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本編
7話 ブノワトさんのスパルタ商売学 その7
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「はい、控えはできたようね」
ではとブノワトは黒板の半分を消して、
「今後の予定を組みますね、今日が14日、明日の15日に申請書提出します、で20日が本番でしょ、理想としては18日か17日に模擬販売をしたいかなと・・・どうでしょう」
「模擬販売といいますと、実際に屋台を出すのですか?」
エレインが手を上げる、
「はい、屋台は出します、実際の屋台・・・んっ・・・あんたら屋台は?」
ブノワトは大声を上げる、一同は彼女の大声に慣れてきていたが、それでも彼女の言葉の意味を理解し、顔色を無くした、
「ごめんなさい、無い・・・です」
ジャネットは俯いて恐る恐る手を上げた、言い出しっぺのジャネットがこうである、エレイン組もまた何も考えていなかった。
「無いって・・・あのねぇ」
ブノワトは再度呆れて溜息を吐く、
「いや、何とかなるかなぁなんて・・・えへへ」
ジャネットの言い訳にもならない言葉に、再度溜息を吐くと、
「うん、分かったわ、明日、旦那に言って用意してあげる、でも期待しないでよ、納屋に転がっているの調整してみるわ、全く、感謝なさいよ」
実に冷たい視線で6人を睥睨した、言葉も無く畏まる一同、
「はい、じゃ屋台も何とかするとして、予定の件ね」
ブノワトの切替の速さは凄まじく、ソフィアはそのあっさりとした気質に好感を感じた、感情の起伏が激しいという訳ではない、男性気質の気風の良さというものであろうか、恐らく男性ばかりの職場で身に付いた性質といって良いものであろう、その大声は叱責ではあっても威嚇でも脅しでもないのだ。
「うーん、私も飲食の屋台って経験無いからなぁ、よし決めます、17日午後から実際に販売します、決定、ここで実際に販売してお金の遣り取りから食材の加工、保存、顧客対応、等々一式全てやるわよ、そのうえで問題点を洗い出す・・・いいわね、で、18日19日の二日で問題を解消して、本番への仕込み、うん、今日の所はこんな感じね、いいかしら?」
一気にブノワト主導で予定が組まれた、ブノワトの問い掛けは確認ではなく決定の意味であると理解し一同は無言で頷く、
「うむ、では、ソフィアさんもこれで良いですか?」
「かまわないわぁ、楽しみねー」
ソフィアはミナに笑顔を向ける、
「うん、楽しみー、って、何がー?」
ミナの良い感じの脱力感が一同の緊張を幾らかでもほぐしたようであった。
「すいません、ソフィアさん、今日のお手伝いは・・・」
神妙な顔のオリビアが厨房に入ってきた、
「いいわよ、あっちで全力を出しなさい」
ソフィアは笑ってオリビアを追い返す、食堂ではブノワトの厳しさが良い感じに伝播したようで屋台に向けての商品開発と打合せが活発になされていた、
「そこでなんですが、コンロを御貸し頂ければと思いまして」
「ん、いいわよ、ちょっとまってね」
コンロに置いていた調理途中の鍋を下ろすと火を落とす、
「はい、どうぞ、持ってって」
「ありがとうございます、すいません、何から何まで」
「別にかまわないわよ、色々楽しみだしね」
ソフィアの言葉と優しい笑顔にオリビアは安堵の吐息を漏らす、
「っていうか、鍋とか材料とかあるの?好きなだけとは言えないけど遠慮しないで持っていきなさい」
「そうですね、鍋を二つそれとボールが・・・」
「そうねぇ、大量に試作するの?」
「んー、大量がどれほどかは何ともですが、はい、作ると思います」
