてって・・・やん、ケイスさんが虐めるー」

ジャネットは口を尖らせた、

「どうでもいいです、仮称ですからね」

やれやれとオリビアが場を治める、

「はい、では、昨日迄の件の報告ね」

エレインは新しい屋台の値段と商工ギルドでの打合せ内容を要点を搾って説明した、

「うーん、そうなると、何をするにも先立つものが必要という事ですよねぇ」

アニタは腕を組んで渋い顔である、

「そうですね、あらためてブノワトさんに感謝ですよ」

「ええ、そうですわね、で、簡単な所から決めていきたいなと思いまして、まずは、来月の夏祭りへの参加の意思確認ですがどうされます?」

エレインは5人の顔を伺う、

「参加したいです」

「私も」

アニタとパウラが手を上げる、やがて5人全員が手を上げた、

「分かりました、わたしも再び皆さんで参加できる事を嬉しく思います」

エレインは笑顔になる、

「そうなると、前回の問題点を確認したいのですが、まず、私から」

エレインは中々の議長ぶりを発揮して意見を収集していく、

「となると、やはり、人手が足りない点と屋台の作業空間の件、それと仕込み量の件ですね」

「そうっすねー、正直休みなかったもんね、売り切れちゃったから早仕舞したけどあのまま続けてたら誰か倒れてたかもだよねぇー」

ジャネットの意見に皆頷いている、

「であれば、それぞれの班で、何人増やします?1人?2人?」

「はい、2人欲しいです、仕込み量を増やせば・・・というか必ず増やすと思うのですが、そうなると陽がある間は激務が続くと思います、贅沢を言えば3人ですが、そこまで増やすと屋台としてはどうかなって感じになると思うので・・・」

ケイスは理性的に意見を述べる、

「そうですね、前回のようになると休憩できる場所を別途欲しいくらいですが・・・次回は隣りあった区画を取りましょうか、そうすればスペースを有効活用できると思います、それとお互い助け合いつつ、休憩スペースも作れるかと思います」

オリビアの意見である、

「それは、良いですね、それができれば必要以上に人を増やす必要も無いと思います、増やせば増やすほど分け前が減るっていう事も考えなければ、オリビアの案を採用して区画を取れなかった場合はどうするかっという風に考えますか」

「はい、私も賛成です、では、その追加人員の人選と・・・」

年端のいかぬ生徒達とは思えない会議の内容であった、

「では、人員と次回の戦略はそんな感じで、次に新商品の開発についてなんだけど」

エレインは事務的な話しをある程度で切り上げ楽し気な話題を振った、真面目で細かい内容よりもこういった先々が楽しくなる話しの方が脳はより活性化し柔軟になる、この話題の後の店舗の相談に行く前の一種の緩衝材となるであろう、

「うっす、それで、夏祭りだとスイカが安くなってると思うのよ」

「混ぜる食材を増やすのは新商品とは言いにくいと思いますよ」

「あ、ケイス、それひっどい、現行の苺やミカンだってかなり苦労したんだぜ」

「そうでしたっけ?ソフィアさんがあっさりと作って見せたじゃないですか」

「そりゃ、そうだっけか?」

話題を変えた瞬間に議論はより活発になる、より楽しんで会話は進み様々な案が出され、それは実際に作成してみるという事で幾つかに絞られた、

「では、やはり、スポンジケーキとミルクアイスケーキの合作商品を優先しましょう、これはオリビアの案とアニタの案でだいぶ形も違うので食べ比べてみないとですわね、となると明日にもまた集まりましょうか、何事も迅速に対応致しましょう」

一同は合意する、

「では、次に、より難題・・・といっていいかと思いますが、店舗の展開と商工ギルドへの加入についてです、で、ここからは各個人への相談の形になるかと思いますわ」

エレインはそこまで話して一同の顔を見る、

「まず、私は商会を設立しようと思っております」

決意を持った一言であった、

「へぇー」

っとジャネットは素直に関心する、茶化す素振りも見せない、パウラとケイスは言葉を飲み込み、アニタも声を無くしている、オリビアだけは静かに頷いた、

「そして、店を構えてこの屋台で提供している商品を商いたいと考えています、そんな勝手な事をするなという意見もあるかと思いますが、これは私が一人になってもやり遂げたいと考える事業です、どうか御理解頂きたいです」

エレインは言葉を区切ると、一同を見渡す、

「どうでしょうか、私が直接関わった商品に関しては通じるかと思いますが、アイスケーキ関連に関しては、その、言葉が悪いですが泥棒するような形になるかと思います、御三人の努力を搔っ攫う形になってしまうのかなと、その点、謝罪しつつ、何らかの方法で謝礼に替えたいと考えております」

