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本編
10話 祭りの後、新しき友人達 その2
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「ん、で、どうしたの?」
片付けを終え一同は食堂に集まった、内庭で菜園の様子を見ていたソフィアをオリビアが呼びに来てソフィアは神妙な顔付きの生徒に囲まれる、
「はい、相談があります」
真剣な生徒達の視線に、ソフィアはまためんどくさい事をと警戒する、
「えっと、簡単な方から、その、ソフィアさんとブノワトさんにお礼がしたいと思っておりまして」
ケイスが代表して話し続ける、
「その為の予算も確保してあります、そこで、単刀直入に何が良いかなと、その・・・お礼としてソフィアさんにお渡しできるものであれば、できうる限り叶えたいと思うのですが」
ソフィアはその意味を測りかねて小首を傾げる、
「えーと、端的に言います、お礼がしたいので何か欲しいものがあれば言って下さい」
ジャネットが助け船を出した、ソフィアはその言葉に困ったような笑みを浮かべる、
「別にいらないわよとは言わせませんわよ」
ソフィアが口を開き掛けた瞬間にエレインは釘を差す、
「そうですね、無料より怖いものは無いといいます、正当な報酬を受け取るべきと思います」
オリビア迄が強硬な意見である、やや脅し口調な上被害者目線なのはどういう事なのだろう、ソフィアは渋い顔はそのままに若者達の表情を観察しながら思案する、彼女達の気持と本気の度合はよく理解できるのであるが、報酬を貰うほどのことかしら、お金で買えるものだとちょっとなぁ・・・。
一般の人間であればそれなりに物欲も金銭欲もあるのであろうが、このソフィアという女性はどうにもそう言った欲が薄い人間であるらしい、彼女の事を良く知るユーリがこの場にいれば何らかの解が得られたであろうが、それも望めなかった、ソフィアは視線を外しいよいよ持って思案に暮れる、
「えっと、どうしましょう?」
ソフィア本人が沈黙し深い思考に取り込まれてしまい食堂は突然すぎる異様な静寂に包まれた、ソフィアを囲む6人はどうしたものかと声を顰め、何がしか声をかけようとするも、その発言の切っ掛けさえも、沈黙の渦の中心にいるソフィアによって吸い取られるような錯覚に陥る、これは、マズイかもと6人が焦り始めた瞬間、
「ならば、葡萄棚じゃ」
いつの間にか食堂に入ってきたレインがシレっと沈黙を破った、すっとソフィアは頭を上げ、
「そうね、それで」
6人はズルっと半身を崩す程度の衝撃を受ける、
「えっと、では、葡萄棚ですか?」
「ええ、レインの葡萄畑にね葡萄棚が欲しいかなって、今日見てみたけどそろそろ蔓が伸び始めてるから立派な葡萄棚が欲しいわね」
ソフィアの言葉に一同は顔を見合わせる、
「そろそろねぇって、さっきレインと話してたのよ、丁度良かったわ」
「あの、ソフィアさんがそう言うのであれば・・・ですけど」
「うん、了解、決定、それで、材料は安いもんだし、人手があればあっと言う間よ、うん、決定、それで、決定」
ジャネットは立ち上がりひたすら決定を連呼する、
「はい、私も賛成ですわ、葡萄棚楽しみですわね」
エレインも額の汗を拭いつつ場を盛り上げる、
「良かったわ、楽しみね、レイン」
「そうじゃの、皆の者、いつ取り掛かるかの」
「はい、では、明日にでも、材料はブノワトさんに相談して仕入れます、早ければ明日中?遅くても明後日には完成できるかと」
オリビアは冷静に回答する、
「うん、それで良いぞ」
「あっそれでブノワトさんへのお礼もなんですよ」
パウラが手を叩く、瞬間、5人の焦った視線がパウラを射貫くが、
「うーん、美味しいお酒がいいんじゃないかしら?」
ソフィアはあっさりと答えた、
「それに、今後何かがあれば頼るんだし、頼るといってもあれよ、お客さんとして発注するって意味よ、であれば、良いお客様になるのがブノワトさんへの恩返しになると思うわ、それに社会人の先輩として良い人だってわかったんだし、仲良くしておいて損の無い人とは仲良くしておくべきよ、それに良いお酒って高いのよ、知ってるでしょうけど」
ソフィアは気軽に大人らしい事を言う、
「なるほど、確かに、屋台を続けるのであれば木片の注文はお願いしたいですし」
「そうね、屋台の修繕とかベンチを借りたりとか」