「なら、夕食は簡単な物にするからメインはスポンジケーキ・・・だっけ?にしましょう、試作品とはいえ期待してるわよ」
ソフィアの言葉にオリビアはさらなるやる気を奮起してコンロを抱えると食堂へ戻る、食堂ではエレインがブノワトを捕まえて食器について討論していた、
「今度は何ですか?」
オリビアが二人を見上げるケイスに問うと、
「はい、食器をどうしようかと、コップと小さなトレイを一緒にして販売したいのですが、その回収と洗浄が思いのほか手間になるかもと、それと初期投資ですか、少々高く付くかもという点ですね」
「それもそうでしたね、やれやれ、屋台で一儲けって言っても簡単では無かったようですね」
「全くです、でも」
「でも?」
「楽しいですよ、何か生きてる感じがしてます」
ケイスの言葉は彼女の近々の境遇を考えれば目頭が熱くなるほどの重みを持っていた、
「ええい、分かりました、オリビア、へそくりを出しなさい、今、お幾らありますの?」
火の粉がこちらにも回ってきたようである、オリビアはすっと立ち上がりエレインの耳元に口を寄せると何事かを伝えた、
「ふん、では、明日、御主人に発注致しますわ、セットで50、お受け頂けますわね?」
エレインはブノワトに向けて啖呵を切った、ブノワトはニヤリと口元のみで笑みを浮かべ、
「お受け致しますよ、御注文、ありがとうございます」
慇懃に腰を折る、
「ありゃ、んじゃ、こっちも発注できるかな?」
ジャネットがブノワトの裾を数回引っ張って自陣の打合せに引き込んだ、
「この櫛なんだけど、たぶんもっと平たい板状にしたいんだよね、でも、そういう市販品が無くて・・・」
「なるほど、今使ってる櫛は市販品ですか?」
「はい、100本一組のを木工屋さんで仕入れました」
パウラが櫛の束を机に置く、
「でも、この櫛だと保持力が弱くて、平たい板でやったらこんな感じでかなりいいんだよね」
紫大理石には櫛を中心に挿したミルクアイスケーキと板状の木片を中心に挿したミルクアアイスケーキが鎮座している、ジャネットは板状の方を持ち上げて幾度か振って見せるがミルクアイスケーキはビクともしない、変わって櫛の方は持ち上げて暫くするとズルリと手元迄落ちてしまった、
「ふーん、うん、これも、欲しがるのは子供が多いでしょうしね、そうするとある程度食べやすさを考慮したいという事ね・・・うん、出来るわよ、この板状の木片でいいんでしょ?これなら廃材を使えば早いわね、ただ、数はどうだろう、要相談になるわ、勿論価格もね」
「良かった、じゃ、明日一緒に発注したいです、えっと費用は何とかなると思います、3人合わせれば」
3人は頷き合ってブノワトを見る、
「はいはい、わかったわ、明日旦那には気合入れてくるように言わないとね」
そうして屋台に向けての打合せはソフィアの夕食を知らせる声が響くまで続いた。
「あらあら、それでこんなになってるの?」
ユーリが内庭に顔を出す、そこには、二つの朽ちかけた屋台と一人の無骨な男性を中心にして女生徒達がキャッキャしていた、
「まったく、鼻の下伸ばして、後が怖いんだから・・・」
勝手口付近にはソフィアとブノワトが一団を見守るように立っており、ユーリは二人に近付くと状況を聞いて納得した、
「どうしたの?」
「ん、諸々の相談と打ちあわせ、食堂なら静かに話せるわね、行きましょう」
ユーリはソフィアを伴い食堂に入ると、
「下水道の件、何とか進みそうよ、何とかね」
「あらあら、良かったわね」
「えぇ、ただ、取り合えずは下水道の全容解明ね、で、学生と冒険者ギルドを巻き込んでやる事になったわ」
「あら、そう・・・うん、あの下水道なら学生の実習には良いかもね」
