21 / 1,143
本編
4話 お忍び貴族は下水道と魔法石より団子です その5
しおりを挟む
「やぁおはよう、久しぶりだなソフィア、ん?君はミナか大きくなったな、小さいけど」
恰幅の良い壮年の男性が陽気を身体全体から発しつつ寮母宿舎から内庭に入ってきた、菜園に水遣りをしていたミナは手を止めて首を傾げる、
「おじさん、だれ―、そこはミナのおうちよ」
ソフィアはあらあらと駆け足で近寄ると、
「おはよう、スイランズ君・・・肥えたわね」
「久しぶりの再会でそれかよ、いや、確かに肥えたかもだが」
ソフィアはスイランズと呼んだ男性と軽くハグをする、
「妻も来たんだ、いいだろう?」
「え、ホント」
「そうよぅ、久しぶりねソフィア、元気そう」
スイランズの背後から上品さが隠しきれない美しい女性が顔を見せる、
「パトリシア様、お久しぶりです」
ソフィアはすっと片膝を着いた、
「ソフィアさん、礼は結構です、お忍びのつもりなので、それとそうね、リシアと呼んでくださいね」
パトリシアはソフィアの肩にそっと手を置く、
「畏まりました、パトリシア様、リシアさんですね」
ソフィアはパトリシアの手を取り立ち上がると、頬と頬を合わせる挨拶を交わした、
「んー、ミナもー」
「ミナは先にこっちだろ、覚えてないか俺の事?」
「知らなぁーい」
スイランズはミナのつれない一言にあからさまに肩を落として見せる、
「無理ないわよ、あの頃ミナは2歳くらいよ、タロウが離さなかったし、覚えてない?クロノスよこの人」
ソフィアはミナの顔を覗き込む、ミナはより不思議そうな顔でクロノスを見上げると、
「ピカピカ鎧着てないよ?あと、何か違う・・・」
悲し気にそう言った、
「きっと、太り過ぎねスイランズ君・・・」
「マジかー、いやそんなに違うか?鎧はそうだけどさ、いや、これはどうしたもんかなー、クロノスだよぉー寂しい事言うなよミナっち、頼むよーー」
「むー、知らないものは知らないのー」
ミナはスイランズをあっさり振り切るととパトリシアの元に駆け寄りソフィアの真似をして挨拶をする、
「あら、御丁寧にありがとう、リシアです」
「ミナです」
最上の笑みをパトリシアに送る、
「宜しくね、ミナさん、スイランズから聞いてますよ」
パトリシアは膝を着いて頬を合わせる、ミナは初めての親密な挨拶に顔を真っ赤にして照れてしまう、
「む、来客かや?」
厨房からレインが出て来た、手には倉庫を漁って見付けてきた大工道具を持っている、
「レイン、こっちに紹介するわ」
レインは手にした道具を内庭の端に置くとソフィアの元へ駆け寄った、
「こちらがスイランズさん、こちらが奥さんのリシアさん」
「レインと申します、宜しく頼むの」
レインは二人に恭しく礼をする、
「御丁寧にありがとう、新しいと言っては失礼だが養女さん?」
スイランズは明け透けにソフィアに問うた、
「そうですねぇ、うーん、養女と言えばそうですが、ミナの姉?後見人?」
「レインはミナの大事な人だよ」
ミナは楽し気にレインの背中に回ると、レインの肩口からスイランズ夫婦を覗き込む、
「まぁ取り合えず、宜しくのぅ、それよりも、身重かや目出度いのぅ」
レインはパトリシアを見詰めそう言って微笑んだ、
「分かりますの?」
「うむ、今の所順調そうじゃぞ、まだまだこれからだろうがの」
「すごいね、見て分かるもの?」
「うむ、分かるな、性別も分かるぞ知りたいか?」
えっ、とスイランズ夫婦は顔を見合わせ、不思議そうな顔でレインを見てソフィアを見る、ソフィアもまたどうしたものかと困った顔をしていると、
「愉しみにとっておくらしいからの、要らぬことじゃったかな」
レインはそう言って笑うと、
「ミナ、水遣りは終わったのかや?」
とミナを連れて菜園へ戻った、
「ソフィア、あの娘は?」
スイランズは不思議そうな顔のままソフィアに問う、
「うーん、まぁその内あの娘から説明されるわよ、うん、まぁそういうものなの」
「そうか、君がそう言うなら・・・まぁ」