「保証人の件もありますし、今回は、お酒でお礼として、次回からは明解に金銭の遣り取りでスッキリした関係になれば良いですね」
「そうですね、今回は何から何までお世話になりましたけど、次回からはもっとこう社会人としてのお付き合いが出来ればという事ですか」
「ありがとうございます、ソフィアさん、それでいきます、明日にも皆で行きますか?」
「ぞろぞろ大人数で行くのもどうかと思いますよ」
「では、私とオリビアそれとジャネットさんで行きましょう、お酒についてはお任せ下さいね」
エレインが優雅な笑顔を見せる、
「おおー、流石エレイン様、のんべぇであらせられる」
「なんですって」
ジャネットがパウラの影に隠れた仕草でやっと笑い声が起きた、
「それとなんですけどー」
アニタが上目遣いでソフィアに問い掛ける、
「えっと、その他の生徒?もやりたいってなっちゃっててー」
「やりたいって、屋台を?」
「そうなんですよ、それで、御協力頂けないかなって」
「協力内容によるけど、実際にあんた達がやってみせたんだから、今度はあんた達が他人に教える事ができるんじゃないの?」
ソフィアの意見に6人はあらためて背筋を正す、
「はい、ソフィアさんの言う事はまったくその通りと思います、ですが、やっぱりその不安な所が大きくて、その、頼れる大人が欲しいかなぁって」
「要するに何をして欲しいの?」
ソフィアは生徒達の要領を得ない話に眉根を寄せる、生徒達もまたどうしたものかと眉間の皺が深くなる、
「わかった、質問の方向性が違うんだ、えっとですね、今、私達は学園で一躍英雄なんですよ、屋台のお陰で、それで皆が真似してやりたいって言うんですね、で、私達としてはそれぞれ思う所があるもんで、どうしたものかと悩んじゃいました、で、どうしたものかという相談です」
「ジャネットさんは本当に時々ですが非常に感がよろしいですわね」
エレインがジャネットの説明を褒めた、
「なるほどね、でも、それって、私が決める事?」
ソフィアはなんとも困った顔をし、何らかの答えを待つ生徒達の顔を見て、
「うん、じゃ、任せて」
ソフィアは立ち上がった、その明るい口調に一同は期待が高まる、
「では、私の権限で決定します、屋台関連についてはエレインさんあなたが全ての中心であり、責任者になりなさい、以上」
夕飯の準備をしますねとソフィアは言って食堂を後にした。
片付けを終え一同は食堂に集まった、内庭で菜園の様子を見ていたソフィアをオリビアが呼びに来てソフィアは神妙な顔付きの生徒に囲まれる、
「はい、相談があります」
真剣な生徒達の視線に、ソフィアはまためんどくさい事をと警戒する、
「えっと、簡単な方から、その、ソフィアさんとブノワトさんにお礼がしたいと思っておりまして」
ケイスが代表して話し続ける、
「その為の予算も確保してあります、そこで、単刀直入に何が良いかなと、その・・・お礼としてソフィアさんにお渡しできるものであれば、できうる限り叶えたいと思うのですが」
ソフィアはその意味を測りかねて小首を傾げる、
「えーと、端的に言います、お礼がしたいので何か欲しいものがあれば言って下さい」
ジャネットが助け船を出した、ソフィアはその言葉に困ったような笑みを浮かべる、
「別にいらないわよとは言わせませんわよ」
ソフィアが口を開き掛けた瞬間にエレインは釘を差す、
「そうですね、無料より怖いものは無いといいます、正当な報酬を受け取るべきと思います」
オリビア迄が強硬な意見である、やや脅し口調な上被害者目線なのはどういう事なのだろう、ソフィアは渋い顔はそのままに若者達の表情を観察しながら思案する、彼女達の気持と本気の度合はよく理解できるのであるが、報酬を貰うほどのことかしら、お金で買えるものだとちょっとなぁ・・・。
一般の人間であればそれなりに物欲も金銭欲もあるのであろうが、このソフィアという女性はどうにもそう言った欲が薄い人間であるらしい、彼女の事を良く知るユーリがこの場にいれば何らかの解が得られたであろうが、それも望めなかった、ソフィアは視線を外しいよいよ持って思案に暮れる、
「えっと、どうしましょう?」
ソフィア本人が沈黙し深い思考に取り込まれてしまい食堂は突然すぎる異様な静寂に包まれた、ソフィアを囲む6人はどうしたものかと声を顰め、何がしか声をかけようとするも、その発言の切っ掛けさえも、沈黙の渦の中心にいるソフィアによって吸い取られるような錯覚に陥る、これは、マズイかもと6人が焦り始めた瞬間、