「そうなのよ、でも、学生だけってわけにもいかないから冒険者ギルドの学園の卒業生に依頼して一緒に潜ってもらう事になるわ」
「ふーん、よく考えられてるじゃない」
「そうよね、誰の発案かは分からないけど上手い事学園と調査を絡めた感じにしてあるわ」
「で、問題は?」
ソフィアは目を細めてユーリを見る、
「うん、領主様がねぇ、乗り気じゃないのよねー、どうしたもんかしら」
それからユーリは昨日行われた学園と領主との会議の顛末を話し始めた、
「なるほど、案の定曲がっちゃったんだ・・・」
「うん、領主様がへそ曲げるのも分かるっちゃわかるのよね、ある意味、学園と王太子が内通して計画した事をよ、諸事情があるから事後承諾しろって言われたようなもんでしょ、そりゃ、面白くないわよね、挙句、学園側は学園長と事務長と私とストラウク先生だもん、領主様の御声係りが居ないのよね、学園長も事務長もそういう所無頓着でさぁ、私も途中から、それに気付いて、ヤバって思ったりして、ハァーァ、っていうか私もそこら辺全然詳しく無いのよ、学園長も事務長も権力関連に無縁すぎるのよ、学園長は研究畑で実践派でしょ、事務長は貴族様で生粋の事務屋さんだし、そうなると私かストラウク先生が狙われそうだけど、ストラウク先生はあんなでしょ、ってことはなんかいろいろこっちに火の粉がかかってきそうで、もーって感じー」
大きく吐息を吐いた、
「学園内の政治駆け引き?ってあるんだ、やっぱり」
「うん、あるわよー、びっくりしたわ、私も、で、今回の4人は寄りにもよって無関心過ぎる4人だからね、そりゃ、上手くいくことも上手くいかないわよね」
ユーリの口から見事な愚痴が吐き出されていく、
「それでね、曲がったとしても王太子の影がある以上無碍には絶対できないでしょ、領主様ってばすんごい嫌そうな顔で調査については学園に一任で了承したわ、けど、あの感じだと、次がねぇー」
「次というと?」
「うん、ここからが大事な点ね、貴女の意見も欲しいかなと思ってたの、実は学園とクロノスでも意思統一されていない点なんだけど、下水道の扱いについてね、貴女も覚えているでしょ、下水道をそのままにはできないって事それと魔法石の研究について」
「あー、その件ねぇー」
ソフィアは思い出す、下水道を活かす為には現在の井戸を廃しなければならず、そうなれば上水道と中水道の整備が必要不可欠となり、さらに下水道そのものの整備は当然のように必要となる、また、活かさない場合でも全面を埋め立てる必要がでてくると考えられるのである、さらに魔法石の研究が絡むと実に面白い程めんどくさい状況が出来上がっていた、
「で、周囲の意見を纏めると、クロノスは魔法石を研究したいから下水道を保持運営したいらしくて言わば下水道活用派、学園長は埋め立て派、事務長は埋め立てつつ魔法石部分だけを研究派、ストラウク先生は現状で保持派、って感じ、領主様は寝耳に水で驚いてる派で、私としては、クロノスに一票って感じだけど、私の意見はねぇ、無いも同然なのよねー」
「なるほどね、見事にバラバラってわけ?」
「そうなのよ、で、あんたは?」
「私が何?」
「何派?」
「突然そんな事言われても・・・」
「あによ、友達がいの無い」
「私の意見に友達がいは関係無いと思うけど」
「そうだけどさぁー」
「そうね、では、私派で良いかしら?」
「どういう事よ?」
「うーん、私としては下水道は保守して運営するべきと思うのね、毎日のオマルの掃除って結構大変なのよ、で、そうなると井戸は使用不可なんでしょ、上水道?の整備が必要になるけど、それをどうするか・・・実はちょっと考えててねぇ」
「あんた、また、何をしようとしてるの?」
ユーリはじっとソフィアの目を見詰める、