ソフィアの適当な言動に懐疑の念は強くなるものの、スイランズはかつての戦友の言葉であるという事で無理矢理に納得する事にしたようである、気を取り直したスイランズは本来の快活な大声を張り上げた、
「まぁ、よいわ、土産あるぞ、リンド」
名を呼ばれたスイランズの従者が宿舎から大荷物を手に姿を現した、
「あら、リンドさん久しぶり」
「こちらこそソフィア様、御機嫌麗しゅう」
執事らしい執事の姿をした初老の男である、両手一杯に木箱を抱えていた、
「これ全部?」
「えぇ全部です、厨房はどちらに?全て食物で御座います」
「助かるわ、ありがとうスイランズ、こういう事は気がきくわよねぇ」
ソフィアは実に現金な笑みを浮かべる、こちらにと厨房へ向かって歩き出す、
「うむ、分かってるだろう?タロウの一番弟子?」
「私の事をそう呼ぶという事は・・・夕食は戦争よ?参加していくのね」
「ふふん、勿論だ、君達に会って食事を共にしないのは愚の骨頂というもの」
「いいわよ、寮生と一緒だからねぇ、リンドさんも一緒でしょ、えーとアフラさんでしたっけ?リシアさんの従者」
「アフラはお留守番ですわ、例の空間魔法を監視して頂いてますの」
「なるほど、そうか、うん、確かにそちら側は監視必要かもね」
「じゃぁ、何かお返しを考えましょう、お気持ちだけでもアフラさんに届けて頂けます?」
「ありがとうございます、アフラも喜びますわ」
「そういえば、タロウはいるのかい?」
「いないわよ」
「相変わらず?」
「そうね、根無し草っていうの?本人は放浪癖なんて格好付けてるけど、そのうち顔出すんじゃない?」
厨房内に3人を招き入れると作業台に土産を置くようお願いする、
「これがコンロ?ユーリの報告書にあった」
土産の箱を楽し気に覗き込むソフィアとリンドを尻目にスイランズとパトリシアは珍し気に厨房内を散策している、
「えぇ、そうよ、実物は初めて?」
「あぁ、使って見ていいかい」
どうぞとソフィアが言うが早いかスイランズはコンロをあちこち弄り回す、
「確かこう・・・」
プレート上の魔法陣を指先でなぞるとシュボッと魔法石から炎が立ち上がった、
「なるほど、これはすごい、しかし、この発想は無かったな、うん」
「大したもんでしょ、魔法石そのものの安全性がどうのといってユーリは慎重だけど、私から見ても道具として便利なのよ、もう少し使い勝手を改良したいのとタロウの意見が欲しいのだけど、現時点で十分に使用に耐えるわよ」
「うん、これは一台欲しいな、実際に使い倒したい、ユーリはいつ来る?」
「そろそろかしら、皆さん食堂でお待ちになって、お茶を入れますから」
ソフィアの案内で3人は食堂に通されそこで待つこととなった、茶が出され今度は世間話に花が咲く、一杯飲み干したかどうかの頃合いでユーリとストラウクが沢山の資料を持って姿を現し、程無くアウグスタ学園長、シェルビー事務長、学園事務員ダナの3名が合流した。
先に待っていたスイランズとパトリシアの姿にユーリは驚き喜んだ、事情を知らないストラウクはあからさまに不機嫌そうに眉根を寄せるが、ユーリのパトロンの一人であると適当に誤魔化すと、それが真実の全てでは無い事を瞬時に見抜きつつも話を合わせる事にしたようである。
困ったのはシェルビー事務長であった、学園長と事務長は共にスイランズと面識がある為その姿に大いに驚き萎縮してしまっていた、スイランズとパトリシアの私用だとの言葉に学園長はその意を汲んだが、生粋の貴族であるシェルビーは柔軟な対応が難しいらしく普段の落ち着いた紳士然とした威厳を取り戻すのに暫し時間が必要であった、それまでの間は何とも締まらない痴態を晒すことになり、彼の知られざる一面を開陳する事になった。
平穏であったのは事情を知らないダナである、彼女は慇懃な態度を崩さずかと言って不愉快な距離を取るわけでもない、普段からシェルビー達貴族の同僚上司に接する形のままスイランズ達とも接しているようである、学園長と事務長の慌てぶりから彼等の立場を慮っての事であろう、実に賢く器用な女性である。
「それでは、関係者お集まりの事と思いますので説明会を始めさせていただきます」