「ならば、葡萄棚じゃ」
いつの間にか食堂に入ってきたレインがシレっと沈黙を破った、すっとソフィアは頭を上げ、
「そうね、それで」
6人はズルっと半身を崩す程度の衝撃を受ける、
「えっと、では、葡萄棚ですか?」
「ええ、レインの葡萄畑にね葡萄棚が欲しいかなって、今日見てみたけどそろそろ蔓が伸び始めてるから立派な葡萄棚が欲しいわね」
ソフィアの言葉に一同は顔を見合わせる、
「そろそろねぇって、さっきレインと話してたのよ、丁度良かったわ」
「あの、ソフィアさんがそう言うのであれば・・・ですけど」
「うん、了解、決定、それで、材料は安いもんだし、人手があればあっと言う間よ、うん、決定、それで、決定」
ジャネットは立ち上がりひたすら決定を連呼する、
「はい、私も賛成ですわ、葡萄棚楽しみですわね」
エレインも額の汗を拭いつつ場を盛り上げる、
「良かったわ、楽しみね、レイン」
「そうじゃの、皆の者、いつ取り掛かるかの」
「はい、では、明日にでも、材料はブノワトさんに相談して仕入れます、早ければ明日中?遅くても明後日には完成できるかと」
オリビアは冷静に回答する、
「うん、それで良いぞ」
「あっそれでブノワトさんへのお礼もなんですよ」
パウラが手を叩く、瞬間、5人の焦った視線がパウラを射貫くが、
「うーん、美味しいお酒がいいんじゃないかしら?」
ソフィアはあっさりと答えた、
「それに、今後何かがあれば頼るんだし、頼るといってもあれよ、お客さんとして発注するって意味よ、であれば、良いお客様になるのがブノワトさんへの恩返しになると思うわ、それに社会人の先輩として良い人だってわかったんだし、仲良くしておいて損の無い人とは仲良くしておくべきよ、それに良いお酒って高いのよ、知ってるでしょうけど」
ソフィアは気軽に大人らしい事を言う、
「なるほど、確かに、屋台を続けるのであれば木片の注文はお願いしたいですし」
「そうね、屋台の修繕とかベンチを借りたりとか」
「保証人の件もありますし、今回は、お酒でお礼として、次回からは明解に金銭の遣り取りでスッキリした関係になれば良いですね」
「そうですね、今回は何から何までお世話になりましたけど、次回からはもっとこう社会人としてのお付き合いが出来ればという事ですか」
「ありがとうございます、ソフィアさん、それでいきます、明日にも皆で行きますか?」
「ぞろぞろ大人数で行くのもどうかと思いますよ」
「では、私とオリビアそれとジャネットさんで行きましょう、お酒についてはお任せ下さいね」
エレインが優雅な笑顔を見せる、
「おおー、流石エレイン様、のんべぇであらせられる」
「なんですって」
ジャネットがパウラの影に隠れた仕草でやっと笑い声が起きた、
「それとなんですけどー」
アニタが上目遣いでソフィアに問い掛ける、
「えっと、その他の生徒?もやりたいってなっちゃっててー」
「やりたいって、屋台を?」
「そうなんですよ、それで、御協力頂けないかなって」
「協力内容によるけど、実際にあんた達がやってみせたんだから、今度はあんた達が他人に教える事ができるんじゃないの?」
ソフィアの意見に6人はあらためて背筋を正す、
「はい、ソフィアさんの言う事はまったくその通りと思います、ですが、やっぱりその不安な所が大きくて、その、頼れる大人が欲しいかなぁって」
「要するに何をして欲しいの?」
ソフィアは生徒達の要領を得ない話に眉根を寄せる、生徒達もまたどうしたものかと眉間の皺が深くなる、
「わかった、質問の方向性が違うんだ、えっとですね、今、私達は学園で一躍英雄なんですよ、屋台のお陰で、それで皆が真似してやりたいって言うんですね、で、私達としてはそれぞれ思う所があるもんで、どうしたものかと悩んじゃいました、で、どうしたものかという相談です」
「ジャネットさんは本当に時々ですが非常に感がよろしいですわね」
エレインがジャネットの説明を褒めた、
「なるほどね、でも、それって、私が決める事?」
ソフィアはなんとも困った顔をし、何らかの答えを待つ生徒達の顔を見て、
「うん、じゃ、任せて」
ソフィアは立ち上がった、その明るい口調に一同は期待が高まる、
「では、私の権限で決定します、屋台関連についてはエレインさんあなたが全ての中心であり、責任者になりなさい、以上」
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