「まだ、実験?中・・・出来るかどうかも分からないからね、うん、まぁちょっと待っててよ、成功したら面白い事になるわ」
ソフィアはユーリの視線を楽し気に睨み返して微笑んだ。
ではとブノワトは黒板の半分を消して、
「今後の予定を組みますね、今日が14日、明日の15日に申請書提出します、で20日が本番でしょ、理想としては18日か17日に模擬販売をしたいかなと・・・どうでしょう」
「模擬販売といいますと、実際に屋台を出すのですか?」
エレインが手を上げる、
「はい、屋台は出します、実際の屋台・・・んっ・・・あんたら屋台は?」
ブノワトは大声を上げる、一同は彼女の大声に慣れてきていたが、それでも彼女の言葉の意味を理解し、顔色を無くした、
「ごめんなさい、無い・・・です」
ジャネットは俯いて恐る恐る手を上げた、言い出しっぺのジャネットがこうである、エレイン組もまた何も考えていなかった。
「無いって・・・あのねぇ」
ブノワトは再度呆れて溜息を吐く、
「いや、何とかなるかなぁなんて・・・えへへ」
ジャネットの言い訳にもならない言葉に、再度溜息を吐くと、
「うん、分かったわ、明日、旦那に言って用意してあげる、でも期待しないでよ、納屋に転がっているの調整してみるわ、全く、感謝なさいよ」
実に冷たい視線で6人を睥睨した、言葉も無く畏まる一同、
「はい、じゃ屋台も何とかするとして、予定の件ね」
ブノワトの切替の速さは凄まじく、ソフィアはそのあっさりとした気質に好感を感じた、感情の起伏が激しいという訳ではない、男性気質の気風の良さというものであろうか、恐らく男性ばかりの職場で身に付いた性質といって良いものであろう、その大声は叱責ではあっても威嚇でも脅しでもないのだ。
「うーん、私も飲食の屋台って経験無いからなぁ、よし決めます、17日午後から実際に販売します、決定、ここで実際に販売してお金の遣り取りから食材の加工、保存、顧客対応、等々一式全てやるわよ、そのうえで問題点を洗い出す・・・いいわね、で、18日19日の二日で問題を解消して、本番への仕込み、うん、今日の所はこんな感じね、いいかしら?」
一気にブノワト主導で予定が組まれた、ブノワトの問い掛けは確認ではなく決定の意味であると理解し一同は無言で頷く、
「うむ、では、ソフィアさんもこれで良いですか?」
「かまわないわぁ、楽しみねー」
ソフィアはミナに笑顔を向ける、
「うん、楽しみー、って、何がー?」
ミナの良い感じの脱力感が一同の緊張を幾らかでもほぐしたようであった。
「すいません、ソフィアさん、今日のお手伝いは・・・」
神妙な顔のオリビアが厨房に入ってきた、
「いいわよ、あっちで全力を出しなさい」
ソフィアは笑ってオリビアを追い返す、食堂ではブノワトの厳しさが良い感じに伝播したようで屋台に向けての商品開発と打合せが活発になされていた、
「そこでなんですが、コンロを御貸し頂ければと思いまして」
「ん、いいわよ、ちょっとまってね」
コンロに置いていた調理途中の鍋を下ろすと火を落とす、
「はい、どうぞ、持ってって」
「ありがとうございます、すいません、何から何まで」
「別にかまわないわよ、色々楽しみだしね」
ソフィアの言葉と優しい笑顔にオリビアは安堵の吐息を漏らす、
「っていうか、鍋とか材料とかあるの?好きなだけとは言えないけど遠慮しないで持っていきなさい」
「そうですね、鍋を二つそれとボールが・・・」
「そうねぇ、大量に試作するの?」
「んー、大量がどれほどかは何ともですが、はい、作ると思います」
「なら、夕食は簡単な物にするからメインはスポンジケーキ・・・だっけ?にしましょう、試作品とはいえ期待してるわよ」
ソフィアの言葉にオリビアはさらなるやる気を奮起してコンロを抱えると食堂へ戻る、食堂ではエレインがブノワトを捕まえて食器について討論していた、