ユーリの型に嵌った口上から会は開始された、諸々の事情は既にある程度周知しており、今回は実際に現地の視察とより詳しい説明が主題となる、
「では早速ですが現地の視察に赴こうと考えます、先導は私とストラウク先生が、他にどなたが赴かれますか?」
ユーリの問いにスイランズとアウグスタ、シェルビーが沈黙のまま挙手をする、
「はい、私共も一度入っただけの地であります、危険や失礼があるやもしれませんその点御容赦下さい、ですが、経験だけはある方々ですね」
シェルビーの実力は知らないがスイランズとアウグスタは別格であった、ユーリの評価にスイランズは困った顔をし、アウグスタは言いよるわいと破顔した、
「では、参ります、支度をお願い致します」
「愉しみじゃのう、久しぶりに血が滾る思いじゃ」
アウグスタは着ていた長衣を脱ぐと軽く畳んで椅子に掛ける、流石に慣れたものなのだろう、作業用なのか身体にフィットした無駄のない装束で挑む様子である、
「先生、若いですね」
スイランズはアウグスタの姿に笑みを浮かべる、
「ふふん、現役じゃぞ、勿論コッチもじゃ」
少々浮かれ気味のアウグスタは股間を突き出して見せる、
「それは素晴らしい、であれば、うん、今度我が町の娼館に」
スイランズの言葉はパトリシアの眼光のみで途絶した、
「では行こうかの、ユーリ先生頼むぞ」
怪しく光るパトリシアの眼から逃げる様にスイランズとアウグスタは競って内庭に向かう、
「私達はお茶の続きにしましょうか、ミナとレインも呼びましょう」
ソフィアは残った女性陣に声を掛け厨房に入った。
恰幅の良い壮年の男性が陽気を身体全体から発しつつ寮母宿舎から内庭に入ってきた、菜園に水遣りをしていたミナは手を止めて首を傾げる、
「おじさん、だれ―、そこはミナのおうちよ」
ソフィアはあらあらと駆け足で近寄ると、
「おはよう、スイランズ君・・・肥えたわね」
「久しぶりの再会でそれかよ、いや、確かに肥えたかもだが」
ソフィアはスイランズと呼んだ男性と軽くハグをする、
「妻も来たんだ、いいだろう?」
「え、ホント」
「そうよぅ、久しぶりねソフィア、元気そう」
スイランズの背後から上品さが隠しきれない美しい女性が顔を見せる、
「パトリシア様、お久しぶりです」
ソフィアはすっと片膝を着いた、
「ソフィアさん、礼は結構です、お忍びのつもりなので、それとそうね、リシアと呼んでくださいね」
パトリシアはソフィアの肩にそっと手を置く、
「畏まりました、パトリシア様、リシアさんですね」
ソフィアはパトリシアの手を取り立ち上がると、頬と頬を合わせる挨拶を交わした、
「んー、ミナもー」
「ミナは先にこっちだろ、覚えてないか俺の事?」
「知らなぁーい」
スイランズはミナのつれない一言にあからさまに肩を落として見せる、
「無理ないわよ、あの頃ミナは2歳くらいよ、タロウが離さなかったし、覚えてない?クロノスよこの人」
ソフィアはミナの顔を覗き込む、ミナはより不思議そうな顔でクロノスを見上げると、
「ピカピカ鎧着てないよ?あと、何か違う・・・」
悲し気にそう言った、
「きっと、太り過ぎねスイランズ君・・・」
「マジかー、いやそんなに違うか?鎧はそうだけどさ、いや、これはどうしたもんかなー、クロノスだよぉー寂しい事言うなよミナっち、頼むよーー」
「むー、知らないものは知らないのー」
ミナはスイランズをあっさり振り切るととパトリシアの元に駆け寄りソフィアの真似をして挨拶をする、
「あら、御丁寧にありがとう、リシアです」
「ミナです」
最上の笑みをパトリシアに送る、
「宜しくね、ミナさん、スイランズから聞いてますよ」
パトリシアは膝を着いて頬を合わせる、ミナは初めての親密な挨拶に顔を真っ赤にして照れてしまう、
「む、来客かや?」
厨房からレインが出て来た、手には倉庫を漁って見付けてきた大工道具を持っている、
「レイン、こっちに紹介するわ」
レインは手にした道具を内庭の端に置くとソフィアの元へ駆け寄った、
「こちらがスイランズさん、こちらが奥さんのリシアさん」
「レインと申します、宜しく頼むの」