「うーん、それに関してはどうだろう?」

ジャネットはアニタとパウラを見る、

「どういう事でしょう?」

「いや、私達もソフィアさんのおかげでって感じだしね、改良はしたけど発明はしていない?的な・・・」

「そうですね、ジャネットの言う通りです、エレインさんの言う努力という程の事はしていませんしね」

アニタがサバサバと言い切った、

「しかし」

「いやー、しかしもかかしも無いでいいよー、それを言ったらさ屋台の時にお金貸してくれないと出店出来なかったもん、うちら結構ギリギリだったしさぁー」

「そうです、そうです、そういう意味ではエレインさんの協力のおかげですよ」

パウラがジャネットに同調する、

「だからさ、商品関連に関しては気にしないでいいよって事でいいんじゃないの?うちらとしてはそんな感じ・・・まぁ、どうしても御礼したいというのであれば、素直に貰うけどね」

ジャネットはニヤリと笑う、

「そうですか、ありがとうございます、そうですね、御礼は必ず」

エレインはオリビアに目配せし、3人への恩を忘れないよう心に刻んだ、

「では、この点を踏まえてなのですが」

エレインは瞬時に思考を切り替える、

「問題になるのは資金の面でも店舗の物件の面でも無く、皆さんの将来に関する事です、実は、アニタさんやパウラさんとはお付き合いをして短い時間ですが、できればこの6人で商会を立ち上げられたら嬉しいと考えております、しかし、本来皆さんは目標があって学園に在籍しております、上級兵士を目指す人、医者を目指す人、職人になる人、それは実家の意向もあっての事と思うのです、ここで変に商人の雇われになってはいけない人達と思うのです、つまり、何を言いたいかと言いますと、私のはなはだ勝手なお願いなのですが、皆さんのお力を皆さんが学園にいる間、私に貸して頂けないでしょうか、あくまで学業優先は当然として、皆さんが社会で活躍する場が定まるまで私の商会で私の手足となって欲しいのです、さらに卒業後私達の商会で仕事を続けたいとお思いになるのであれば、当然雇用致したいと考えております、甚だ勝手な話かと思いますが、・・・如何でしょうか」

エレインは力強く眼前の5人に自分の想いをぶつけた、それは突然の事であったが、皆、静かに真剣にエレインの想いを受け止めた、

「はい、質問」

ジャネットが軽い口調で手を挙げる、

「なんでしょう」

「うん、えーと、それはエレインさんが私達を雇うって事だよね?」

「はい、その通りです」

「良い給料頂戴ね」

「はい?」

エレインは聞き返す、

「ん、だからー、私はそのエレイン様の商会に雇われてもいいかなぁーって、そうなると、良い給料を頂ければ尚、良いかなって?」

惚けたようにジャネットはニヤケ顔を見せる、

「それは勿論・・・いえ、別途相談ですわね」

エレインは目を細め口の端を上げる、

「厳しいなー、エレイン様は伊達じゃないなぁー」

と普段と変わらずにエレインを茶化しつつ笑いを誘った。



「へー、エレインさん思い切ったのねぇ」

厨房にてソフィアはオリビアから会議の件を聞かされた、

「はい、でも、いつかは何かをしなければなりませんから」

オリビアはとても楽しそうである、

「勿論、オリビアさんは付いて行くんでしょ?」

「そうですね、はい、そのつもりです」

「ま、その為の一環だしねぇ」

と野菜の皮を剥くオリビアの手元を見る、たどたどしさは抜けないものの当初よりは桁違いに手際が良くなっている、

「他の人は?」

ソフィアは質問を続けた、

「はい、概ね賛同頂きました、実際にどういった運用でどれくらい賃金を支払いできるかが未定なので、なんとも言えない部分もありますが、学業優先である事と楽しんで給与を頂けるのであればという事で暫くはお付き合い頂けると思いますよ」

オリビアの言説は既にエレイン側である、生真面目で事務処理能力の高いオリビアが側にいるなら、それだけでエレインの助けになるであろう、

「でも、店舗にしろ、ギルド加入にしろ、お金かかるんじゃないの?」

「はい、ですので、暫くは屋台でお金を溜めつつ出資者を募ろうかと考えています」

「そうなるよね、当てはあるの?」

「えぇ、御実家もそうですし、エレイン様のお姉様やお兄様もそうですし、まずは御家族から頼ってみようかと」

「あぁ、そうか、そうなると、リシア様をちゃんと頼るのよ、後が怖いわ」

ソフィアはニヤリと笑う、

「そうですね、なるほど、一番大事な人を忘れてました」

「そうよ、こういう時にちゃんと頼るのも礼儀の一つだからね、何をするにもリシア様の事を一旦考えるのよ、忘れないで」

「肝に銘じます」

オリビアは大真面目に言って二人はクスクスと笑うのであった。
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