「今度は何ですか?」
オリビアが二人を見上げるケイスに問うと、
「はい、食器をどうしようかと、コップと小さなトレイを一緒にして販売したいのですが、その回収と洗浄が思いのほか手間になるかもと、それと初期投資ですか、少々高く付くかもという点ですね」
「それもそうでしたね、やれやれ、屋台で一儲けって言っても簡単では無かったようですね」
「全くです、でも」
「でも?」
「楽しいですよ、何か生きてる感じがしてます」
ケイスの言葉は彼女の近々の境遇を考えれば目頭が熱くなるほどの重みを持っていた、
「ええい、分かりました、オリビア、へそくりを出しなさい、今、お幾らありますの?」
火の粉がこちらにも回ってきたようである、オリビアはすっと立ち上がりエレインの耳元に口を寄せると何事かを伝えた、
「ふん、では、明日、御主人に発注致しますわ、セットで50、お受け頂けますわね?」
エレインはブノワトに向けて啖呵を切った、ブノワトはニヤリと口元のみで笑みを浮かべ、
「お受け致しますよ、御注文、ありがとうございます」
慇懃に腰を折る、
「ありゃ、んじゃ、こっちも発注できるかな?」
ジャネットがブノワトの裾を数回引っ張って自陣の打合せに引き込んだ、
「この櫛なんだけど、たぶんもっと平たい板状にしたいんだよね、でも、そういう市販品が無くて・・・」
「なるほど、今使ってる櫛は市販品ですか?」
「はい、100本一組のを木工屋さんで仕入れました」
パウラが櫛の束を机に置く、
「でも、この櫛だと保持力が弱くて、平たい板でやったらこんな感じでかなりいいんだよね」
紫大理石には櫛を中心に挿したミルクアイスケーキと板状の木片を中心に挿したミルクアアイスケーキが鎮座している、ジャネットは板状の方を持ち上げて幾度か振って見せるがミルクアイスケーキはビクともしない、変わって櫛の方は持ち上げて暫くするとズルリと手元迄落ちてしまった、
「ふーん、うん、これも、欲しがるのは子供が多いでしょうしね、そうするとある程度食べやすさを考慮したいという事ね・・・うん、出来るわよ、この板状の木片でいいんでしょ?これなら廃材を使えば早いわね、ただ、数はどうだろう、要相談になるわ、勿論価格もね」
「良かった、じゃ、明日一緒に発注したいです、えっと費用は何とかなると思います、3人合わせれば」
3人は頷き合ってブノワトを見る、
「はいはい、わかったわ、明日旦那には気合入れてくるように言わないとね」
そうして屋台に向けての打合せはソフィアの夕食を知らせる声が響くまで続いた。
「あらあら、それでこんなになってるの?」
ユーリが内庭に顔を出す、そこには、二つの朽ちかけた屋台と一人の無骨な男性を中心にして女生徒達がキャッキャしていた、
「まったく、鼻の下伸ばして、後が怖いんだから・・・」
勝手口付近にはソフィアとブノワトが一団を見守るように立っており、ユーリは二人に近付くと状況を聞いて納得した、
「どうしたの?」
「ん、諸々の相談と打ちあわせ、食堂なら静かに話せるわね、行きましょう」
ユーリはソフィアを伴い食堂に入ると、
「下水道の件、何とか進みそうよ、何とかね」
「あらあら、良かったわね」
「えぇ、ただ、取り合えずは下水道の全容解明ね、で、学生と冒険者ギルドを巻き込んでやる事になったわ」
「あら、そう・・・うん、あの下水道なら学生の実習には良いかもね」
「そうなのよ、でも、学生だけってわけにもいかないから冒険者ギルドの学園の卒業生に依頼して一緒に潜ってもらう事になるわ」
「ふーん、よく考えられてるじゃない」
「そうよね、誰の発案かは分からないけど上手い事学園と調査を絡めた感じにしてあるわ」