レインは二人に恭しく礼をする、
「御丁寧にありがとう、新しいと言っては失礼だが養女さん?」
スイランズは明け透けにソフィアに問うた、
「そうですねぇ、うーん、養女と言えばそうですが、ミナの姉?後見人?」
「レインはミナの大事な人だよ」
ミナは楽し気にレインの背中に回ると、レインの肩口からスイランズ夫婦を覗き込む、
「まぁ取り合えず、宜しくのぅ、それよりも、身重かや目出度いのぅ」
レインはパトリシアを見詰めそう言って微笑んだ、
「分かりますの?」
「うむ、今の所順調そうじゃぞ、まだまだこれからだろうがの」
「すごいね、見て分かるもの?」
「うむ、分かるな、性別も分かるぞ知りたいか?」
えっ、とスイランズ夫婦は顔を見合わせ、不思議そうな顔でレインを見てソフィアを見る、ソフィアもまたどうしたものかと困った顔をしていると、
「愉しみにとっておくらしいからの、要らぬことじゃったかな」
レインはそう言って笑うと、
「ミナ、水遣りは終わったのかや?」
とミナを連れて菜園へ戻った、
「ソフィア、あの娘は?」
スイランズは不思議そうな顔のままソフィアに問う、
「うーん、まぁその内あの娘から説明されるわよ、うん、まぁそういうものなの」
「そうか、君がそう言うなら・・・まぁ」
ソフィアの適当な言動に懐疑の念は強くなるものの、スイランズはかつての戦友の言葉であるという事で無理矢理に納得する事にしたようである、気を取り直したスイランズは本来の快活な大声を張り上げた、
「まぁ、よいわ、土産あるぞ、リンド」
名を呼ばれたスイランズの従者が宿舎から大荷物を手に姿を現した、
「あら、リンドさん久しぶり」
「こちらこそソフィア様、御機嫌麗しゅう」
執事らしい執事の姿をした初老の男である、両手一杯に木箱を抱えていた、
「これ全部?」
「えぇ全部です、厨房はどちらに?全て食物で御座います」
「助かるわ、ありがとうスイランズ、こういう事は気がきくわよねぇ」
ソフィアは実に現金な笑みを浮かべる、こちらにと厨房へ向かって歩き出す、
「うむ、分かってるだろう?タロウの一番弟子?」
「私の事をそう呼ぶという事は・・・夕食は戦争よ?参加していくのね」
「ふふん、勿論だ、君達に会って食事を共にしないのは愚の骨頂というもの」
「いいわよ、寮生と一緒だからねぇ、リンドさんも一緒でしょ、えーとアフラさんでしたっけ?リシアさんの従者」
「アフラはお留守番ですわ、例の空間魔法を監視して頂いてますの」
「なるほど、そうか、うん、確かにそちら側は監視必要かもね」
「じゃぁ、何かお返しを考えましょう、お気持ちだけでもアフラさんに届けて頂けます?」
「ありがとうございます、アフラも喜びますわ」
「そういえば、タロウはいるのかい?」
「いないわよ」
「相変わらず?」
「そうね、根無し草っていうの?本人は放浪癖なんて格好付けてるけど、そのうち顔出すんじゃない?」
厨房内に3人を招き入れると作業台に土産を置くようお願いする、
「これがコンロ?ユーリの報告書にあった」
土産の箱を楽し気に覗き込むソフィアとリンドを尻目にスイランズとパトリシアは珍し気に厨房内を散策している、
「えぇ、そうよ、実物は初めて?」
「あぁ、使って見ていいかい」
どうぞとソフィアが言うが早いかスイランズはコンロをあちこち弄り回す、
「確かこう・・・」
プレート上の魔法陣を指先でなぞるとシュボッと魔法石から炎が立ち上がった、
「なるほど、これはすごい、しかし、この発想は無かったな、うん」
「大したもんでしょ、魔法石そのものの安全性がどうのといってユーリは慎重だけど、私から見ても道具として便利なのよ、もう少し使い勝手を改良したいのとタロウの意見が欲しいのだけど、現時点で十分に使用に耐えるわよ」
「うん、これは一台欲しいな、実際に使い倒したい、ユーリはいつ来る?」
「そろそろかしら、皆さん食堂でお待ちになって、お茶を入れますから」
ソフィアの案内で3人は食堂に通されそこで待つこととなった、茶が出され今度は世間話に花が咲く、一杯飲み干したかどうかの頃合いでユーリとストラウクが沢山の資料を持って姿を現し、程無くアウグスタ学園長、シェルビー事務長、学園事務員ダナの3名が合流した。
