セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

文字の大きさ
上 下
61 / 1,141
本編

10話 祭りの後、新しき友人達 その2

しおりを挟む
「ん、で、どうしたの?」

片付けを終え一同は食堂に集まった、内庭で菜園の様子を見ていたソフィアをオリビアが呼びに来てソフィアは神妙な顔付きの生徒に囲まれる、

「はい、相談があります」

真剣な生徒達の視線に、ソフィアはまためんどくさい事をと警戒する、

「えっと、簡単な方から、その、ソフィアさんとブノワトさんにお礼がしたいと思っておりまして」

ケイスが代表して話し続ける、

「その為の予算も確保してあります、そこで、単刀直入に何が良いかなと、その・・・お礼としてソフィアさんにお渡しできるものであれば、できうる限り叶えたいと思うのですが」

ソフィアはその意味を測りかねて小首を傾げる、

「えーと、端的に言います、お礼がしたいので何か欲しいものがあれば言って下さい」

ジャネットが助け船を出した、ソフィアはその言葉に困ったような笑みを浮かべる、

「別にいらないわよとは言わせませんわよ」

ソフィアが口を開き掛けた瞬間にエレインは釘を差す、

「そうですね、無料より怖いものは無いといいます、正当な報酬を受け取るべきと思います」

オリビア迄が強硬な意見である、やや脅し口調な上被害者目線なのはどういう事なのだろう、ソフィアは渋い顔はそのままに若者達の表情を観察しながら思案する、彼女達の気持と本気の度合はよく理解できるのであるが、報酬を貰うほどのことかしら、お金で買えるものだとちょっとなぁ・・・。
一般の人間であればそれなりに物欲も金銭欲もあるのであろうが、このソフィアという女性はどうにもそう言った欲が薄い人間であるらしい、彼女の事を良く知るユーリがこの場にいれば何らかの解が得られたであろうが、それも望めなかった、ソフィアは視線を外しいよいよ持って思案に暮れる、

「えっと、どうしましょう?」

ソフィア本人が沈黙し深い思考に取り込まれてしまい食堂は突然すぎる異様な静寂に包まれた、ソフィアを囲む6人はどうしたものかと声を顰め、何がしか声をかけようとするも、その発言の切っ掛けさえも、沈黙の渦の中心にいるソフィアによって吸い取られるような錯覚に陥る、これは、マズイかもと6人が焦り始めた瞬間、

「ならば、葡萄棚じゃ」

いつの間にか食堂に入ってきたレインがシレっと沈黙を破った、すっとソフィアは頭を上げ、

「そうね、それで」

6人はズルっと半身を崩す程度の衝撃を受ける、

「えっと、では、葡萄棚ですか?」

「ええ、レインの葡萄畑にね葡萄棚が欲しいかなって、今日見てみたけどそろそろ蔓が伸び始めてるから立派な葡萄棚が欲しいわね」

ソフィアの言葉に一同は顔を見合わせる、

「そろそろねぇって、さっきレインと話してたのよ、丁度良かったわ」

「あの、ソフィアさんがそう言うのであれば・・・ですけど」

「うん、了解、決定、それで、材料は安いもんだし、人手があればあっと言う間よ、うん、決定、それで、決定」

ジャネットは立ち上がりひたすら決定を連呼する、

「はい、私も賛成ですわ、葡萄棚楽しみですわね」

エレインも額の汗を拭いつつ場を盛り上げる、

「良かったわ、楽しみね、レイン」

「そうじゃの、皆の者、いつ取り掛かるかの」

「はい、では、明日にでも、材料はブノワトさんに相談して仕入れます、早ければ明日中?遅くても明後日には完成できるかと」

オリビアは冷静に回答する、

「うん、それで良いぞ」

「あっそれでブノワトさんへのお礼もなんですよ」

パウラが手を叩く、瞬間、5人の焦った視線がパウラを射貫くが、

「うーん、美味しいお酒がいいんじゃないかしら?」

ソフィアはあっさりと答えた、

「それに、今後何かがあれば頼るんだし、頼るといってもあれよ、お客さんとして発注するって意味よ、であれば、良いお客様になるのがブノワトさんへの恩返しになると思うわ、それに社会人の先輩として良い人だってわかったんだし、仲良くしておいて損の無い人とは仲良くしておくべきよ、それに良いお酒って高いのよ、知ってるでしょうけど」

ソフィアは気軽に大人らしい事を言う、

「なるほど、確かに、屋台を続けるのであれば木片の注文はお願いしたいですし」

「そうね、屋台の修繕とかベンチを借りたりとか」

「保証人の件もありますし、今回は、お酒でお礼として、次回からは明解に金銭の遣り取りでスッキリした関係になれば良いですね」

「そうですね、今回は何から何までお世話になりましたけど、次回からはもっとこう社会人としてのお付き合いが出来ればという事ですか」

「ありがとうございます、ソフィアさん、それでいきます、明日にも皆で行きますか?」

「ぞろぞろ大人数で行くのもどうかと思いますよ」

「では、私とオリビアそれとジャネットさんで行きましょう、お酒についてはお任せ下さいね」

エレインが優雅な笑顔を見せる、

「おおー、流石エレイン様、のんべぇであらせられる」

「なんですって」

ジャネットがパウラの影に隠れた仕草でやっと笑い声が起きた、

「それとなんですけどー」

アニタが上目遣いでソフィアに問い掛ける、

「えっと、その他の生徒?もやりたいってなっちゃっててー」

「やりたいって、屋台を?」

「そうなんですよ、それで、御協力頂けないかなって」

「協力内容によるけど、実際にあんた達がやってみせたんだから、今度はあんた達が他人に教える事ができるんじゃないの?」

ソフィアの意見に6人はあらためて背筋を正す、

「はい、ソフィアさんの言う事はまったくその通りと思います、ですが、やっぱりその不安な所が大きくて、その、頼れる大人が欲しいかなぁって」

「要するに何をして欲しいの?」

ソフィアは生徒達の要領を得ない話に眉根を寄せる、生徒達もまたどうしたものかと眉間の皺が深くなる、

「わかった、質問の方向性が違うんだ、えっとですね、今、私達は学園で一躍英雄なんですよ、屋台のお陰で、それで皆が真似してやりたいって言うんですね、で、私達としてはそれぞれ思う所があるもんで、どうしたものかと悩んじゃいました、で、どうしたものかという相談です」

「ジャネットさんは本当に時々ですが非常に感がよろしいですわね」

エレインがジャネットの説明を褒めた、

「なるほどね、でも、それって、私が決める事?」

ソフィアはなんとも困った顔をし、何らかの答えを待つ生徒達の顔を見て、

「うん、じゃ、任せて」

ソフィアは立ち上がった、その明るい口調に一同は期待が高まる、

「では、私の権限で決定します、屋台関連についてはエレインさんあなたが全ての中心であり、責任者になりなさい、以上」

夕飯の準備をしますねとソフィアは言って食堂を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...