「で、問題は?」
ソフィアは目を細めてユーリを見る、
「うん、領主様がねぇ、乗り気じゃないのよねー、どうしたもんかしら」
それからユーリは昨日行われた学園と領主との会議の顛末を話し始めた、
「なるほど、案の定曲がっちゃったんだ・・・」
「うん、領主様がへそ曲げるのも分かるっちゃわかるのよね、ある意味、学園と王太子が内通して計画した事をよ、諸事情があるから事後承諾しろって言われたようなもんでしょ、そりゃ、面白くないわよね、挙句、学園側は学園長と事務長と私とストラウク先生だもん、領主様の御声係りが居ないのよね、学園長も事務長もそういう所無頓着でさぁ、私も途中から、それに気付いて、ヤバって思ったりして、ハァーァ、っていうか私もそこら辺全然詳しく無いのよ、学園長も事務長も権力関連に無縁すぎるのよ、学園長は研究畑で実践派でしょ、事務長は貴族様で生粋の事務屋さんだし、そうなると私かストラウク先生が狙われそうだけど、ストラウク先生はあんなでしょ、ってことはなんかいろいろこっちに火の粉がかかってきそうで、もーって感じー」
大きく吐息を吐いた、
「学園内の政治駆け引き?ってあるんだ、やっぱり」
「うん、あるわよー、びっくりしたわ、私も、で、今回の4人は寄りにもよって無関心過ぎる4人だからね、そりゃ、上手くいくことも上手くいかないわよね」
ユーリの口から見事な愚痴が吐き出されていく、
「それでね、曲がったとしても王太子の影がある以上無碍には絶対できないでしょ、領主様ってばすんごい嫌そうな顔で調査については学園に一任で了承したわ、けど、あの感じだと、次がねぇー」
「次というと?」
「うん、ここからが大事な点ね、貴女の意見も欲しいかなと思ってたの、実は学園とクロノスでも意思統一されていない点なんだけど、下水道の扱いについてね、貴女も覚えているでしょ、下水道をそのままにはできないって事それと魔法石の研究について」
「あー、その件ねぇー」
ソフィアは思い出す、下水道を活かす為には現在の井戸を廃しなければならず、そうなれば上水道と中水道の整備が必要不可欠となり、さらに下水道そのものの整備は当然のように必要となる、また、活かさない場合でも全面を埋め立てる必要がでてくると考えられるのである、さらに魔法石の研究が絡むと実に面白い程めんどくさい状況が出来上がっていた、
「で、周囲の意見を纏めると、クロノスは魔法石を研究したいから下水道を保持運営したいらしくて言わば下水道活用派、学園長は埋め立て派、事務長は埋め立てつつ魔法石部分だけを研究派、ストラウク先生は現状で保持派、って感じ、領主様は寝耳に水で驚いてる派で、私としては、クロノスに一票って感じだけど、私の意見はねぇ、無いも同然なのよねー」
「なるほどね、見事にバラバラってわけ?」
「そうなのよ、で、あんたは?」
「私が何?」
「何派?」
「突然そんな事言われても・・・」
「あによ、友達がいの無い」
「私の意見に友達がいは関係無いと思うけど」
「そうだけどさぁー」
「そうね、では、私派で良いかしら?」
「どういう事よ?」
「うーん、私としては下水道は保守して運営するべきと思うのね、毎日のオマルの掃除って結構大変なのよ、で、そうなると井戸は使用不可なんでしょ、上水道?の整備が必要になるけど、それをどうするか・・・実はちょっと考えててねぇ」
「あんた、また、何をしようとしてるの?」
ユーリはじっとソフィアの目を見詰める、
「まだ、実験?中・・・出来るかどうかも分からないからね、うん、まぁちょっと待っててよ、成功したら面白い事になるわ」
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