先に待っていたスイランズとパトリシアの姿にユーリは驚き喜んだ、事情を知らないストラウクはあからさまに不機嫌そうに眉根を寄せるが、ユーリのパトロンの一人であると適当に誤魔化すと、それが真実の全てでは無い事を瞬時に見抜きつつも話を合わせる事にしたようである。
困ったのはシェルビー事務長であった、学園長と事務長は共にスイランズと面識がある為その姿に大いに驚き萎縮してしまっていた、スイランズとパトリシアの私用だとの言葉に学園長はその意を汲んだが、生粋の貴族であるシェルビーは柔軟な対応が難しいらしく普段の落ち着いた紳士然とした威厳を取り戻すのに暫し時間が必要であった、それまでの間は何とも締まらない痴態を晒すことになり、彼の知られざる一面を開陳する事になった。
平穏であったのは事情を知らないダナである、彼女は慇懃な態度を崩さずかと言って不愉快な距離を取るわけでもない、普段からシェルビー達貴族の同僚上司に接する形のままスイランズ達とも接しているようである、学園長と事務長の慌てぶりから彼等の立場を慮っての事であろう、実に賢く器用な女性である。
「それでは、関係者お集まりの事と思いますので説明会を始めさせていただきます」
ユーリの型に嵌った口上から会は開始された、諸々の事情は既にある程度周知しており、今回は実際に現地の視察とより詳しい説明が主題となる、
「では早速ですが現地の視察に赴こうと考えます、先導は私とストラウク先生が、他にどなたが赴かれますか?」
ユーリの問いにスイランズとアウグスタ、シェルビーが沈黙のまま挙手をする、
「はい、私共も一度入っただけの地であります、危険や失礼があるやもしれませんその点御容赦下さい、ですが、経験だけはある方々ですね」
シェルビーの実力は知らないがスイランズとアウグスタは別格であった、ユーリの評価にスイランズは困った顔をし、アウグスタは言いよるわいと破顔した、
「では、参ります、支度をお願い致します」
「愉しみじゃのう、久しぶりに血が滾る思いじゃ」
アウグスタは着ていた長衣を脱ぐと軽く畳んで椅子に掛ける、流石に慣れたものなのだろう、作業用なのか身体にフィットした無駄のない装束で挑む様子である、
「先生、若いですね」
スイランズはアウグスタの姿に笑みを浮かべる、
「ふふん、現役じゃぞ、勿論コッチもじゃ」
少々浮かれ気味のアウグスタは股間を突き出して見せる、
「それは素晴らしい、であれば、うん、今度我が町の娼館に」
スイランズの言葉はパトリシアの眼光のみで途絶した、
「では行こうかの、ユーリ先生頼むぞ」
怪しく光るパトリシアの眼から逃げる様にスイランズとアウグスタは競って内庭に向かう、
「私達はお茶の続きにしましょうか、ミナとレインも呼びましょう」
ソフィアは残った女性陣に声を掛け厨房に入った。
24
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜
望月かれん
ファンタジー
中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。
戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。
暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。
疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。
なんと、ぬいぐるみが喋っていた。
しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。
天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。
※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる